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紅茶の話8

紅茶の話 その43  今日はちょっと変わった紅茶の飲み方のお話。

 紅茶やコーヒーを飲む時、みなさんはどうしているだろうか?
 カップは勿論必要なのだが、それ以外のものを使う事があるかどうか。
 私の場合は一人で飲む場合は基本的にカップのみ。何せカップが大きいので、それに合うソーサー(受け皿)は無いし、あったとしても一人で飲む場合は気取る必要性が無いのでそのまま飲んでいる。
 しかし、お客さんが来た時なんかは話が違っている。迎えるという意味もあって小さめのカップを使うし、それに合わせてちゃんとソーサーを出すし、スプーンも置く。ストレートで飲ませるのでなければ砂糖もいる。レモンやミルクなどを添えるのも、いかにも紅茶っぽくて良い。
 ところでこのソーサーだが、紅茶を飲む際、カップやスプーンを置くと言う以外に用法があるのをご存じだろうか?
 イギリスの方では一時期トラディショナルとなった方法らしいが、このソーサーを用いて紅茶を飲むと言うのがあったそうだ。
 先ずソーサーに置かれたカップに、ミルクピッチャーからたっぷりとミルクを注ぐ。そしてよくスプーンでかき混ぜてから、スプーンをテーブルに置き、ソーサーごと持ち上げる。それでカップの紅茶をソーサーにこぼして、そのソーサーから紅茶を飲むと言うもの。
 つまり、
片手に紅茶のカップを持ち、もう片手にソーサーを持って、ソーサーの方に口を付けて紅茶を飲むことになる。
 …これがトラディショナルとはとても思えないし、ましてや日本でそんなことを公式の席でやろうものなら、顰蹙の目で見られるだろう。しかし、一時期とは言え、イギリスではそれがトラディショナル・マナーだったと言う。お茶会にはみんなソーサーからずるずると紅茶を啜っていたのだろう
(ちょっと表現が悪いな。やっぱりこれにも作法があったと思われる)
 どこかの本でこのことを読んだ時は妙な習慣があるもんだけど、半ば
ホンマカイナ?とか思っていたものだが、複数の文献に書かれていたからどうやら本当らしい事が分かった。今はどうだか分からないけど、20世紀初頭まではこれをやってた人も結構いたらしい(「1984年」や「動物農場」の作家ジョージ=オーウェルは無類の紅茶好きでも知られるが、殊更この飲み方を好んだと、ある伝記に書いてあった)
 更にアニメで
「赤毛のアン」(勿論日本製のアニメだ)を観ていた時、マリラが全くそのやり方で紅茶を飲むシーンがあった。あのアニメ、元から質が高いと思ってたけど、このシーンを目にした瞬間、私の中での評価は極端に跳ね上がったもんだ

 そんなもんで大分前に一回、自分でもやってみた。
 …やっぱりというかなんというか、変な飲み方だったので、
一回こっきりでもうやってない

 これについて日本人を揶揄するジョークにもなってる
(何故か全然違う本で3度も目にしたから、かなり有名なジョークなんだろう。人と時代は違えど、三つとも日本人についてだった)
 大正時代(この辺は脚色が多いらしく、戦後になってるのもあった)にイギリス王室に招かれた日本の外交官(これも色々ヴァリエーションあり。多分その時々の日本の外交官や代議士がやり玉に挙げられるのだろう)が、王室の作法が分からずこちこちになってお茶の時間になる。彼(若しくは彼女)はトラディショナル・マナーが分からないので、お茶の作法は全部真似しようと心に決めるのだが、最初貴族が(エリザベス女王になってたのもあった)紅茶のカップを傾け、ソーサーに紅茶をこぼす。勿論日本人もそれに倣う。そして貴族は優雅にそこにミルクをたっぷりと入れる。日本人もそれを横目で見ながら真似をする。その後、貴族は砂糖壺を手に取り、少量ソーサーにこぼす。日本人もそれを真似する。
 そして、貴族は優雅な物腰で座ったまま上体を椅子の下に入れる。日本人はなんの疑問もなく、その格好を真似する。
 そして、貴族はテーブルの下で丸くなってる猫の前にそのソーサーを置く。

