バブル期に我が世の春を謳歌したものの、バブル崩壊によって会社も妻子も失い、多額の借金だけが残った安男(時任三郎)は今はホステスのマリ(大竹しのぶ)のヒモ状態で、どん底の生活を送っている。そんな安男の母であるきぬ江(八千草薫)の心臓病が悪化して入院したとの連絡が入った。安男は鴨川にいる心臓病の権威である曽我(柄本明)の元へ手術を行うために母を連れて行く決意をする。救急車は使えず、安男自身がきぬ江をバンに乗せていくことになったが、鴨川まで約百マイル…
病気の母のため、最低の生活をしている息子が奮闘する話。元は小説らしいが未読。
ただ、これを映画にしたところ、なんだか話の展開が早すぎて、駆け足で物語を追っていき、「さあ、感動しなさい」と出された気分。インスタントの感動が欲しければそれでも良いけど、一時間半という時間をなんでこんな下手くそに使ってしまうのか、その理由が分からない。同じ時間を用い、同じ素材を使ったとしても、作りようによってはいくらでも面白くなったはず。とにかく時間の配分が下手すぎる。長目のテレビドラマを細切れにして再編集した作品のように見えてしまう。
主人公の安男はバブルで一財産築いたものの、その崩壊によって最低の生活にはいることになった。設定はそれで良いんだが、その課程が分からない上に時任三郎の最低ぶりがあまり身に迫ってこない。更に母を思う心がわき上がってくる課程も唐突な感じ。要するに主人公のやってることが何もかも歯車がかみ合ってないようにしか見えない。これを狙ってやったのならたいしたものだが、仮にその場合、ちぐはぐぶりを物語に組み込まねばならないはずなのだが、それが出来てないと言うことは、単なる演出下手なんだろう。
本作はストーリーや演出で見るべき部分が全然無く、結果的に個々の役者の巧さだけしか見るべきところがない。ただ、それに関しては凄く巧いのは認める。マリが自分の身の上を語るシーンは、圧巻。大竹しのぶは本当に上手いし、こんな難しい役をこなした八千草薫は凄い!と言うレベル。ただ、柄本明が天才的な医者というのはギャグか?彼に母を任すのはあまりにも恐ろしい冒険に思えてしまうのだが…
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