サムライ 1967 |
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ジャン=ピエール・メルヴィル(脚)
アラン・ドロン
ナタリー・ドロン
フランソワ・ペリエ
カティ・ロジェ
カトリーヌ・ジュールダン
ミシェル・ボワロン
マルセル・ボズフィ |
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★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
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ソフト帽にトレンチ・コートといういでたちで淡々と仕事をこなす殺し屋ジェフ(ドロン)。今回の任務はクラブのオーナーを殺すことだったが、廊下へ出た時に歌手のヴァレリー(ロジェ)に顔をみられてしまった。潜伏先を警察に急襲され捕まってしまったジェフだったが、何故か肝心の目撃者であるヴァレリーはジェフが犯人であることを否定する…
特に日本では二枚目スターの代名詞のような存在として有名なアラン=ドロンだが、本国フランスでは役者としては相当苦労したらしい。事実単なる顔の良さだけでは人気に陰りが出てきたため、自分の可能性を求めて色々な役をこなしている(海外での仕事も多い)。時としてコメディにも出演したりしたが、その中で一番はまり、見事に転身を図ったのがストイックさを信条とする彼なりのフィルム・ノワールであり、本作はその最初の作品となった。
ここでのドロンはそれまでの明るさを完全に捨て、ひたすら静かに、淡々と仕事をこなす役を好演している。他のフィルム・ノワールとは違い、ファム・ファタールは存在せず、あくまでたった一人だけしか画面に登場せず、メルヴィル監督はその姿をひたすらに追いかけていく。『サムライ』という表題はそのようなドロンの姿そのものを彷彿とさせてくれる(本人が大の日本びいきというのもあるんだろうけど)。ただ、当時のフランスにおける侍の認知度というのは、きっと忠義とか義理人情という本質的なところではなく、ストイックな強さという点にあるらしく、サムライというよりは修行僧とかのほうに近かった気もせんではない(笑)
この当時のフランス製フィルム・ノワールらしく、物語そのものは結構いい加減なところがあるが、それを上回ってドロンの存在感が高いし、モノトーンとさえ見える画面の雰囲気がよくマッチしていた。職人を思わせるメルヴィル監督のカメラ・アングルの取り方も見事だ。ひたすら静かに、そしてストイックに。ここまで徹底してるのはフィルム・ノワールの中でも珍しい作品だ。
ちなみに本作でアランの妻ナタリーがジェフの恋人ジャーヌ役で役者デビューを果たすが、実は本作で女優業に目覚めてしまい、二年後に離婚してしまうというおまけも付いた…実生活の方がフィルム・ノワールの定式に則ってたりして(笑)
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