 …と、言うもの。私の書き方の問題もあるが、あんまり面白いジョークではない。少なくとも日本人向けではないな。
ティーカップ&ソーサー

赤毛のアン1   
      10 11
紅茶の話 その44  そう言えば今まで殆ど触れることが無かったが、今日は紅茶のメーカーの話をしてみたい(そもそも一番最初にやっておくべきでは?)

 紅茶のメーカーというと数多くあるが、日本では殆ど日東紅茶がそのメインとなってる
(実の話、私は大学の就職活動で真っ先にここを受けて見事に落ちた経験あり。本当に本当の話)
 ただ、日本においても紅茶というとイギリスのメーカー製品が比較的安価で売られているので、そちらの方で買う方も多いと思う。その中でいくつくらい挙げられるだろうか?思いつくままに挙げてみよう(今回は主にイギリスのもの)。
 
ブルックボンド。これはイギリスにおいて最大のメーカーで、1869年にアーサー=ブルックによって創立されたもの。日本では比較的少ないかな?大衆用の紅茶(つまりミルク・ティによく合う紅茶)を多く作っている。イギリスのティー・バッグの殆どはこのメーカーのが飲まれている。ちなみにここには中国茶がないので、私はこのメーカーの紅茶を意識して飲んだことはない(スリランカ茶あたりだったらどこかで飲んでるんだろうけど)。この高級版としてアーサーブルックというのもある(これは完全に未飲)。
 
ウィッタード・オブ・チェルシー。1886年に創立したメーカーで、非常に良心的なメーカーとして知られる。ここのキーマンはおいしいという話を聞いたことはあるのだが、残念ながら未飲。
 
ウェッジウッド。日本でも比較的手に入れやすいメーカーの一つ。ただ、キーマンの味に関してはあんまりお勧めではないが、ピーター・ラビットをあしらった缶はセンスが良く、贈り物用にはピッタリ。
 
フォートナム・アンド・メーソン。これは日本でも高級茶としてデパートの地下などでよく見かけるメーカー。本店はロンドンのピカデリーにある総合食料品店。紅茶のみならず、ジャムなどでも有名。紅茶缶は特徴のある緑色。高級茶と言うだけあって、それなりに値段は高いが、味としてはおとなしめ。最近は殆ど買うこともなくなった。
 
ハロッズ。これも高級茶としてデパートなどでは定番。有名なデパートとして日本でも知られているが、元々は紅茶店。ここの紅茶は缶入りと密封パック入りがあり、密封パックの方が安いので、買う時は専らこっち(昔日本でも某デパートで量り売りしてくれるところがあったが、随分前に私自身が引っ越ししてしまったので、今もあるのかどうか、少々疑問)。ここでのキーマンは非常に味が鮮烈。淹れ方をちょっと間違えると苦くなる。チャレンジし甲斐のあるメーカーだ。
 
ジャクソン。紅茶のメーカーとしては古い伝統を持つメーカーだが、このメーカーが有名になったのは、中国茶とインド茶のブレンド・ティであるアール・グレイ(直訳すると「グレイ伯」だが、それはこの紅茶の秘伝を持ち帰ったグレイ伯爵にちなむ)を最初に売り出したから。ここの紅茶も純正の中国茶は見たことはない(あるのかな?)
 
