幌馬車
The Covered Wagon |
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ジャック・カニンガム(脚)
J・ウォーレン・ケリガン
ロイス・ウィルソン
ジョニー・フォックス
アーネスト・トレンス
タリー・マーシャル |
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★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
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1848年。新しい入植地オレゴンに向かい、東海岸を起点とする二つの幌馬車隊が合流し、実にアメリカ大陸の半分を横断するという長い旅が開始された。この混成部隊の長に選ばれた強力なリーダーシップを持つジェシー・ウィンゲイトにはモリー(ウィルソン)という娘がおり、ジェシーは自分の助手であるサム=ウッドハル(ヘイル)に彼女を嫁がせようと考えていた。だが旅が始まると、ジェシーをよく助けるのは、もう一つの幌馬車隊を指揮してきたウィル・バニオン(ケリガン)の方だった。徐々にサムよりもウィルの方に惹かれていくモリーだったが…
アメリカは巨大な新興国家である。だから古い伝統を持たず。神話的要素も持たない。民族さえもばらばら。そのようなアメリカが一つの国家としてまとまるために、映画は一つの役割を果たした。
それは即ちアメリカに神話を作り出したと言うことに他ならない。それもかなり偏った形での。
移民で構成されるアメリカは大きく二つの歴史があった。一つにはヨーロッパからやってきた移民達が自分たちの国家を作るべく東部で国をどんどん栄えさせたという歴史。もう一つがその東部を起点にして、アメリカ全土を征服して回ったと言う歴史。この中で映画が取り上げたのは、分かりやすい後者であり、それが西部劇となっていった。そしてその征服魂こそが“フロンティア・スピリッツ”と称され、これがアメリカ人共通の深層意識認識となっていたのである。
その神話を端的な形で表したのが本作であると言えよう。
確かに物語としてもかなり上手くまとまった作品ではある。恋の話も友情の話もあるし、冒険シーンもあり。ストーリーの起伏もしっかりしているし、スペクタクルもあり。今から見ても完成度はかなり高いのだが、たっぷりとアメリカ人としてのアイデンティティを詰め込んでいるのが最も大きな特徴であろう。
どれほどの困難があろうとも、それをやり遂げたという自負がそこにはあるが、その困難というのも決してきれい事で終わるものではない。その中では先住民との戦いもあるし、仲間同士のいざこざもある。時として解決されず、人が死ぬこともあるが、それらを含めて、後ろを振り向かずに前を向いて歩んでいく。その精神である。雪のオレゴンを新天地と知り、大地に跪いて神に感謝の祈りを捧げる場面など、前を向いて歩もうとする姿勢を“フロンティア・スピリット”としている感がある(この辺のポジティヴ・シンキングさはホークス監督の『赤い河』(1948)なんかでよく見えたりする)。
この作品には割と勧善懲悪の姿勢はあるものの、反省の視点がない。してしまったことは仕方ないが、だから今度は良いことをすべきだ。という、あくまでポジティヴ・シンキングな視点が描かれるのだが、これがまあアメリカ的って奴になるのだろうな。その部分がちょっと気になる所ではあるのだが。
本作と『アイアン・ホース』(1924)の二作はフロンティア・スピリットをはっきり神話にまで持ち上げた作品として観ておくべき作品。
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