マーサの幸せレシピ 2001 |
2002ヨーロッパ映画男優賞(カステリット) |
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カール・バウムガルトナー
クリストフ・フリーデル(製)
サンドラ・ネットルベック(脚) |
マルティナ・ゲデック |
セルジオ・カステリット |
ウルリク・トムセン |
マクシメ・フェルステ |
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★★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
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3 |
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ハンブルクのフレンチレストランで女性シェフとして働いているマーサ(ゲデック)は、腕は確かだが感情の起伏が乏しく、レストランオーナーからも、もっと人間関係を豊かにするようにと言われ続けていた。そんな時、姉が事故死してしまい、その娘リナ(フェルステ)を引き取ることになってしまう。初めての子育てで途方に暮れるマーサだったが…
既に何度も書いているが、視聴者のツボを押す映画というのがある。そのツボってのは多数の映画を観ているうちに傾向として分かってくるものだが、私にとってはそれは“家族を作っていく”というものになってるのが特徴。この場合家族というのは、血のつながりに留まらない。いやむしろ初めて出会った人々が、ぎくしゃくしながらも人間関係を作っていき、やがて本物の家族となっていくというもので、この手の作品はほぼ無条件で高得点を上げてしまう傾向がある。
本作もまさしくそのフォーマットで作られたべたべたな作品ではあるのだが、そのベタな演出がとてつもなく心地良い。何より本作がドイツ映画というのが最大のポイントだろう。何故なら、ドイツ映画の常として、“言葉で伝える”という事がとても重視されているから。雰囲気によって伝えるとか、言葉にしないで相手が推測するとかも映画の面白さには違いないが、ドイツ映画の場合は、そんな雰囲気よりも、しっかり自分の主張を口に出すのが特徴。そのために人間関係がぎくしゃくしたりすることも多いのだが、それが他の映画にはないアクセントになってる。
マーサはまさしくそういったドイツ人気質を体現しており、自分の主張ははっきりと口にし、全てを合理的に捉える。仕事に生きると決めた以上は、仕事以外のことに興味を持たず、ひたすら料理のことのみを考えるという女性だったのだが、そんな彼女が無理矢理押しつけられてしまった姪の面倒を看なければならなくなった時、それまでの合理的なものが全て吹っ飛んでしまう。それでもなんとか理性をつなぎ止めようとした結果、精神的に参ってしまう過程が上手く演出されている。結局合理的精神で家族関係を構築するのは無理と分かってきた時に、イタリア人のマルコの存在が光ってくる。同じヨーロッパでありながら、全くドイツ人とは気質が違うイタリア人の典型のような男が良い具合に配置されることで、家族構築にしっかり結びついていくことになる。
結果として本作は、ドイツとイタリア、そしてフランスというお国柄を上手く演出することで面白いバランスを取っている訳だ。
本作のハリウッドリメイクとなった『幸せのレシピ』(2007)がクズみたいな作品になったのは、まさしくこの点を無視してしまったおかげだろう。 |