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紅茶の話

紅茶の話 その1〜20
紅茶の話 その21 何度も書いているが、私が好きなのは中国産の紅茶。だが、私の紅茶好きは知れ渡っているので、何かの折、よくプレゼントに紅茶を頂く。ただ、さすがに中国産の紅茶を持ってきてくれる人は少なく、大概はティーバッグとかが普通。そうでなくてもスリランカ辺りの紅茶が多い。そう言う紅茶は大概頂いた後で職場に持ってきて給湯室においておくのだが、先日家の台所を整理してたら、結構な量のリーフティが出てきた。それでちょっと考えて、これは飲むことにした。
 実は面白い紅茶の飲み方があって、久しぶりにそう言う淹れ方をしてみたら、美味しく淹れることができたから。
 実はチャイにして飲んでみた。
 チャイというのは茶葉を牛乳で煮立てる方法
(煮立て紅茶と違うのは、スパイスを入れる点)。やや手間はかかるが、ティーポットがいらないので、折角の中国茶専用にしたお気に入りのティーポットを使わなくて済む。
 一応チャイの淹れ方についても書いておこう。
 先ず小さめな鍋を用意し、カップ一杯程度の水を火にかけて沸騰させる。そこにスプーン山盛り一杯程度の茶葉を入れて大体5分くらい煮出す(ティーバッグでも可)。そこに水と同量の牛乳を(先に書いたが、ここでは低温殺菌のものを使う方が良い)入れてかき混ぜながら沸騰させる。
 牛乳が沸騰し、盛り上がりかけたところを見計らい、火を止めてスパイスを入れてから、それを大きめのティーカップに漉して入れる。(スパイスによっては一緒に煮た方が良い場合もある。タイミングは種々様々)

 チャイを淹れるコツはとにかく目を離さないこと。茶葉が鍋の底にくっついて焦げたりしないように、そして牛乳を入れた後で牛乳の脂肪分が固まらないように注意をする必要がある。だから牛乳を入れた時にはとろ火にしてかき混ぜ続ける。

 後はどんなスパイスを入れるか。これも結構選択肢がある。私が現在使っているのはシナモンスパイスだけだが、これも色々な種類があるらしい。残念ながらあまりたくさんは私も知らない。
 後一応。チャイはインドで飲まれている飲み物なので、本当なら茶葉はダージリンの屑茶を用いる。だが、これは何でも良い。逆にスリランカ茶は味そのものが素直に出来ているので、様々なスパイスに合いそうだ。
(チャイを作る場合、良い紅茶はあまりお勧めできない。むしろ安っぽい紅茶の方が絶対に美味しい)
 あと、これは出来るだけ甘くした方が美味い。砂糖をがんがんに入れて飲むべき。あるいはバターを溶かして飲むのも手。インドの高地民族のカロリー補給はこうして行うそうだ。
 まだチャイに関しては私は素人同然だから、これから時間があるときでも飲み較べてみようと思っている。

<付記>

 チャイ好きな人って、結構いるみたいで、ネット上の知り合いでチャイの淹れ方について教えてくださった人がいた。特に風邪の時など、生姜をスライスして茶葉と共に煮るのが良いのだとか。確かに、生姜は良いスパイスにもなるね。
この場合、合うのはやっぱりダージリンよりスリランカかな?チャイも色々奥が深そうだ。情報感謝!
紅茶の話 その22  先日チャイというホット・ティの飲み方を書いたので、今度はアイスティについて少し書いてみたい。
 夏の暑いときには冷たい飲み物が欲しくなる。紅茶は熱いだけでなく、冷たくしてもおいしく飲めるため、夏はアイスティの需要が多くなる。
 ただ、私個人としてはあまりアイスティを作ることはない。夏でも暑いのをちびちびと飲むのが私は好きなだけだけど
(喉の奥に熱い紅茶がぶつかる感触が好き)。でも、一時期本などを漁って、色々アイス・ティの作り方は試した時期があった。
 アイスティは作り方がかなり微妙なものがあって、家庭ではなかなか上手く淹れられない事が多い。失敗例で一番多いのは、紅茶が白っぽくなってしまうこと。
これをクリームダウンと言う
 紅茶を白っぽくしないと言うコツはある。
 アイスティにする紅茶は何でも構わない。フレーバー系のアール・グレイが日本では好まれるようだが、別段スリランカ茶でもダージリンでも、中国茶でも良し。自分の好きな紅茶で試してみると良し。
 淹れ方は、先ず普通の紅茶と同じように熱湯を湧かし、ティーポットを熱して紅茶を淹れる。ここでいつもより茶葉を多めに、お湯は少なくするのがコツ。お湯は大体通常の半分程度に抑えておく。
 それでいつもより長めに蒸らす。そして蒸らしている間に大き目のコップを用意し、そこに多量の氷をぶち込んでおく。
 そして蒸らし終わった紅茶を一気にそのコップに注ぎ込む
(氷で冷えたところを熱湯を注ぐわけだから、耐熱グラスを使うのが良いけど、今まで普通のグラスを使っても割れることはなかった)。この時の音が小気味良い。ぱちぱちと氷がはじけ、あっという間に溶けていく。わざと紅茶を濃い目に作っておくのは、ここで氷が溶けることで、味が均されるから
 実はアイスティで
クリームダウンが起こるのは、この時のお湯の温度変化によるもの。それも面白いことに、中途半端な温度だと起こりやすい。
 だから、それを避けるためにも、
ちゃんと熱湯とちゃんと冷えたグラスを使うこと。極端な温度変化の方が茶が変質を起こしにくい。
 グラスに入れる氷はクラッシュアイスでも良いけど、キューブアイスをお勧めしたい。
クラッシュアイスの方が冷え方は良いのだが、あっという間に溶けてしまうから、何となく見た目にあんまり面白くないと言うだけだけど。
 注意して欲しいのは、
グラスに入れる前に紅茶を冷やさないことと、紅茶の後に氷を入れてはならないと言うこと。こんなことをしたら、見た目に悪いものしか入れることが出来ない。必要なのは、極端な温度変化なのだから。ティーポットから茶漉しを通し、直接グラスに熱い紅茶を注ぐこと。これは鉄則。手間を惜しまないなら、冷えたところで一旦解けかかった氷を全部取り出し、新しい氷を入れる。それが面倒なら、単純に氷を足しても良い。
 それで飲むときはあまり時間をかけないように。あまりのんびり飲んでいると、氷が溶けすぎて味が薄くなるし、何故か放置しておくとクリームダウンが起きる。
このクリームダウンが何故起こるのか、調べてみたがよく分からない。どうやら紅茶の中のタンニンとカフェインとが結合して起こるようなのだが…
 だから多少でもゆっくり飲みたい場合は、ミルクを入れることをお勧めする。それと、淹れたものはきっちりと飲みきって欲しい。後で飲もうと残さないように。

