読書日誌
2010年4〜6月

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10'06'29 20世紀少年20 (著)浦沢直樹 <amazon>
 “ともだち”の居城に乗り込んだカンナとオッチョ。一方マルオは、生き残り今もワクチンの研究を続けているというカンナの母キリコに会いに言っていた。キリコから聞かされた、“ともだち”の過去とは?そしてカンナの襲撃は…
 襲撃そのものは失敗に終わるが、そこにいた“ともだち”がかつてのフクベエではないことだけは確認された。そしててっきりどこかで期待していたヤン坊マー坊の二人がすっかり小物になって登場。あれれれ?それじゃ“ともだち”の正体ってなんなんだ?
10'06'25 不気味で素朴な囲われた世界 (著)西尾維新 <amazon>
 大きな分針の止まった時計塔のある上総学園の中学一年生の串中弔士。おかしな先輩達や、それに輪をかけておかしい姉の小串らに囲まれ、それなりに充実した生活を送っていたが、生活に変化が欲しいと願っていた。そんな時、時計塔から姉の小串が転落死するという事件が起こってしまう…
 全く新しい感覚の推理小説。これまでの定式を覆し、まるであり得ない設定と謎解きが楽しめる。いろんな意味で意表を突かれたが、これを読んで起こる人も結構いるんじゃないかな?これってある意味推理小説そのものを馬鹿にした作品でもあるから。
10'06'24 青空に遠く酒浸り2 (著)安永航一郎 <amazon>
 小朝と篠に共存しているマイクロマシンを巡って謎の組織が暗躍。更に新型のマイクロマシンによって完全に意識が乗っ取られた謎の外国人と、それを追う更に謎めいた組織の連中…と言う人物達を巻き込んで、やっぱりまったりとした日常を描く。
 あとがきで「『貧乏くさいよ○ばと!』を描いてみようしたらできあがったのが『非人道的じゃ○ん子チエ』になってしまった」とあるが、著者は自分の作品のことをよく把握しているらしい。
 とりあえず登場人物の8割方は変人ばかりで、そう言う人間が一般人に迷惑をかけたり、変人同士でわちゃくちゃやってるってのは、全然昔から作風が変わってない。って事だけははっきりしてる。
10'06'22 ナインスゲート (著)ペレス・レベルテ <amazon>
 古書の転売を商売としているルーカス・コルソはある時不思議な依頼を受けた。この世に三冊しか現存していないという稀覯本「九つの扉」を探し出し、それが本物かどうか確かめよと言うのだ。莫大な報酬に釣られ、調査を開始するコルソ。だが行く先々で不思議な出来事が起こる…
 ジョニー・デップ主演の映画の原作だが、はっきり言ってあの駄作の原作。と思いつつ、読み始めたら止まらなくなった。大体この作品を映画にする事自体が間違っていたとしか思えない。特に本作の場合、本好きにとっては分かりすぎるところが山ほどあって、にやにやしながら読むことが出来る。ラストのオチも映画と較べるとこっちの方が強烈。これはやっぱり文章で読むべき作品だな。
10'06'20 月光条例9
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 月打された桃太郎が望むのは最強の武器である“呑舟”こと鉢かづきだった。そのためにツクヨミメンバーを次々屠り、鉢かづきが現れるのを待つ桃太郎。その事を知ったイデアは鉢かづきを連れ、桃太郎の前に立つのだが…
 「血のハート編」はまだ続いている。基本はイデアが試練を乗り越えるまでの話なのだが、ここまでに月打を治した赤頭巾ちゃんとシンデレラも登場。鉢かづきと月光の真実についても少しずつ明らかにされていっている。終わりもそろそろ近いのだろうか?
