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夢枕獏

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 夢枕 獏(ゆめまくら ばく、本名:米山 峰夫、1951年1月1日 - )は、日本の小説家、エッセイスト、写真家。男性。

神奈川県小田原市生まれ。神奈川県立山北高等学校、東海大学文学部日本文学科卒業。…Wikipediaより。
 

陰陽師

05'11'19 陰陽師 飛天ノ巻
 源博雅と陰陽師の阿倍清明との交流と冒険を描く連作短編集。「天邪鬼」「下衆法師」「陀羅尼仙」「露と答へて」「鬼小町」@桃園の柱の穴より児の手の人の招くこと」「源博雅堀川橋にて妖しの女と出逢うこと」の7編を収録する。
 著者の作品の大部分は読んでいると自負しているのだが、実際は結構空きが多く、最大のヒット作となった本シリーズは実はまだこれで2冊目。出来は安心できるのだが、やはりこの著者の作品はもっとバイオレンスが欲しいと思ってしまう辺り、まだまだ著者を読み込んでない証拠か?
<A> <楽>
06'06'21 陰陽師 付喪神ノ巻
 陰陽師安倍晴明とその友人の源博雅とが出会った怪異を描く連作短編の第3巻。「瓜仙人」「鉄輪」「這う鬼」「迷神」「ものや思ふと…」「打臥の巫女」「血吸い女房」の7編を収録する。
 このシリーズものんびり読んでるけど、いつの間にやらもう3巻目か。相変わらず似たような話が続くのだが、読んでる間は不思議と心地良いので、それで良いんだろう。
<A> <楽>
15'11'08 陰陽師 鳳凰ノ巻
 陰陽師安倍晴明と源博雅が出会うことになる京の町に出没する怪異。それに対し清明がどのように対するのかを描く。「泰山府君祭」「青鬼の背に乗りたる男の譚」「月見草」「漢神道士」「手をひく人」「髑髏譚」「清明道満と覆物の中身を占うこと」の七編を収録する。
 なんだか定期的に読みたくなる著者の作品で、今回は陰陽師。この作品、どれも同じパターンの話なのだが、その変わりの無さが不思議と心地良い物語となってる。気をおけずにするっと読むことが出来るため、ちょっと暇が出来た時に読むには最適の作品かもしれん。
<A> <楽>
07'09'06 陰陽師 龍笛ノ巻
 阿倍清明と源博雅二人の活躍を描いた短編集。「怪蛇」「首」「むしめづる姫」「呼ぶ声の」「飛仙」の5編を収録する。
 大好評シリーズの一編。このシリーズはどこから読んでも同じなので、だんだん何を読んでたのか分からなくなりつつあるが、本作は1作目の物語で出てきた設定なども取り込んで、やっぱり続編って感じ。作りそのものは変わらなくても、持っているアイテムが増えていたり、既に登場したキャラが当然の如く出てくるので、やはり時は流れているのだと思われる。
<A> <楽>
13'06'20 陰陽師 夜光杯ノ巻
 陰陽師安倍晴明とその親友源博政が遭遇した事件を描いた作品。「月琴姫」「花占の女」「龍神祭」「腔法師」「無呪」「蚓喰法師」「食客不郎」「魔鬼物小悦」「浄蔵恋始末」の9編を収録する。
 この作品は何を読んでもパターンは同じで、これと言って書くべき事がある訳ではないが、この雰囲気は好きなので、つい読み続けてしまう。
<A> <楽>
13'03'03 陰陽師 瘤取り清明
 鬼に取り憑かれた薬師の平大成、中成兄弟からの依頼を受けた安倍晴明は、源博雅を伴い、鬼達が宴を開く山中に赴くこととなった。兄弟が持っていた瘤をいかにするか、そして二人の生命は…
 いわゆる瘤取り爺さんの話をアレンジして陰陽師っぽく仕上げた話。ボリュームはないが、これまでに著者が描いたもののつぎはぎっぽくもあるが、書き方が上手いので一気に読ませてくれる。挿絵も絵本っぽくなってなかなかよろしい。
<A> <楽>

餓狼伝

03'03'15 餓狼伝13
 北辰会空手VS東洋プロレスのトーナメントを目前とし、スクネ流をめぐって格闘会は騒然とする。スクネ流の何かを知っている姫川に様々な方面からアプローチがかけられる。一方、丹波文七は未だに自分を見出せぬまま喧噪の中にいた。何を求めるのか、それを求めて…

