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タイトル | |||||||||||||||||||||||
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悪魔のような女 Les diaboliques |
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1955NY批評家協会外国映画賞 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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パリ郊外にある名門私立小学校を受け継いだクリスティナ(クルーゾー)は、校長に収まった夫のミシェル(ムーリッス)に逆らえず、日々宣戦恐々と過ごしていた。さらにミシェルは妻の気弱さを良いことに女教師ニコール(シニョレ)と公然と通じていた。そしてある日、我慢できなくなった二人の女性は共謀してミシェルを殺す計画を立てるのだった。計画通りミシェルに睡眠薬を飲ませ、浴室で溺死させることに成功した。ミシェルが酔ってプールに落ちたことにし、死体は学校のプールに沈めたのだが… フランスの誇るサスペンス監督クルーゾーの出世作で、それまでサスペンスの王者の名称を持っていたヒッチコックを焦らせたとも言われた傑作サスペンス。 出来はかなりホラー寄りで、消えた死体がどこに行ってしまったのか?あるいは本当に幽霊が現れたのではないか?と思わせて緊張感を持続させる事になるのだが、この演出が凝っていて、一体何が?と思わせて、最後にその答えを提示。ラストに至るまでまったく飽きさせることがない。全く見事な作品である。サスペンスとは、最後のどんでん返しをいかに感じさせないか。と言う点が重要だが、雰囲気がとても良く、最後までそれを感じさせないように注意深く作られている。 二重の性格を持つのシニョレの魅力も充分にあり。『肉体の冠』(1951)から僅か4年。すっかり悪女っぷりが堂に入ってる。迫力ある造形だった。 ところで、本作は私にとっても大変好みで、もっと褒められて然りだと思うのだが、どうしても奥歯にものが挟まったしゃべり方になってしまう。それはリメイク版の『悪魔のような女』(1996)の方を先に観てしまい、ストーリーの大半は知ってしまっていたから。やっぱりこちらを先に観ておくべきだった。それでもあのラストは意外。よりホラー寄りっぽいケレン味は嬉しい。あの子供のひと言があってこそ、本作は映える。 |
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恐怖の報酬 Le salaire de la peur |
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1953カンヌ国際映画祭グランプリ(クルーゾー)、男優賞(ヴァネル) 1953ベルリン国際映画祭金熊賞(クルーゾー) 1954英アカデミー総合作品賞 1954ブルーリボン外国作品賞 |
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メキシコの辺境でくすぶっていたマリオ(モンタン)と仲間達の元に、危険な依頼がやってきた。町から500キロ離れた山上の油田で大火災が発生したため、多量のニトログリセリンを車で運ばねばならないと言うのだ。少しのショックで大爆発を起こす、そんな危険な任務を引き受けたマリオは、ジョー(ヴァネル)、ビンバ(ヴァン・アイク)、ルイジ(ルリ)と共に二台のトラックに乗り込む… フランス映画におけるサスペンスの名手クルーゾー監督の名を一躍高めた作品で、既に歌手として認められていたモンタンがここで俳優としても認められるようになる。 本作のプロットはこれ以上無いくらいシンプル。ただ“ニトロを積んだトラックを運転するだけの作品”。これだけで物語は要約できてしまう。 しかしながら、そのシンプルさこそが一番重要なもの。下手に他の設定を入れてしまうと、この物語の興を削いでしまう。ひたすらその緊張感が持続するからこそ本作は名作足り得るのだ。後このプロットで必要とされるのは、狂気のみ。これだけあれば充分映画は作れる。色々なものを詰め込まないと映画ができないと思っている今の作品を見慣れていると、このシンプルさがとても新鮮に思えてくる。 ただし、必要なものを揃えても、それをきちんとした映画に仕上げるのは監督と役者の力量。ただだらだら続いても面白くはない。必要最小限度の会話と表情で物語を引っ張っていかねばならないのだから。その辺はサスペンスの名手と言われるクルーゾー監督だけあって、緊張感の持続が半端無い。下手なホラー映画よりもずっと恐ろしいし、画面から目を離すことができない。 それを可能にしたのが、食い詰め男たちを丹念に描写した前半に現れてる。 この部分で見え隠れする彼らのやるせなさと、なにより暑さを表現する日常描写が、既に彼らの精神を蝕んでいることがよく示している部分であり、ギリギリの精神状態が、中盤以降の緊張感の中で狂気へと変化していく課程を見事なまでに示すようになる(本作には長版と短版があり、私が観たのは長版の方。こちらの方が冒頭シーンが長いらしい)。 実は私も一時期フリーターやっていた時があって、その時、私自身が本当に逆境に弱いものだと痛感したものだが、最初のうだるような暑さの中、なにするわけでなく、ただタバコふかしながら会話もなくだらだらしてるシーンは、その当時の事を思い出させてくれて、それだけでもういたたまれないというか、「分かる」と思いながら、怖いところを表してくれるなあ。と思わせてくれたもんだ(そういえば私が『望郷』(1937)大好きなのも、こういうシーンがあったからかもしれない)。 こう言うとき、不用意な一言がトリガーを引いてしまい、突発的に怒りに駆られる事もあるし、かといってそれで何にもならないために、怒った直後に激しい自己嫌悪に苛まれるのもわかる。 こういう精神状態だからこそ、危険な任務とか関係なく、報酬の高さだけで仕事に飛びつきたくもなるものだ。 しかし一旦引き受けたは良いが、徐々に自分がとんでもないことをやってるという事実に気づくときがもっと怖い。 そしてもう逃げられないとなって腹をくくったとき、その時にこれまで溜まりに溜まっていた狂気が表面化してくる。観ている側としても、それはいたたまれないし、しかしだからこそ本作はものすごい説得力をもって迫ってくる。 そういった、観ている側にストレスを与えまくっているからこそ、中盤から始まるニトロ輸送がものすごく楽しい。楽しいと言うより溜まったストレスがますます溜まるような状態で、もうこうなると常軌を逸した精神状態がこちらまで感染してくるようで、「行くところまで行け」と思えてくるものだ。 それで、本当に行くところまで行ってしまうのが本作の醍醐味とも言える。 観終えたあと、これほど「疲れた」と思える作品も珍しいが、異様なほどに集中できる作品だし、自分自身に迫ってくるストレスはとても心地よい。 時折観直したくなる作品でもある。掛け値なしの傑作。 |
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