 ところで、設定上気になる点なのだが、月打されたキャラが物語に戻らないと物語そのものが消滅してしまい、その時キャラクタも消えるのだから、桃太郎に殺された人間達もその時点で元に戻るはずなのだが、その事については何も言及されてないのね。
<A> <楽>
10'06'18 日本のアニメーションを築いた人々 (著)叶精二 <amazon>
 日本アニメの黎明期からアニメを支え、中には現在も現役で頑張っているアニメーター達をピックアップし、彼らが歩んできた軌跡と、日本の、特に劇場アニメの変遷を描いた作品。近藤喜文、小野部羊一、奥山玲子、大塚康生、森康二、大工原章の6人を取り上げる。
 前に大塚康生の「作画汗まみれ」にもあったが、そもそも日本のアニメーションとは、東映動画にこそあり。つまり本作は結局東映動画出身の人しか出てこない。「築いた」と言っても、かなり限定されるな。内容も知ってることばっかだったし。
10'06'16 新世紀エヴァンゲリオン12 (著)貞本義行 <amazon>
 全ての使徒は倒された。それに伴い戦自によるネルフ日本接収作戦が開始された。次々に殺されるネルフの職員達。そんな中、カヲルを失い、無気力に陥るシンジの元にも戦闘員が近づいていた…
 確か3年ぶりになると思われる最新刊。11巻は読んだはずだが(と言うかレビューも書いてるけど)、完璧に物語を忘れてた。一応旧作の映画版を元にした物語展開だが、ゲンドウにシンジに対する心情を吐露させるなど、結構話が分かりやすくなってる。
 しかし、新しい映画で全く違う物語展開になってるのに、今になって古い物語を出すのは意味があるのか?と言う気はしてる。
10'06'15 リングワールドの子供たち (著)ラリイ・ニーヴン <amazon>
 パペッティア人《至高者》、新たにプロテクターとなった《作曲者》と共にリングワールドに残されたルイス・ウー。それから20年近くの時が経ち、リングワールドには新たな危機が近づきつつあった。ルイスや《至高者》が元いた世界ノウンスペースから戦艦がリングワールドに派遣されてきたのだ。彼らの目的が調査ではなくリングワールドのテクノロジーを奪うための破壊であることを知ったルイスは、自分とリングワールドの生き残りを賭け、決断を強いられる…
 多分これが最終章となるはずのシリーズ最新作。いつものことではあるが、キャラの大部分が何を考えているのか分からず、読み進めるのはかなり苦労するのだが、とりあえず大意は掴めたし、ラストの意外さはやっぱりセンス・オブ・ワンダーだ。
10'06'11 バクマン。7 (原作)大場つぐみ (画)小畑健 <amazon>
 病気休載が響き、亜城木夢叶の連載「TRAP」は打ち切りの憂き目に遭ってしまう。ショックで脱力してしまったサイコーとシュージンだが、そのショックを乗り越え、新しい連載に向け再始動を始める。しかし二人の思いと担当の港浦の思いはすれ違い、ついには怒鳴りあいに発展してしまう…
 6巻の引きでこうなるか?と思っていたとおり、本当に二人の連載は終了してしまった。その点は意外ではなかったけど、しかしその立ち直りがえらいこと早い。なるほどこのスピーディさがジャンプの信条か。しかし、一体次の連載がどうなるやら全く予想が付かないな。
10'06'09 初恋・かた恋 (著)ツルゲーネフ <amazon>
 初恋:一人の紳士ウラジミール・ペトロヴィチが語る、思春期に出会った一人の女性と、彼女にまつわる初恋の話。若きウラジミールは、隣に越してきた年上の女性ズイナーダに恋をした。だが美しい彼女は気まぐれで…
 かた恋:欧羅巴旅行中のロシア人青年N・Nがドイツで出会ったガーギンとアーシャ。兄妹と自己紹介した二人に惹かれ、妹のアーシャに恋心を抱いたN・Nだが…
 久々に何か文学作品でも。と思って読んでみたが、予想以上に面白い作品だった。ソ連以前のロシアって随分開放的な文学だったんだな。設定だけだったらどこのエロゲーム?って感じだ。むしろ今の日本が乱れすぎてるのかな?
10'06'08 20世紀少年19 (著)浦沢直樹 <amazon>
 北海道から、ついに関東にまでやってきたケンヂ。立ちふさがる関所を前に、ただ歌を歌いながら悠々と歩き続ける。一方、万丈目の元に案内されたカンナとオッチョは、そこで驚愕の事実を聞かされることに…
 これまで「矢吹丈」を名乗っていた男はやっぱりケンヂだった。なんでも20世紀の終焉の際、記憶喪失になってこれまで彷徨っていたとのことだが、えらく出来すぎた話でもあり。しかし、これによって主要人物は次々に東京へと戻ってきている。やはり終結は近いか?
