02'11'05 |
N・P
アメリカに住む高瀬皿男という男によって描かれた97編の短編小説「N・P」。これは著者を含め、この作品に関わった者は次々に自殺していくという曰く付きの作品だった。かつてこの作品の翻訳にあたり、自殺した庄司という男を昔の恋人としていた風美は、時が経ち、高瀬の双子の遺児、咲と乙彦が同じ町に住んでいることを知る。二人と、乙彦の恋人の萃と知り合いになった風美の不思議な日常を描く作品。
著者の作品とはご無沙汰だったが、とにかくこの人、日本語の使い方が巧い。決して正しい日本語というわけではなく、むしろ簡略化したような文体なのだが、これが不思議なほど見事に場面を描写しており、誰にも真似が出来ないバランスを持っている。
本作はかつて読んだ作品と較べ、随分と雰囲気が変わった感じだが(今までのような透明感が無くなり、かなりドロドロした人間関係を描いている)、相変わらず著者にしか描けない見事な文体は健在で、傑作と言って良い作品だと思う。 |
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