ヘル・レイザー 1987 |
1988アボリアッツ・ファンタスティック映画祭恐怖映画賞 |
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クリストファー・フィッグ(製)
クライヴ・バーカー(脚) |
アシュレイ・ローレンス |
アンドリュー・ロビンソン |
クレア・ヒギンズ |
オリヴァー・スミス |
ロバート・ハインズ |
ショーン・チャップマン |
アントニー・アレン |
レオン・デイヴィス |
マイケル・キャシディ |
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極限の快楽を得られるというパズル・ボックスを手に入れた男フランク(チャップマン)。しかし、それによってもたらされたのは永遠に続く極限の苦痛だった。その家に彼の兄の一家が移り住んできた時、偶然から屋根裏では死んだと思われていたその男が肉塊から復元を始めていた。以前、男と通じていた嫂ジュリアは復元のために人を連れ込み殺すが、その事に気付いた一人娘カースティ(ローレンス)は偶然その男が持っていたパズル・ボックスを手にする。それが魔界の扉を開くものだとも知らずに。そしてパズルボックスを介して現れるセノバイト(魔道士)たち…
当時のホラー小説の巨匠クライヴ=バーカーの小説「ヘルバウンド・ハート」を元に、バーカー自らが脚本、監督、製作を務めたホラー作品。
セノバイト(魔道士)の一人ピンヘッドの顔で有名になった作品なのだが、この作品は決してそれだけのホラーではない。グロテスクさの中に奇妙な美しさを兼ね揃えるセノバイト達の姿や、鈎付きフックに貫かれ、引き裂かれるときの痛そうな描写、地獄から復活する脳と神経末梢だけから構成されるフランクの存在感(「宇宙家族カールビンソン」と言う漫画を知っているなら、その中の登場人物リスのたーくんを思い出させるだろう)。それらが画面狭しと暴れ回る。まさにそう言うのが好きな人にはたまらないシチュエーション。だが、この作品は、グロテスクな描写の中に、確かにゴシック風の官能的な美しさを兼ね揃えていた。
不倫による爛れた肉欲を愛情に転嫁して堕落に憧れるジュリアや、そのジュリアの不倫に薄々感づき、強姦まがいに妻を犯す夫の歪んだ愛情表現、サノバイトを前にし、脅えつつも毅然とした態度に出るカーティス。映像のエロチックさ、グロテスクさだけでなく、この作品そのものの持つポテンシャルは意外に高い。
著者バーカーは結構多芸な人だが(小説の方は今やホラーから離れてるけど)、映像面での才能もあったのか!。と思わされる。極限の快楽は極限の苦痛と共にあるという哲学めいた思想を織り込んだのも面白い試みだった。これがハリウッドではなく、イギリスで作られた作品だからこそ、なし得た技なのかも知れないな。
思えば、人間にとって本当の快楽というのは常に恐怖と共にあるのかもしれない。映画においてもそうで、『サイコ』(1960)が名作たり得たのは、その恐怖の中に確かに快楽の要素を取り入れていたからかも知れない。思い返せば、初体験のドキドキ感はホラー的な恐怖に近かった。マジあの時は逃げ出したかったっけ…って蛇足?
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