10'06'05 銀河無責任時代 宇宙一の無責任男 外伝1 (著)吉岡平 <amazon>
 銀河連邦にその人ありと恐れられる存在。ジャスティ・ウェキ・タイラー。出世街道を突っ走る彼の、その出世の糸口となった事件。そして彼の元に集まった一癖ある仲間達との出会いのエピソードを描く、本編の前史を描いた外伝。
 本編では最初から大佐。艦長として登場したタイラーだが、勿論そこに至るエピソードもあった。トントン拍子に出世するタイラーの、その強運を描いた物語。ちょっと読むのは遅かったかも。
10'06'03 バクマン。6 (原作)大場つぐみ (画)小畑健 <amazon>
 ついに亜城木夢叶の連載マンガ「TRAP」がジャンプ誌上で3位を取った。このまま連載を続ければ、長期連載も可能。だがそんな時、サイコーの体に異変が。入院と手術を受けねばならなくなっても連載を続ける気満々のサイコーに対し、周囲の人間達は…
 トントン拍子に連載までいったため、このまま成功街道まっしぐら…とはいかなかった。この辺の駆け引きが長期連載の秘訣か?物語そのものが成功に至るマンガの法則に則ってるような?そう考えると大変メタな話ではある。病気を理由に亜豆と急接近させたのも手法の一つ?
10'06'01 東大落城 (著)佐々淳行 <amazon>
 1969年。日本は学生運動のただ中にあった。その中核であり、象徴でもあった東大安田講堂の攻防戦を、当時警察の幹部として陣頭指揮に当たった著者が描く、現場の立場から見た実録作品。
 有名な事件であるにもかかわらずあまり文章で読むことのなかった東大落城の真実。実に興味深いのだが、同時にこの事件が起こったのは日本は高度成長のまっただ中であり、街頭で市街戦が起こっている横では後楽園の巨人戦が大入り満員だったとか。混乱と浮かれ気分が同居しているシュールな時代でもあったことを改めて知らされた。日本の熱い時代の出来事だ。
10'05'29 バクマン。5 (原作)大場つぐみ (画)小畑健 <amazon>
 ついにジャンプでの連載が決まったサイコーとシュージンコンビの亜城木夢叶。出だしも上々。人気も安定してきた。更に知り合いも次々とジャンプデビューと、順風満帆に見えた。だが、そんな時サイコーの携帯に亜豆から電話が入ったとき…
 マンガ家として軽快に飛ばしつつ、実生活の中で問題が起きてくる。そんな感じで話を持って行っている。実際連載が始まってしまうと、マンガ家生活というのは順位を見るくらいしかやることがないので、こうやってドラマを盛り上げようとしているのだろう。これはこれで盛り上がっている。
10'05'25 キャラクター小説の作り方 (著)大塚英志 <amazon>
 “スニーカー文庫”のような小説とはいかにして作られるのだろう。編集者、マンガ原作者、小説家という出版に関わる様々な肩書きを持った著者が、自身の作ってきた創作物の作り方も加味し、これまでの小説の移り変わりと、現代風小説の作り方を考察する。
 今では“ライトノベル”という言葉が定着しているが、角川に関わっているだけあって、その辺微妙な書き方にしたようだが、キャラクターを主体とするSF/ファンタジー小説の描き方を考察する作品。ただ、著者の場合、ファンタジーとは言え、現実に即したものを書いて欲しいという願いのようなものが感じられる。参考になることも多々。最早小説を描こうとは思ってないけど。
10'05'22 20世紀少年18 (著)浦沢直樹 <amazon>