 他にも水出しでゆっくりと時間をかけて淹れる方法もあるが、これは味は良くても、香りが全くしないものが出来てしまうため、あまりお勧めしたくない。正直、紅茶を飲んでる気分ではない。紅茶風味の何か違うものを飲んでいる気分。

 いずれにせよ、家庭用でアイスティを美味しく入れるのはなかなか難しいと言う事は覚えて欲しい。それで苦労して淹れた奴を一気に飲んでしまうのだから、
妙に虚しい気分になれるのは請け合う(笑)
紅茶の話 その23  先日ネットで紅茶について見ていたら(通販で何か買おうかと思って)、あるサイトでユンナン(雲南)茶と言うのが紹介されていた。
 知らない名前だった。しかも中国紅茶か。是非飲んでみたい。
 そこからは一度キーマンを買ったことがあり、サイトとしては信用できるので、ちょっと高かったけど、通販の申込みをした。
 それから数日。待っていた紅茶が到着!早速開封。
 茶葉の形はフルリーフだが、えらく色が薄い。ゴールデン・ティップという高級茶にはこう言うのがあると聞いたことはあるけど。
 まず風味。
 中国茶らしいちょっと癖のある、それでも私好みの香りがした。
 それで湯を立て、淹れてみて改めて香りを嗅ぐと、やはり中国茶っぽい感じ。ちょっと口に含んでみる。
 ん?
 今度はもう少し多めを口に含んで飲み込む。
 やっぱり。
 これは又、変わった紅茶だ。風味こそ、中国茶っぽいのに、味そのものはスリランカ茶にそっくり。ある意味非常に素直な、ある意味面白みのない味だった。
 前に書いたが、
スリランカ茶と中国茶は茶樹の系統が同じ。当然作り方によってはスリランカ茶のような中国茶が出来るわけだが、まさにこれはそのまま。

 もしこの紅茶を購入することがあったら、是非ミルクティで召し上がって欲しい。ミルクと砂糖の量を抑えて淹れるなら、とても風味の良い、美味しいミルクティが出来上がるはずだ。


 現在、この紅茶の消費のため毎日のようにこれを飲んでいるが、
微妙な条件が重なると、かなり美味しく淹れることが出来ることが分かった。
 いやはや、紅茶というのも奥が深い。
 
紅茶の話 その24  今回はちょっと紅茶にまつわる歴史の話。
 中国産のお茶がイギリスに渡り、そこでブレイクしたのは前に何度か書いたが、そのお茶はどうやって中国から輸出されたのか。
 勿論それは
港からに決まってる
 では、それはどこの港か。と言うと、これが香港である。と言うより、当時はほぼこの一港で全ての貿易は賄われていたらしい。だから随分色々な商品がそこにはひしめき合っていたわけだが、その商売の一つとして茶があった。
 香港には行ったことがないが、写真やテレビなどで見る限り、かなりごちゃごちゃしたところで、港と言っても、そんなに広いところでもなさそうだ。
 こんなところで様々な商売人が集まり、にぎやかな街を作っていたのだろうし、英国船が大挙して押し寄せ、われ先に茶を買い求める姿を想像すると、結構楽しくなる。きっと様々な国の言葉が飛び交い、時として怒号が発せられる。さぞかし活気のある風景だったに違いない。特に茶の輸出が始まってからは中国(当時は清)は輸出のお陰で右肩上がりの経済状況にあったので、もの凄い活気があったはずだ。
 茶を買い付けに来るイギリス人は競争のため、急いで本国に帰る必要があったので、船員の大部分は中国本土を知らず、無国籍状態の香港しか知らなかったことだろう。彼らにとっては清=香港のイメージを持っていただろうし、仲買人として香港に駐留する者達も多くいるから、彼らが常に香港に新しい風を入れていたに違いない。こう言うところを思い浮かべると、歴史のロマンを感じてしまう。
 それで終わっていれば、香港はにぎやかな港町で終わっていたはずだった。
 だが、茶の超過輸入のため、国内の銀が中国に流出し続けたイギリス本国にとっては、これは由々しき事態だった。
産業革命が進み、世界に冠たる大英帝国を築こうとしたイギリスの財政は火の車だった
 何とかして輸入一方ではなく、輸出する事で外貨を稼ぎたいと願って輸出品を探し、ついにインドで阿片を見つける。この阿片を中国に持ち込むことになるが、そこで使われた港も、やはり香港だった。今まで船に銀を積み込み、それを茶に変えて本国に運んでいたティー・クリッパー船が今度は、阿片を積んできて、帰りには茶と銀を積み込んで帰るようになるのに、あまり時間がかからなかった。今まで活気づいていた港も、麻薬が絡むと妙にイメージ的に陰鬱になってしまう(実際にやってた事は別段変わらないのだろうけど)。
 そして起きたアヘン戦争。これは香港が舞台となるイギリスにとって中国=香港だったのだし、この戦いは、結局イギリスにとっては香港という港を抑えることに意味があったんじゃないだろうか?
 その結果はお分かりの通り。
1899年に結ばれた条約によって、香港は100年もの間、中国の中にあるイギリスの領土となっていた
 茶によって豊かになり、そのために他国領となった香港。これも歴史の一コマだ。
香港映画は紅茶のお陰で作られた。と言っても良いかな?(笑)
(ちなみにこれ、資料無しで私の中にある雑学でのみ書いているので、間違えていたら、教えていただけるとありがたい)
紅茶の話 その25  先日ネットで購入したユンナン茶で失敗していながら、性懲りもなくネットで紅茶を購入した。今度の紅茶は安徽金毫茶と言う。多分知っている人は殆どいないはず。何せ今年初めて市場に投入された紅茶だ。
 中国茶好きとしては…
(その二十三で既に述べた)。しかし、その値段が結構凄かった。50グラムで2200円。私がいつも飲んでいるキーマンで100グラム通常800〜2300円程度(メーカーによってバラバラ)。つまり私が普通飲んでいる紅茶の優に倍はする値段だ。
 まあ、初物だったら話のネタ
(つまりこのコラムで書けると言うことだが)くらいにはなるだろうと思ってネットで購入。
 まずはパッケージを開けてちょっと驚く。何と茶葉が細いことか。金毫と言うだけはある
(金毫と言うのは、茶葉の本当の先っぽだけで作られた紅茶。極めて細い)
 それで先ずパックの中の香りを嗅ぐ。どこかで嗅いだような…気が付いた。最近スチールペットボトルで発売された
「中国緑茶」の風味によく似ているのだ。キーマンとはまるで異なる香り。
 さすがに茶葉が細いから蒸らし時間は相当に抑える必要がある。いつもの手順でお茶を淹れ、少し早めにカップに移す。水色(すいしょく)はやや薄目。
 香りはますます芳醇になっている。生っぽいと言うべきか。これが嫌いな人も多いが、キーマンで慣れている私としてはとてもかぐわしい。
 それで口に含む。
 確かにこれは未体験。今まで飲んだことがある中国紅茶とも、勿論スリランカ茶やダージリン茶ともまるで違う。
 そして中国茶で最も大切と私が思っている喉の通りと後味。するすると喉を通っていくこの感触。キーマンに勝るとも劣らぬ。しかも、後味が甘い。キーマンで淹れた時でも5〜10回に1回くらいの割合でこの甘さが出ることはある
(この甘さが好きだからこそ、病みつきになった)。しかし、これは見事に一発だった。香り、味、喉ごし、後味。全てが見事だ。
 ただ、偶然と言うこともある。直後に二煎目を淹れてみた。
 全く変わらぬ。
 素晴らしい。
 丁度今、二煎目の紅茶の残り1/3ほどが残っている。これを一気に喉に流し込んでみよう。
 …美味しい。
 しかも後を引くぞ。この紅茶は。中に麻薬の成分でも入ってるんじゃ?
(確かに紅茶には多少アルカロイドは入ってるはずだが)
 こんな紅茶があろうとは。今度ばかりはネットに感謝したい。
 ようやくキーマンを超える紅茶を発見できた。正直50グラムじゃ足りないと思う。又注文したくなってきた。これが簡単に手に入る時が来るのだろうか?それとも超高級なマニア用として確保するしかないか…
 
