窓ぎわのトットちゃん |
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八鍬新之介(脚)
大野りりあな
小栗旬
杏
滝沢カレン
役所広司 |
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★★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
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3 |
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あまりのお転婆すぎのため、小学校を退学になってしまった黒柳徹子、通称トットちゃん(大野りりあな)は、子どもの自主性を伸ばすというユニークな教育方針のトモエ学園に通い始めた。ここはトットちゃんのやることも認められるため、のびのびと学校生活を送ることが出来た。家族や優しい先生たち、個性豊かな同級生たちと楽しい日々を過ごしていたトットちゃんだが、時代はまさしく太平洋戦争のただ中へと突入していた。
黒柳徹子が自らの幼少時代を描いた自伝小説で、今も尚売れ続けているベストセラーの「窓ぎわのトットちゃん」はこれまでにも何度か映像化はされているのだが、本作で初のアニメ化となった。
原作は幼少の頃に読んでいて、物語はだいたい把握している。自伝小説だが、基本は反戦で平和を求める話だったと記憶している。
それで予告を観る限り、概ねストレートな反戦と共生の物語だと分かった。
あの予告では、ちょっと変わり者の主人公が障がいを持つ子どもと触れあっていくという内容にしか見えない。教科書的なものになってしまうだろうと思えたし、昔学校で習ったようなものを今更出されても気持ちが乗らない。
…と、思っていたのだが、公開されてからの評判がやたらと良い。しかもその評判というのが、道徳の教科書的なものではないということで興味を持った。
そして一見。
評判の理由はよく分かった。かなり高水準にまとめられてる。
本作には明確な目標がある。簡単に言えばそれは反戦映画と言うことなのだが、それをストレートには描こうとしない。
この作品の最大特徴は、あくまでトットちゃんの視点で物事を見ていると言うことにある。幼児にとっては目に見える範囲だけが世界の全てで、戦争の渦中であっても、彼女に見えるのは周囲のことだけである。
彼女が見てるのは、例えばそれまで普通にあった食事が貧相になっていたことだったり、遠くへ仕事に行ってしまった父が帰ってこなくなったり、少しずつ男の大人が街から少なくなったり。そして友だちの主張が変化していったり。そんなものを目の当たりにするだけで充分不便さを意識出来るし、戦争の悲惨さを見ることもできる。下手に説教じみたものを出さずにちゃんと戦争を描いている。ここまで徹底してやったのは本当に見事な作りだった。
あくまで子ども目線というのは基本的に徹底されており、当時の日本ではつまはじきにされかけてる、少し外れた子ども達を、友だちとして見つめているトットちゃんの視点がとにかく素晴らしい。
只唯一、一箇所だけ視点が変わるシーンはある。それがラストのトモエ学園の校長先生の一言。それまで穏やかな目線を崩さなかった校長が、燃える学園を見ながら、赤く光る目で一言呟く。あれは強烈な違和感を持たせるが、あれは同時に強いメッセージ性を持つ。平和を望むだけではない。誰もが同じように生きられる社会を目指すには、優しさよりも本当に強い意志が必要だというメッセージとなる。
あのシーンがあって、はっきり本作は閉じられることが分かる。彼の願いが未来に叶えられることを望んで。 |
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