 “氷の女王”と呼ばれ、革命勢力を束ねているカンナ。だがその襲撃計画は既に政府の知るところとなり、その組織は次々につぶされていった。そ んな中、ラジオから流れてくる不思議な歌があった。それはカンナが持っているカセットの歌声だったのだが、カンナも知らないラストフレーズが付け加えられ ている歌だった…
 どうやら本当にケンヂは生きているらしい。しかし、これこそとんでもない冗談だ。こんな冗談で、話をどう決着つけるつもりなのか?”ともだち”の不死の理由も含めて、風呂敷がぜんぜん畳めてないのだが。
10'05'19 スウィングガールズ (著)矢口史靖
矢口史靖(検索) <amazon> <楽天> 映画
 東北のある高校。数学の補習を受けていた鈴木友子たち14名の女子学生は、ひょんなことから食中毒にかかった吹奏楽部の代わりに演奏することになってしまった。楽器など触ったこともない彼女達が始めることになったビッグバンド。最初は義務に駆られてのことだったが、徐々に演奏の楽しさを覚えていく。バンドを通じて培った彼女達の青春を描く。
 同名映画の監督自身が書き下ろしたノベライズ版。映画は実に楽しかったけど、小説もなかなか楽しく仕上がってる。改めてこれを読んでいたら、米沢弁って文章で書くとこんな感じになるんだと感じ入った次第(ちなみに私の実家は県を挟んでの隣町)。
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10'05'18 毎日かあさん6 うろうろドサ編 (著)西原理恵子 <amazon>
 相も変わらずいつも通りの西原一家。それでもこども達も少しずつ成長し、一家揃っての海外旅行もだんだん反抗的になってきていた。更に二匹の猫という家族も増え、ますます賑やかになっていく一家を描く。
 こども達が成長し、その分落ち着いてきたお陰か、これまでと較べるとやや毒が薄れてきた感じがするが、それでも相変わらずの一家の様子(+麦ちゃん一家)の様子をのんびりまったりと描いた感じ。これはこれで面白い。まあ、ようやく新聞にまともに載せて不思議じゃない内容になってきたって事かも?
10'05'15 すべてはふるさとのために A君(17)の戦争6 (著)豪屋大介 <amazon>
 ランバルトの首都ウルリスをドラゴン部隊で叩き、とらわれの身となった魔王田中を奪い返す。一見無謀そのものに見える剛士の作戦。しかしこれは充分な討議の末、本当に実行に移されることとなった。次期魔王として着々と成長していく剛士。そしてそれを見つめる側近達。だが、それ以外の目も剛士には注がれていた…
 前巻に続いての大胆且つ繊細な作戦が展開中。ウルリス攻撃シーンは特に派手さにおいてこれまでで最も見所が多いところだろう。冒頭の伏線とラストのどんでん返しも良いが、物語を貫くニヒリズムな設定が又面白くもある。バランスよく仕上がったな。
10'05'12 20世紀少年17 (著)浦沢直樹 <amazon>
 ウィルスによってほとんどの人類が死に絶えた世界。しかし一部の人間は“ともだち”から支給されたワクチンのおかげで生き延びていた。そんな絶望の世界の中を旅するオッチョ。彼が見てきた“絶望”とは?そしてカンナが作った地下組織に活路はあるのか?
 全世界を襲ったテロにもかかわらず、キャラの大半は生き残っていたらしい。かなり都合よくできた世界だが、いったい物語はどんな方向に進んでいくのか、全く見えない。それでもやっぱりあの人物は生き残っていたらしい。え?
