ビヨンド・ユートピア 脱北
Beyond Utopia |
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ジャナ・エデルバウム
レイチェル・コーエン
スー・ミ・テリー
シャロン・チャン
マイケル・Y・チョウ(製) |
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★★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
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これまで北朝鮮からの脱北者を逃している韓国人牧師のキムのが、今回は切実な依頼によって幼い子ども2人と80代の老女を含む5人家族を脱北させようとしていた。そんなキム牧師に密着し、中国、ヴェトナム、ラオス、タイを経由して亡命先の韓国を目指す総移動距離1万2千キロに及ぶ過酷で危険な旅路に挑む緊迫の脱出作戦を監督がフィルムに収めたドキュメンタリー。
ほぼ中国ロシアとだけ国交を開き、他の国々とは完全に交渉を断ってる状態の北朝鮮。中がどうなっているのかよく分からない。映画に関しても現在どのような状況なのか分からないまま。どんな映画が作られてるのか興味のあるところ。
それでも何故か他の国で作られたドキュメンタリーはいくつか観られる状況にはある。私がこれまで観た作品だと、『将軍様、あなたのために映画を撮ります』(2016)くらい。それでもある程度国内状況をうかがい知ることは出来た。ただ、そこに描かれるのはメディア界の中身で、市井の人々については一切語られていない。
その意味において本作はかなり画期的。本作のメインは脱北のシステムに関してのドキュメンタリーだが、北朝鮮内部のことがかなり描かれていた。
まずメインの脱北についてだが、昔のように北朝鮮から直接韓国に入れなくなっているため、大変複雑な経路を取る必要がある。本作で描かれるのは中国からヴェトナム、ラオス(ここまでは社会主義国)、そしてやっと自由経済圏のタイへと到達するまで。それを行っているキム牧師というのがほぼボランティアで行っているところがドラマチックだ。ちょっとだけ物語を付ければそのまま創作のドラマに出来そうだ。ドキュメンタリーならではのリアルな緊迫感とドラマチックさを併せ持つ面白い作品になってる。
メインの物語も面白いのだが、もっと興味深いのが北朝鮮内部の事情についてだろう。世界的に有名になったマスゲームがどのように訓練されているのか、小学校で他の国のことをどのように言っているのか、飢饉になった時の餓死者のこととか、人糞の利用についてとか、とにかく全く知らないことだらけで、観てるだけで驚きの連続。
ドキュメンタリーでここまで面白くさせてくれる本作は確かに凄い。 |
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