2004'04-06

Home

04'06'29 悪と不純の楽しさ (著)曾野綾子 <amazon>
 現代の日本は誰も彼も「良い人物」であろうとする。しかし、本当にそれで良いのか?むしろ自分が悪であるとすることで、見えてくることも多い。悪の楽しさ。と言うものを中心としてまとめたエッセイ集。
 世間一般の常識を無視し、自分のスタンスをはっきりさせている著者の作品は、色々反発も覚える部分があるけど、読んでいてとても楽しい。自分自身が常識というものにどれだけ縛られているのかを痛感させられるから。
 これだったら人に認められる。と言う価値観がいつの間にやら高くなってる自分というものに気付かせられることは、一種の恐怖であり、快感でもある。
04'06'22 げんしけん4 (著)木尾士目 <amazon>
 咲によって放火騒ぎを起こしてしまい、自治会から活動休止を言い渡されてしまう現視研。互いの下宿先を活動の場に移し、細々と活動が続けられるが…
 なんだか秋にはアニメ化と言うことで、盛り上がってる(のかな?)作品だけど、ようやく本巻を読んで、ようやく分かったことがあった。確かに凄く面白いんだけど、心の奥でどこか拒否感を覚えるのか。
 今まで考えていたのは、イタいキャラクターが出過ぎるのか、
(一応の)主人公の笹原の思考パターンが私に似ているため、心がえぐられるからかとか思っていたが、実は本当に単純な話だった。
 
私はラブコメが苦手。これだけ。考えてみれば、あれほど好みだったゆうきまさみが「じゃじゃ馬グルーミン☆UP」始めた途端、読めなくなってしまったのも、それだけが理由だった。いや、ラブコメも好きな作品はあるし、何冊か持ってもいるんだが、読むのにえらく時間がかかる上に、読み直すこともあまりしない。立ち読みは絶対出来ないし、単行本も買って一度読めばそれでおしまいという状態。最近のアニメに全く反応できない大きな理由はそれなんだろうとも思える。
 かなり突っ込んだ現代的なものになっているとは言え、本作には確かにその要素が結構強い。本巻はよりその要素が強く感じられてしまった。漫画一冊読むのにこんな時間がかかるとは思わなかった。
 漫画開けたら栞が入っていたが、これは4種類あるそうだ。ちなみに私は大野さん。一応当たりと言っていいかな?(笑)
げんしけん 4 (4)
04'06'14 地球光 (著)アーサー・C・クラーク (訳)中桐雅夫 <amazon>
 月面都市に向かう会計士のサドラー。彼は実はもう一つの顔を持っていた。地球に反旗を翻そうとする惑星連合のスパイを探り出すために。しかし肝腎なスパイは見つからないまま、ついに始まってしまう地球と惑星連合の戦争!
 著者の作品は読みやすいし、設定もしっかりしてる上に物語も良い。かなり好みの作家…で、ありながら読んだ作品はそんなに多くない(笑)
 特に月の重要性って、こんなにあったんだな。と思わせられる。
 どの惑星にも重金属は豊富にあるが(重金属は超新星によって出来るから)、ただし重金属は比重が重いため、ゆっくりと惑星の中心に向かって降下していくのが普通。それが地球では地表近くにこれだけ多くあるのは、地球の周りには月があって、その重力のために重金属の降下が遅くなってるからだとか。説得力がある。これはつまり月がなければ今の文明もないと言う事になる。
 オチもなかなか。
04'06'12 十角館の殺人 (著)綾辻行人 <amazon>
 半年前に凄惨な殺人事件のあった孤島にある十角館と呼ばれる館。そこにミステリー研究会の7人の男女が集まった。軽い気分の合宿だったのだが、その夜起こる殺人事件。しかも翌日にも…
 日本のミステリーをかつてかなり小馬鹿にしていた所があったのだが、著者の作品を前に読んで、面白い本格推理もあるもんだと思わされたものだ。尚、これが著者のデビュー作となる。学生時代に書いたと言うことだが、なかなか読ませてくれる。謎もよく考えられてるし、パズル的な要素もあって、面白い。さすがに練れてない部分はあるのはあるが…