10'05'11 見知らぬ明日 グインサーガ130
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 パロからヤガに向けて出発したイシュトヴァーン。しかしまっすぐにヤガに向かうのではなく、何故かパロに向けて小隊で戻ってくるのだった。一方、魔人によって捕らわれてしまったフロリーは…

 これが本当の最終刊。いつもの半分の長さ。更に途中で話がぶった切られてるのだが、これを書き上げられなかったのは著者にとっても無念だっただろう。世界最長の物語だけに、どこかでこんな日が来るだろうとは思っていたが、改めて突きつけられてみると、寂しい限りだ。
 考えてみると、この作品のつきあいは20年を超え、更にこのシリーズがあるお陰で間違いなく一番読んでる作者になってる。本当にご苦労様。
<A> <楽>
10'05'09 強殖装甲ガイバー27 (著)高屋良樹 <amazon>
 謎の人物アポルオンの出現とガイバーIIFの攻撃に、クロノス側の残った十二神将はそれぞれに対応を迫られる。その中で反主流派であるジャービルとクルメグニクの二人が繰り出した特殊なゾアノイドとは…
 今のところ、アポルオンとガイバーIIFを中心としていくつかの場所で物語は動いている。その中で面白かったのが、かつてガイバー達の敵であったリヒャルト・ギュオーが復帰したということ。生きているのは分かってたけど、他の神将の手先になってたとは。
 ところでいくつかの物語が並行しているが、肝心の主人公だけが現時点では蚊帳の外。
10'05'07 何かが道をやってくる (著)レイ・ブラッドベリ <amazon>
 性格は全く違うがお隣同士で親友のウィルとジム。二人が13歳になった年の万聖節前夜。二人は不思議なカーニバルが街にやってくるのを目にする。好奇心に駆られた二人はカーニバルに忍び込むのだが、そこで二人が見たものは、想像を絶する光景だった。更にそれを見られたことを知った座長のタークに追いかけられる事となる二人…
 SFというよりはファンタジーというか、ちょっと怖いおとぎ話。子供だけでなく、分別ある大人の視点もきちんとあって、非情に哲学的な内容。ブラットベリらしさに溢れたような作品。いろんなものが詰められているだけに、今も尚ブラッドベリファンは多いのだろうな。素晴らしい物語だった。
 しかし更に感心したのは、色々安っぽいところもあるけど、映画版が結構上手く作られていたと言う事実だろうか?知ってる人も少ないだろうけど。
10'05'06 20世紀少年16 (著)浦沢直樹 <amazon>
 ローマ法王は死ななかった。何故なら生き返った“ともだち”が身を挺して法王を狙撃から守ったから…そして3年後。世界大統領となった“ともだち”下で世界はようやく安定をとりもどしつつあった。
 新しい章へと入るが、また過去の話が少し展開。夏休み中万博に行っていたはずの“ともだち”ことフクベエが、あの時何をしていたのかが発覚する。ケンジに 対し、相当な嫉みを持っていたってことがよくわかる。それでその3年後の世界だが、都市部は隔離され、しかもその中のコミュニティは昭和の時代を模倣した ものになってる。よくもまあディテールに凝ってるよな。でも、先の時代で仲間たちに何が起こったのか、やっぱり何もかかれてない。また小出しにするのか?
10'05'05 ブレイブストーリー 下 (著)宮部みゆき <amazon>
 異世界に連れてこられた亘はワタルとして5つの宝玉を集める旅を始める。亜人種達の仲間達も出来、旅は続いていくが、宝玉一つを得る度にワタルにとっては辛い現実とも直面しなければならない羽目に。先に来ているミツルと、運命の塔目指しての競争が続くのだが…
 現実でのきつい話が一段落し、ご都合主義のファンタジー篇が始まる。いかにも和製ええかげんファンタジーの設定なのだが、設定よりもむしろ物語のハードさの方が問題だろう。これはこれで結構読ませてくれた。しかし、改めて思うけど、やっぱり対象年齢が分からないぞ。子供に読ませるには物語がきつ過ぎないか?