リプトン。日本では古くから最も有名なメーカー。日本で飲まれるティー・バッグのかなりのパーセンテージを誇るが、元々は高級茶として日本に最初に持ち込まれていた。戦前の日本で飲まれていた紅茶の大部分はこれ。いわゆる青缶と呼ばれるスリランカ茶が最も有名。私が紅茶飲み始めた頃はこれをよく飲んでいた。
 
メルローズ。スコットランドにある伝統的な紅茶店で創立は1812年。記憶では一度だけここのキーマンを買ったことがあるが、記憶が薄いので、さほど特徴のある紅茶ではなかったのだろう。
 
リッジウェイ。これもイギリスの老舗。創立は1830年。缶の形状も他のものとは異なり、高級感溢れる感じを受ける。特に王室御用達と呼ばれるだけあって、キーマンは現時点ではこのメーカーのものが一番だと思う…が、しかし、一体どこに売ってるのかが分からない。インポート店で一軒だけ、昔見つけたことがあるばかり。ちなみに最近では高級ティー・バッグのメーカーとしても結構有名になっていて、こっちは比較的手に入りやすい。
 トワイニングス。日本でイギリス紅茶と言ったら、一番親しまれているだろう。昔はCMでもよく流れていた。創立は1706年で、イギリスに紅茶が輸入され始めた最初期に出来たメーカーで、このメーカーはイギリスの紅茶の歴史そのものとまで言われている。ブレンド茶も数多くある。このメーカーのキーマンが、私のキーマンとの出会いとなった。何せ一番手に入れやすいので、今でも時折飲む。
 
ロイヤル・ドルトン。高級茶として売られているらしいが、私は未飲。ただ、あんまりこれが「おいしい」と言った噂は聞かず。
 
テトレー。主として大衆用紅茶のメーカーで、ブルックボンドと並んでミルク・ティ用の紅茶を多く販売している。
 この辺がイギリスのメーカーだが、これ以外にも
ロイヤル・コペンハーゲン(デンマーク)、マリアージュ(フランス…これはひょっとして日本?)、フォション(フランス)、レピシエ(フランス)、ゴディバ(ベルギー)など、探せば色々出てくる。
 データの裏付けを取るためにネットを巡ってみると、いかに世界の紅茶というのが奥深いものか、正直圧倒されてしまった。日本にも
「キームンジャパン」なるメーカーを発見。ちょっとネットショッピングして一パックほど買ってみようかと思ってる。
ブルックボンド

ウェッジウッド

フォートナム&メイソン

ハロッズ

ジャクソン

リプトン

メルローズ

リッジウェイ


トワイニングス

ロイヤル・ドルトン

マリアージュ

フォション

紅茶の話 その45  今日も中国茶の話。今回購入して飲んでみたのは名間四季茶(ミンシェンスーチーチュン)というやつ。これは台湾の青茶だが、とても響きが良いので、どんな味かと思って買ってみた。
 四季茶という名前はちゃんと理由があって、この茶葉は非常に成長が早く、通常の農閑期である晩冬や新春にも茶葉が摘めるので、四季を通じて茶が摘めるって言うのが理由。その分生産量が多いので、日本にもかなり入ってきてるようだ。
 春夏秋冬の茶があるが、やはり寒い時期に摘まれたものが一番高級らしい。実際、厳しい気候で育った茶葉がおいしいというのは通説となってる。私が購入したのは新茶の冬茶。
 それでまず一煎。
 
うわ。よく出るな。ってのが最初の印象。極めて緑茶に似た味だ。萎凋(いちょう)が短いためなんだろう。それにしてもこの味って確かに青茶のものに違いないけど、日本茶っぽさも感じる。ちょっとえぐみも感じるが、すっきりした青茶の中では比較的味わい深い。
 それで二煎目淹れてみる。
 今度はかなり薄くなってる。淹れ方を少々間違えたか?
 これはチャレンジし甲斐のあるお茶だ。是非本当においしく淹れて飲んでみたい。
 …と言うことで、本当においしくなったら、又リポートさせていただこう。