十角館の殺人
04'06'08 鉄腕バーディ5 (著)ゆうきまさみ <amazon>
 バチルスを倒したものの、今度は米軍によって狙われるようになったバーディだったが、オーバーテクノロジーを用いるアメリカ軍の背後に謎の組織が見え隠れする。つとむの行動に不審の念を覚える早宮夏美を前に、つとむが語ったのは…
 早くも5巻を数える本作。オリジナルからかなり逸脱している。「パトレイバー」の時もそうだけど、政治的駆け引きに持ってくるのが著者らしいと言えばそう言えるかも。
 これで第一部完だそうだけど、これから一体どういう展開になるんだか。
鉄腕バーディー 5 (5)
04'06'05 初恋 グインサーガ外伝19
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 ナリス19歳。パロの重責を担う重要人物となったナリスは父の愛人であったフェリシア夫人との情事に身を任せていたが、未だ恋を知ることはなかった。ある舞踏会で出会った一人の少女に目を付けたナリスは一夜の遊びのつもりで彼女に声をかけるのだが…

 又ナリスかよ!とか思ったものだが、読み進んでいくと、結構面白かった。物語自身はなんと言うこともないが、人の上に立つ事を運命づけられた人間の苦しみというものを久々に読まされた感じ。著者の場合、このパターンのストーリー展開が一番面白い。
<A> <楽>
04'06'03 堪忍箱 (著)宮部みゆき <amazon>
 著者の時代劇短編集。
「堪忍箱」「かどわかし」「敵待ち」「十六夜髑髏」「お墓の下まで」「謀りごと」「てんびんばかり」「砂村新田」の8編を収録する。
 著者の時代劇作品は実はこれが最初。随分手慣れた文体だと思う。確かにやや軽さも感じないでもないが(比較対象が藤沢周平や山本周五郎だから較べるのが可哀想か)、読み物としては充分な作品ばかり。著者の作品の幅広さには感服するよ。
堪忍箱
04'05'27 てんでフリーズ4 (著)ISUTOSHI <amazon>
 「不死の片喰」と呼ばれる伝説の能力者で、梅八の祖父である片葉が小雪の前に現れる。彼がこれまで捕まることなく活動できた理由とは?そして梅八の隠された能力とは…
 古くさいラブコメ(と言うよりコメディそのもの)で、結構気に入ってた作品だけど、これでとりあえずの最終回。ネタさえあれば延々と続けられる作品だけに、ちょっと勿体ない感じ。まあ、著者が復活するのを待つことにしよう。どうせ似たようなの描くだろうから(笑)
てんでフリーズ 4 (4)
04'05'26 獅子の門5 白虎編
夢枕獏 (検索) <amazon> <楽天>
 武林館トーナメントが始まった。エントリーされた室戸武志、加倉文平、志村礼二、芥菊千代の、羽柴彦六が目をかけた4人はそれぞれ勝ち残り、いよいよこの4人で準決勝を戦うことに…
 随分間が空いたけど、読み始めたら全員のことをあっという間に思い出し、そうしたら止まらなくなった。
 これは大変面白い。著者の表現もここまで多彩なのか!と感心。早く続きが読みたいものだが、あとどれだけ待つことになるのやら…
<A> <楽>
04'05'24 格闘探偵団2 (著)小林まこと <amazon>
 プロレスラーとして再びリングに立つことを望みながら、探偵業にいそしむ東三四郎。だが、今回の依頼は相当にやばかった。行方不明の娘を追っている内になんと最愛の妻、志乃までがさらわれそうになったのだ。身近に降りかかってきた火の粉をどう払っていくのか…
 意識的にだろうけど、東映任侠映画(あるいはテレビ)に近づけたような構成がなかなか楽しい作品。この人、格闘技を描くと凄い映えるんだけど、本人がなかなか描きたがらないのが問題だ(笑)
 作品としては結構楽しいけどね。
格闘探偵団 (2)
04'05'22 髑髏の結社 SSの歴史 (著)ハインツ・ヘーネ (訳)森亮一  
