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ヴォルフガング・ムルンベルガー
Wolfgang Murnberger

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鑑賞本数 合計点 平均点
書籍
2011
2010 ミケランジェロの暗号 監督・脚色
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1960 11'13 ウィーナーノイシュタットで誕生

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ミケランジェロの暗号 2010

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ポール・ヘンゲ(脚)
モーリッツ・ブライブトロイ
ゲオルク・フリードリヒ
ウーズラ・シュトラウス
マルト・ケラー
ウーヴェ・ボーム
ウド・ザメル
ライナー・ボック
メラーブ・ニニッゼ
カール・フィッシャー
クリストフ・ルーザー
セルゲ・ファルク
★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 ドイツではヒトラーが政権を握り、オーストリアにもきな臭さが漂ってきた時代。ウィーンに住み画廊を営むユダヤ人一家の一人息子ヴィクトル・カウフマン(ブライブトロイ)は、兄弟同様に育った使用人の息子スメカル(フリードリヒ)と再会する。家族の気安さから、ヴィクトルはスメカルに、家に国宝級のミケランジェロの絵があることを教えてしまう。しかしナチスに傾倒していたスメカルは昇進目的でその事を密告するのだった。裏切られ追いつめられた一家は絵と引き替えにスイスへと亡命を願い出るのだが…
 本作を劇場で観ようと思ったのは予告を観たお陰。
 そこで、ナチスがミケランジェロの絵に隠された暗号を解こうとし、そのためにユダヤ人の知恵を借りようとする。そんな印象を受けた。なんとなく『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)の二番煎じみたいなタイトルだが、そう言えばナチスはオカルトの研究もしていたらしいし、こう言うのも面白いかも知れない。とか思って劇場に足を運んだ。

 …そりゃ、
勝手にそう思っていたのは私の責任には違いない。だけど、このタイトルとあの予告。いくら何でも内容に隔たりがありすぎだろ。まさかこんな作品だとは思ってもみなかった。でも、これはこれで充分楽しめる内容だし、ミスリードを狙ったとしたなら、私限定では正解だった。

 前にどこかのレビューで「ドイツの戦争映画は垢抜けてない」と書いた記憶があったのだが、近年ドイツの戦争映画もどんどん質が上がってる感じ。単に戦争は悲惨だとか、そこでの生活は大変だったとか、ストレートに「戦争はいけない」とするのではなく、重い設定の中にユーモアを取り入れ、ちゃんと物語として完成度を高めている作品が多く作られるようになってきた。
 本作なんかはその典型的な例となってる。物語は重いため、コメディとは言わないまでも、しっかりユーモアを取り入れ、観ていてなんか楽しい。

 本作で面白いところは、制服を着ることによって人は自分自身のイメージを作り上げるという部分。これは単に周囲の人に対するイメージ操作と言うだけでなく、自分自身も自らの外観に引きずられてしまうと言う事も含まれる
(これを端的に示したのが同じくドイツ映画である『es [エス]』(2001)だった)
 ここには二人の主人公が登場するが、一方のスメカルは、ドイツ人ではあるがユダヤ人家庭の使用人の息子として生まれ、家族同様に育っているため、ユダヤ人に対する偏見は持ってないのだが、ナチスの制服に袖を通した時から、意識がすっかり変わってしまった。軍部に対する忠誠心を示すために恩人を売り、彼らのみの安全が図れないことを知った時も放置してしまう。彼の場合は、もとよりそういう考えがあったと言うよりも、ナチスとしてふさわしくあろうとしてのことで、制服に引きずられている姿が見える。
 一方のヴィクトルにしても状況は同じ。中盤で、スメカルと服の交換をしてしまったことで憎きナチスの服を着込むことになるのだが、最初のうちは戸惑っていたものの、やがて「意識が変わる」とまで言ってしまってる
(ユダヤ人にそれを言わせるとは、なんとも皮肉めいたことではあるが)
 軍服というのは権力が背後にあることの象徴であり、それと一体化することによって自分自身が権力の一部であることを認識させるに良いアイテム。その辺も考えて軍服というのもデザインされているのかもしれない。

 服によって立場どころか性格まで変わってしまう。この皮肉をユーモアとして受け取るなら、本作は大変興味深い作品として観ることができるだろう。

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