ルパン三世 ルパンVSクローン人間 1978 |
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藤岡豊
郷田三朗
片山哲生(製)
大和屋竺
吉川惣司(脚) |
山田康雄 |
小林清志 |
増山江威子 |
井上真樹夫 |
納谷悟郎 |
大平透 |
富田耕生 |
柴田秀勝 |
飯塚昭三 |
村越伊知郎 |
嶋俊介 |
宮下勝 |
西村晃 |
三波春夫 |
赤塚不二夫 |
梶原一騎 |
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★★★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
5 |
4 |
5 |
4 |
5 |
劇場第1作 |
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エジプトのピラミッドから「賢者の石」を盗み出したルパン。その石は不二子によって奪われてしまうのだが、それは“永遠の命”を探求するマモーの仕業だった。上手く偽物とすり替えていたルパンだったが、それを知ったマモーによって拉致されてしまう。アメリカ大統領特別補佐官からマモー追求の仕事への参加を申し入れられた五右衛門や次元もマモーの本拠地へと進路を取るのだが…
1979年邦画興行成績9位。1979年は『銀河鉄道999』(1979)がトップを得ているため、この年のベスト10にアニメーションが2本も入ったことになる。
これまで三回のTVシリーズが展開されたルパン三世シリーズ。最も有名なのは3年もの間放映された第2期シリーズだが(通称赤ルパン。これが現在に至るもフォーマットとなっている)、第1期シリーズ(通称青ルパン)も多くのファンを持つ。本作は丁度第2期シリーズ展開中に公開され、ルパンのスーツも赤いが、話の展開も設定も、明らかに第1期からの影響を強く受けた作品で、実にハード且つエロティックな物語が展開される。大塚康生の演出も冴えまくり。
のっけからルパンの処刑というショッキングな映像が出され、掴みは充分。更にその説明が全くないまま盗みのシーンが展開されていく。この辺のやり方は今考えても本当に見事で、ぐいぐいと引き込まれていく(これだけショッキングなシーンであっても前半ではその事が全く触れられず、伏線としても随分凝ったものになっている)。更に劇場版だからこその派手な演出とむき出しの暴力シーンやお色気など、当時小学生だった私には刺激が強かったが、だからこそ引き込まれたし、強烈な印象を与えてくれた。
もの凄いパワーを持った作品なのだが、意外に細やかな演出にも(エッシャーの絵や後半部分の名画の焼失や影の演出など)もあり、ハードな中に笑いの要素まであり(顔斬られたら景色が三分割するというあり得ないシーンはアニメならではの演出だが、これって通常考えつかないぞ)、とにかく演出に関してはもはや言うこともないほどの計算された面白さがあったし、緩急もしっかり考えられていて、徐々にマモーの正体が分かって来るに連れて戦いは絶望的になっていくあたりの演出も見事。仲間が次々と脱落し、最後はルパンしかいなくなり、武器もほとんど無い状態で、どう見ても絶望的な状態で果敢にマモーに突っかかっていくルパンの姿には心から声援を送ったものだ。次々と人も死んでいくし、それに対し罪悪感を覚えることもないルパンの姿勢も良し。
ここでのルパンは常にイッパイイッパイで、あがき続けるが、それでも馬鹿正直にひたすらまっすぐに進んでいく、そんなルパンもいて良い。次元や五右衛門もやっぱり悩む。悩んだ結果として、彼らは脱落するのだが、ルパンだけはまっすぐに進んでいく。自分が自分であるため、そのアイデンティティはルパンにとっては、まっすぐ進むしかなかったのだから。殊これがルパンだからこそ、このまっすぐさが映えたのだ。
そしてよく考えてみると、実はオープニングで死んだルパンは一体何だったのか?その答えは出ていないのだ。マモーは眼前のルパンを「オリジナル」と言っているものの、本当のルパンは死んでいたのかも知れない。だからこそ他の多くのルパンものの作品と較べても、格段に印象深い。「お前はオリジナルかコピーか?」そんな問いに対しても、「馬鹿野郎。オレはオレだ」で返してしまう。今存在する自分が全て。その単純さで乗り切ってしまう。そしてその答えを保留したまま終わるってのも洒落てるね。答えは保留して構わない。生きているなら、それが全てなのだから。
魅力を説明するのはいくらでも出来るものの、実は本作には細かいことは言う必要はない。とにかく圧倒的な映像の持つパワーに押されっぱなしで、最後の気の抜けた主題歌を聴いてようやくほっとする。と言うのが正しい見方だったのだろう。
改めてレビュー書いていたら、気分的に徹底的に盛り上がってしまった。点数も★4から★5へとアップさせていただく。
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