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2010 | ボックス! 監督 | |
てぃだかんかん〜海とサンゴと小さな奇跡〜 監督 | ||
2009 | ||
2008 | デトロイト・メタル・シティ 監督 | |
デトロイト・メタル・シティ<TV> 声優 | ||
2007 | ガンジス河でバタフライ 監督 | |
2005 | みうらじゅんの 一切無い殺意 〜折野則雄の事件簿〜 監督 | |
2004 | お父さんのバックドロップ 監督 | |
2000 | 学校の怪談 呪いスペシャル 監督 | |
1999 | 世にも奇妙な物語 春の特別編<TV> 演出 | |
1990 | 世にも奇妙な物語 ビデオの特別編<OV> 監督 | |
1964 | 5'13 大阪で誕生 |
デトロイト・メタル・シティ 2008 | |||||||||||||||||||||||
2008日本アカデミー話題賞、主演男優賞(松山ケンイチ)、助演女優賞(松雪泰子) 2008日本映画プロフェッショナル大賞特別賞 |
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オシャレなミュージシャンになることを夢見て大分の田舎から上京してきた根岸崇一(松山ケンイチ)。大学でも良き仲間と出会い、憧れの相川由利(加藤ローサ)の薦めでレコード会社にデモCDを持ち込む。だが事務所の女社長(松雪泰子)によってインディーズのデスメタルバンド“デトロイト・メタル・シティ(DMC)”のギターボーカル“ヨハネ・クラウザーII世”としてデビューさせられてしまうのだった。こんなバンドをやっていることを相川さんには打ち明けられないままずるずるとバンド活動を続けていくのだが、メジャー・デビュー・シングルが予想外の大ヒットとなり、クラウザーはカリスマの道を進んでいく… 若杉公徳の人気コミックの映画化作。原作は、気が弱いばかりに自分の希望する渋谷系ミュージシャンになることも出来ず、社長の命令で意に沿わないデスメタルを続けて行かざるを得ない痛々しい青春ギャグ作品。ギャグとしては大変楽しい作品で、2008年になってアニメ化と連動して実写化させられた。 原作では、自分自身の実体と虚像の乖離ぶりが話を進めていくに連れてどんどん大きくなっていき、それを受け入れていったり反発していたりしながら、結局流されっぱなしになる主人公の痛々しさを楽しむ作品なのだが、本作は原作を敷衍しつつ、新しい価値観を付け加えようとしていることが分かる。 言ってしまえばそれは「これがボク。虚像として君臨してるこいつもオレ」ということ。原作の自己乖離を逆方向に持っていき、自分自身を全てを受け入れ、自己を確立していくという、古くからの物語の定式にシフトしている。 これは決して悪い事じゃない。原作は基本単発短編ギャグなのだから、キャラはなかなか成長しない(どころかどんどん堕落しているようにさえ見える)。こういう描写は例えば30分の連続アニメとかだったらそのまま使えるが、映画になれば、原作通りにはいかない。短い時間で盛り上げて、一本の物語として完結させねばならないのだ。 本作の場合、原作そのものの物語を使いつつも、ちゃんと自分を受け入れたところで物語が終わってるので、よくまとめ上げたものだと感心できる。マンガ→映画のシフトの仕方は実に上手い。 キャラのはまり具合も良い。松山ケンイチは『DEATH NOTE デスノート the Last name』(2006)のL役のはまりが良く、あそこまでいくはずはないと思ってたら、実はそれ以上にはまってる。この短期間に二つもはまり役をものにしたのは実力もあるけど、かなり幸運なことだろう。クラウザーと根岸という全く違う二つの人格をたった一人でちゃんとこなせた事は特筆もの(まあ、渋谷系の歌を歌わせるのは多少難があるにせよ)。この話は物語云々よりも松山ケンイチのはまりぶりを観に行くと考えるなら、充分すぎる出来に仕上がっている。 あと、結構笑ったというか、ちょっと吹いたのがラストに登場する ジャック・イル・ダーク役にキッスのジーン・シモンズを持ってきたことか。タイトルの元となった『デトロイト・ロック・シティ』(1999)そのものじゃん。出演者の名前観るまで分からなかったけど、かなり笑わせてもらった。 そう言うことでとても楽しい作品だったのだが、個人的にはちょっと引っかかる部分もあり。 原作から変えて青春ものの作品にしたと考えるならば、本作の目指す先は“脱オシャレ”に持っていって欲しかった。ATG作品を今更やれとは言わないけど、どれだけ松山ケンイチが苦悩してる振りをしても、全部が全部オシャレにまとめ上げられてしまってるんだよな。メタルの演奏シーンも、観客全員が整然と決められたポーズで観ている中、プログラム通りの演奏をしてるって感じで、即興やパッション…言うなれば泥臭さが全然なし。メタルも又ファッションの一つにされてしまってる。現代に求められてるのがそれだ。と言われたらそれまでだけど、青春なんてもんは後で振り返ると身悶えするくらいに恥ずかしく、泥臭いものであって然りだし、それは昔から今も変わってないと思う。自分の過去を振り返って“どきゅん”とさせるような演出が一つでもあれば、これは最高の作品になり得たのだが。 物語として完成されて、とても楽しい作品であるのは確かだが、ある意味、自分が既に歳取ったことを思わされて、ちょっと暗い気持ちにさせられた。 |