 こっちは漫画ではなく、本家の小説の方。著者の作品は大好きなんだけど、多くのシリーズが未完のまま、未だに続いてるもんだから、その把握がとても困難。
 本作もえらく待たせた上に(2年ぶりくらいじゃないか?)かなりの数のキャラがそれぞれ勝手に動き回っているので、状況が極めて把握しにくい。一度リセットして読み直さないといけないか?でも今は全部は残ってないはず…
 でもやっぱりこれ、読んでると熱くなるなあ。
<A> <楽>
07'02'01 新・餓狼伝1 秘伝菊式編
 北辰館トーナメントの後、巽率いる東洋プロレスでもリングの上での無差別格闘技試合が組まれることになった。内外から数多くの武闘家達が呼ばれる中、北辰館トーナメントで姫川に敗北した丹波もその渦中に飲まれようとしていた。一方、姫川の父源三が持っているというスクネ流の秘伝書を巡り、攻防戦が繰り広げられようとしている…
 遅々として進まないシリーズだが、なんと新シリーズ化。一体どこまで続けるつもりなんだ?でも、謎の部分と実にストレートな格闘のシーンがバランス良く配置されていて読み応えは実に良い。
 巽がアントニオ猪木をベースにしたものであることは周知だが、今度はなんとジャイアント馬場をベースとしたカイザー武藤というのも出てくる。しかもこの強さが燃えるよ。思わず何度か読み返してしまったよ…なんかまだ続くことが凄く嬉しくなってる自分がいる。
<A> <楽>
14'07'22 新・餓狼伝 巻ノ二 拳神皇帝編
 北辰館対東洋プロレスの試合が行われ、丹波は日本で最も有名なプロレスラー、カイザー武藤と対戦する。膂力のあるカイザーの手に乗ってしまった丹波はプロレスを強いられてしまう。圧倒的不利の中、丹波が取った手とは…
 気がつくと、随分読んでなかったが、丹波の試合はやっぱり良いな。読み始めると、するすると登場人物達が頭の中に入ってくる。最初から読み直したくもなるな。この話では丹波よりも堤の狂気の方が中心になっている感があるが、その描写が本当に熱い。
<A> <楽>
17'01'08 新・餓狼伝 巻ノ三 武神伝説編 
 かつて松尾象山が磯村露風の紹介で出会った青年京野京介。驚異的なバランス能力を持つ京介は露風の指導を受け、世界最強の格闘家となるべく世に送り出された。最初に行われたボクシングの試合に招待された象山と丹波文七だが、その試合を見守る内にふつふつと血が滾ってしまった文七は…
 二巻を読んでからもう随分時間が経ってしまったが、本来的なストーリーからちょっとずれてないか?
 まとめてみると、本来この作品は丹波文七を中心に北辰館と東洋プロレスの絡みがあって、そこに須玖根流が絡んできたかというところだったはずだが、そこに新しく京野京介なる格闘家が現れ…本当にこれちゃんと収束するのか?真面目に心配になってきたぞ。
<A> <楽>

 