 第一次世界大戦で敗退を喫したドイツ。内政もままならない時代に力を付けてきた一つの政党があった。ナチス。そもそもヒトラーの親衛隊として発足したこの集団は、やがてドイツ全体を覆うようになる。その中でヒムラーによって統治されるSS。複雑なその機構を歴史を絡めて描く。
 私が本を読む際は、大体3系統に分ける。小説なんかの場合、読んでお終い。取っておいて後で読むこともあるけど、あくまで読み物として。
 二つ目は、言葉とか歴史的事実とかに付箋付けておいて、後でメモを取る場合。そこでメモした言葉とかは後で仕事で使ってみたり、映画コメントの参考にしたりする(先日紹介した
「知の編集術」(書籍)なんかはこれに当たる)。
 三つ目は、そもそも付箋自体を付けず、後で徹底的に時間をかけて読み返す作品。本作はその典型。一度読んで、読み返すまでに何と半年以上もかかってる。
 それだけに大変参考になった。歴史ってのはだから面白い。
髑髏の結社・SSの歴史〈上〉
髑髏の結社・SSの歴史〈下〉
04'05'20 からくりサーカス32
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 しろがねに空白の8ヶ月を語り始める鳴海。それはしろがねを驚愕させるに充分な内容だった。一方、黒賀村の勝は姉の一人、れんげの家出を阻止するため、そして人形繰りの腕を高めるため、試練の洞窟へと入っていく…
 著者の作品は、思いもしない設定の展開が起こるので面白い。てっきり誤解によって鳴海はしろがねを襲ったのだと思ってたんだけど、実は全てを知った上で、しろがねを敵として認識していたと言うことが分かる。あれだけ感動させておいて、それさえも設定のなかに取り込む著者の力量に素直に感心。
 一方の勝の物語は、ストーリーが進行してるんだかしてないんだか。ただ、こういった無意味に見える物語が意外な展開することもあるしなあ。
<A> <楽>
04'05'17 知の編集術 (著)松岡正剛 <amazon>
 雑誌「遊」の編集者で、様々な編集を提唱する著者が、編集術とは何か。発想に至る編集とはどうするのか。と言うことについて書く作品。
 何かの参考になるかと思って読んでみたのだが、色々参考になる一方、編集術というのは、結局どうその人の感性を磨くか。と言う点が重要なんだろうと言うことが分かっただけだって気がしてきた。その辺は天性のものも重要だしなあ。
 私の編集術というのは、結局感動したものがある場合、何故感動できるのか、その理由を考えることからだと思ってる…人それぞれの編集術というものがあると言うことだ。
知の編集術
04'05'15 ブラックサンデー (著)トマス・ハリス (訳)宇野利泰 <amazon>
 アメリカに大混乱を起こすべく動き出したパレスティナ過激組織のブラックセプテンバー。慈善にそれを察知し、レバノンの彼らの集会場所を急襲したイスラエルのモサドだったが、一人の女性ダーリヤが逃れた。ダーリヤはアメリカでの協力者ランダーと合流し、爆弾テロの計画を進めていく。彼女を追ってアメリカにやってきたモサドのカバコフとの追跡劇が始まる。
 
「羊たちの沈黙」(書籍)でブレイクすることになる著者のデビュー作が本作。この手慣れた文体は、とてもデビューとは思えないほど手慣れたタッチしてる。昔読んだ時はあんまり感じなかったのだが、改めて読んでみると、その完成度の高さに驚かされる。ちなみに映画版とはオチがやや違っているので、興味ある方は是非一読をお勧めしたい。
ブラックサンデー
04'05'14 新世紀エヴァンゲリオン9 (著)貞本義行 <amazon>
 エヴァの中から無事生還したシンジ。だが、今までの戦いで自分の力に疑問を持ったアスカの方が徐々に追いつめられていく。そしてやってきた新たなる使徒に、ついに精神崩壊を起こしてしまう。一方、そんなアスカに代わるかのようにタイミング良く現れるフィフス・チルドレンの渚カヲル…
 ようやくTVシリーズの23話まで来た。漫画版に関しては、ラストをどうするか以外の興味はまるで無いのだが、なんだかカヲル君が大活躍って感じの作品となった。サービスかな?
