特撮館Top

ウルトラマンパワード

1993'12'5〜1994'8'25

ウルトラマンパワード事典

 「ウルトラマンG」に続くアメリカ産「ウルトラマン」の第二弾。円谷プロの本式の海外進出を狙ってのことと思われる。脚本やデザインは日本で行われたが、撮影そのものはハリウッドで行われる。
 原点回帰で「ウルトラマン」に準じた物語となり、出てくる怪獣もみんな「ウルトラマン」にでてきたもののリメイクばかりというのが特徴。ただ全般的に話が間延びしており、単なるリメイクと言うよりは改悪と言うべき作品という感じの作品になってしまった。撮影に関しても、怪獣の巨大感を出すために動きをゆっくり似させたようだが、それが逆にもっさりした印象を与えることとなった。
 とりあえず国際的にシリーズが受け入れられたと言うことが分かっただけで充分か。
 本作はアニメ制作会社として設立したGONZOのほぼ初仕事でもあり、樋口真嗣がスーパーバイザーとして名を連ねている。

主な登場人物
ケンイチ・カイ
ウルトラマンパワード
(役)ケイン・コスギ。在米日本人で、父のショー・コスギと共々日本人俳優の中では最も有名な人。日本においても「忍術戦隊カクレンジャー」のニンジャブラック役として有名。ここではまだ若く、少年っぽい姿で登場してる。
 アジア系。WINR隊員で、地上に落下した赤い玉の調査中ウルトラマンパワードと出会い、その力を身につける。
ラッセル・エドランド (役)ハリソン・ペイジ。主にテレビドラマで活躍中。
 アフリカ系。WINR隊長で常に冷徹な判断を下すが、科学用語は苦手らしい。
テレサ・ベック (役)サンドラ・ギィバード。本作が代表作となる。
 アングロ・サクソン系。主に情報分析を担当する優秀な科学者。冷静な判断能力を有し、エドランド隊長の優秀な補佐役として活躍…というか、エドランドよりも隊長らしい。これがひょっとして「ウルトラマンティガ」
ジュリー・ヤング (役)ロビン・ブライリー。本作が代表作。
 アングロ・サクソン系。主にリックとコンビを組んでストライクビートルで発進する。
リック・サンダース (役)ロブ・ロイ・フィッツジェラルド。
 一見アングロ・サクソン系だが、実は7つの民族が混ざった複雑な民族らしい。WINR隊員の中ではジョーク好きな軽いキャラ。ただ、射撃の腕は確かで使命感も強い。
話数 タイトル コメント DVD
第1話 銀色の追跡者

  監督:キング・ワイルダー
  脚本:伊藤和典
 外宇宙から落下した不思議な物体を調査するWINRのテレサ。それは地球の昆虫に似た生物の死体であることが発覚するのだが、実はそれに似た物体は人知れず既に地球に降り立っていた。そんな時、新たに赤い玉がアメリカへ向かって落下してきた。玉の調査に向かったケンイチに語りかける謎の声…
 敵は宇宙忍者バルタン星人。おそらく最も有名な宇宙人。スタイルは随分シャープになっている。これを最初に出すというのは、やはり本作の力の入り方が分かる。ちゃんとフォフォフォフォフォフォ〜という声は健在。羽を広げて高速飛行が可能。その姿は本当に昆虫のよう。攻撃方法は基本的に衝撃波。メガ・スペシウム光線であっけなく倒されてしまう。
 ウルトラマン誕生の話(本編中「パワード」という呼び方は全くされていないが、以降「パワード」で統一させていただく)。物語そのものは「ウルトラマン」第1話に準じているが、最初に戦う敵がバルタン星人であるところが特徴的。やはり最大のライバルキャラクタを最初に出してみたのだろう。
 ここでのパワードはヒーローと言うよりも謎のキャラクタと言った風情で、音楽も景気が良くないので、ちょっと不気味な感じに仕上がっている。戦い方も妙にスローだし、舞台が夜なので今ひとつ戦いが分からないと、これまで日本の特撮を観てきた目には違和感が多すぎる話になった。
 最初から日本とアメリカの特撮観の違いを見せつけるような話で、隊員はジョークを飛ばしつつ、フレンドリーなつきあい方をしてる事が分かるし、かといって任務はちゃんとチームワークを発揮して…そう言えば近年になって日本の特撮もこんな感じになってきたな。
<アメリカで特撮を作る場合、不文律がある。男3人に対し女性は2人。アジア系とアフリカ系は必ず入れること。ここでもきちんとそのフォーマットに則っている。それでもアングロ・サクソン系が3人と、やや多いかな?
 ウルトラマンパワードの声は誰だろう?妙に日本語馴れしてないというか。吹き替えがおかしい…と思って調べたらケイン・コスギ本人だとのこと。なるほどね。
 バルタン星人の声を聞いて「何がおかしい!」と叫ぶリック。確かに笑ってるようにも聞こえるけど、異星人の言語を断罪して良いのか?
 アメリカの都市部の街並みをセットで作ったのは良いけど、なんか無茶苦茶チャチい。>
Blu-rayBOX
<A> <楽>
第2話 その名はウルトラマン

