くるみ割り人形 1979 |
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辻信太郎
清水浩二
中村武雄(製)
辻信太郎(脚) |
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クララはある日、久々に家にやってきたドロッセンマイヤー叔父さんからくるみ割り人形をもらうのだが、その夜、クララは熱を出して寝込んでしまう。寝ているクララの耳に柱時計の中から不思議な音が聞こえてきた。気になって起きあがり、柱時計を覗き込んだクララの目に、時計の奥へ奥へと歩いていく叔父さんの姿が…叔父さんを追い、時計の中に入り込んだクララはおもちゃとネズミが戦いを繰り広げる不思議な世界へ迷い込んでしまう。
『ロスト・ワールド』(1925)でオブライエンにより長編の映画にも導入されたクレイアニメーション。人形などを一コマ一コマ微妙にずらして撮影していく非常に時間のかかる手法だが、CGが使われる前までは無生物を動かすにはもっぱらこの方法が取られていた。まさにそれは職人芸と言って良いもので、CGが主流となった現代でも、クレイアニメにこだわる職人ニック・パークによる『ウォレスとグルミット』や『チキンラン』(2000)など、まだまだ現役でクレイアニメーションは使われている。
ただ、もっぱらこれは海外の作品が多く、日本ではテレビの親子番組やコマーシャルなどででほんの短い時間のものが作られることがもっぱら。予算はともかく手間と時間を考えると長い作品はなかなか日本では作られることがなかった。
だけど、ちゃんと技術はあるのだから、きちんとしたプラットフォームさえ与えてくれれば、質のいいクレイアニメーションを日本でも作ることは出来る。
本作はまさにその技術の結晶と言っても良い完成度。本当にたいしたものだ。どうせ子供向き。と思っていた私自身の不明を痛感させられた。知名度はさほどでないとしても、日本でこんな良質なクレイアニメーションが作られていたんだな。これだったらかえって日本よりも海外の方で評価されるんじゃないか?
題材をチャイコフスキーの『くるみ割り人形』に取っているが、それをベースにかなりのオリジナル部分を入れて、ストーリーもかなり上手く作られている。ちゃんと主人公の成長物語になっているし、意外に展開も起伏に富み、かなりハード。ホラー的な描写まである。子供だけでなく、大人の鑑賞に堪えるだけの出来なので、未見の人には是非お勧めしたい作品。
本作で面白いのが人形の使い回しなのだが、明らかにこれは狙って行っている。冒頭に夜更かししている子供をネズミに変えてしまう男ジャンカリン(一応内容の伏線になってるが、この悪魔的な描写がなかなか凝っている)、クララの叔父であるドロッセンマイヤー、不思議な国の中に出てくる時計商人や牧師と言った人物が同じ人形を使われているのだが、それがストーリーテラーとしての役割をちゃんと果たしていたりする。この辺は確信犯で、しっかり計算されて作られているのだろう。物語としても実に面白い。
それとここで起用されている声優が妙に豪華。大橋巨泉や牧伸二、岸部シローと言った個性的な俳優やキャスターを数多く登場させているのも面白いところ。声色も入れて無茶苦茶な会話も楽しめる。
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