怪奇大作戦セカンドファイル事典 | |
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2007'4'2〜4'16
1968年に放映された「怪奇大作戦」の現代版リメイク。役柄は同じだがキャラクタを一新し、雰囲気は結構良し。科学も現代版にリファインされており、良い意味で派手なものになってる。一話毎の監督もそれぞれ映画で活躍中の監督を起用するなど、色々な意味で豪華な作品。
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話数 | タイトル | コメント | DVD |
第1話 | ゼウスの銃爪 脚本:中野貴雄 演出:清水崇 |
白昼の商店街、携帯電話で通話中の女性が謎の焼死を遂げる。その女性は小栗サキと言い、かつて少年犯罪のブラックリストに載っており、人殺しであったことが分かる。調査に乗り出したSRIだが、彼らをあざ笑うかのように第2の発火殺人が起こる。 人体発火現象についての話で、「怪奇大作戦」4話「恐怖の電話」および10話「死を呼ぶ電波」のリメイクだが、現代風にアレンジされてオリジナルとは随分変わった印象を受ける。ここでは明らかに今の時代を題材としており、特に殺された人間と殺した人間の人権について扱っているのが特徴で、殺した人間がのうのうと生き延び、殺された人間の遺族の叫びは無視されがちという現代の法律にコミットした内容となっている。人を殺して平然としている人間は現在はたくさんいるものだ。ただ、だからといって死者の代弁者として殺人者を殺すのは、やはり間違い。難しい問題だ。 更に「生きたい」と思わない若者の生態や、携帯のなども描写され、内容は極めて重く、ドラマとしてもなかなか突っ込んだ内容になっているのも特徴。そう言えばこれはオリジナルの16話「かまいたち」にも設定は似ている。 本作を作ったのは清水崇。この作品に「監督」はおらず「演出」になっているけど、清水監督らしからぬすっきりした内容になってる。こんな演出も出来るんだね。ラストの結論は急ぎすぎだけど、45分だとこれくらいが丁度だろう。 好演はしてるんだけど、やっぱり西島秀俊の牧役は違和感ある。岸田森の凄さを再認識。一方岸田一徳の的矢所長役は、そのとぼけた役が見事にはまってる。 <人体発火現象がマイクロウェーブによるものと推測した牧は電子レンジを使ってそれを証明する。金属入れたレンジを至近距離から見てると危ないよ。 刑務所の中に平気に出入り出来るSRIの権限は凄い。なんと鍵がかかっているはずの面接室にまで簡単に入ってるよ。 マイクロウェーブは本来目に見えないものだが、それを演出するために爆発を起こしてる。これはやりすぎ。これなしでも物語は成り立つだろうに。 携帯はGPS替わりであり、一旦特定出来れば後は犠牲者を殺せるって設定なのだが、一旦引き離したらもう諦めてるよ。 根本的な問題だと思うが、マイクロウェーブって衛星から射出して特定の人間を巻き込めるほどの指向性を持たせることが出来るんだろうか?> |
BOX |
第2話 | 昭和幻燈小路 脚本:実相寺昭雄 玉城 悟 演出:北浦嗣巳 |
東京下町で原因不明の電波障害が発生し、住民157名が行方不明になる。事件を追うSRIの牧たちは、過去と現在が渾然一体となった不思議な空間に迷い込んでしまう。 異空間の話で、「怪奇大作戦」25話「京都買います」のリメイク。科学と言うよりはオカルトに近い話に仕上がっている(牧もそう言ってる)。なんか「魔弾戦記リュウケンドー」27話「パワーアップ!マグナリュウガンオー」で同じような話があったけど、モンスターを出さない分、こちらの方が純粋に世界観を楽しめる感じ。昭和ノスタルジーに溢れている。「世にも奇妙な物語」の雰囲気にも似てるかも? 今回のカメラアングルは冴え渡っており、まるで実相寺昭雄のように煽りや空間、残像などを使っているのが特徴でもあり。東京の下町を舞台にしているのもそれっぽい。あまりにも「いかにも」な演出は実相寺監督自身というよりも、その真似をしているような印象もあるけどね(実際実相寺監督も関わってはいるのだろうけど)。 舞台となる年代は高度成長時代直前。これからどんどん日本が良くなっていく希望の時代。多分これを作ってみたかったんだろうな。そんな思いを抱かせてくれるよ。 ただ、難点としてこれでどう科学的な結論を出すのか?と思ってた分、結局人間の“想い”によってこの世界が作られたという非科学的なオチになってしまった部分が大変残念。まあ、この辺が思い入れって奴だろう。 <SRIというのは周知の存在らしく、身分証を見せただけで警官もそれに従ってる。ある意味現代のパラレルワールド的世界なのかな? 過去の町にある手塗りのポスターには「白銀假面」の文字が。同時期に製作されていたOVAの宣伝? 不思議な空間に巻き込まれたSRIの面々はいつの間にか浴衣姿になってる。着こなしは今ひとつ。 牧のお父さん役は影丸茂樹。円谷作品には必ず出てくるから、どこに出るか?と思ってたけど、やっぱり出てきたか。> |
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第3話 | 人喰い樹 脚本:小林雄次 演出:中田秀夫 |
友人天野菜月と共に温泉にやってきたさおり。だが温泉に入っている内に菜月は体調を崩し、体中を掻きむしった末ついに死に至ってしまう。東京でその遺体を調べた所、体中の赤血球が消失していることが分かった。更にこの事件は続発しており、SRIは調査を開始する。手始めに植物学者の黒崎を訪れた牧だが… ホラー性とそれを科学的な分析を元にした話で、特に前半は雰囲気として元の「怪奇大作戦」に最も近い作品に仕上げられている。特に体中に植物が這い回るシーンはCG使用によって大変見応えのあるシーンとなっている。これは演出の中田秀夫によるものだろう(後半やりすぎたけど)。 旧作との違いは、やはり時代性を的確に捉えている所だろうか。オリジナル版の時代にはなかった花粉症が本作の中心であるが、他にもバブル時代のことなども語られている。そう言えばマンガだが、「緑の黙示録」にもそっくりな話があったような?更にオチの付け方は「からくりサーカス」のものと全く同じだったり… ただ、後半になると話が大きくなりすぎて強引な話の展開となり、前半の雰囲気を完全に壊してしまったのが残念。更にオチは落雷によって全てをうやむやに。これはむしろ中田監督って言うよりは黒沢清っぽさだな。 黒崎博士役の木村多江がとにかく怪演しているので、そればかりが印象に残る話になった。お陰でSRIの面々の個性が全然出てこない。 無人の渋谷駅なんて描写もあり。かなりシュールな光景だ。 <防護服着て感染者を強引に隔離する人たち。これってどこから来たのか全然言及がないんだよね。警察もSRIも知らないなんてことになると、この舞台の世界観ってなかなか複雑のように思える。 植物と人間の細胞の融合って、いくら何でも既に成熟した樹に注入するのは無理だろう。可能としても、ほんの一部が変わるだけ。> |