 …えー、それで追加なのだが、私は
大きな間違いを犯していたことに気付いた。
 最初に淹れた時、茶葉があまりにも多すぎたのだ。そりゃ確かに東方美人と同じ感覚で茶葉を入れて淹れると、茶葉が多くなりすぎる。当たり前のことだ。
 それで適正な茶葉の量が分かってから改めて、レポートさせていただくと…
 
「見つけた!」
 だった。
 無茶苦茶好みの味だよ。青茶らしいすっきりした味わいだけでなく、緑茶の渋さもやや入っていて、更に後味がほのかに甘い。いくつかの中国茶はこれまでも飲んできたけど、これほど好みの味は今まで無かった。しかも3煎まで充分飲める。値段の安さもあり(
それでも100グラム1200円くらいするけど)、これにはまりそうだ。

 思い起こせば、キーマンを最初に飲んだ時と似てるよ。正直これは絶対駄目だと思ったものだ。100グラム缶を一缶飲み終えた時にはすっかりファンに変わってたけどね(笑)…あの時、何気なく淹れて飲んだ瞬間感じた甘さは、本当に衝撃だった。今回のもかなりそれに近い。
四季茶
紅茶の話 その46  だいぶ前にロイヤルミルクティの話を書いたことがあった(その15)。これはイギリスでは飲まれてないとも書いたのだが、相変わらず日本では普通に「ロイヤルミルクティ」という名前で売られている。
 それで私はそれに否定的なのか?と言われると、そうでもない
(そうでもなくなったと言うべきか?)。当たり前だが紅茶とは嗜好品なので、「こうしなければならない」というレシピはない。大切なのは自分の舌においしいと感じるかどうかであり、それが人気あるなら、それで良いじゃないか
 …と言うことで、ちょっとロイヤルミルクティについてちょっとだけ。
 日本では結構好まれるが、実はこれ、レシピはいくつかあるようなのだ。調べてみたら3つほどレシピが見つかった。
 
1つ目はポットで作る方法
 ポットで作ったら普通のミルク・ティとどこが違うのか?と言う話もあるが、作り方によって、これもロイヤルミルクティと呼ばれる。
 先ず茶葉の量は通常で、お湯の量を半分にして濃い紅茶を作る。その後、暖めた牛乳をそこにお湯と等量入れる…カフェ・オ・レと同じ方法なので、
ティ・オ・レとも呼ばれる。
 
2つ目は鍋で作る方法
 これは牛乳のみで作る場合と水と牛乳を等量入れる方法の二つに分かれる。
 作り方は同じで、一旦鍋に牛乳若しくは牛乳と水を入れ、沸騰直前まで煮て、その後茶葉を入れて蓋をする。その後漉していただく。
 個人的言わせてもらうと、牛乳のみで作るより、水と牛乳を等量に入れたものの方が味は多少すっきりしてておいしいと思う。
 