10'05'02 あさりよしとお短編集 毒入り錠剤篇
あさりよしとお (検索) <amazon> <楽天>
 著者による、毒入り短編集第2弾。「よりぬきヤードさん」、「重箱の隅」、「橋の下の超人」、「Let's go!うなぎちゃん」、「宮本武蔵」、「Mahjong&Dragons」を収録する。
 著者のかつて書き散らかしてきた短編をとりあえずまとめてみました。的な作品。とは言え、「重箱の隅」は連載当時とんでもなく業界に衝撃を与えた…と言うか、業界ってこんなに酷かったのか。と言う啓蒙的な意味合いを持っていたのは事実…いや、それ以前にいまもその状況が大して変わらないままアニメがこんなに量産されているという事実の方がもっと怖いのだが。15年前の作品が、全く古く見えない。
<A> <楽>
10'05'01 ブレイブストーリー 上 (著)宮部みゆき <amazon>
 三谷亘は両親と友人にも恵まれ、目下ゲームに夢中の小学5年生。だが小学校に美鶴という子が転校してきた頃から少しずつその生活に変化が訪れてきた。時折おかしな声が亘の耳に聞こえてくるようになり、更に両親の離婚と、徐々に亘の心がふさぎ込むようになっていった。だが、絶望にうちひしがれた亘の前に、新たな道が…
 一応ファンタジーという形態を取っているものの、内容はかなりハード。特に現代社会の子供に対するストレスがかなり厳しく描かれている部分は、読んでいてもかなりきついものがあり。てっきり子供向けかと思ったけど、対象年齢がよく分からない。
10'04'27
20世紀少年15 (著)浦沢直樹 <amazon>
 世界中で奇病が流行中のイタリア。法王のアジア歴訪を前に、法王庁はいくつかの動きを見せている。その中で古文書鑑定を専門にしているルチ アーノ神父が師匠の部屋で見つけたものは、なんと「新・予言の書」。しかもそれを見つけたことから命が狙われるようになってしまう。日本で法王暗殺事件が 起こることを予期し、日本へとやってくるルチアーノだが…
 “ともだち”が生きている!というところで引いておいて、いきなり話は イタリアへと飛んだりと、相変わらず本質を掴ませてはくれない。それで再び日本に帰ったら、いきなりの急展開。緩急のつけ方がちょっと変だぞ。しかし、最後の最後、なんか不思議な人物が出てきたけど、まさか生きていた…とか?
10'04'25 忌野旅日記 (著)忌野清志郎 <amazon>
 日本のロックの最先端であり続けた著者こと“イマーノ”が、その活動の絶好調時代の80年代から90年代にかけ、交友のある人々について徒然にイラスト入りで綴ったエッセイ集。
 ロックと一口に言っても幅広く、イギリスやアメリカの本気でイカれたミュージシャンから、日本では井上陽水、山下洋輔、桑田佳祐、サンプラザ中野などなどの裏話が語られる。そう言えばその中には著者の「友達」としてザ・タイマースの面々までいたが…はて?
10'04'24 バクマン。4 (原作)大場つぐみ (画)小畑健 <amazon>
 夏休み終了までにバトルマンガのネームを上げると約束したシュージンは、しかしその期日になっても上げることが出来なかった。思いあまったサイコーは、一人でもジャンプに載るマンガ家になってやると決心するが…
 前巻最後で二人の思いが完全に一致していたのに、すれ違いからお互い別々の道を行くことになってしまった二人。しかし当然と言えば当然ながら、このすれ違いが噛み合った時、実に楽しい物語へと変わっていく。今巻では又一人ライバルキャラが登場。ますます熾烈な争いが展開していくことを予見させてくれる。
 ところで本作で「マンガじゃあるまいし」とか言う発言のシーンあり。明らかに狙ってるし、釣られるつもりは…
10'04'23 宇宙への序曲 (著)アーサー・C・クラーク <amazon>
 1978年。人類初の有人月探査船がイギリス主導で打ち上げられることになった。プロメテウス号と名付けられたその船を取材し調査するためにアメリカから派遣されたダーク・アレクソン博士の目を通して描かれる宇宙船発射までの顛末を描く。
 本作は著者のデビュー作であり、描かれたのはなんと1947年。著者の予想とは異なり、月面探査は1969年。当たり前だが細部は随分違うのだが、しかしだからといって本作が魅力無いとは言わない。実に骨太で、物語としても上級。デビュー作がこれだから、著者の力量は推して知るべし。
10'04'21 青空に遠く酒浸り1 (著)安永航一郎 <amazon>
 9年前。炎天下の車の中で死にかけていた所を通りすがりの科学者に助けられた少女範崎小朝。その際身体に注入されたマイクロマシンとの共生も上手く行き、脅威の回復力を持つようになっていた。そんな小朝の前に、突然現れる年上の少女が現れる。彼女も又マイクロマシンを保有していると言うのだが…
 描いてる量は並の漫画家くらいにはあるはずなのに、全然単行本化されない漫画家として有名な著者の最新刊で、何と著者にとっては9年ぶりの単行本。大体これだって3年前から一度も休まずに連載しているというのに、単行本になるまでここまでかかってしまった…原因は色々推測はされるのだが、定かではない。
 んで、その本当に久々の単行本だが、やっぱり内容はいつもの如く。背景文字が楽しいのもやっぱり著者らしさ。問題は、ここまで久々で、しかも主役が二人の少女だというのに、表紙が真っ白に鼻毛のオッサンのドアップという事だろうか。何でこんな表紙にした?