  監督:キング・ワイルダー
  脚本:伊藤和典
 キャンプ地が何者かに襲われた。調査に向かったWINRはそこで硫黄化合物が散乱している事に気づく。そして行方不明となったキャンパーを探している内に、地中からケムラーが現れる…
 敵は毒ガス怪獣ケムラー。テレサによれば「ウルトラマン」に登場した個体と関連性を持つが、別個体らしい。顔はより恐竜っぽくなり、痩身になっているが、残念ながら親しみの持てる顔では無くなってしまったし、中の人が慣れてないためか、動きも悪い。ウルトラマンにより背中の甲羅をこじ開け、ストライクビートルのミサイルで中枢神経を破壊される。
 通常のウルトラマンっぽく話が展開する。しかしなんとも間が悪く、だらだらとした印象ばかりを受けてしまう。一応最後にここでも呼称は単に「ウルトラマン」らしい(区別のために以降パワードと呼ばせていただく)。
 隊長のラッセルは基地でふんぞり返ってるよりも現場に出ている方が活き活きして見える。お陰で隊長はむしろテレサのように見えてしまう。コメディリリーフ的なリックだが、ここで自らのルーツが7つの民族からなる事を明かす。アングロ・サクソンじゃなかったのか。
<ストライクビートルで調査中のジュリーは気村ー都であった瞬間、恐ろしさで目を閉じてる。そう言う訓練は当然だと思うのだが…
 巨大攻撃機であるスカイハンターが登場。空中に浮遊しているように見えるんだが、一体どういう推進器使ってるんだろう(真下にいたケンイチに風が当たってないし)。
 ここでウルトラマンの名前が確定するが、それを聞いたジュリーは「確かに女性には見えない」と発言。確かにこれはアメリカで作られた作品だ。>
第3話 怪獣魔境へ飛べ!

