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五百旗頭幸男

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経歴
1978'5'29 兵庫県宝塚市で誕生
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個人的感想
2022
2021
2020 はりぼて 監督
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レビュー
はりぼて
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砂沢智史(共)
服部寿人(製)
佐久田脩
★★★★☆
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 2016年。富山市議会に激震が走る。議員報酬の増額を求めた議員の動議が市議会にかけられて可決されたのだが、そこに不自然さを感じたローカルテレビ局のチューリップテレビの調査で、不正が発覚したのだ。そのスクープ報道を皮切りに議員たちの不正が次々と判明し、半年間で14人もの議員が辞職する事態に。それから三年が経過した今、議会はどうなっているのかを、チューリップテレビのキャスターだった監督が描くドキュメンタリー。

 2020年にtwitterを中心に話題になった映画があった。映画に前後して監督がtwitterに投稿したものがバズるとか、そちらの方でも話題になっていたし、私も監督のアカウントをリストに入れたりしてかなりリスペクトしていた。
 ただ映画の方を観なかったのは、上映していた映画館を知らなかったのと、低予算ドキュメンタリーというハードルに躊躇したからだった。映画館で観られなかったら、後は見る機会無いだろうと思っていて、必ず観ようと思いながら、結局見逃してしまった。
 ところが意外にもすぐに観る機会が巡ってきた。配信として簡単に観られる状況だったのだ。これはありがたい。
 はっきり言えば、これはなかなかもって面白い。
 議員というのはある種の特権階級であり、庶民とは違う常識の中で生きていく。そこには前の議員から継承していく習慣がある。その習慣はやがて伝統となり、議員でいるからにはその伝統に従って生きていくことになっていく。
 一般人から見ての違和感も、それが議員の側からすれば伝統で行っていることであり、ずっと前の先輩達から連綿と続くことを踏襲しているのに過ぎない。悪いことをしているなんて事は全く考えず、「こう言うもんだ」で続いていく。
 これはどんな共同体でも起こることで、どんな小さな共同体でもそこには社会があり、その社会習慣というのが常識である。議員も然りで、当然その社会習慣で生きていく。
 しかし、議員の社会習慣の問題点が一つある。それは、仮にそれが法に触れることであれば、いつかは必ず裁かれるということである。
 前述したようにどんな共同体でも社会習慣があり、そこには方をちょっとだけ逸脱したものもある。しかしそれらの多くはごまかすことが可能である。
 しかし法を施行する立場にある議員の場合、法を絶対に守らなければならないというドグマに縛られる。法から外れてしまい、それが発覚した場合、必ず処分を受けねばならない。
 いくら伝統であったとしても、法の方が強いのだ。
 ところが、多くの人は方よりも伝統の方が強いと勘違いする。これまで上手くやってきたのだから、これからも上手くやっていけるだろうと考えるし、時に大物ぶりたいという理由で殊更それを強調して吹聴したりもする。
 しかし、法を守る立場にある事を忘れた時、どんでん返しがやってくることになる。それがいつ来るかは賭けのようなものだが、必ず来る。
 そしてそれが来たのが2016年の富山市だったと言うことである。
 それは運が悪かったとも言えるが、その運を運んだのがチューリップテレビだった。明らかにおかしい議員提案を報道したことから始まった。悪いことをしてるつもりがなかった議員達が、これはしまったと狼狽し、慌ててごまかそうとし、ごまかしきれずに議員を追われてしまう。しかもそれで終わらず、新たに選ばれた議員まで同じ轍を踏む。
 これはなにも富山市だけでは無い。どの自治体でも多かれ少なかれ必ず起こっていることだ。同じ事はどこでも起こるし、その度毎に同じように議員が辞めていくことになる。

 本作はほぼ全編インタビューで構成されるが、そのインタビューに答える議員の表情を見てると、ものすごいものを観させられた気になる。それは悪趣味とも言えるが、表情の変化が本当に面白い
 その表情の変化を作り出すものは、自分自身の持つ常識が壊されていく過程だから
 最初何が悪いのか全く理解出来ず、「俺は正しい」とふんぞり返っていたものが、周囲の指摘を受け、しょげた顔で謝るようになる。そして一旦悪いことを認めたならば、後は坂を転がるように転落する。議会のみんなから糾弾され、ほとんど逃げ出すように議員辞職を決め、後はもう目を伏せたまま、気力を失って何も喋れなくなっていく。
 その過程が克明に描かれることが本作の醍醐味である。フィクションで作った顔では無く、本当にショックを受けた顔が拝めるのだ。これを映像で見られるだけでも凄く面白い。まさにドキュメンタリーの最大の魅力を発揮した作品と言える。
 正直それを観ていて楽しいかと問われると、「悪趣味だけど楽しい」と答えてしまう。実際役者でも無い人を見て笑うというのは悪趣味だ。しかしだからこそ、議員の人は自らを戒めるものとして本作を観て欲しいとも思う。
製作年 2020
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