紅茶の話 その26  世は今や、健康食ブーム。どうせ食べるなら、なるだけ身体に良いものを求める風潮がある。自然食やサプリメントは大変良く売られ、身体に良い料理。と聞くとこぞってそう言う料理が作られるようになる。
 これはなにも日本国内だけではない。世界的なブームとなっている。
 それでお茶もこの健康ブームに乗って、世界的に認められるようになり、今や空前のお茶ブームなのだそうだ
(日本でもペットボトル入りのお茶が随分発売されてる)。特にヨーロッパではドイツがようやく(笑)身体を大切にすることに目覚めたらしく、特に伸びが激しいのはドイツだそうだ。
 お茶が見直されたというのは、紅茶好きとしては嬉しい部分もあるが、同時にちょっと嫌な所もある。
 具体的に言えば、紅茶の値段が上がる。と言うこと。
 私が飲んでいるのは中級から下級のお茶になるので、今のところあまり影響は無いが、100グラム数千円という上級及び中級の紅茶の値段は、着実に上がっている。痛し痒しと言うところか。
紅茶の話 その27  紅茶の最大の産地はどこと聞かれたら、これは言うまでもなくスリランカ。ここでの産出量で全世界の紅茶産出の半分以上を賄っている。そして二番目、これがインドになる。いわゆるダージリンを中心とする地域がそう。この二つの地域で世界の70%以上の紅茶が作られているのだから、馬鹿にならない量である。
 スリランカ(セイロン)であれ、インドであれ、どちらもイギリスの支配下あったことはご存じだろう。つまりそのどちらの地域も、イギリスによって茶樹が栽培されていた過去を持つ。その内のインドについてだが、ここでイギリスが独占的に扱っていたのは、実は紅茶だけではない。
 