3つ目も鍋で作る方法
 一旦水を沸騰させてから茶葉を入れ、弱火で煮出した後、牛乳を加え、蒸らした後に漉していただく。これはむしろチャイに近い淹れ方…有り体に言ってしまえば、
スパイスを入れないチャイ
 お店でロイヤルミルクティを頼んだ時、これはどういう作り方をしてるか、舌だけで分かったらたいしたものだが、微妙にそれぞれ味が違うので、挑戦してみても面白いだろう。
 店で頼む紅茶はなかなか個性が出しにくいが、これに関しては同じ茶葉を使っても店のレシピで随分味が変わるので、楽しいもの。
 むしろ日本の独自のお茶の飲み方として、発展していってほしいものだ。
ロイヤルミルクティ
紅茶の話 その47  ここのところコーヒーも飲み始めたが(相変わらず味は分からないんだけど)歴史に関してちょっとだけ調べてみた(コーヒーが廻り世界史が廻る)。それで歴史的に見る限り、歴史に影響を与えたのはは紅茶よりもコーヒーと言うことが分かってきてなんかちょっと悔しいものがあるが(笑)、ここに面白いことが書かれていた。
 ほかのヨーロッパの各国と違い
、何故イギリスはコーヒーではなく紅茶を選んだのか。と言うこと。フランスではカフェ・オ・レ、イタリアではエスプレッソなどと、色々なコーヒーの飲み方があるのに、イギリスにはほとんどそれがない。今まで読んできた紅茶の本では、何故イギリスは紅茶を飲むようになったのかは書かれていても、何故コーヒーを飲まなくなったのかは書いてなかった。
 これを揶揄して
「何故イギリス人が熱心な紅茶党かは、彼らのコーヒーを飲めば分かる」などと言われることがあるそうだが(要するに、それだけイギリスのコーヒーは不味いってことなんだろうけど)、ちゃんと歴史的にも意味はあった。
 先ず何故他のヨーロッパ各国が紅茶ではなくコーヒーを受け入れたのか。
 それは単純な理由で、
輸入されるのが紅茶より早かったから。最も単純に言えばそれに尽きる。産地を考えてみればそれは明らかだろう。初期のコーヒーの輸出元は中東に限られていたのだが、それに対し紅茶は中国まで脚を伸ばさねばならなかった。明らかに距離的には中東の方が近い。
 中東では5C頃には既にコーヒーは飲まれていたそうだが、ヨーロッパに入ってきたのは実は意外に遅く、15Cになってから
(紅茶に先行すること100年ほど前)である。それまででも中東とヨーロッパを結ぶ交易地であるヴェネツィアでは細々と飲まれていたようだが、このコーヒーがヨーロッパに多量に入ってきたのは大航海時代の幕開けによる。
 大航海時代というと、イメージとしては大西洋の大海原に一隻の帆船が帆を翻して…なんて事になるかもしれないが、事実は先ず最も近いところから交易品になりそうなものをかき集めるところから始まった。
 ここに登場するのが新興国であるオランダである。オランダは中東のある港町を植民地としていたのだが、その港の倉庫には多量在庫のコーヒー豆が眠っていた。コーヒーは他の穀物類とは異なり、虫やネズミに食われることがないので、日持ちがして、その分多量のストックが港には積まれていた。これが頭を悩ませる種となった。交易品としても、ヨーロッパ人が飲まないものではどうしようもない上に、他に売れそうな産物が少なかったのだ。
 その港町の名前が
モカ。ここからこの多量在庫を売るためのオランダ商人の努力が始まった。
 商業の近代原理として、
「需要がなければ需要を作れ!」というのがある。オランダ人がとった方法はまさにそれだった。
 栄養素がほとんど無く、ネズミも食わないようなコーヒー豆だったが、これには一つ大きな強みがあった。コーヒーには
高い常用性があるのである。
 オランダは自国の海運ネットワークをフル活用してヨーロッパ中の港にコーヒーを運び込んだ。そして先ず自分たちが率先してコーヒーを飲むことから始めたのである。いったい彼らは何を飲んでいるのか?と興味を持たれたらしめたもの。一回飲んで「不味い」と思ったとしても、その味は忘れられなくなり、又飲みたくなってくる。これがその町の有力者だったりしたら、当然彼らは町中にこの飲料を広めることになる。
 これが大当たり。ヨーロッパ中はコーヒーを求めるようになり、オランダはバブル経済に大浮かれする結果となった。
 それで周りが海で囲まれているイギリスが実は一番最初にコーヒーのお得意様となった。そしてあっという間にヨーロッパ中で最大のコーヒー消費国となったのである…意外と思えるが、本当の話である。
 そしてできあがったのがコーヒーハウス。これは男しか入れなかったが、様々な階層の人々に開かれていた。コーヒーを痛飲しながら、夜通し語り合える場所となったのである。やがてコーヒーハウスはロンドン中に出来、男達はそこで政治談義を花開くことになる。
清教徒革命はこのようなコーヒーハウスから生じたと言っても良い
 だが、その乱立したコーヒーハウスの寿命はそう長くなかった。
 理由は
三つ考えられる。
 
