ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り
Dungeons & Dragons: Honor Among Thieves |
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ジェレミー・ラーチャム
ブライアン・ゴールドナー
ニック・マイヤー
デニス・L・スチュワート
ジョン・フランシス・デイリー
ジョナサン・ゴールドスタイン
クリス・パイン
ゼヴ・フォアマン
グレッグ・ムーラディアン(製)
ジョナサン・ゴールドスタイン
ジョン・フランシス・デイリー
マイケル・ジリオ(脚)
クリス・パイン
エドガン
ミシェル・ロドリゲス
ホルガ
レゲ=ジャン・ペイジ
ゼンク
ジャスティス・スミス
サイモン
ソフィア・リリス
ドリック
ヒュー・グラント
フォージ
クロエ・コールマン
キーラ
デイジー・ヘッド
ソフィーナ
イアン・ハンモア
ザス・タム |
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★★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
3 |
4 |
3 |
5 |
3 |
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魔法の世界フォーゴトン・レルムでかつて聖なるパラディンであったが我欲で堕落してしまい、今は盗賊をしているエドガン(パイン)は、娘を置いたまま相棒の戦士ホルガ(ロドリゲス)らと共にお宝探しに行ったところ、仲間のフォージ(グラント)の裏切りで二人揃って牢に入れられてしまった。数年後脱獄してやっとの思いで娘のところに行ったところ、フォージはある城塞都市の太守となっており、娘はフォージの養子として育てられていた事を知る。そこでようやくフォージが裏切り者で、しかも魔術師と組んでこの都市の人間全ての命を悪魔に捧げようとしていることを知ったエドガンだったが、事実を知られたフォージにより殺されそうになってしまう。なんとか都市を脱出したエドガンは魔法使いの青年サイモン(スミス)、動物に変身する能力を持つドルイドのドリック(リリス)、かつてエドガンが属した聖騎士のゼンク(ペイジ)らを仲間にし、娘を取り返し、フォージの野望を打ち砕こうとする。
1980年代に一気に世界に広まって人気が出たゲームに「ダンジョンズ&ドラゴンズ(略称D&D)」がある。これはTTRPG(テーブル・トーク・ロール・プレイング・ゲーム)というもので、ゲームボードを中心に複数の人たちが集まって、様々なストーリーミッションをこなしていくというもの。実は世界初のTTRPGで、今もまだ続いている世界最長のゲームである。
私も80年代から90年代にかけて何作かのTTRPGはプレイしているが、残念ながらD&Dは未体験。
その後パソコンゲームとしてD&Dが登場し、そちらの方で二作ほどプレイしている。そんな訳もあって、そこそこは思い入れもあった。
それだけ人気がある作品なので、当然映画化の話も初期からあったそうだが、実際に映画化されたのは2001年で、『ダンジョン&ドラゴン』(2001)として映画化された。この映画は主人公が戦士とかの格好良い職業ではなく、冴えない盗賊という観点が面白かったのだが、褒められるのはそこ以外無くて、悲しくなるほど酷い出来の作品だった。続編の話も全く無かったし、20年間音沙汰もなかったので、おそらくその失敗は尾を引いたはずだ。
実際私も本作のアナウンスを聞いた時、真っ先にその失敗作を思い浮かべたし、特にリアルなファンタジーゲームがPC上で普通にプレイできる昨今、映画にする意味もないと思っていたのだが、いざ公開されると殊の外評価が高く、観ておかねば損かな?と考え直して視聴した。
結論から言うと、劇場で観て大正解。本当に良く出来た作品だった。
本作の良いところはたくさんあるが、徹底的に無駄を省いたことが最も大きな利点だったとは思う。
ファンタジーやSF映画における無駄というのは、設定に他ならない。ファンタジーは現実世界とは異なる世界が舞台なので、現実の常識では語れない部分が多量に出てくる。この辺をどう説明するかが問題となる。一つ一つ説明していると物語のスムーズさを阻害するし、逆に説明しないと観てる方が何が何だか分からない。
それで本作はほとんど説明しないことを選んだ。これは受け止める視聴者がついてくると信じていたからだろう。
これは今の時代に作られたことが大きい。D&Dプレイヤーが持つ常識だけでなく、ファンタジーだったら、既にロード・オブ・ザ・リングが先行してあったため、ファンタジーの基本は知っている人が多い。だから最低限の説明で後は察しろという感じにした。
膨大な量の設定を事前に知っているという前提で作るというのは、視聴者を信用しすぎだし相当な冒険だが、しかしそのお陰でものすごくテンポが良くなった。説明が無いわけではないが、ほとんど一言だけで説明は済ませ、後は観て察しろという内容にしたお陰でストーリーに遅滞がなく、ジェットコースターに乗ってるように新しいストーリーに運ばれていく。それがとても心地よい。
もう一つの無駄省きは、時間の経過をあまり描写しなかったこと。この作品は狭い地域だけで成立はするものの、それでも劇中あっち行ったりこっち行ったりが多い。その際道中の苦労や会話などはできるだけ省き、舞台から舞台へと次々と展開させていった。これもまたテンポの良さにつながっている。
そのお陰でかなりの内容を詰め込むことが出来た。通常ゆっくり作れば二本分くらいの内容を詰め込みながらこの時間に収めたのは素晴らしかった。
キャラの良さもあり。通常この手の作品だと主人公が戦士とか魔術師とか、力を誇示するパターンが多いが、本作では主人公の職業は盗賊でパーティーで一番弱い。ただ頭が良いのと口のうまさ人を引きつける魅力があって、それがリーダーたらしめている。その魅力に騙されてみんなが集まって、協力している。全部あっけないが、その辺の仲間集めも見所だし、弱いなりに工夫する主人公の努力も魅力的。それに何より仲間達がとても個性豊かで魅力度満点。大変バランスの良い作品に仕上がった。
キャラで言うなら、ラスボスでありながら小悪人というフォージ役のヒュー・グラントも良かった。『パディントン2』(2017)に続き、嬉々として悪人を演じられる度量の深さは、まさにジョンブルって感じで素晴らしい。
結果として、大変高品質にまとまったゲーム原作作品。巧いバランスの作品だった。 |
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