麻薬、ヘロインや阿片の原料となる大麻もそう(現在黄金の三角地帯と呼ばれるようになった大規模な大麻畑は、この時代あってこそ)。で、これも歴史的に突っ込んでいけば大変面白いのだが、今日はそれとは違う。
 紅茶、殊にミルク・ティには欠かせないもの。
砂糖がそれ
 お茶だけでなく、いやむしろこの砂糖の独占貿易こそがイギリスに大きな富をもたらした。殊にフランスでは18世紀以降、爆発的な砂糖ブームを引き起こし、その消費量は一気に跳ね上がる。
 フランス料理と言えば、味もそうだが、その豪華な飾り付けが一つの大きな特徴でもある。食卓を彩る食べ物だけで作られた飾りは貴族のみならず、裕福な庶民にもブームを起こした。そしてその中心となったのが砂糖なのだ。
 砂糖というのはサラサラとした粉には違いないが、少し熱を加えてやれば、あっという間に可塑性の高い粘土細工のようにもなる(ちょっと加工するには技術が必要としても)。更に粉に少量の水を加えてやると、崩れやすいが立派に細かい細工が可能な造形素になる。フランスでは食事のためのみならず、こう言うところにも砂糖はよく用いられていたので、非常に砂糖の需要が高かった。しかもこのような造形に用いるためには純度を高くする必要があった。通常用いられる砂糖は黒っぽくて複雑な味がするが、純化を繰り返すことによって細かいパウダー状にしていく。それを国内で行うのではなく、輸入に頼っていたのがフランスという国だった。
 贅沢をする事がステータス・シンボルとなるのは洋の東西を問わずだが、ここでのフランスでの贅沢は度が過ぎていた。結果としてヨーロッパ中で一番貧富の差が大きくなっていったのがフランスで、それが後のフランス革命の原動力の一つとなったのも確かな話である。
革命を起こすのは高邁な思想ではない。今日のパンに事欠くことこそがなによりの原動力だ。
 今回はちょっと紅茶からは離れたが、これも又、紅茶が間接的に世界経済に与えた影響に他ならない。食べ物から見た歴史と言うのも、調べてみると面白いもの。
紅茶の話 その28  紅茶好きな人なら分かると思うが、紅茶を淹れる際、やはりこれだけは納得いくものが欲しい。と言うものがあるとすれば、やはりティー・ポットとティー・カップだろう。
 ちなみに私はティー・ポットは凝る方ではない。今使っているのは五年ほど前に東急ハンズで買ってきたティー・コゼ
(保温用の断熱材。布を使うのが一般的だが、私のはティー・ポットに装着するタイプ)付の奴で、確か値段は2800円だったかな?そんなに高いものじゃない。それ以外にも、色々な所からいただいた、結構高そうなティー・ポットが二つほど。どっちも棚の奥に置いて一度も使ってない。やっぱり使い慣れたポットの方が良いからね。(でもこれも4つ目だったかな?よく壊すから)
 それに対し、ティー・カップに関しては、結構こだわってるつもり。いつも紅茶を淹れるときは普通のティー・カップの1.5倍位の量を淹れるので、それに合うカップを用いるが、
ちょうどこの大きさってあまりないのが問題。
 今まで5つのカップを使ってきたが、そのほとんどが観光地で買ったものだ
(何故か観光地には大きめのティー・カップが多い)
 1つ目は今から10数年前。普通の陶器屋で買ってきた普通の大きさのカップだったが、これはすぐに割れた。
 2つ目のカップは高知に旅行に行ったとき。坂本龍馬の絵がかかれたもの(笑)。これがかなり大きなカップで、それで飲み慣れたら、大きなカップが好きになった。割ってしまう可能性を考え、以降旅行に行くたびに土産物売場でその大きさのカップを今でも探している。
 それで3つ目のカップは松山だったはず。道後温泉に入って、ぶらぶら土産物売場を回っていたら、まさにぴったりの大きさのものがあった。歴代のカップではこれが一番高く、
5500円くらいだったかな?。2年くらいで壊れてしまったけど…
 4つ目は沖縄。カップ自体は薄いのに、かなり頑丈で、とても気に入った。これを使っていた時期は結構長いし、未だに割れずに、棚で眠っている。これが
2800円
 そのお気に入りをお蔵入りさせることになったのは、知り合いに趣味で陶器を焼いている人がいて、冗談半分にこれこれこういうカップを作って欲しい。と言ったところ、本当に作ってくれたことから。色々難癖つけた上で作られたものなので、完全な私のパーソナル・ティー・カップとなっている。もう2年使ってるな。ほとんど毎日毎日、日によっては一日二杯や三杯…随分お世話になってる。
 実はこれだけでなく、先日熊本に行って来たときも色の良いカップを見つけてきたので買ったし(
5000円くらい)、紅茶好きだと知られているので、贈られたティー・カップもある(勿論普通の大きさのカップだから自分では使ってない)。合計で6脚くらいあるかな?
 陶器で出来ている以上、ティー・カップは消耗品。あまりに凝るのも考え物だが、自分で飲むものを見つけるって言うのは楽しみでもある。
紅茶の話 その29  先日鹿児島から静岡に引っ越した。
 それで分かったことがある。
 ここでも相変わらず紅茶を飲み続けているが、鹿児島の時と同じように紅茶を淹れたらやたら苦い事に気が付いた。
富士山から来た水は美味いと聞いていたのだが、意外な話だ。実は水のおいしさというのが楽しみの一つだっただけにちょっと肩すかしを食った気分。
 それでちょっと考えた。なんでこんなに苦いのか?
 紅茶を淹れるのに時間を計ることはないのだが、どのくらいの時間でおいしい紅茶が淹れられるのか、鹿児島では大体理解していたのだが、やはり所変わると淹れ方も違ってくるらしい。
 それでちょっと抽出時間を短くしてみた。
 あれ?
とてもおいしい。何回か淹れ直しても、おいしさは変わらなかった。
 その理由というのを考えてみる。ちょっと化学的に。
 水には硬度というのがあり、その硬度によって茶の抽出は変わってくる。
 硬水になればなるほど水の成分が茶の成分とくっつきあってしまう。
 具体的に言えば、硬度が高ければ抽出時間は長くなり、硬度が低ければ抽出時間は短くなる。
 日本の水は硬度が低い軟水なので、抽出時間は短くて済むのだが、それでも鹿児島と富士とでは随分硬度が違うらしい。ここの水は更に硬度が低いということだ。

 つまり、鹿児島の時と較べ、心持ち抽出時間を短くすれば、その固有の水の旨さを知ることが出来る。
 更にここの水は富士山から流れてくる。汚染度がかなり低いから、紅茶も美味くなるのかも知れない。
 時期的に今が一番水が美味くない時期に当たるのに、これだけ水が美味いというのは驚き。流石富士山というべきかも。
 これだったら、
富士山からの雪解け水が飲める春がとても楽しみだ。
紅茶の話 その30  新しい土地(静岡)に来て、少し困った事。
 紅茶専門店の場所が分からない。いや、そもそもそんなものがあるのかどうかさえ分からない。私の好きな紅茶、キーマンでも安いのだったら時折スーパーに置いてあることがあるのだが、ここにあるスーパーには全く置いてなかった。
 こうなると頼りは遠出をした時に買い込むか、それともネットを利用するか。になる。
 ネットはそう言う意味では便利だ。ちょっと検索をかけてみると程なく見つかるし、それに紅茶専門店のサイトはいくつか抑えてあるので、そこから購入も可能だ。
 それで先日そう言うサイトでキーマン茶を購入してみた。
(高かった)
 飲んでみての感想。
 おいしかった。
 多分今まで飲んだキーマン茶の中では
最高の美味さだろう。
 だが、ちょっと首をかしげてしまった。
 確かに美味いのは美味いのだが、これはキーマンの味じゃない。今まで様々なメーカーのキーマンを、それこそ毎日飲んでいるのだから、茶の味くらいは私だって判別できる。
 確かに奥からキーマンの味はする。だが、なんか違う。
 それで不意に気付いた。
 これ、フレーバー・ティじゃないのか?
 