サイコダイバー

03'07'25 新・魔獣狩り8 憂艮編 サイコダイバー20
 日本を未曾有の地震が襲った。その日、多くの出来事が動き始める。毒島獣太、九門鳳介、美空、有堂岳、金犬四郎、そして猿翁と魔人空海…腐鬼一族の宝とは、そして日本の行方は…
 著者及びこの作品も大分つきあいは長い。「キマイラ」で著者にはまり、当然の如く早い内に「魔獣狩り」は読み始めた訳だから…20年近くなるか。長い休止期間はあるものの、その間にパワーを落とさずに連載を続けている著者が凄いと思う。ただ、著者の悪いところは、物語を大きく拡大するのは上手くても、それを収めるのがあまり上手くないと言うところ。お陰でこの作品、どんどん話がふくらんでしまった。登場人物の誰がどこにいるのか、誰と連んでいるのか、その辺の把握がどうしても必要になってくるのだが、前巻からブランクが空くと、把握がとても困難(私にとっても今でぎりぎりか?)。完結時には通して読んでみたいものだ。
<A> <楽>
05'02'08 新・魔獣狩り9 狂龍編 サイコダイバー21
 東京では寿海を拉致した白井完が飛狗を作る実験を続けていた。寿海を救うべく動く毒島、美空、九門、ひるこの四人と飛狗の夜血。一方東北で魔人となった空海と接触した文成…空海が秘したという蓬莱の黄金の謎とは…
 東京と東北で話が展開する話となるが、前の巻は一体いつだったやら?読み始めるまで全くストーリーを忘れていたのだが、読み始めるとすぐに物語が思い出せてくるのが面白い。う〜む。自分の記憶力はやはり相当に偏向していることを思い至ってしまった。あとがきで著者は「あと3巻」とか言っていたけど、まあ、まともに考えてみるとこれだけ話が展開しておいて、3巻じゃ先ず無理だろ?ま、いつも通りだが。
<A> <楽>
06'11'28 新・魔獣狩り10 空海編 サイコダイバー22
 徐福が日本に持ち込んだとされる卑弥呼の黄金の在処がついに判明する。その地を目指し、魔人空海と腐鬼一族とがぶつかり合う。結果的にそれに巻き込まれた形となった九文鳳介、毒島獣太たち。彼らそれぞれの行動を描く。
 キャラが多くなり過ぎ、それが独自に動いているため、把握がとても難しくなってきた。更に唐突に空海の話が挿入されたりするため、話の収拾がつかなくなってる。それでも読ませるものを描くのが著者らしいところだ。著者本人は「終わらせる」と言っているけど、果たしてどこまでかかるやら。
<A> <楽>
08'12'18 新・魔獣狩り11 地龍編 サイコダイバー23
 日本の国そのものを変えてしまうと言うほどの大量の黄金は東北にある。かつて空海や平賀源内が見つけたという黄金を求め、物語は東北へと向かう。その中で合流したサイコダイバーの毒島と鳳介は、魔犬が関わる事件に巻き込まれていた。
 久々の上に話があっちこっちへと飛びまくっているため、いつものことながら状況を把握するだけで手一杯といった感じではあるのだが、毒島とひるこが出てくるだけで、いきなり話がコミカルになってなかなか楽しい。特に今回は毒島の出番がやたら多いので、楽しんで読むことは出来た。しかしそろそろ風呂敷も畳まれてきているので、終わりは近い。と、思う。
<A> <楽>
15'02'07 新魔獣狩り12 完結編・倭王の城 上
 莫大な黄金が眠るという卑弥呼の墓を巡り、いくつもの組織が暗躍する中、ついに美空が古文書からその在処を推測した。それについていくサイコダイバーの久門鳳介と毒島獣太。そして全く違った目的で富成仙吉もその地富士の樹海へと向かう。
 キャラが多くなりすぎて更に随分前巻から経ってしまったので、キャラの相関関係が把握できてない。気がついたら、7年ぶりじゃないか。
<A> <楽>
16'03'12 サイコダイバー25 新魔獣狩り 完結編・魔王の城 下
 徐福の黄金は富士の樹海にあった。その場所を突き止めた美空と共に九門鳳介と毒島獣太はついに黄金の玄室に足を踏み入れる。一方涼子を人質に取った岩倉を追う文成仙吉と、死に場所を探す黒御所と猿翁も又、呼び集められるかのように富士へと向かっていた。
 実に30年もの時間をかけてついに完結まで読み切った。なんだかんだでここまで延々とつきあってきたもんだと感慨深い。
 広がりきった物語をどのようにオチつけるものかと思ったが、割とすっきりした終わり方となっていた。最後に鳳介と獣太の二人で何にダイブするのか。その結果どうなるのか。かなりスケールが大きい。
 ただ一方、取り残された設定も結構あって、そちらの方はこのままなんだろうか?それを考えると少々寂しくもある。実際残された設定だけで長編の一、二冊くらいは充分に描ける分量がある。
<A> <楽>

 

獅子の門

04'05'26 獅子の門5 白虎編
 武林館トーナメントが始まった。エントリーされた室戸武志、加倉文平、志村礼二、芥菊千代の、羽柴彦六が目をかけた4人はそれぞれ勝ち残り、いよいよこの4人で準決勝を戦うことに…
 随分間が空いたけど、読み始めたら全員のことをあっという間に思い出し、そうしたら止まらなくなった。
 これは大変面白い。著者の表現もここまで多彩なのか!と感心。早く続きが読みたいものだが、あとどれだけ待つことになるのやら…
<A> <楽>
06'07'11 獅子の門6 雲竜編
 芥菊千代と志村礼二の2回目となる因縁の対決が行われる。互いに前の対戦の時よりも訓練を重ね、より戦いに特化していった二人の試合の結果。そして菊千代の師である鳴海と宿命のライバル麻生との試合が描かれる。
 伝奇小説としての側面のみならず格闘小説家としての著者の力量を見せつけた作品で、全編通して男同士の戦いが描かれている。描写は相変わらず凄いし、何よりも先の展開が読めないというのが一番の売りだろう。ただ、羽柴が目をかけた青年達の物語はほぼ終了と言うことになりそうだ。いよいよ風呂敷を閉じるためには羽柴彦六対久我重明宿命の対決へと向かっていくのか、それともますます風呂敷を広げていくのか。次巻の展開次第。
<A> <楽>
18'01'24 獅子の門7 人狼編
 武林館主催の総合格闘技トーナメントを控え、それぞれの選手は総合のルールに合わせるべく調整を兼ねた特訓を開始していた。そんな中、リザーブ枠にエントリーされた一人の男鹿久間源は、確実に自分がトーナメントに出られるようにと、トーナメント選手の元に行っては勝負を挑んでいた。

