| ツィゴイネルワイゼン |
1980日本アカデミー作品賞、助演女優賞(大楠道代)、監督賞(鈴木清順)
1980ブルーリボン監督賞(鈴木清順)
1980キネマ旬報日本映画第1位
1980毎日映画コンクール日本映画優秀賞、脚本賞、撮影賞
1980報知映画特別賞
1980ヨコハマ映画祭作品賞、監督賞、技術賞
1981ベルリン国際映画祭審査員特別賞(鈴木清順) |
|
|
荒戸源次郎(製)
田中陽造(脚)
原田芳雄
藤田敏八
大谷直子
大楠道代
麿赤兒
真喜志きさ子
樹木希林
木村有希
玉寄長政
佐々木すみ江
山谷初男
玉川伊佐男
夢村四郎
江の島ルビ
中沢青六
相倉久人 |
|
| ★★★★★ |
| 物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
| 2 |
5 |
5 |
3 |
5 |
|
青地豊二郎(藤田敏八)と友人の中砂糺(原田芳雄)の二人は海辺の町を旅するが、そこの宿で小稲(大谷直子)という印象的な芸者と出会う。そして数年後、中砂は小稲そっくりの園(大谷直子二役)という女性と結婚し、青地を驚かせる。そして中砂は青地に1904年盤の「ツィゴイネルワイゼン」のレコードを聴かせる…
1977年の『悲愁物語』に続く鈴木清順監督復帰第2作。1904年に録音された「ツィゴイネルワイゼン」のレコードに作曲家サラサーテの音声が入っているという内田百閒の「サラサーテの盤」にインスパイアされて作られた作品。東京タワー駐車場にテント劇場を建て、自主上映という形で公開されたが、映倫の審査を受けずに公開されたにも関わらず大ヒットし、日本アカデミー賞まで受賞してしまった(黒澤監督の『影武者』がノミネート辞退したから、対抗馬がなかったというのも大きいが)。
映画の中には、時折本当にコメントに困る作品というのがある。
実際、改めて本作のレビューを書こうと思って考えてみたのだが、ストーリーのほとんどを覚えてない。いや、覚える以前にストーリーが最初から分からない。改めてネットで検索してストーリーを調べてみても、「あれ、そうだったっけか?」とか思ってしまうほど。実際思い出されるのは大谷直子が何回も出てきて濡れ場をやってる事くらいしかストーリー部分で覚えているのがないのだ。
だが、ストーリーは覚えてなくとも、画面の一つ一つは鮮明に頭に焼き付いている。怪談もののような暗い画面が一転して人工的な鮮やかな色彩に彩られる画面転換。まるで呪いのように繰り返し繰り返し現れる浮浪者や子供のイメージ。大谷直子の妖艶さと、彼女の纏う赤い襦袢。骨の素晴らしさを語る原田と、それに合わせてコリコリと鳴る骨の音。そしてツィゴイネルワイゼンの曲の中に出てくる不協和音…視覚、聴覚に訴えるイメージに関してはこれほど鮮明な作品もない。極端な作品である。
幻想に彩られた画面を縦横無尽に見せつけてくれるカメラワークの素晴らしさもあって、画面映えは凄まじいものがある。
何というか、鈴木清順監督は、この作品からストーリーを捨てたのではないかと思えてしまう。映画とはイメージを伝える手段であり、そのイメージに物語を従属させてみる。そんな試みのような機がするのだ。そして本作の成功以降、鈴木監督は同じようにイメージ先行の作品を作り続けたのだが、トータルで考えてみると、やっぱり本作が一番完成度が高かったように思える…問題はどういう意味で“完成度”と言うのかということだが…やっぱりこれも“イメージ”としか言えない。
いずれにせよ、悪夢描写が大好きな私としては、本作は見事なほどのツボでありながら、しかし何が素晴らしいのか、全く言える手段を持たないという…珍しい作品ではある。少なくとも、私の持論“映画は衝撃だ”というのは、本作において見事に言い表されているのは確かだ。
それまで映画作りが出来なかった十年間の鬱屈を全て晴らすように、一切妥協しないという創作態度で挑んだこの作品は、国内外で高く評価された。またこの受賞を機に清順が世界的に知られるきっかけとなった。 |
|
|