フレーバー・ティというのは、紅茶に様々な香料を混ぜることによって、味に深みを増す方法だが(良い例がアール・グレイ)、この場合、屑茶を高級に思わせる方法としても用いられている。
 キーマンに関しては確かに香りが生臭い感じがするから、一般的とは決して言えないが、それでも慣れると癖になる香りだ。それが好きなのに、よりにも寄ってその良さを踏みにじるとは。
 良く味わってみると分かる。中国産の緑茶の粉末がここにはかなり入っている。
紅茶に緑茶を入れるか?確かにそれによって風味は増すし、舌での味わいもふくよかにはなってる。
 だが、それにしてもキーマンはキーマン単体で好きなんだよ、私は。
変な混ぜものをして欲しくない。

 それで昨日の出張で静岡に行った際、デパートの地下を探し回り、ようやく一缶キーマンを見つけてきた。
 今日それを淹れてみて飲んだ。
 確かに通販で買ったものと較べ、
格段に風味は落ちる
 だけど、ちゃんとキーマンの味がしてる。やっぱりこっちの方が良い。
 通販で買ったものは、時折高級感を味わいたいときに飲む特別なものとしておこう。
 結局紅茶を知るには、理論とか何かではなく、
自分の舌に頼るしかない。その事を再確認させてくれた出来事だった。
紅茶の話 その31  最近緑茶を飲み始めた。
 緑茶の良いところは紅茶と違って、一煎だけでなく、二煎、三煎とたのしめるので、食事を終えてビデオなどをのんびり見ながら飲むには丁度良い。紅茶の場合、一回で全ての成分を出し切るので、その分失敗するとやり直しがきかないから、気合いが必要なんだが、緑茶の場合気軽に楽しめる。
 とは言え、今飲んでいる緑茶は日本茶ではなく中国茶。
名間金萱(ミンチェンチンシェン)と言う茶だが、これは茶葉そのものを切断せず、そのままの形で丸めてお茶にするので、お湯を入れると茶葉の形に広がるのが、見ていて楽しい。今度ガラスのティーポット買ってこようかな
 前にもちょっと書いたが、緑茶と紅茶は同じ茶樹から作られるが、その大きな違いは発酵させているかどうかと言う点にある。
 茶葉というのはそのままお湯に入れて飲むことも出来るのだが、摘んで放っておいても自然と発酵してしまう。だから実際誰にでも飲めるようにするにはどこかで発酵を止める必要があり、加工することになる。
 基本的に摘んだ茶葉を適当に乾かした後で熱を加える事で、発酵を止めてしまう。
 ここで中国と日本の違いが出る。
 
日本ではこれを蒸すのだが、中国だとこれを炒る(紅茶も炒るので、中国茶の茶葉の香りは日本の緑茶より紅茶に似てる)
 それで中国緑茶というのが出来る。
 一方紅茶の場合、茶葉を完全に乾燥するまで乾かした上で炒る。これによって完全発酵茶ができあがる。

 この違いは茶葉の厚みになる。
 
緑茶の茶葉は紅茶のものと較べ、厚い(と言うより目が詰まってる)。お湯に入れるとゆっくりゆっくり成分を出すので、何杯でも飲める。
 一方の紅茶の場合、茶葉の目はスカスカになっているので、一気に成分を出し切る事になる。だから基本的に紅茶は一煎のみ。
二煎を淹れることも出来るけど、苦みばかりになるのでご注意を。
 それでゆっくり抽出する緑茶はぬるめの湯で、そして一回で全てを出し切る紅茶は熱湯で。と言うことになるわけだ。
 どちらも淹れ方には技術がいるが、私は緑茶の方は素人。色々と試してみたいな。
紅茶の話 その32  今日はイギリスにおけるティー・ポット及びティー・カップの歴史についてちょっと。
 さすが紅茶の本場と言うだけあって、イギリス製の茶器は世界的にも有名。殊にウェッジウッドあたりの最高級品はもの凄い値段で、日本ではたとえ持っていても使ってないと言う人も多いのではないかと考える
(カップ一脚が数千円から数万円もする)。私は一脚だけロイヤル・コペンハーゲンのティー・カップを持っているが、これをもらったときはそんなに高いものだと思わなかった。それで家に残しておいたら、普通のカップとして家の人間に使われていた(既に欠けていた)。全く。ものの価値の分からぬ輩は…(おめーもだ!)
 で、その茶器だが、元々イギリスというのはさほど陶器については盛んな場所ではなかった。
最初の内、中国から来たお茶だから中国の茶器を使っていた訳だが(実は元々茶器は美術品として輸入されてきた。船便で運ぶ際、その茶器を壊さないために、茶器を包み込む緩衝剤として茶を輸入していた訳だから、全く逆転してしまったというのは皮肉な話)、茶の消費量が上がると、深刻になったのが茶器の不足。
 中国製の茶器は高価だし、何せ数が足りない。とても中国からの輸入ではおっつかなかった。それで最初にイギリスがしたのは、
独自に茶器を製造販売していたオランダから輸入することだった。それで急場を凌ぎつつ、オランダから陶工を呼び、その技術を得ることによって独自の茶器を作るようになったのである。
 それでどこにその工場を置くかと言う段になり、陶器を焼く燃料である石炭を一番手に入れやすい場所としてテムズ河沿いが選ばれた。これは石炭は船で運ばれるので、効率よくそれを活かすため(つい先日知ったが、現代でも同じような工場がある。アルミニウム製造工場がそれ
。アルミの精製は極端なほど電気を使用するので、工場は独自に水力発電を行うことが許されている。それで小さいながら水力発電を工場内に持っているとか。実際電気を買うより発電所をメンテする方が安上がりと言うことになる。燃料と生産のバランスというのは決して馬鹿に出来ない)。
 それでテムズ河沿いには陶磁器の工場が立ち並んでいたそうだ。さぞかし壮大な眺めだったことだろう。
今は博物館として利用されている工場も多いらしい。

