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福井晴敏

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機動戦士ガンダムUC
終戦のローレライ
月に繭 地には果実
亡国のイージス

機動戦士ガンダムUC

08'02'03 ユニコーンの日(上) 機動戦士ガンダムUC1
 顔も知らぬ父親からアナハイムの研修生として送られてきたバナージ。学業やアルバイトに忙しいがそれなりに充実した日々を送っていたが、彼がある日コロニーのアルバイト先で宇宙を飛ぶ白いモビルスーツを見かけ、その直後に一人の少女がコロニーに突っ込んでくるのを発見する。思わず彼女を助けるバナージだが、それが彼女オードリーと、謎の組織“袖付き”との関わりとなっていく…

 小説で展開するオリジナルのガンダムシリーズ開始。時代としては「逆襲のシャア」と「閃光のハサウェイ」をつなぐ位置にある話となっている。この時代にした理由は?推測が正しければ多分オードリーの年齢にあるんだろうね。話の展開としてはガンダムというよりは「マクロス」っぽくもある。
<A> <楽>
08'02'21 ユニコーンの日(下) 機動戦士ガンダムUC2
 アナハイムの創始者であるビスト家の現在の当主カーディアスは、これからの地球の運命を握るとされるラプラスの箱を委譲すべく、反政府組織「袖付き」と交渉に入っていた。それを事前に察知した連邦はネエル・アーガマをアナハイム・インダストリアルへと向かわせていた。そんな中、自分の手をすり抜けていったオードリーを思い、内心穏やかではないバナージだが…

 バナージが実はカーディアスの息子であること、そしてそのカーディアスから成り行きでユニコーン・ガンダムが手渡されるまでが描かれる。マニアックな戦闘描写は流石といえるが、ただ文章が大変読みにくいのが一つの難点か。ちょっと思いが先行しすぎてるんじゃ無かろうか?
<A> <楽>
08'09'28 機動戦士ガンダムUC3 赤い彗星
 バナージは起動したユニコーンや仲間達、オードリーと共にネェル・アーガマに収容される。だがユニコーンを狙うネオ・ジオン軍によって艦は危機に陥ってしまう。“赤い彗星の再来”と噂されるネオ・ジオンの精神的指導者フル・フロンタルが迫る中、オードリーの秘密が明らかに…

 いかにもシャアっぽいフル・フロンタル(本人かもしれないが)の初登場と、オードリーの秘密と言うことでこの巻は終わってしまった感じ。わざわざこんな不便な時代に話を置いたのは、結局この二つの事を描きたかっただけなんじゃないのか?
<A> <楽>
09'02'04 機動戦士ガンダムUC4 パラオ攻略戦
 ネオ・ジオンに捕らわれてしまったバナージとユニコーンは、その駐留地パラオで徹底的な検査を受けさせられる。だがそこで分かったのは、ユニコーンのNT-Dが発動する度にラプラスの箱の在処が少しずつ分かってくると言う事実のみ。一方ユニコーン奪回のため無謀とも言える特攻を命令されたネェル・アーガマでは、リディがミネバを救おうと一つの考えをめぐらせていた。

 一旦ネオ・ジオンに捕らわれたバナージが再びネェル・アーガマに戻るまで。というフローとしては単純な物語だが、「Z」、「ZZ」、「逆シャア」に登場する人物やモビルスーツが次々と登場してくるのは、読んでいてなかなかの爽快感あり。「ZZ」の最後、華々しく散っていったプルの妹たちに生き残りがいたってのも、設定的にぐっと来るものがある。
<A> <楽>
09'04'12 機動戦士ガンダムUC5 ラプラスの亡霊
 ユニコーンが指し示した座標は宇宙世紀の始まりを告げたシャトル《ラプラス》の残骸だった。上からの命令で無理矢理それにつきあわされることとなったネェル・アーガマだが、それはネオ・ジオンのフル・フロンタルも知るところでもあった…