  監督:キング・ワイルダー
  脚本:山口 宏
 ギアナ高地にドキュメンタリー撮影に訪れたTVクルーたち。首尾良くチャンドラーを発見。撮影を開始するが、そこに新たな怪獣が現れる。
 登場怪獣は最初有翼怪獣チャンドラー。TVクルーによれば、これは怪獣ではなく有史以前の生命体の生き残りだそうだ。普通一般にはそういうのを「怪獣」と言っている。日本版とは形状が大きく異なり、羽根とか蝙蝠っぽくなってるし、顔も竜っぽい。それに対し登場するのがどくろ怪獣レッドキング。日本製のとほとんど同じだが、顔はよりドクロっぽくなってる。更に雄と雌の二体が登場。意外にも夫婦思いらしく、雌が崖から落ちたら雄までもそれを追おうとする描写があり。そして人間に友好な友好珍獣ピグモン。これも日本のものと似ているが、体中のとげとげがより派手になってる。表情の付け方などが凝っていて戸惑ったり驚いたりとパフォーマンスも多彩。
 「ウルトラマン」8話の「怪獣無法地帯」のリメイクで、出てくる怪獣もほぼ同じ。レッドキングなどは2体も登場するサービスぶりなのだが、巨大感も戦いの迫力もなく、淡々と物語が進む。更にピグモンはただ出てきただけという感じが強く、いなくても物語には支障がなかったりする。
 素材は良かったし物語の方向性も良かったんだけど、
<TVクルーの一人が「ネッシー探検のような低俗な撮影じゃない」…うん。多分それ以下だ。で、プロデューサまで出てきて、全てを仕切りたがるのはそれっぽいけど、死人が出たら全責任は自分が取らねばならないって分かってるんだろうか?
 ストライクビートルに乗ってるジュリーとリックはウルトラマンに当たるかも知れないという理由でレッドキングに対する攻撃を控えてる。そんなこと言ってたらオリジナルシリーズはどうなる?
 崖とかはゴム製らしく、体当たりするたびにぼよんぼよん跳ね返る。>
第4話 闇からの使者

  監督:キング・ワイルダー
  脚本:伊藤和典
 地震研究所で度々地震計が揺れを感知するのだが、実際には地震は起こっていなかった。謎の究明に乗り出したWINRだが、洞窟の中でケンイチが行方不明になってしまう。
 敵は地底怪獣テレスドン。オリジナルと較べ、より恐竜っぽいイメージになったが、オリジナルの良さは損なっていない造形は流石。太陽の民が派遣した怪獣。光が弱点で最初は夜に出てくるが、次には目にフィルタを付けて出てくる。装甲が堅い上に重量も重く、パワードの直接攻撃ではびくともしない。パワードによって押さえつけられたところをストライクビートルのマグネシウム弾で目を焼かれ、メガ・スペシウム光線で破壊される。
 「ウルトラマン」の7話「バラージの青い石」と22話「地上破壊工作」をミックスしたような話で、古代に地球に来たというウルトラマンに似た像が登場する。
 太陽の民なる地底民族が登場。かつて隕石により地上が住めなくなって地底に潜るが、再び地上に戻る日を夢見ている。太陽の民が信奉しているエルドラの神像はウルトラマンに酷似し、更に太陽の民の呼びかけに答えるかのような反応を示す…明らかにはされないけど、これってむしろ「ウルトラセブン」42話「ノンマルトの使者」のようでもある。この辺が全くツッこまれてないのが残念。
 こういう事件には当たり前のように陸軍が登場するのは流石アメリカという所か。
<太陽の民がエルドラの神像を拝む際、スペシウム光線の発射ポーズを取ってる…やっぱりこれ本当にウルトラマンなんじゃないか?
 テレスドンが光に弱いことが分かり、強力な投光器を使って撃退しようとするWINRと陸軍連合。しかし、肝心の投光器が小さすぎる上にちゃちで、全然迫力がない。
 フラッシュプリズムが光ると太陽の民はまぶしすぎて全滅してしまう。それを承知でわざわざ太陽の民からフラッシュプリズムを取り戻したケンイチって、無知な地底の民を騙しただけでは?>
第5話 電撃防衛作戦

