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ステファン・ルツォヴィツキー
Stefan Ruzowitzky

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鑑賞本数 1 合計点 4 平均点 4.00
書籍
2008
2007 ヒトラーの贋札
2006
2005
2004
2003 アナトミー2 監督
2002
2001 エニグマ奪還 監督
2000 アナトミー 監督
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
1976
1975
1974
1973
1972
1971
1970
1969
1968
1967
1966
1965
1964
1963
1962
1961 12'25 ウィーンで誕生

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ヒトラーの贋札
2007米アカデミー外国語映画賞
2007ナショナル・ボード・オブ・レビュー外国映画賞

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ステファン・ルツォヴィツキー(脚)
カール・マルコヴィクス
アウグスト・ディール
デーヴィト・シュトリーゾフ
マリー・ボイマー
ドロレス・チャップリン
アウグスト・ツィルナー
マルティン・ブラムバッハ
★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
ヒトラーの贋札 悪魔の工房(書籍)
 第二次世界大戦中のドイツ。ユダヤ人強制収容所の一画に、秘密工場が作られた。「ベルンハイト作戦」と名付けられたその作戦は、イギリス・ポンドやアメリカ・ドルを偽造し、連合国経済を混乱させようというものだった。その中には著名な贋作家サロモン=ソロヴィッチ(マルコヴィクス)“通称サリー”や印刷業者のブルガー(ディール)がいた。そこでかつて自分を逮捕したヘルツォーク(シュトリーゾフ)の指揮の元、偽札作りに従事するが…
 大戦中のドイツで実際行われたベルンハイト作戦に従事していたブルガーが書いた作品の映画化作。
 このような作戦が実際に行われていたことは本作で初めて知ったが、なるほど戦争中にはあって然りの作戦だし、舞台がドイツだけにその作戦にユダヤ人を用いると言うのも説得力がある。歴史の裏側を見せてもらった感じである。
 しかし本作の場合は、そう言った歴史的事項や起こった事実よりも、主人公のサリーの心の動きが重要だろう。
 彼はユダヤ人だが、名前を本来のソロモンではなく、“サリー”と言っていることから、当初ユダヤ人としてのアイデンティティを失っている人物として描かれている。行動もドイツ人と何ら変わりないし、ユダヤ人以外の異邦人と寝ることもまったく頓着しない。実際ユダヤと言う国はこの時点ではなく、「俺はユダヤ人だ」と主張すること自体がほとんどの場合マイナスでしかないのだし、本人も自分の生まれを恥じているようなところがあった。
 そんな彼だから、収容所に送られても、ほかのユダヤ人が飢えることを承知で平気でドイツ人に取り入って、自分だけは結構な生活をしていても何の心に負い目を持っていない。
 それが変わってきたのはベルンハイト作戦を通して。
 彼の性格は変わらず、自分が快適な暮らしが出来るよう取り図ろうとするが(ヘルツォークの隠した贋札の隠し場所をしっかりチェックしてたりもする)、作戦で芽生えた仲間意識が入ってきたため、自分だけでなく作戦に従事している全員の事を要求するようになった。これは一人よがりでは何事も立ちゆかないための妥協とも考えられるが、そこで仲間の死や、そこでユダヤ人のアイデンティティに固執する仲間との出会いが少しずつ彼を変えていく。
 収容所の中で死にかけた仲間をかばうのはその短的な例だろう。
 だが、それらの変化は、平和な時代が来たら元の生活に戻るという前提のもの。実は真の意味で彼が自分がユダヤ人であることを認識したのは、皮肉なことに収容所から出された時のこと。これまでと同じ生活が出来なくなった自分を発見してのことだった。
 自分自身が何者であるのか。それを知ることが人生の目的とするならば、サリーは現実を通してそれを見つけることが出来た。その人間的成長を描くことが本作の重要な点だったのかもしれない。これまたユダヤ人収容所を描いた
『シンドラーのリスト』(1993)のシンドラーに通じるものがここにはある。本作は歴史的事実を通して人間の成長を描いた作品として考えるべきだろう。

 ところで本作の事を調べてたら、原作者のブルガーはサボタージュを主張し続けていた人。ちょっと格好良く描き過ぎてる気がするんだが…自画自賛?

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