10'04'20 ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2 (著)東浩紀 <amazon>
 著者がかつて述べた「動物化するポストモダン」から約10年。その間に、表面化しないまでも着実に文化は変遷を遂げている。文化についてこれまで語り続けてきた著者がポストモダン世代の文芸について改めて考察する。
 文学とは、かつて著者から読者に向けての一方的なものだったが、ネットの発達や二次創作ブームによって双方向的なものに変化している。と言うのが前作の骨子だったが、それで今度は古き書籍ではどのような変化が起こっているのか。実はそれも又メタ的なものへと変化している。と言う前提に立ち、現代の文芸のあり方と、これからの変化について語っている。ゲームの世界は文芸にも影響を与え、それを上手く用いている人が今の文芸界を代表している。と言う説には賛成できるが、問題はそう言う作品ってあんまり読んでないんだよな。少し深く突っ込んでみようかな?
10'04'17 タリスマン 下 (著)スティーヴン・キングピーター・ストラウズ <amazon>
 女王を亡き者にし、テリトリーとこの世界を手中に入れようとしているスロート=ブローンの追及をかわしつつ、ジャックの“タリスマン”探求の旅は続く。闇の力は幾度となくジャックに追いつきつつあり、折角出来た友達も失いつつボロボロになりながらも続くジャックの旅を描く。
 甘くないファンタジーの続編。タリスマンを得ることが一応の目的ではあるのだが、それで物語が終わる訳ではない。その辺の丁寧さがなかなか良い感じ。どっちかというと後年のキング作品に近い作りではあるな。
10'04'16 20世紀少年13 (著)浦沢直樹 <amazon>
 世界中で原因不明の奇病が流行していた。この原因を探るべく、死んでしまった“ともだち”の頭の中へダイブしようというカンナの提案。それを受けたヨシツネ と、いやいや引っ張られてきた響子。ともだちランドのバーチャルリアリティルームで、“ともだち”の過去を追体験しようとするのだが…
  話は1971年と2015年の二つで展開。運命の日、理科室で一体何が起こったのかがここで明らかにされる。一方、2015年の現実世界では、死んだはず の“ともだち”が関係者それぞれの前に姿を現している。やっぱり死んだわけじゃなかったのか?死んだキャラが生き返るのは漫画の常套手段とはいえ、本当に それやったらかなり安っぽくなってしまうぞ。
10'04'13 タリスマン 上 (著)スティーヴン・キングピーター・ストラウズ <amazon>
 “B級映画の女王”を母に持つ12歳の少年ジャック・ソーヤーは、癌に冒されている母と共に東海岸の保養地にいた。そんなある日、ソーヤーはスピーディというアフリカ系アメリカ人と出会い、その時に一つの使命を与えられる。実はこの世界に並行する“テリトリー”と呼ばれる地があり、そこでソーヤーの母に対応する女王が死にかかっているというのだ。女王と母を同時に救うためにはこの世界の西海岸にあるという“タリスマン”が必要だというのだ。テリトリーと現実世界にまたがってのソーヤーの旅が始まった。
 お互いリスペクトしあいながら全く文体が異なるという二人の作家による合作ファンタジー。ただ、これは全く甘くない。本当に死人も出るし、少年の責任というのも真っ正面から描いているのが凄い所。
 これも又、随分前に買った作品なのだが、ようやく積ん読から救出することが出来たよ。
タリスマン〈上〉
10'04'11 あさりよしとお短編集 毒入りカプセル篇
あさりよしとお (検索) <amazon> <楽天>
 これまで単行本化されたことのなかった著者の主に短編シリーズを中心とした作品集。「メッチェンファウスト」「世界冥作劇場」「それゆけ内田くん」「プロジェクトT」を収録する。
