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タイトル | |||||||||||||||||||||||||||
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セレブレーション 1998 | |||||||||||||||||||||||||||
1998カンヌ国際映画祭審査員特別賞(ヴィンターベア)、パルム・ドール(ヴィンターベア) 1998NY批評家協会外国映画賞(ヴィンターベア) 1998LA批評家協会外国映画賞 1998ヨーロッパ映画ディスカバリー賞(ヴィンターベア)、作品賞 |
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デンマークの鋼鉄王ヘルゲ(モリツェン)の還暦パーティーを祝うため、彼の子供達が集まってくる。しかし、楽しそうにしている裏腹、彼らはそれぞれ重い問題を抱えていた。そして宴たけなわとなった時、ヘルゲの優等生息子クリスチャン(トムセン)が突然立ち上がり、数ヶ月前に自殺した双子の妹リンダと自分は幼い頃、ヘルゲから繰り返しレイプを受けていた事を告白する… 実験的(と言うか前衛的な)映画を作ると言われる、トリアー監督を中心としたデンマークで結成されたドグマ95による第一回作品。それに私にとってもこれがドグマ95の最初の作品になった。確かに事前に変な作品だとは聞いていたし、多分精神的にきつい作品だろうとは思ってた(日本におけるATGっぽい作品を予想していた)…が、予想を超えていた。 精神的にきついって言うより、はっきり言って吐き気を覚えた。酔いを伴う動きを見せるカメラ・ワーク(映画研究会の8ミリ映画かよ!)に伴い、ぎすぎすした言葉と展開。精神的な根幹を傷つけられたような気分にさえなった。人間の悪意そのものを描いたため、はっきり言って下手なホラー作品よりも怖い。 とにかくここに登場する人間にはみんな苛々させられる。生々しい性交渉の場面と言い、相手を傷つけるためにはき出される毒のあるせりふの数々と言い。一々かんに障る。 しかし一方で、全く目が離せない自分がいる。構図の巧さもあるが、むしろ未体験ゾーンに突入してしまったと言う感じがある。近親相姦や民族差別を前面に出して作られたお陰で精神的に凄まじい圧迫が加えられ、終わった後はものすごい疲れを覚えた。しかしながら、意外なことに後味はすっきりしてる。それが観終わった後でも自分で意外に感じた。 こんな変な作品が、それでも面白いと言うのが妙なので、ちょっと自分なりに分析してみよう。 映画にはこんな可能性もある。これまでの映画史にも観ている人間の精神を冒すかのような生々しい作品があった。そしてその中にも傑作も多い。しかし、たいていの場合はそれはドラマの一部として入れるのが限界。一本調子でそれだけを見せる映画というのはこれまでにもほとんど例がない。それを踏まえ、敢えて本作は確信犯的にそれをやってるという点が先ず挙げられるだろう。下手すればそのままポップアート作品として黙殺されても仕方ないが、そこに間の取り方とテーマ性で水準以上のおもしろさを演出し、観せ切ってしまった。 にこやかにしている人間の表面の皮をめくってみると、そこには生々しさ、どす黒さが渦巻いており、更にその中に入り込むと、傷つきやすい心というのがある。そんな不完全な個体をもって人間は生きていくしかない。それを時に直視する必要があり、人はその不完全な精神を抱えつつも、時にそれを超えて生きていかねばならない。このテーマはこれまで文学小説の独壇場だったのだが、それは映像でも可能であり、むしろ生々しさを演出するなら映像化した方が容赦ないものを描ける。 …しかし、これはあんまり映画では用いられることがない。理由は簡単で、これでは客が入らないから。いくつかの賞を取ることは出来ても、映画の成功とは結局観客動員数なのだから。 過去にもいくつかこういう精神に来るような苛々させられる作品というのはいくつかあった(カザン監督の『欲望という名の電車』(1951)なんかはその代表と言えるけど、ワイラー監督なんかも結構この手の作品を作るのは得意だ)。しかし、それにはいくつかの条件が必要。例えば映画化の前に舞台劇で成功していたとか、あるいは超メジャー俳優に演じさせるとか。付加要素がなければ大抵は売れない(日本でもATG作品なんかはこういう実験的なものも多い)。いずれにせよ、こういう作品はなかなか成功しにくいので、莫大な金のかかる映画製作はしにくいのが現状。 それに挑戦したのがこのドグマ95だった。この作りは、精神に来るものを作りつつも、独りよがりなだけには終わらせず、しっかり観客には楽しんでもらおうというサービス精神もそこにはあった。当初全然まとまってない群像劇をコントロールし、やがて大団円に持って行く。どういう形であれ、観終えた後、後味は決して悪くない。確かにメジャーにはなりにくいのは事実ながら、はっきり言ってこれはかなり面白い。映画には本当に色々な可能性があると、改めて思わされた作品だった。 |