シルバー假面事典 |
2006'12
往年の特撮作品「シルバー仮面」を元に、舞台を大正時代に移してリメイクした作品。大正浪漫を示すかのように、数多くの実在の人物が登場し、その絡みが見所。描写に関しても随所に実相寺昭雄監督のこだわりが感じられる作品で、そう言う意味でも見所が多い作品。尚、本作は「ミラーマンREFLEX」と共に劇場公開版とオリジナルビデオ版を同時に作るというユニークな試みがなされている。
実質的に本作が実相寺昭雄監督の遺作となってしまった。そのためか2006年の日本映画プロフェッショナル大賞の特別賞に本作が選ばれている。
主な登場人物 | |
ザビーネ シルバー假面 |
(役)ニーナ。出演は本作のみ。 ドイツ人の母エリスと森鴎外の間に生まれたという女性。ニーベルンゲンの指輪を身に纏う事でシルバー假面となる。 |
本郷義昭 | (役)渡辺大。 帝国陸軍の若きエリートで階級は大尉。上層部から帝都の連続美女失踪事件の調査を依頼され、そこでザビーネとシルバー假面と出会う。役は渡辺大。 |
平井太郎 | (役)水橋研二。 本郷大尉の友人で小説家の卵。本郷大尉と共に連続美女失踪事件を調査するが、ドジ故にあっという間にさらわれてしまう。後の江戸川乱歩である。 |
カリガリ博士 | (役)石橋蓮司。 アルベリッヒ=カリガリ。ダンテ劇場を主催する奇怪な男。実は宇宙人で、ニーベルンゲンの指輪の力で地球の地磁気を狂わせて滅亡に導こうとした宇宙人である。様々な怪人を繰り出してニーベルンゲンの指輪を奪おうとする。 |
話数 | タイトル | コメント | DVD |
第1話 | はなやしき 脚本:中野貴雄 小林雄次 監督:実相寺昭雄 |
時は大正浪漫華やかりし1920年。帝都は次々起こる美女連続失踪事件に騒然となっていた。若きエリート軍人・本郷大尉は諜報機関からの密命を受け、探偵小説家志望の友人・平井太郎と共に調査を開始する。浅草のダンテ劇場を調査中に、ザビーネという日独ハーフの美女と出会う。その時舞台に異変が… 敵は蜘蛛男。クモ型宇宙人。瞬間移動や両手から糸を出して女性を拉致し、血を啜る。その正体はツェザーレだった。 大正時代を舞台とした特撮作品の開始。ヒーローではなく、ヒロインが変身するのが最大の特徴であろうが、本作の場合はむしろ演出の方にこそ特筆すべきだろう。 雰囲気は結構凝っていて、多少安っぽい所もあるが、大正時代を再現しようと苦労しているのがよく分かる。画面構成などはどこかゆがみを持たせているのが実相寺監督らしさだが、これは『カリガリ博士』(1919)を再現しようとしてかと思われる。物語そのものも「カリガリ博士」に準じているのが特徴。 物語を胡散臭くさせるためか、ヌードや女性の肌をなめ回すシーンなんかもあったりしてエロチシズムもかなり高いし、今では珍しくなったフリークスも出してる。子供用でないのは確か。と言うか、ここまでやると、対象がどんな人間だか訳分からない。 戦いの場面で鏡を多用したり、わざわざ舞台の上で立ち回り。これはかつて実相寺昭雄が「ウルトラマンティガ」でやっていた事でもあり。実相寺監督のやりたいように作ったというのが本作の特徴だろう。 演出に力を入れすぎたため、物語はとても単純なのに訳が分からなくなってしまったのが難点か。 <シルバー假面は口が出ているため、スーツアクターも本人が演じているシーンが多いが、今ひとつ日本語の滑舌が良くないため、ちょっと聞き取りづらい所もあり。> |
VOL.1 |
第2話 | 於母影(おもかげ) 脚本:中野貴雄 小林雄次 監督: 北浦嗣巳 |