 宇宙世紀の始まりと80年代とが結びつく。と言えば聞こえは良いのだが、基本的に話は全然進んでないという問題があり。一体この謎が明らかになるのはいつになるのか。
<A> <楽>
10'10'19 重力の井戸の底で 機動戦士ガンダムUC6
 軌道上から地球に落ち、燃え尽きようとしていたユニコーンを助けたのは、何とネオジオン軍のジンネマンだった。生きるために行動を共にするバナージは、いつしかその人柄に惹かれていく自分を見つける。一方オードリーを首尾良く地球へ連れてきたリディはそのままブライトのロンドベル隊へと組み入れられる。そして二人は導かれるように、ユニコーンシステムが次に示した地ダカールへと向かう。

 バナージとリディ二人の視点で描かれる「ガンダム」正伝の物語。立場によって正義は変化し、殺し合いをしていたもの達が次の瞬間手を結び、一緒に戦った戦友に銃を向ける。残酷な設定と、いくら離れていても常に遭遇してしまう主人公達。バランスはなかなかに面白い。
<A> <楽>
11'01'02 黒いユニコーン 機動戦士ガンダムUC7
 もう一機の黒色のユニコーン、《バンシィ》によって連邦軍に捕らわれてしまったバナージ。一方ビスト財団はミネバがリディの実家にいることを知り、圧力をかけて身柄を拘束していた。そして二人をまとめて宇宙に送り出すべく、その搭乗艦に選ばれたのは、ブライトが艦長を務めるラー・カイラム…

 多くのキャラが一堂に会した話で、それぞれの思惑からあっという間に敵味方に分かれてしまう。連邦もジオンもごちゃごちゃに自分たちの主張をしているため、バナージの立場も分からなくなっていく。とりあえず最終的にミネバはバナージについたため、これまで友好関係を保っていたバナージとリディは仇同士になってしまったようだ。
<A> <楽>
11'04'17 宇宙と惑星と 機動戦士ガンダムUC8
 ジンネマンらネオ・ジオンの残党を乗せた連邦のネエル・アーガマは、ユニコーンが示す次の座標シャングリラを目指す。一見艦内は平穏を保っているように見えたが、ジンネマンは密かにある計画を遂行しようと画策していた…

 もはや組織も人も、一体誰が味方で誰が敵なのか全く分からない状況に落ち込んだ。義理と野望と恨みが渦をなし、その中で翻弄されるだけのバナージ。終盤に向けますます混乱の度合いが増しているが、その中で信じられるものが何かを見つけていく事になるのだろうか?
 状況的に「Zガンダム」の後半っぽいな。
<A> <楽>
11'05'26 虹の彼方に(上) 機動戦士ガンダムUC9
 ラプラスの箱の在処を最終的に示した座標。それはかつてバナージとオードリーが出会った始まりの場所インダストリアル7だった。だがその最終座標には先行したフル・フロンタルのネオジオン軍が手ぐすね引いて待っていることが明白だった。少ない現存へ威力で突破を余儀なくされるネェル・アーガマだが…

 全編戦闘シーンというクライマックスに至る前編。ハリネズミのような武装のユニコーンが次々にモビルスーツを破壊していくシーンは大いに溜飲が下がる。ただその分物語は全く進んでいないので、次巻に期待と言ったところか。
<A> <楽>
11'06'16 虹の彼方に(下) 機動戦士ガンダムUC10
 バナージとオードリーの手により、ついにラプラスの箱は開かれた。そこにあったのは、宇宙世紀が始まった時に刻まれ、そして歴史から抹殺されたオリジナルの宇宙憲章だった。だが、そこに書かれている一文を後悔されることに危惧を覚える者達により、インダストリア7はコロニーレーザーグリプス2の射程に入れられていた。その発射を止める術がないことを悟ったバナージは、無謀とも言える決断を下す…