  監督:キング・ワイルダー
  脚本:山口 宏
 ウランを運ぶトラックが襲われ、地下から出てきた怪獣によりウランが奪われてしまった。地下を動き回るウラン反応を調べたWINRはそれが怪獣ガボラであることを突き止める。強力な放射能を出すガボラに攻撃ができないWINRだが、ガボラは新たなる餌を求め原子力発電所に近づいていった。
 敵はウラン怪獣ガボラ。オリジナル同様四枚の外殻で顔を守っている。オリジナルよりは顔が小さいみたいだ。全身がウランで出来ているため、思い切った攻撃ができない。生きた原発と言っても良い。餌を求めて地上に出た所をWINRとパワードにボコられて倒される。
 経済活動と怪獣退治の二律背反が描かれる話で、ある意味最も特撮ものらしい。しかも碌に攻撃が出来ないという二重苦が描かれた話でもある。「ウルトラQ」の18話「虹の卵」と「ウルトラマン」9話「電光石火作戦」を合わせたような話。平成版ゴジラでもこの手の話は結構出てきた気がする。
 設定は良いのだが、今回もアクション部分は大変ぬるめ。1話の対バルタン星人での戦いを思わせる描写もあり。
<ウラン採掘の責任者は自分自身を天才呼ばわりしてるが、あっけなくガボラに踏みつぶされてしまった。しかもご丁寧に足をこね回すようにして…
 攻撃したら核爆発が起こるとか言っておきながら平気でガボラに攻撃を加えるWINR。これを言ったら元も子もないが、ガボラが放射性物質で出来ているなら、当然体内でウランを濃縮しているのだろう。物理反応を起こす生物なんて事を考える時点で話が破綻してる。>
第6話 宇宙からの帰還

  監督:キング・ワイルダー
  脚本:伊藤和典
 ジュリーの姪であるカレンが父が帰ってくると話し出した。彼女の父ジャミラは宇宙飛行士で、宇宙で行方不明となっていたジュリーの義兄でもあった。カレンの言うことを信じないジュリーの姉はジュリーに助けを求めるのだが…
 敵は棲星怪獣ジャミラ。ジャミラ・ミラーという名の地球人だったが、木星探査の途中で行方不明になってしまい、宇宙人と同化して帰ってくる。一応人間の形を取ることも出来るのだが、徐々に身体が怪獣化していくらしい。オリジナルよりも宇宙服そのもののような形をしてる。
 これまでの中で一番出来が良い作品となった。ただ、物語そのものは本当にB級映画の『溶解人間』(1977)そのまんまなんだけど。
 オリジナルのジャミラの話に近いが、そこに父娘の愛情を付けた辺りが現代っぽい(あるいはアメリカっぽい)。更にジャミラの事は情報遮断されているとか、組織的な厄介毎も同時に演出。巨大怪獣とストレートに戦わせるよりもこういう陰謀を暴くみたいな話の方がはまるような気がする。お国柄だろうか?
 ウルトラマンとジャミラの類似性がここで語られてるのが興味深い。人間サイドから考えるならば、明確な敵がいて、それと戦うのならば正義であり、もしその敵の存在がなければ邪悪な存在になりかねない。事実ケンイチとウルトラマンが合体したのは赤い玉だったが、ここでジャミラが謎の宇宙人と合体したのは青い玉だった。
 エドランド隊長がまるでお役所仕事のようにみんなを停職処分にしてしまう。しかし、これは実は…という話に持って行ったようだが、ここは説明不足か。
<情報部が今回大活躍するが、MIBみたいなやりかたで、どう見ても怪しいだろう。
 人間が怪獣化するってアイディアはいいが、変化は一瞬で終わってしまう。徐々にメタモルフォーゼしてくれたら良かったんだが、そういうサービスは無いらしい。
 ところでジャミラに取り憑いた宇宙人は一体何を思って地球に来たのだろう?その辺が全然説明されてない。
 とにかく物語そのものが『溶解人間』で『メン・イン・ブラック』(1997)やら『エイリアン』(1979)など、色々な映画をくっつけているのが特徴だ。>
第7話 灼熱の復讐