 そしていつの間にやら、ロンドン製の茶器は世界的に有名になっていく。こう見てみると、お茶と言うのがイギリス文化に与えた影響というのはとんでもなく大きいものであったことが分かる。
紅茶の話 その33  ネットを巡ってみると結構紅茶好きは多いようで、所々にハンドルネームで出没し、情報交換などをしているのだが、あるサイトで「紅茶は銅の薬缶で沸かすと格段においしくなる」というのがあった。複数の人からその話を聞いていたので、是非とも銅の薬缶を見つけ、それで紅茶を淹れてみたいと思っていた。
 色々と店に行くたびに探してみるのだが、いざ探してみると、なかなか無いものだ。
 それでようやく先日遠出をしたときに見つけ、早速購入した
(5,000円也)

 はやる気持ちを抑え、先ず中を充分に洗って、何度も水を換え、それから改めて水道水を使ってお湯を沸かす。
 …思ったより時間がかかる。
銅ってのは熱伝導率が高いから早く沸きそうなものだが。

 それで今回だけはきちんと時間を計って愛飲している紅茶を淹れてみた。

 なるほど。確かに美味い。なんか口当たりが柔らかいというか、風味が増した感じがするし、紅茶特有のとげとげしさが無くなってる
(表現は難しいが、淹れ方を失敗するとどうしてもこのとげとげしさが残ってしまい、風味が台無しになる)
 キーマンは喉ごしが信条と思ってるけど、それも更になめらかになった感じ。
 買って良かった。

 ただ、何故銅だとおいしくなるのか。と言う点に関しては
科学的にはまだ解明されてないそうだ。鉄瓶だと鉄の微細成分が出てくると言う説明が付くけど、銅もそれがあるんだろうか?それとも保温効果の点で他のものと違っているのか?いずれにせよ、謎だ。
 もちろんこれは人それぞれの好みがあり、銅でなければならないと言うつもりはない。私の今まで使っていた琺瑯引きの薬缶でもタイミングさえ合って、本当においしい紅茶が出来たときはこれに決して劣ったものではない。
 尤も、既にこれで10煎ほど飲んでいるが、おいしく淹れることに成功した回数は琺瑯のと較べて格段に増してる(今のところ明らかに失敗した。と言うのは一回だけ。琺瑯だと半分近くは失敗になる…これでも大分良くなった方だ)。
 誰かそれを科学的に証明してくれないかな?
紅茶の話 その34  先日ネットの知り合いから「ドロップティ」なるものの存在を聞かされた。
 そのサイトも教えてもらって見てみたら、試験管のようなものに入ったハート形のペレット状の紅茶だと言うことが分かった。
 なるほど。これはなかなかおしゃれな紅茶だ。
 「普通のお茶と同じように淹れるように」との注意書きもある。
 つまり、茶葉をハート型に固めたものだと言うことが分かる。

 疑問が一つ。
 ガラスの試験管に入れると言うことは、当然直射日光に曝されることを前提としてつくられたものだろう。
 だが、茶葉に日光を当てるのは一応御法度と言うことになってる。
 
茶葉というのはこう見えてなかなか繊細なので(先日コーヒー好きの知り合いが、「コーヒーの方が遙かに繊細だと言ってたけど…)、密閉容器に入れ、しかもなるだけ温度差の無いところに保存しなければならない。直射日光に当てると酸化して、味が落ちる。
 これは葉っぱと違ってペレット状だから、多少酸化には強いのだろうし、やはり中身を見てもらいたい。かわいいと思って欲しい。と言う思いからわざとそうしてるんだろうと言うことは分かる。どうせ私の好きなキーマンは無いだろうし、あんまり気には留めなかった。
(この更新のためだけに買おうかと思ってもいたが)

 それでしばらく放っておいたのだが、面白いことが起こった。
 前後して二本のドロップティが送られてきたのだ。
 一本は前述のネット上の(映画好きの)知り合いで、ブルーベリーティを。
 もう一本はバレンタイン・デーの日にわざわざ送ってくれたもの。これはなんとキーマンだった。あったんだな。
 それで最初にキーマンから飲んでみた。

 …まずい!

 …元も子もない言い方だけど、
本当にまずい
 昔横浜の中華街で中国製のキーマンの屑茶を買ったことがあったが
(100グラムで600円というとんでもない安さだったけど)、あれに匹敵するまずさだった。
 前に書いたが、銅製のポットで淹れた紅茶はおいしい。それを以てして、まずくなるんだからたいしたもんだ。

 何故まずいか。その理由を考えてみた。
 1.これはブロークン・ティであること。
 紅茶にはブロークンとフルリーフの2種類(厳密にはその中間がいくつかあるけど)あるが、基本的にミルクティ用にはブロークンを、紅茶の風味そのものを楽しむためにはフルリーフが用いられる。
 理由として、ブロークンは抽出速度が速いから、すぐに濃いお茶が楽しめる。ミルクティ用だったら濃い方が良いので、これでいい。一方紅茶の風味を楽しむ場合、ゆっくり蒸らして抽出するのが良い。じっくりと成分が出てくるので風味が増す。
 ドロップティはペレット状に固める必要があるので、フルリーフでは無理だ。当然ブロークンとなる。
 …しかし、中国茶をブロークンで飲むってのは初めての経験だな。土台そんなものがあるなんて聞いたこともなかった。

 2.茶葉が固まってるので、茶葉がポットの中で動きにくい。

 お湯を入れたら、かなり早くバラバラになったけど、元々ばらけてるリーフティと較べれば格段の差がある。
 紅茶をおいしく淹れるコツは
ポットの中でホッピング/ジャンピングを促すことなのだが、最初が固まってると、それは極めて起こりにくい。

 …と、言うような理由ではないかと思う。
(茶葉を固める「つなぎ」に何が使われているかは分からないけど、その味はしなかった)

 その後、ブルーベリーティをミルクティにしてみる。
 こっちは結構良かった。
ミルクを多少少なめに。砂糖を多めに入れると良い感じ

 はっきりわかったのは、ドロップティはストレートで飲むことを前提としていないと言うこと。飲む場合はミルクティにする方が良い。
 結論づけると、
ティーバック以上、リーフ未満。と言う位置づけか。

