歌ふ狸御殿 |
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木村恵吾(脚)
宮城千賀子
高山広子
草笛美子
楠木繁夫
美ち奴
大河三鈴
豆千代
雲井八重子
伊藤久男 |
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★★★☆ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
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かちかち山では、年に一度の狸祭りが催されようとしていた。特に今回は適齢期となった若殿の狸吉郎(宮城千賀子)が嫁探しをすると言う事で、若い狸娘たちは皆色めき立っていた。そんな中、意地悪な継母と姉狸のきぬたに虐められて過ごしているお黒(高山広子)は、汚い着物しかもらえず、しかも母から無理難題を申しつけられ、狸祭りにも行けそうになかった。そんな彼女の前に木蓮の精が現れる。かつて切り倒される寸前であった白木蓮を救ってくれたことの恩返しにと、木蓮の精は彼女に素晴らしい着物を着せ、狸祭りに送り出すのだが…
なんだかんだで結構作られている“狸御殿”初期の作品。このシリーズで共通しているのは、擬人化された狸(というか、狸に扮する人間)の王様なりお姫様の結婚話。その最低ラインができていれば後は自由に作って良い感じ(2004年に鈴木清純監督が作った『オペレッタ狸御殿』も、ちゃんとそのフォーマットに則っている)。
本作はその初期の作品になる訳だが、実に興味深い作品に仕上がってる。
物語自体はグリム兄弟の「シンデレラ」の翻案で、意地悪な継母と義姉にいじめられていた健気な女性の嫁入りを描いただけの話で、それを純日本的な雰囲気で仕上げただけの話になるが、これが作られた時代を合わせて考えると面白い。
本作が作られたのは1942年。日本は太平洋戦争に突入し、映画も国策に沿ったものがほとんど。そんな中、時代背景から全く離れた純粋なラブコメっぽいものが作れたという、それだけで画期的な作品となっている。しかもこう言った擬人化作品だと、何らかの批判精神を付け加えているものだが、それもない。本当に純粋な物語として仕上げているのが凄い。私なんかの場合、映画には批判精神を持っていてもらいたいと思っているタイプだけど、批判しか出てこないような時代に無批判の作品を作るというのは、それだけで素晴らしいと思える(ただし、木村監督が1年後に37歳で召集されたのはその報復ではないかと言われる)。
更に、メインキャストが全員女性というのも見事。この時代だからこそ、本当に人物を生き生きと描けるのは女性描写だからなんだろう。
この時代にこんな楽しいものが作れた。それだけで充分と言えるだろう。 |
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