  監督:キング・ワイルダー
  脚本:山口 宏
 森林開発が進むシアトル郊外に次々に山火事が起こる。調査に向かったWINRは現場で怪獣を発見する。激しい高温を発するザンボラーにあらゆる攻撃は通用しない…
 敵は灼熱怪獣ザンボラー。オリジナルと較べ顔はスマートに、身体は巨大にという変化を見せ、より恐竜っぽいデザインとなっている。高温を発するのだが、そのあまりの温度のため身体に到達する前にあらゆる攻撃は溶け去り、更に上昇気流はハリケーンをも作りだす。空気が歪んでいるためレーザーサイトも姿を特定できないという、強力な怪獣。更にパワードの攻撃までも全く通用せず。結局倒すことは出来ず、自ら去っていっただけ。
 怪獣そのものにトピックを当て、その退治方法を模索する話で、怪獣ものの基本とも言える話。次々に作戦が投入され、その度ごとに撃退される。人間ドラマの話よりはこっちの方がより特撮としては正しいと思う。人間の英知は自然には敵わないというオチもまあ良し。ただ全然格闘とかなかったのはちょっと残念なところ。
<ザンボラーの熱は一体どれだけあるのか。科学的な見地で語られてるが、それで問題となるのは、何故地表は溶け落ちないのか?というところ。確かにあの温度だったら地下に潜ってしまうよ。
 ザンボラーと対峙したパワードはいきなり合掌。実際これは「去ってくれ」とお願いしてるんだろうけど、ちょっと変な感じ。それでザンボラーの怒りは去ったが、それは単に町に行くのを止めただけ。アメリカみたいな広大な大地を持つからこういうオチが出るんだろうか?>
第8話 侵略回路

  監督:キング・ワイルダー
  脚本:伊藤和典
      ジョン・ダグラス
 会社から解雇されたリチャードは復讐のためコンピュータ・ウィルスを作成中にコンピュータ生命体からコンタクトを受ける。ダダと名乗るその相手の話に乗ってしまったリチャードだが、ダダはリチャードの身体を使って自分自身を実体化させ、地球侵略を開始した。
 敵は三面怪人ダダ。ここではコンピュータ生命体として描かれている。元々幾何学模様を持つ身体の模様はコンピュータ上で人間に催眠作用をもたらすものらしい。オリジナル同様の模様を持った顔をしたものが三体登場。最終的には合体して巨大化する。肉体は仮のもののため、直接攻撃は通用しないが、送電線を破壊することで地上から姿を消す。
 コンピュータが人間を襲うという古典的なSFものにダダの話を絡めている。元々ダダという存在が「ウルトラマン」では特殊な存在だっただけに(宇宙人のくせに「〜星人」と付かない唯一の存在でもあった)、ここでその存在に説得力を持たせたことは評価できる。ただストーリー自体が相当にぬるめに作られているのが残念。
<リチャードの家に入ろうとするリックは手持ちのカードにちょっと土を付けただけで簡単にオートロックを外してる。ある意味こいつは凄い天才かも…出来ないって。
 ダダの姿と断片だけでケンイチはダダの真実を推測してしまう。更にリチャードの組んだパスワードをあっという間に解いてしまう。こいつも又一種の天才だな。
 ダダに占拠されたニューロネット・インダストリーに入り込む際にラッセル隊長が持ってきたのはなんと中性子爆弾。そんなもん使用したらダダはおろか地域ごと吹っ飛ばしてしまうぞ。
 珍しい銃撃シーンがあるが、WINRの面々は相当射撃の腕が悪いらしい。あれだけ撃っておいて一発しかダダに当ててない…いや、これはむしろリアルなのか?
 パワードに対してダダがしてる攻撃ってそこら辺にある車を超能力で(電磁力で?)動かしてパワードにぶつけるだけ。高度のように見えて随分と単純な攻撃だな。
 戦い終わった後、いなくなったケンイチを全く無視してるWINRの面々。結構可愛そうかも。>
第9話 復活!二大怪獣