新世紀エヴァンゲリオン (9)
04'05'10 永遠の飛翔 グインサーガ94
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 ついにその姿を現した宇宙船にアモンと共に閉じこめられてしまったグイン。宇宙船のコンピュータはグインをグランド・マスターとして認めるのだが、グインとアモンの持つあまりのパワーに負荷がかかりすぎ、なんと宇宙に向けて出航してしまう。これを幸い、宇宙にまで自分の力を拡大させようとするアモンに対し、グインの取った行動は…

 一人ペリー・ローダンの異名を取るシリーズもいよいよ94巻。あと6巻で当初の目標の100巻になってしまう。考えてみると凄いもんだなあ。
 いつも思うのだが、著者が描くSFは無茶苦茶だな。底が浅すぎて日本のSFの質そのものを落としてるような気がしてならない。結局著者の魅力とは、設定ではなくドラマと細部の描写にこそある(ついでに言えばねちっこさも(笑))。ストーリー展開は意外なんだが、全体的な設定の浅さのため、今ひとつ。
<A> <楽>
04'05'07 ウルトラQ2 (著)藤原カムイ <amazon>
 著者による新解釈のウルトラQの漫画化第2弾。「バルンガ」「悪魔っ子」「ガラダマ」の3編を収録する。
 「ガラダマ」(ここでは「ガラダマ」および「ガラモンの逆襲」の2作をまとめている)は『ウルトラQ』の代表作の一本だから良いけど、「バルンガ」「悪魔っ子」を選ぶのは渋いところ(「悪魔っ子」は私のお気に入りだから嬉しいけど)。
 結構お遊びも多く、コマの片隅に色々と面白いものが隠れていたりする。そして極めつけはおまけ漫画。由利子が自衛隊の天野に呼ばれ、出向いたところでいきなり科学特捜隊の服を着せられ、「今日から君はフジ隊員だ」というもの。ちなみに『ウルトラQ』の由利子と『ウルトラマン』のフジ隊員は同じ桜井浩子が演じている事からの発想(ついでに言えば『Q』の天野は『マン』のムラマツキャップと同じ小林昭二)
 これでお終いかな?結構楽しいんだけどな。
ウルトラQ (2)
04'05'04 彼氏彼女の事情18
津田雅美 (検索) <amazon> <楽天>
 天才ジャズピアニストである父親の有馬怜司の付き人のような生活を続けて一週間。どうしようもなく父親に惹かれていく総一郎だったが、怜治がもうすぐアメリカに帰ることで、家に戻る。そこで育ての親総司から、二人の確執を知らされることになるのだが…

 もうすぐ終わるかと思っていたのだが、意外にも引っ張ってるな。まさか親同士の確執に話が行くとは。これだとまだまだ続くのかな?