 最終巻。バナージとフルフロンタルの対決と、フルフロンタルの正体。ラプラスの箱の内容、そしてサイコフレームの威力と、見事に風呂敷を畳んでくれた。映画『逆襲のシャア』を踏まえ、その意趣返しをしたいと言うのが著者の目的だったのかも?終わり方も綺麗だが、綺麗すぎるような?
<A> <楽>
 

 

終戦のローレライ

05'11'16 終戦のローレライ1
 既に敗戦を迎えたドイツから日本へと亡命してきた一隻の潜水艦。日本で伊507と名付けられたそれは秘匿されたシステムを搭載しており、日米決戦を左右するものとされた。そしてそのために集められた潜水艦乗り達。その中には特攻のために集められた士官学校を出たての折笠征人と清水喜久雄がいた。

 映画の方を先に観て、原作を読みたくなったので開いてみたが、映画と較べても、もっと人間の心情奥深くに入り込んだ描写と、マニアックな兵器描写などもあり、なかなか読み応えのある作品に仕上げられている。一巻である本作は映画では全く語られなかった部分が描かれていて、その辺も興味深い。
<A> <楽>
05'12'17 終戦のローレライ2
 折笠征人の乗り込んだ伊507の最初の任務は、先の追跡劇で投棄した秘密兵器“ナーバル”の回収作業だった。敵潜が待ちかまえているのが明らかな海域に艦長絹見は回収放棄を決定するのだが、“ローレライ”主任のフリッツは断固回収を主張。ついには折笠を拉致してまで海底探索を命じる…

 1巻丸々使って伊507の発進までが描かれたが、いよいよここで主題のローレライに関する話へと移ってきた。著者の描き方は一巻ごとに主題を決め、伏線をばらまきつつ一旦話を収束させるというものなのだろう。なかなか興味深い描き方だが、そのためちゃんと一巻ごとに見せ所が用意されてるのは上手い。
<A> <楽>
06'01'19 終戦のローレライIII
 アメリカ軍の追撃を振り切り、とりあえずの目的地であるウェーク島へとたどり着いた伊507だったが、休む間もなく次の指令が下った。アメリカへの特攻というのが指令内容だったが、実はこれこそが本作を発案した浅倉大佐の張り巡らせた罠に他ならなかった。何も知らされずに繰艦していたクルーは、恐るべき事実を知らされることに…

 いよいよ本式に物語に入ってきたが、これを知ると、改めて映画はよくこれをまとめたものだと思える。本巻のイベントもかなり端折られてはいるけど、出来るギリギリの所まで演出していたようだ。小説版としても完成度は高い。
<A> <楽>
06'03'19 終戦のローレライIV
 テニアン島から東京に向けて原爆搭載機が発進しようとしていた。なんとしてもそれを止めようと伊507はまっすぐテニアンに向かう。だが、その前にはあらかじめそれを予測したアメリカ海軍によって鉄壁の守りが固められていたのだった。罠と知りつつ、更に搭載兵器も限りがある状態でそこを突っ切るしかない伊507。そして最後に征人とパウラに与えられた任務とは…

 いよいよクライマックス。大局を見据えつつ、敵味方のお家事情から個人的な繋がりまでをきちんと見せ、ストーリーに破綻を起こさせない著者の筆力が冴える。特に盛り上がりにかけて、武器のない状態でどうやって攻撃をするか、時間の描き方とアイディアは本当に見事。映画版との終わり方は随分違っているけど、これも又良し。
<A> <楽>

  

月に繭 地には果実

06'07'29 月に繭 地には果実 上
 最終戦争の後、人類が滅亡を逃れてから長い長い年月が経った。人類の一部は月にその居住地を定め文明を守り、地球では全ての科学は一旦封印され、人類は改めて文明を進化させようとしていた。