 見た目が楽しいので、友達を呼んでティー・パーティをするとかには良いと思う。その場合、ガラスのティーポットを使うと更に楽しめるはず。
紅茶の話 その35  最近中国茶が面白くなって、いくつかの茶を買い込んでいる。
 今は
水仙というお茶を飲んでいるけど、これはとても良い。
 水仙茶は福建省や広東省で作られる青茶
(半発酵茶。日本で一番有名なのは烏龍茶)
 青茶はあんまり飲むことが無かったけど、一回飲んでみると、これが又。実においしい。風味も香りも良いし
(なんかほうじ茶に似てる気がするが)、紅茶と違って2煎か3煎まで飲めるのも良い(3煎目はさすがに薄いから、一応2煎までにした方が良いけど)。食事の後など、ビデオで映画を観ながら飲むのが最近の日課となっている。
 一応青茶について。
 青茶は半発酵茶と呼ばれ、完全発酵茶である紅茶と未発酵茶である緑茶の中間に位置するが、製法は様々。
 多少乱暴に書かせてもらうと、最初に摘んだ茶葉を広げて乾かす。これを
萎凋(いちょう)と言う。これによって茶葉を乾かすのと同時に発酵させるわけだ(紅茶も同じように行うが、緑茶はこの過程がない)。これを時間をかけて行い、揉むと紅茶になるが、青茶の場合は紅茶ほど乾かすことが無く、途中で切り上げてしまうのだが、ここから特別な工程にはいる。
 先ず天日に干されていた茶葉を部屋の中に入れる。これを
揺青(ようせい・やおちん)という。外にある茶葉を部屋に入れるだけのことなんだけど、これが非常に重要。この際、手や機械で揺らしてやる。これを丹念に行うと、香りがとても良くなるらしい。
 その後、一旦釜に入れ、炒ってから
(これを炒青(さーちん)と言う)、ようやく揉みの作業にはいる。これを揉捻(じゅうねん)と言い、緑茶、紅茶、青茶全てで行う工程に入り、そこでやっとお茶として完成する。
 
…念のため、これは非常に乱暴な書き方だよ。
 紅茶、緑茶と較べ、工程が複雑で、手作業も多いが、その分香りがとても良くなる。高いやつは100グラム5,000円くらいは当たり前にする。私が飲んでいるのは水仙の中でも一番安い奴だけど、これでも充分に美味しい。
 尚、烏龍茶は缶やペットボトルで売られているけど、本来青茶の一番の売りである香りがスポイルされてしまうため、本来のおいしさは別にあると思ってほしい。
紅茶の話 その36  中世ヨーロッパを語る上で避けて通れないのが一つある。猖獗を極め、実に多くの者を死に至らしめたペスト
 
ペストは鼠によって媒介され、不潔にしていると起こりやすくなるのが特徴で、当時のヨーロッパと言うのがどれほど汚れていたかを如実に示す事実でもある(千一夜物語を読んでみると分かるが、彼らはヨーロッパ人(正確にはフランク人)を「異臭漂う不潔な民族」としていた)。現代人からすれば多分信じられないことだが、ある貴族は生まれてから3回しか体を洗っていないことを誇りに思って吹聴していたとか…マジかよ(この話には直接関係ないけど、香水というのは本来体臭を中和するため、あるいは体臭を感じさせなくさせるために発明され、発展したものだ)。いずれにせよ、ペストというのは中世ヨーロッパを語る上での最大のキー・ワードの一つだ。
 イギリスで紅茶が流行ったのは、実はこのペストのお陰でもあるところが面白い。
 お茶というのは元々医薬品として輸入されたものだから、ペストの特効薬として用いられた…と言う訳ではない
(多少はそう言う期待もあっただろうけど)
 さすがに近代化された時代にあって、ペストはどういう場合に流行るか、そしてその予防策はどうするか。その辺がだんだん分かってきた。前者は上下水道の完備と言う形で、後者は健康ブームという形で。
 そう、まさに紅茶はこの
健康ブームに乗って消費量が激増したのである。
 当時健康になるためにはとにかく体を動かすこと、日の光を浴びることが奨励された。その両方を手っ取り早く、しかも短時間でするためにブームとなったのが
散歩
 散歩をしていて、ちょっと休もうか。と言う時、近くにカフェ、それもオープンカフェがあると、そこに寄りたくなるのが人情というもの。そこで何を飲むか?日光浴に出たのだから、当然それは昼間であり、酒ははばかれる。かといって水と言うのも少々情けない。
 それでお分かりだろうが、この
カフェで出されたのが紅茶なのである。何となく健康なイメージがあるし、砂糖やミルクをどっさり入れることで、疲れた体を適度にリフレッシュできる。これほどうってつけの飲み物は無かったわけだ。これのお陰で上流階級の飲み物であったお茶は瞬く間に中産階級へと広がっていく。そしてそれが工場へと流れ、労働者階級にも好まれていったのは前述の通り。