 しかし、又トラウマの話かよ。もう良いよ(笑)
<A> <楽>
04'05'02 朱夏 (著)宮尾登美子 <amazon>
 土佐の開拓団の師弟教育のため夫の要と乳飲み子の美耶を抱えて満州へと渡った綾子。満州は内地と較べ、過ごしやすい土地だったが、お嬢様育ちの綾子は様々な波紋を開拓団に投げかける。そして安全なはずの満州にも迫ってくる戦争の影…
 満州がらみの逃避行を描いた作品はかつて(彼女の作品のお陰で私のHNが決定したこともあって)大好きな作家角田房子によるセミ・ドキュメントの「墓標なき八万の死者」で読んでいたが、描写としてはやっぱりドキュメンタリーの方が切実度は高かった。本作はあくまで読み物なので、小説として読むならなかなか面白い。
 著者の作品に共通するのは女性が必ず主人公で、決してその女性を単純に描かないところにある。どれほど苦労しようとも、肝心なところで身勝手だったり、等身大の女性が描かれるのが面白いところ。時折読むと面白いんだよな。
朱夏
04'04'29 片目の哲学 (著)なだいなだ <amazon>
 精神科の医師である著者がフランス人の妻との間に出来た四人の娘に語りかける文題で世相を斬る、私家的哲学エッセイ集。
 確かにこれは古い作品で、現代を語るには向いてないかも知れない。しかし著者の平易な、そして少々助平心をくすぐる文体は読んでいて大変面白いし、内容も大変深いものがある。人間に対する著者の考察の深さを感じられて良し。
04'04'27 ラブやん3 (著)田丸浩史 <amazon>
 いつまで経っても仕事もしようとせず、限りなく怠惰な生活を続ける大森カズフサと、キューピッドのラブやん。そのちょっと変わってイタイ日々の生活を描く…それにしてもあらすじの書きにくい作品だな。
 相変わらずというかなんというか、イタイ欲望まっしぐらのカズフサと、それをとりまく環境が描かれるだけの話なんだが、多少成長してるようなしてないような…
 なんかこんなの買ってる自分自身のアイデンティティを疑われそうな気もするんだが…まあ、いいか。
ラブやん 3 (3)
04'04'24 るくるく3
あさりよしとお (検索) <amazon> <楽天>
 悪魔と同居する六文の日常を描く作品。悪魔瑠玖羽をつけねらう天使ヨフィエルの他に、悪魔でありながら瑠玖羽の下につくことを潔しとしない悪魔も現れ…
 天使と悪魔の戦いが一応の主軸って事になるのか?ほのぼのしてる中に痛切な皮肉屋、きわどいギャグが含まれてるのが著者らしいと言えばらしい演出ではある。ちょっと下品に過ぎるかもしれないが、それも味か。「正義のためなら暴力もいとわん!暴力を排するためなら人殺しさえ辞さぬ」…どこかの国の言い分のような…私もいい加減自虐的かも知れないな。
<A> <楽>
04'04'21 イノセンス After the Long Goodbye (著)山田正紀 <amazon>
 “おれ”バトーの元から、飼い犬のガブリエルが消えた。唯一の友であり、生き甲斐であったガブリエルを必死に捜すことになるが、これが最近頻発する犬の誘拐事件の一つであることを突き止めたところで手がかりは消えてしまう。公安9課の日常業務に追われつつも、単独で手がかりを探すが…
 映画『イノセンス』(2004)<amazon>の前日譚。ラストシーンが丁度映画のオープニングにつながるという構造を取っている。バトーとガブリエルの切っても切れない関係と、サイバー戦が描かれる。SF作品だが、著者の描写能力は結構良く、分かりやすし、色々と詰め込んであるので楽しめる…著者の作品は何作か読んでいるが(私は実はちょっと苦手な作家だったりする)、これまでの作品と較べると、比較的読みやすかったか?
イノセンス
04'04'16 はじめの一歩68
森川ジョージ (検索) <amazon> <楽天>
 ついに一歩と宮田一郎の対戦が決まった。浮かれまくる一歩だったが、その前に日本タイトルをかけての最後の戦いが待っていた。武という対戦相手は、実力では圧倒的な優位にありながら、そのヴェテランぶりに翻弄されていく…

 こういう展開で来たか。盛り上げ方が上手いもんだ。手を変え品を変え、ピンチを作り出していくなんて。これが長引かせる秘訣なのかも知れない。
 …それにしても、引っぱりまくるよなあ。
<A> <楽>
04'04'13 されど われらが日々 (著)柴田翔 <amazon>
 学生紛争激しき時代。東大を卒業し、幼なじみの節子と結婚しようとしていた“私”がある時立ち寄った古本屋で買い求めた全集。これは実は“私”と節子の共通の友人のものであったことが分かり…
第51回芥川賞受賞作品
 「時代」と言うことで括ってしまえる作品。登場人物がどれも結局頭でっかちなだけで、勝手に自分で盛り上がって悲劇の主人公になってる作品だとしか思えない。文学とはこういうもんだ。と言えばそれまでかも知れないけど、面白いとは思えない作品だった。その時代に生きていることが本作を読む上では大切だったのか?