 月に住んでいた孤児のロランは地球調査のため地上に降ろされ、そこで鉱山の職を得ていた。その後二年の歳月が流れ、ロランが地上の生活に慣れてきた丁度その時、突然月からの移植団が軍隊を引き連れてやってきた…
 アニメ機動戦士ガンダムの、言わば最終章という位置づけで富野由悠季監督が作り出した「∀ガンダム」のノベライズ版。富野監督は小説も書いているけど、やっぱり餅は餅屋。実力のある小説家に書いてもらってこそ本当に映えるというものだ。
 この作品は随分前に「∀ガンダム」という名前で刊行されていたはずだが、その当時福井晴敏という小説家自体知らなかったため、「どうせたいしたこと無かろう」とスルーしていて、今頃になってようやく読むことが出来た。
<A> <楽>
06'08'14 月に繭 地には果実 中
 ムーンレイスでありながら地球のミリシャとして自分の意志とは裏腹に戦いを続けねばならないロランにもう一つ気がかりが出来た。ディアナカウンターとミリシャの戦闘の巻き添えでキエルとディアナが入れ替わってしまったことを知ってしまったのだ。キエルとして振る舞うディアナはともかく、ディアナを演じなければならないキエルには凄まじいプレッシャーがかかっていた。そんな中、ディアナアカウンターが独立国を建国するという噂が…

 一巻はロラン中心の話だったが、ここでは政治レベルの話が中心となり、必然的にディアナとキエルの行いが中心となっていく。この辺はアニメ通りなのだが、それをここまでバランスの取れた小説として仕上げた著者の力量にはただ感心するばかり。上手い作品だ。
<A> <楽>
06'08'22 月に繭 地には果実 下
 ディアナカウンターとミリシャの戦いは互いに地上で発掘された核兵器と細菌兵器を双方が使用するに到り、泥沼の様相を呈してきた。そんな中でディアナカウンターからも見捨てられたディアナはグエンの力を借りて月へ戻り、全てを元に戻すことを決意する。発掘された宇宙船ウィルゲムによりついに宇宙に出る事に成功したが、月は月で、ディアナを亡き者にしようとアグリッパが待ちかまえていた。その中で徐々に明らかになっていくターンAの能力と、否応なしに戦いの中心に巻き込まれてしまうロランだったが…

 下巻の本巻でアニメ版とは大きくストーリーは違ってきた。シャレにならない被害と、憎しみ合い。その葛藤を経、大きな犠牲を払いつつようやく平和が得られるという、言わば著者の最も得意とする土俵へと引き込んだようだ。私はアニメ版の終わり方が好きだが、これはこれで大変面白い作品に仕上がっている。それにしても細菌兵器の中に“GUSOH”が入っているのは実に著者らしいところ。
<A> <楽>

 

亡国のイージス

05'09'14 亡国のイージス 上
 日本初の改装イージス艦である“いそかぜ”は訓練航海に出航した。いそかぜの調整役とも言える先任伍長である仙石は、新任の幹部達や士官達の調整に四苦八苦していたが、彼は新任海士の如月行という不思議な男を見る。誰ともうち解けようとしない如月が気になる仙石だったが、いそかぜは艦長の宮津の下、既に航海が始まっていた。丁度その時、内閣府直属のダイスは大きな決断を強いられていた…
 映画『亡国のイージス』(2005)の原作で、著者のデビュー作。友人からお借りした作品だったが、大変楽しむことが出来た。特に映画の後に読むと、色々と映画で気になったシーンが「こういう意味だったのか」と補完されるので、その過程が楽しかった。物語としても大変骨太で、緊張感が持続するのも興味深い。これがデビューとはねえ。
<A> <楽>
05'09'18 亡国のイージス 下
 宮津艦長とホ・ヨンファによって奪われたイージス艦“いそかぜ”。強力な毒ガスGUSOHを手に日本政府を脅迫するヨンファ。死を賭していそかぜに残った仙石と如月の二人はかつての上司達と北朝鮮の工作員達を相手に孤独な戦いを余儀なくされるのだった。

 物語はハードだが、展開自体は軽快に進むため、一気に読ませてくれる。色々皮肉もこもってるよ。しかしGUSOHに関しては、あのオチはあまりに意外。映画版がこれを変えた理由はよく分かった。
<A> <楽>

 

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