 ペストから紅茶へ。面白い組み合わせだが、だからこそ歴史を学ぶのは面白い。
紅茶の話 その37  世界中にある茶。紅茶、緑茶、青茶(ウーロン茶)が全て同じ種類の茶樹から作られている。と言うのはご存じの通り。それぞれの地域に合った製法で茶は作られるので、そこで飲まれているお茶が、そこにある茶樹の最も適した飲み方である事は当然のこと。日本では緑茶が、インドやスリランカでは紅茶が、台湾や中国福建省では青茶が…と言った具合。
 だけど、茶樹が同じであるならば、どういう環境に茶樹がある場合が、茶を抽出したとき、一番美味しいと感じられるか。つまり茶葉の質が高いかと言う事は言えると思う。
 一般に言って、
高地にある茶樹から取れるのが一番美味しいと言われている。実際、日本を除けばお茶の名産地は高いところにあるのが普通。
 これにはいくつかの理由がある。
 先ず高地は寒暖の差が激しい。朝は氷点下に近い寒さから、昼になると汗ばむほどになることもある。又気候の変化も厳しく、直射日光が激しく降り注いでいたと思うと、いきなりの暴風雨に見舞われることにもなる。
 これだけ厳しい環境に置かれると、当然茶樹は強くなる。気温の変化、天候の変化に負けずに成長できるようになるわけだ。
 そうすると茶葉も強くなる。具体的に言えば、より養分を蓄えるようになっていく。
その養分こそが、お茶を美味しくする。スリランカ茶なんかの場合、農園の高さまでラベルに書かれていることがあるが、それは「これだけ高いところで作られているから、美味しいですよ」と言う主張に他ならない。具体的には海抜2000メートルくらいのが一番らしい(富士山の五合目より高いくらい)。
 それに高地はもう一つ大きな強みがある。
 標高が高ければ、虫がいない。
 虫がいないならば農薬を使う必要がなく、よって無農薬の自然栽培が可能となる。昨今無農薬野菜のおいしさが盛んに言われているので、農薬を使うのと使わないのとではどれだけ味に違いがあるか分かる人も多いだろう。
 もしそれなりの店で紅茶を買うなら、その生産地の高さを見てみると面白いと思う。(しつこいようだが、私の愛飲しているキーマン茶は祁門県でしか作られていないのでこれには全く当てはまらないが…そう言や祁門ってどの位の高さだろう?調べてみようっと)
紅茶の話 その38  前に(その29)富士山からの雪解け水が飲める春がとても楽しみだ」と書いておいたが、春になって雪解け水が来てるはずなんだが、いつもとあんまり味が変わって思えなかった。
 だけどここになって
(5月末)、水がとてもおいしく感じるようになった。
 水を甘さ苦さ感じるようになったのは紅茶に凝り出してからだが、訓練次第で人の舌って感覚が敏感になるものらしい(煙草も吸ってるんだが)。
 元々この富士宮は水の質が軟質でかなり良いらしく、紅茶を淹れる時も抽出時間を少し短く取らなければならないほどだが、ここに来てから紅茶を淹れるのを失敗することはあまりなくなった(これも(その29)で書いたが、抽出時間を短めに取るととてもおいしい)。
 私の好きなキーマン茶は上手く淹れると甘みを感じるものだが、下手な淹れ方をすると苦いだけになってしまう。だけど静岡に来てから一日平均2杯ほど紅茶を淹れているが、その間に本当に苦いと思ったのは、特に最近になってからとみに減っている。
 私がこの水に慣れてきたとか、銅製のやかんを使っているとか理由はいくつか考えつくけど、一番の理由は、単純にここの水がおいしいと言う点だ。
 春先の雪解けの時はさほど水質に違いがあるように思えなかったが、このところ、普通に水を飲んでも、これまでとはちょっと違って感じる。明らかに私好みに水質が変化している。
 これで淹れる紅茶は又格別。とても甘い。
 時折キーマンが
甘すぎると感じる事もある。初めての経験だ。
紅茶の話 その39  ちょっと紅茶の話から離れるが、私が前に住んでいたのが鹿児島で今は静岡にいる。さて、この二つの県で共通するところは?
 …と、わざとらしく書いてみたけど、別段たいした意味はない。実は日本における緑茶の生産量が1位2位の県である。
 ところでどっちが1位かと訊ねられたら10人中10人が
「静岡!」と答えるはず。
 まあ、実際その通りなんだけど、実は調べてみると面白いことが分かる
。1965年時点での生産量は静岡4万トン、鹿児島2千トンだったのに、2000年になると静岡4万トンは変わらないのに、鹿児島はなんと2万トンに変わっている。35年の間に鹿児島に関してはなんと10倍に変わっているのだ。
 これは日本人の味覚の変化にあると思ってる。
 実は静岡に来てお茶を飲んでちょっと首を傾げた事があった。
 鹿児島で飲み慣れたお茶と較べると、妙に渋いのだ。しかも高いお茶になればなるほど渋くなる。鹿児島の茶の場合、渋さがあまりない。喉の通りがするっとしてる。

 それでどっちが好みか?と自分で考えてみると、鹿児島のお茶の方が私は好き。
 そこで思ったのだが、現代は渋さよりもするっとした味覚が好まれるようになったんじゃないだろうか?
 考えてみると、ペットボトル入りのお茶も、出たばかりの頃は結構渋さを感じたもんだが、今は全然渋くない。お茶に対する嗜好そのものが随分変わってると思える。
 中国茶を飲み慣れると、喉の通りが良いのが当たり前なので、それは大歓迎なのだが、伝統的な日本のお茶の嗜好が変わってきてるのはちょっと寂しいかも知れないな。
 甘っあいお菓子を少量口に放り込んで、渋茶をズズッと啜るってのは、これはこれで日本人に生まれて良かったと思える瞬間でもあるんだが…
(そういやそんな甘いお菓子自身少なくなってるよな)
紅茶の話 その40  紅茶、殊にキーマンを愛飲している私だが、最近中国茶を飲むことが多くなった。理由は映画のビデオにある。
 夜に時間が空いて、ゆっくりご飯が食べられる時、私は大体食事に2時間をかけるようになった。2時間というと長いが、作ってる時間に30分かけるし、残りの1時間半は映画のビデオを観てる
(アクション映画とかだったら丁度良い時間)。実質食事を食べてる時間は多分10数分と言うところだろうが、食事をしながら映画を観るってのも、慣れてみるとなかなか良いもんだ。
 ただ、そうすると食事開始後30分も経たないうちに全部食事を食べ終わってることになるから、残りの時間が手持ちぶさたになる。口元が寂しくなる。ここで優雅に紅茶ってのも良いんだが、
紅茶だとどうしても時間が分断されてしまう。かなり凝ってる分、蒸らし時間なんかはずっとポットの前で待ってることになるから、折角観てる映画を途中で切ることになってしまう。一応これでも体重に気を遣っているので、食事後すぐにお菓子に手が伸びるのも考え物
 その点緑茶は便利。ポットのお湯で済むし、2煎から3煎まで飲めるので、時間がよく保つ。それで折角飲むんだから普通の緑茶よりは中国茶の方が味わいを感じられて良い。
 それで最近はしばらく水仙と言う青茶に凝ってたが、折角色々あるんだからと言うので、今度は
黄金桂というお茶を買ってきた。産地は福建省(烏龍茶と同じ)安渓。葉の色や味わいから、これは緑茶のようだが、これも半発酵茶である青茶(低発酵茶だから、実際にも緑茶に近い)。喉ごしが良く、喉の奥から金木犀の香りがすることからこう呼ばれるらしい(桂とは中国語で金木犀のこと)。
 実際に淹れてみると、香りが非常にフルーティで甘みを感じるし、後味がすっきりしている。やや熱めのお湯で淹れて、ふうふうやりながら飲むととてもおいしい。値段も手頃なので、食事の後や、普段何気ない時に飲むにはとても良いお茶だ。お茶のおいしさだけで充分間が保つので、映画を観る時にはうってつけだし、