  監督:キング・ワイルダー
  脚本:山口 宏 
 大学新聞のスクープを狙う学生がクリアウォーターキャニオンの洞窟で発見した不思議なカプセル。一方、川底からもう一つのカプセルが発見され、WINRとテレサの恩師のウィテッカー教授がその調査を開始する。
 敵は青色発泡怪獣アボラス赤色火焔怪獣バニラ。アボラスはオリジナルよりもかえって顔が大きくなっていて、凶悪さの度合いが増してる。洞窟の中で大学生によって封印されたカプセルが発見され、カメラのシャッター音で復活してしまう。一方のバニラは逆にオリジナルよりも顔が小さくなり、鳥類っぽい風貌となってる。ウィテッカー教授が、このカプセルが音で開くことを突き止め、つい開けてしまったために復活。口から炎を吐く。一旦アボラスの溶解液に溶かされるが、復活して二体でパワードと戦う。溶解液と火炎でパワードを苦しめるが、スカイハンターの音波攻撃により動きが鈍くなったところをを二体ともメガ・スペシウム光線によって倒される。
 アボラスとバニラの戦いはオリジナルにもよく似ていて、最後にスタジアムで戦っているのもそれっぽい。ただ、戦いはゆっくり過ぎて盛り上がらないことおびただしい。登場する人間も最小限度だし…
 テレサは大学でも将来を嘱望された人物だったらしいことが分かる。恩師のウィテッカーはWINRでの活動を「才能の無駄遣い」と断定してしまっている。
 二つのカプセルが偶然二つとも同時期に発見されるのは変な気がするが、二つが同じ所から出てきたと言う事だったらあり得るかな?
<ウィテッカー教授は研究のためにはなんでもOKというマッドサイエンティストで、その性格は大変素晴らしい…で、やってしまってから「パンドラの箱を開けてしまった」って…おい。責任持てよ。
 アボラスのカプセルを開けてしまったのは脳天気な大学生二人組。ジェシーという女性の方は、どんな危機に陥ってもスクープを狙う。職業意識が高いな。>
第10話 二人の英雄

  監督:キング・ワイルダー
  脚本:山口 宏
      バド・ドバートソン
 アントニオ湾石油会社の石油タンクに次々と事故が起こっていた。調査の結果、海中に巨大な星型の物体があることが分かる。潜行艇で調査を開始するジュリーとリックだったが、その物体が巨大怪獣と分かる。一方、アントニオ湾石油会社の調査に向かったケンイチはそこでかつてアカデミーの同期だったアルトゥーロと再会する。
 敵は油獣ペスター。オリジナルよりも顔つきは凶暴に、そして両翼を閉じることによって星形の形状を取る事も出来るようになった。WINRの液体窒素弾も通用しなかった。パワードに空高く放り投げられた後、メガ・スペシウム光線で粉砕される。
 久々にケンイチが中心の話で、アカデミーではエリートだったアルトゥーロとの交流が描かれているが、実際に目立っていたのはアルトゥーロの方で、更に海中で作業していたジュリーとリックの方が登場時間が長い。今ひとつ主人公に個性がないな。感情を荒げる人もいなかったので、今ひとつ印象が薄い話になってしまった。
<リックは潜水艇に乗るのが嫌いな様子。海になんかトラウマでもあるのか?
 パワードは片手でペスターを空中に放り投げてメガ・スペシウム光線を喰らわせる訳だが、ペスターの身体の中って石油で満たされているはずなので、地上で倒したよりも大惨事が起こりそうだ。>
第11話 よみがえる巨獣

  監督:キング・ワイルダー
  脚本:伊藤和典
 1億8千万年前の恐竜ゴモラサウルスのミイラがアンデス山中で発見された。それは恐竜館に安置されることになったのだが、折からの大雨を受けて水分を吸ったミイラがなんと復活してしまう。
 敵は古代怪獣ゴモラ。オリジナルと較べ、角が水牛のようなものになっていて、生態も水牛に似ているらしい。恐竜のはずなのにほ乳類っぽいな。暴れることもなく、数次にわたる捕獲作戦が失敗した後、パワードのキックを受けただけで息を引き取る。
 物語は「ウルトラマン」26話〜27話の「怪獣殿下」に準じ、ゴモラ捕獲作戦が展開される。ただ、ゴモラ自身がミイラから復帰したばかりで力がなく、オリジナルの力強さを全く感じさせなかったのが残念。
<ゴモラサウルスを復活できないか?というテレビ番組を見たケンイチは「生きた恐竜が甦ったら、科学の歴史が塗り替えられる」とか言ってたけど、ここまで立て続けに怪獣が出てきて今更。と言う感じはする。
 ゴモラのミイラを見張っていた警備員はどうやら重度のガンマニアらしく、ゴモラの声を聞いた途端トリガーハッピー状態に…アメリカではこんなのが警備員になれるのだろうか?
 「絶対に撃つな」という指令を「撃て」と聞き間違えたリック。こんなのに地球を守らせてるというのも凄い。
 ミニチュアと着ぐるみがここまで極端に違う造形というのも寂しいな。もうちょっと造形家には頑張って欲しかった。>
第12話 パワード暗殺計画

