地球へ2千万マイル
20 Million Miles to Earth |
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チャールズ・H・シニア(製)
クリストファー・ノップ
ボブ・ウィリアムズ(脚)
ウィリアム・ホッパー
ジョーン・テイラー
トーマス・ブラウン・ヘンリー
フランク・パグリア
ジョン・ザレンバ
ジャン・アーヴァン
バート・ブレイヴァーマン |
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★★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
4 |
3 |
5 |
3 |
4 |
特撮事典 |
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金星探査船XY21は、帰還途中に隕石の衝突により、イタリアはシシリア島にある漁村の沖合いに墜落する。それを発見した漁師達はその宇宙船から二人の男を救出するが、その一方の科学者は残ったカルダー大佐(ホッパー)に研究ノートを渡して息絶えてしまう。好奇心満点の少年ぺぺは海岸に打ち上げられた残骸を手に取っている内におかしなカプセルを発見。早速ローマから来ていた医者のレオナルド(パグリア)にそれを売ってしまう。カプセルから取り出された緑色の(?)胎児状の生物は地球の大気に触れることで急速に成長していく。博士と娘のマリザ(テイラー)はその生物をローマに運ぼうとするのだが、更に大きく成長したイーミアは檻を破って脱走してしまう。駆けつけたカルダー大佐を初めとする捕獲チームが早速作戦を展開するが…
かつて日本でのタイトルは『金星竜イーマ』。ジュラン監督がハリーハウゼンと組んで作り上げたSF怪獣もの作品で、日本で「怪獣図鑑」なるものが出版されると、大抵載ってるほどの知名度を持ったメジャーなモンスターが特徴の作品だ。しかし、本作は日本では未公開作品として扱われているのがなんとも残念な作品。
モンスターの形状と、宇宙からやってきた怪獣が暴れ回る。と言う先入観をもたれやすいので、単なるB級SF作品として片づけられがちなのだが、実際はこれは深い物語展開で、素晴らしい出来の作品。
造形の良さは折り紙付きだが、クレイアニメーションによって動く(これをハリーハウゼン自身が「ダイナメーション」と名付けるのは翌年の『シンドバッド 7回目の航海』(1958)から)イーミアの姿は、姿の不気味さとは裏腹に、大変繊細な動きを見せている。最初にカプセルから誕生するシーンも、眠そうな目を開け、明るすぎると又目を閉じ、それから目をこすってからもう一度目を開ける…そんな細やかな動作をしっかりやってくれていたし、何より、このイーミアは、全編を通して、一度も自分から攻撃を仕掛けることはなかったというのが特徴的。イーミアが戦うのは人間の側が攻撃をした時、それを振り払うためだけで行われている。
このシーンで特徴的なのは牧場のシーンだろう。トラックから逃げたイーミアはどこに逃げたらいいのか分からず、とりあえず広い場所の牧場に逃げていった。そこで草を噛んでいた羊たちはバラバラに逃げるのだが、一匹だけ逃げ遅れた羊がいた。そこに近づくイーミアの動作は傍目から観ても、大変優しげなのだ。しかし、それも番犬と農場主の銃によって追い払われることになるわけだが、不思議な魅力を感じさせられるシーンだったといえよう。
そして一旦捕まってしまったものの、電気ショックに耐えられずに再び逃亡。この辺りから体の大きさは巨大となり、象と戦ったりするが、ここも実写とアニメーションの合成が小気味良い。流石ハリーハウゼン!と言いたいくらいに感動的だ。最後は廃墟となったコロッセウムの最も高いところに上ったイーミアに銃弾の雨が降りかかり、落下してついに死亡する。
これを通して思うことは、この作品はハリーハウゼンの師匠であるオブライエンが手がけた『キング・コング』(1933)との共通性だ。
訳も分からず自分のすみかから強引に引っ張ってこられ、右往左往してる内に人間が勝手に攻撃してくる。それを避けているだけなのに、世間はその存在を「悪」と見なし、攻撃する。全くの人間の都合で連れてこられた上に攻撃されるというモンスターの存在意義というものがよく現れている(これは『フランケンシュタイン』(1931)でも使われた手法)。流石に師匠だけあって、相当にインスパイアされていたのだろう。最後の高所からの転落まで合わせてるし(笑)。これはハリーハウゼンが作り上げたSF版『キング・コング』と言っても良い。悲しく、そして素晴らしい物語だよ。
最後にイーミアをこの地球に持ってきたカルダー大佐が「いつの時代も進歩への道はとてつもなく険しい」とか言ってたが、「それってあなたの責任じゃないですか?」とツッコミを入れたくなるのはともかく(笑)
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