一つは革命が成功した時点でその存在意義は充分果たされ尽くしたこと。やがてコーヒーハウスに集まり、意見を戦わせていた面々はそれぞれ自分たちの居心地の良い場所を求めるようになり、クラブへと発展していったのである。ここでもコーヒーは出されただろうが、むしろ酒が中心となっていくようになる。
 そして
二つめに、オランダに続き、イギリスが海運国になっていったこと。スペイン、ポルトガル、オランダというイベリア半島に独占されていた交易を、革命後のイギリスは目指すことになった。そうなると、オランダの独占品であるコーヒーを買い続けることに抵抗を感じるようになっていったのである。むしろコーヒーに変わるものを探し当て、それを独占することによって、そこからの収益を得ようと考えた(言うまでもないが、それが紅茶である)
 これら二つの要因は確かにあったものの、実はコーヒーをイギリスから閉め出した本当の原動力は他にあった。
 コーヒーハウスというのは、身分の区別なしに集まれる社交場として発展していったのだが、やはりそこには差別というものがあった。
 コーヒーハウスは男しか入れない場所だった。その結果、家を空け、毎晩のようにコーヒーハウスに行ってしまう夫を持った女性達が、とうとう怒り出したのだ。
 彼女たちは様々な攻撃をコーヒーに対して加えた。曰く、コーヒーは健康に悪い。これによって男達はやくたいもないおしゃべりをするようになった…しかし、その本当の意味は、
家庭で持つ夫婦の時間が極端に少なくなってしまったと言うこと。それに尽きた。このパンフレットに書かれていることを、やや失礼ながら引用させていただくと、「怠惰な木偶の坊たちは、今では馬鞍よりは拍車をほしがるのです。余分のお勤めを果たすことからは一切遠ざかり、わたしたちには彼らが、彼らの義務であり、かつ私たちの期待が要求するところの務めを果たすことが出来ようとは思えないのです」とある。これの意味するところは想像にお任せするが(だいたいこんなもの書いたのはたぶん男だろう)、いずれにせよ、彼女たちは家に帰りもしない夫をどれだけ軽蔑していたかがよく分かる記述であり、それをコーヒーの責任にしていたのである。
 これらの誓願を一笑に付すことも出来たのだが、議会は前述した二番目の理由もあって、これを認めた。コーヒーハウスを違法化して次々につぶしていったのだ。
 やがてコーヒーに変わる飲み物で、安価に手に入り、しかも家庭で簡単に作ることが出来る紅茶の方を広く男女とも受け入れるようになったと言うわけである。コーヒーと違い紅茶は家庭でみんなで飲むことが出来る。むしろこちらを常用させるようにして、夫が家にいるようにさせることに成功したのだから。
モカ
紅茶の話 その48  お茶の効用に関して前に書いたが(その7)、面白いニュースを見かけた。イギリスの英ニューカッスル大学の科学者チームによる報告(2004'10'25)で、「茶の飲用はアルツハイマーの予防になる可能性がある」とその研究成果を発表している。これはなんでもお茶の成分が記憶障害の原因となる物質の抑制に有効かもしれない。としている。
 尤もこれはあくまで「かもしれない」と言うレベルで、更に根本的な治療にはならないとされているが、お茶好きとしてはやはりなんか嬉しい気がする。
 しかし、果たしてこれだけ毎日お茶を飲んでる私が果たして記憶力の減退を招いていないか?と思うと、その辺は微妙。数十年後、私自身がアルツハイマーになったとしたら、あんまり効果がないと言うことになるだろう。
こういう人体実験だったらいくらでもやってやるよ

 元々お茶というのは薬用として用いられていたのだから、もっと明確な薬効があって欲しいとは思うのだが。