シルバー假面に変身したザビーネだが、高熱を発してしまう。本郷はとりあえず平井の部屋にザビーネを匿い、自身はカリガリ博士の行方を追う。一方ザビーネは夢の中で母と旅したドイツでの思い出を思う… 敵は蝙蝠ザムザ。カリガリ博士配下の怪物。虫とも動物ともつかない姿で、蝙蝠男と言うよりは狼男っぽい感じ。あっけなくシルバー假面によって倒されてしまった。 前半がザビーネがニーベルンゲンの指輪を手に入れた経緯が描かれ、カリガリ博士との確執も描かれる。そして後半はカリガリ博士との戦いとなる。ケレン味たっぷりに作られてはいるが、物語そのものはとても薄味。結局本郷大佐も平井も今回はほとんど何にもしてない。 表題はシェイクスピア作「ハムレット」中の「オフェリアの歌」の事で、森鴎外が訳したもの。これのみならず本作は様々な文学作品からの引用が目立つ。オープニングからケレン味たっぷりの話が展開。冒頭のケープを着て母と一緒にいるザビーネは「赤頭巾ちゃん」で、母エリスとの汽車旅行は「銀河鉄道の夜」。それらを実相寺監督らしい映像美を駆使して描いている。そこに「ハーメルンの笛吹」を初めとするグリム童話。カフカの「変身」。宇宙樹のイメージは北欧神話のユグドラシル・トリー。「白鳥の湖」。ついでに言うなら『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(1975)か「指輪物語」も入ってるのかな?勿論ニーベルンゲンの指輪が主題だけに、ワーグナーの音楽も多々…勿論この辺は全部いらないウンチクばかり。 <ドイツでの旅が描かれているのだが、いっそ全部ドイツ語でやるべきじゃない?なまじ日本語でやるものだから、違和感甚だしい。キャラによっては片言だし。> |
VOL.2 |
第3話 | 鋼鉄のマリア 脚本:中野貴雄 小林雄次 監督: 服部光則 |
カリガリ博士はツェザーレの精神を分離し、最強のサイボーグ“鋼鉄のマリア”を作り上げる。一方、帝都を脅かす飛行船はカリガリ博士によるものと判明し、帝国陸軍はその対策に追われる。カリガリ博士はザビーネの持つ銀の指輪を狙ってくると判断した本郷は脳神経学の権威敷島博士を伴い、ザビーネの身辺警護に当たるのだが… 敵は鋼鉄のマリア。カリガリ博士がツェザーレの精神を封じ込めたサイボーグで、姿形はシルバー假面のロボット版みたいで、メタリックシルバーに輝くその姿は、主人公よりもヒーローっぽく仕上げられてる。全身が金属のため、シルバー假面の攻撃では全く通用しない。これは『メトロポリス』(1926)から。 ニーベルンゲンの指輪の力とは、ミッドガルドを甦らせるためで、そのミッドガルドとは地磁気そのもので、これをコントロールする事で地軸をもねじ曲げる事が出来るという。完全に地球を滅ぼすため。と言う事が発覚する。カリガリの狙いは全世界の破滅であった。という大風呂敷へと話は展開。ただ、ほとんどの物語同様、それを未然に防ぐため話はとても局所的。本郷も平井も基本的に傍観者のまま。もう一ひねり欲しかったか。 今回も引用はかなり多く、映画の『メトロポリス』、ポオの小説、サブリミナルの話、「メアリー・ポピンズ」、トゥーレ協会、ユングの集合心理など、まあとにかく年代を問わず色々と出てくる。とにかくごちゃごちゃ科学的な話を詰め込んで、最後は情に持っていく形は、雰囲気としては「怪奇大作戦」っぽくもあり。 一応悪役のカリガリ博士は死んでないので、一応続けようと思ったら続けられる。という含みを残しているみたい。 <ツッコミの部分では無いと思うけど、ロケットという概念が出たのは第二次世界大戦の中頃から。この時代より20年後の話である。平気でロケットという言葉が出てくるのはなあ。 ところで森鴎外がニーベルンゲンの指輪を手にするまでは二つともマメ蔵の元にあったんだよね?それでなんで今までミッドガルドが甦らなかったんだろう?> |
VOL.3 |