 この人ファンになって長いけど(と言うよりデビュー以来だから)、いくつか知らない作品もあって、「メッチェンファウスト」は知らなかった。しかし、「ガロ」に連載していた「世界冥作劇場」がまさか単行本になるとは思わなかったな。嬉しいと言えば嬉しい。ファンにとっては必須アイテムではあろう。
<A> <楽>
10'04'09 白い竜 パーンの竜騎士3 (著)アン・マキャフリー <amazon>
 旧時代の竜騎士達が南の大陸に追いやられ、糸胞の周期もようやく終わろうとしている時代。ルアサ城砦では一人の騎士が初めて竜を飛行させた。その名はジャクソム。本来ルアサの太守となるべき青年だったが、複雑な事情で中途半端な地位にあった。そして彼が飛ばした竜ルースは、滅多に現れず、ひ弱とされる白い竜だった。ジャクソムと白竜ルース、どちらも微妙な立ち位置にある二人だったが、彼らによってパーンの歴史は新しい局面を迎えようとしていた。
 2巻中盤になって突然現れ、本来生き残れないはずの白竜と感応した少年ジャクソムが主人公となって展開する話。大きな盛り上がりがある訳でなく、ミニストーリーの積み重ねだが、前の2巻と較べるとぐっと読みやすくなっているし、歴史の転換点がよく分かるので、面白い作品ではあった。
白い竜
10'04'07 20世紀少年13 (著)浦沢直樹 <amazon>
 ヤマネに撃たれ“ともだち”は死んだ。だが、“ともだち”が作った組織は今もなお、“しんよげんの書”に書かれていることを遂行しようとして いた。“ともだち”の死により、一旦は自分たちの生活に戻っていった元ケンヂの仲間とカンナたちだったが、その間にも世界は混迷の度合いを深めていく…
 “ともだち”が死んで一件落着。とはやっぱりいかず、話はまたしても迷走へ。ここで重要だったのはやはりカンナの母キリコだった。彼女の行方と、彼女の作り上げたワクチンがこれからのキーポイントになるっぽい。しかしここまで引っ張ってようやく登場?もうちょっと伏線があっても良かったような?
20世紀少年(13)
10'04'06 素晴らしき円谷英二の世界 <amazon>
 “特撮の神”と呼ばれた巨匠円谷英二。日本映画に数々の進歩を促したその姿を、当時を知る人々や新しくファンになった映画監督などそれぞれに行ったインタビューを通じ、円谷英二という人物の素顔に迫る。
 基本的に本作はデータベースや偉人伝ではなく、作品に思い入れのある人々のインタビューで構成されるため、同じ逸話が度々語られたりする。雑誌レベルでのお話だったら充分楽しいけど、単行本にするまでのことはあったか、疑問のある作品。でもそれなりに楽しめた。
円谷英二の世界
10'04'01 西原理恵子の人生画力対決1 (著)西原理恵子 <amazon>
 ビッグコミックスペリオール誌上にて、著者が立ち上げた企画で、それなりに著名な漫画家を呼びつけ、下書きなしの画力勝負を行うというもの。次々と有名な漫画家(あるいは“元”漫画家)達との勝負というか、掛け合い漫才を描く。
 これが定期連載されているのは知っていたが、雑誌の方では一切読んでなかった。それは正しかったと思う。なんせ爆笑の連続で、よくここまで書くもんだ。と感心というか、完璧に著者が汚れ役に徹して作ってるので、実に楽しい。
 ゲストとして呼ばれたのもなかなかに豪華。しりあがり寿、みうらじゅん、藤子不二雄A、国友やすゆき、ちばてつや、高い研一郎、とがしやすたか、やなせたかし、江口寿史、福本伸行が登場。一つ一つが突っ込みどこばかりなのだが、中でも江口寿史に対しての発言は暴言のレベルを超えていて実に楽しかった。相変わらず端々に浦沢直樹&長崎尚史コンビに対する悪口を忍ばせるのも著者らしさ。
人生画力対決 1