  監督:キング・ワイルダー
  脚本:伊藤和典
 パワード抹殺のため、バルタン星人は月の裏側に母船を隠し、そこから怪獣ドラコを地球に送り込んでくる。ドラコはレッドキングを倒し、パワードに挑んでくるが…
 敵は彗星怪獣ドラコ。バルタン星人から派遣されてきた怪獣で、手に付いた鎌が武器。落下した所に居合わせたレッドキングをあっという間に倒してしまい、パワードのメガスペシウム光線をも跳ね返す。オリジナル版と較べると羽根が巨大化したことと、腕が大きな袖の付いた服状になっていること。姿そのものも含め、昔イメージされた中国人そのもので、鎌も暗器っぽい感じになってる。スティンガーミサイルやメガスペシウム光線をはじき返す外殻を持つ。そしてどくろ怪獣レッドキングが再登場するが、あっけなくドラコの鎌に殺されてしまう。
 「ウルトラマン」25話「怪彗星ツィフォン」のリメイク。ただしドラコとレッドキングの戦いはドラコの圧勝になっている点が大きな違いで、ドラマがあまりなく、戦いが主であること。ただ、相変わらず戦いそのものは間延びしていて面白味は無い。
 後、ドラコはパワードのデータを母船であるバルタン星人の宇宙船に送り、ちらっとゼットンが登場しているのが印象深い。
<繭を調べるためにWINRはカイを派遣しているが、ドラコとレッドキングが暴れ回っている時にやる必要性は低いと思うのだが。なんで命の危険を冒してまでそんなことをしなければならないのか、説明が全くなし。>
第13話 さらばウルトラマン

  監督:キング・ワイルダー
  脚本:伊藤和典
 先のドラコ戦で傷を負ったカイはWINRの医務室に収容された。そこでベックにウルトラマンの秘密を知られてしまう。更に休む間もなくもう一つの繭が地上には落下し、WINR本部が壊滅してしまう。そこから最強の怪獣ゼットンが現れるのだった。
 敵は宇宙恐竜ゼットン。オリジナルとは違い、巨大な羽根を持つのが特徴。ほぼあらゆる攻撃を相殺する事が出来るのだが、メガ・スペシウム光線の連発で倒される。そしてゼットンとパワードが相打ちになった時に現れた宇宙忍者サイコバルタン星人。頭の角がくっついたバルタン星人。パワードが倒れたことを知り、宇宙船に乗ってパワードにとどめを刺しに来るが、パワードの仲間が現れることで母船毎破壊されてしまう。
 最終回。最強の怪獣ゼットンが登場。先のドラコでバルタン星人はパワードの力を試し、今度はパワード抹殺のためにゼットンを送り込む。
 パワードが誰だかがはっきりと語られるが、それらが偶然ではなく科学的検証によって論理的に導き出されているのが大きな特徴だろう。
 そして最終決戦はパワードがカイから分離して戦っているが、この話ではこれまでのシリーズとは異なり、ウルトラマンが人間を助けるために同化したのではなく、人間の側がウルトラマンを助けるために同化しているという設定なので、これで良いんだろう。それが原因か、ウルトラマンがはっきりと主人公に対して決別の言葉をかけたのは初めてじゃなかったかな?別れは結構あっさりしてるが、これの方が良いんだろう。
 最後の結論は誰の中にもウルトラマンがいる」だった。あれ?この台詞どこかで聞いたことが…(年代的にはこっちの方が早かったか?)