04'04'10 インド怪人紀行 (著)ゲッツ板谷 <amazon>
 著者とカメラマン鴨志田との紀行もこれが三回目。今回はとうとうインドへと足を伸ばす。著者なりの多くの考察を取り入れつつ、インドに怪人が行く。
 これまでに3冊読んでみて、3作目の本作が一番完成度が高いのは確か。著者も作家として結構成長してるんだな。
 ところでここで何故日本人はインドにはまるのかと言う考察がなされているのだが、それは「インドに勝つこと」としてるのが、なんか凄く納得…一回目に行くと5回腹をこわしたのが、2回目で3回しか腹をこわさないで済んだ。あるいは一回目よりマリファナを安く買うことが出来た。そう言う細かいことが快感となっていくのだという。なるほどなあ。
 もう次回作は出ないんだろうな。やっぱり。
インド怪人紀行
04'04'07 ローマ・永遠の都 (著)クロード・モアッティ <amazon>
 かつて栄光を誇ったローマ市。だが現在のローマ市は帝国のあった当時よりなんと30メートル以上も高いところにあるという。その30メートルの堆積物の中には数限りないお宝が眠っており、その発掘だけで一つの歴史となり得る。その発掘史を描く作品。
 栄光の都ローマ。だが、度重なる襲撃と放置によって未だに地下は宝の山だという。それが都市開発を遅らせてる理由の一つらしいけど、発掘とかお宝探しとかって、結構燃えるんだよな。ローマ史というのはヴィザンティン王国の滅亡で終わった訳ではない。その後の発掘も又、ローマ史の一部だと言うことを再認識させてくれた。
04'04'05 ゲイトウエイ (著)フレデリック・ポール (訳)矢野徹 <amazon>
 金星近くで発見された小惑星。そこには古代金星人であるヒーチーが使用したとおぼしき多数の宇宙船が眠っていた。それらは恒星間旅行を可能とする夢の機械だったのだが、その操作方法を人類は解明することが出来ず、その宇宙船に乗り込むことは、かなりの危険と、覚悟を必要とするようになってしまった。一攫千金を夢見、ゲイトウエイを訪れたものの一人、ロビネットがそこで体験したこととは…
 現在、過去、そして資料としての文章という三つの立場で書かれる面白い構造で物語は展開。内容的に言えば、さほど好みとは言えないのだが(著者の作品は何冊か読んだけど、どれも設定とかには惹かれるものの、物語自体は好みじゃないんだよね)、物語の構造には惹かれる。
ゲイトウエイ
04'04'04 呪われた町
スティーヴン・キング(検索) <amazon> <楽天>
 メイン州にある田舎町のセイラムズ・ロット。この地に建つマースティン館はかつて殺人鬼が住んでいたという曰くがあった。マースティン死して後、呪いがかかっていると噂されるその館に新しい住人がやってきた。それと丁度同じ時期に駆け出しの小説家で、かつてこの街に住んでいたベンが小説の題材を求めてやってきていた。そこでベンが見たもの、そして否応なく彼が戦わねばならなくなったものとは…

 著者のデビュー2作目の作品。著者のファンを自称する私なのに、何とこの時まで全くの手つかず。自分でも意外だった(買ったのは大分早くのはずなんだが、持ってることで満足してた)。
 意外なのは、著者がこんなに正統的なホラー作品を描いてたという事。勿論著者はホラー作家として有名だから、ホラー作品も多いけど、独特のタッチというものがある。デビュー作の「キャリー」でも、その独自性がビンビンに伝わったものだが、本作はオーソドックスすぎて、かえって拍子抜けしてしまった感じ。
 どうしても読んでいて思ったのは、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996)だったりするが、それも無理ないか。
 悪いとは言わないんだけど、オリジナリティがここまで無いと、ちょっと厳しいか。
呪われた町 (上)
呪われた町 (下)