| 侍タイムスリッパー |
|
|
|
安田淳一(脚)
山口馬木也
冨家ノリマサ
沙倉ゆうの
峰蘭太郎
庄野崎謙
紅萬子
福田善晴
井上肇
安藤彰則
田村ツトム
多賀勝一
吹上タツヒロ
佐渡山順久 |
|
| ★★★★ |
| 物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
| 4 |
4 |
4 |
5 |
4 |
|
幕末。新選組をはじめとする佐幕派と長州薩摩を中心とする討幕派の争いは激化していた。そんな中、佐幕派の会津藩士高坂新左衛門(山口馬木也)は長州藩士風見恭一郎(冨家ノリマサ)を討つ密命を受け、京都の寺で風見を待ち伏せした。ところが戦いの最中に起こった落雷で気絶してしまい、気がつくと現代にタイムスリップしてしまった。そこで混乱して騒ぎを起こしてしまうのだが、近くの住職夫妻に助けられる。そこで現代のことを学び、この時代で生きる事を決意する。初めてテレビの時代劇を観て、ここでならば仕事が出来ると、知り合った映画助監督の山本優子(沙倉ゆうの)を通して斬られ役のプロ集団「剣心会」に入門するのだった。
2024年の邦画界に一作の映画が激震を与えた。それは僅か2400万円で作られた自主映画だったのだが、公開直後にSNSで大きな話題になり、単館上映から一月ほどで拡大公開、更に全国公開へと移ったという、映画界におけるシンデレラストーリー的な作品となった。丁度私が住む地方都市にもやってきたので早速観に行ったのだが、映画好きも多いらしく、大入り満員で、これは凄いもんだと思えた。あと、なんだか高齢者が多かったのも面白いところ。
単館上映から全国的なムーブになったというと、過去『カメラを止めるな!』(2018)という前例があって、初めてというわけではないが、あちらはストーリー運びの巧さの他、物語のトリッキーさが大きな要素だった。対して本作は本当にストレートな作りで、シンプルな物語でもしっかりした作りの作品が出来るということで、後進に大きな勇気を与えたのではないかと思える。
設定上SFチックだが、基本路線は一人の男が様々な悩みを経て自分の生きる道を見いだすまでを描くものとなり、非常に単純。しかしむしろこの単純さを見たかったのだと実感させられる。
物語を単純化させ、且つ面白くするためには考え抜かれた演出が必要になる。本作はコメディなので笑える要素が多いが、笑えるようその中に絶妙なタイミングで自分自身を見つめる要素と、自分が信じたものが崩れたとき、その代わりにどう生きていくかを真剣に考える要素がしっかり入っている。単純に物語だけでなく、それは観てるこっちの身に迫るものもあって共感度も高い。一見蛇足のように見える恋愛要素も程よいスパイスになっていて、緩急取り混ぜた演出が本当に上手い。
とにかく隙の無い作品で、みんなが待っていた、思った通りの作品が目の前にある喜びを感じさせてくれる良作となっている。
ただ、本作の場合は徹底的なローコストである一方、江戸時代のセットを自由に使わせてもらえたという強みがあったのは事実で、安っぽさを全く感じなかった。ストーリーの良さを最低限支えるセットの強み。それを可能とさせた事前のプレゼンの重要性というものも考えさせるものだった。 |
|
|