 ほぼ全編にわたり突然現れた鹿久間という男が出ずっぱりで、ほとんどこの人物のために一巻使ったようなもの。そのため肝心な羽柴と久我の決戦は脇に追いやられてしまった感がある。
<A> <楽>
18'02'11 獅子の門7 鬼神編
 武林館主催の総合格闘技トーナメントが始まった。試合は波乱含みで継続不能者が続発し、リザーブ枠だった鳴海俊男と鹿久間源にも出番が回ってくる。その勝負の行方は。そして因縁の対決となる羽柴彦六と久我重明の野試合がついに始まる。

 いきなりの最終巻と言った風情。続ける気があればいくらでも続けられる作品のため、ちょっとあっけないというか残念というか。もうちょっと読んでいたかった気分。
 本作は要するに羽柴対久我のマッチが成立した時点でどこで終わっても良い作品なので、著者が切り上げどきと思った時点で終われて良かったのかも知れない。
 それで二人の決着だが、読んだ時点では「え?これで終わり?」と思ったが、読んでほんの少し時間が経つと、この決着にとても納得がいった。
 これを通して著者が描きたかったのは、「戦う」ということは武道家にとって一種の憑きもののようなもので、勝ち続けると言う事は負けた人間の宿業を背負っていくことになる。だから、満足のいく形でそれをどう断ち切るかということかと思われる。著者は元々この決着に持って行きたいがために本作を描いたのかもしれない。
<A> <楽>

 

沙門空海 唐の国にて鬼と宴す

07'02'12 沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻之一
 留学僧として唐の地を踏んだ空海は、同じく遣唐使として同じ船でやってきた貴族の橘逸勢と共に長安の各地を訪問していた。そんな時、徳宗皇帝が亡くなるのだが、それと前後して都の各地に怪異が起こり始める。否応なくそれらの怪異に巻き込まれていく二人だったが…
 場所が唐になった「陰陽師」と言った風情で、安倍晴明の代わりに空海が、源博雅の代わりに橘逸勢が登場する。ただ主人公と場所が異なる分、やはりかなりの差異も感じられる。著者の空海好きは知られているし、その分思い入れある描写は一見の価値はあり。
<A> <楽>
07'03'29 沙門空海 唐の国にて鬼と宴す 巻ノ二
 唐の都長安に次々と起こる怪異に巻き込まれていく空海と逸勢。空海はこれら一連の事件は当時より半世紀も前に死んだ楊貴妃にその発端があると睨む。だが都の怪異はやがて空海自身を敵として呪による攻撃を仕掛けてくるようになっていく。
 てっきり「陰陽師」同様にミニストーリーの組み合わせで物語が展開していくものだと思っていたら、話はかなり壮大なものへと変化している。著者の思い入れがたっぷり詰まっていることを感じさせる作品。
<A> <楽>
07'04'15 沙門空海 唐の国にて鬼と宴す 巻ノ三
 楊貴妃は50年前に死んでいなかった。その事実を知った空海は、度々彼と接触を持つ丹翁がかつて楊貴妃と共に姿を消したという丹龍であることを突き止める。丹龍ともう一人同時に姿を消したという白龍の関係は?そして楊貴妃は一体どうなってしまったのか?
 前巻までで小さな事件の積み重ねで話が構成されるのだと思いきや、見事に大きな話に巻き込まれてしまっている。タイトル通り鬼と宴をするのは次巻に持ち込まれるが、はてさてどのような宴になるやら。
<A> <楽>
07'04'30 沙門空海 唐の国にて鬼と宴す 巻ノ四
 長安で起こっている全ての怪異は楊貴妃から来ている。それがはっきりした今、空海は関係者の大部分を楊貴妃と縁の深い驪山に集め、そこで宴を張ることとした。何が起こるか空海自身分からないままの見切りだったが、そこに現れた者たちは…
 空海の長安における冒険の完結編。本編である楊貴妃の物語に関してはいかにも大々的に語られている割に3巻の時点で物語が読めてしまったのであんまりはまることはないけど、その後、ほんの僅かな時間で密の全てを修め、日本に帰るまでの展開の方がむしろ怒濤って感じ。枝葉末節の方が面白いというのは、物語としてはどうなんだろう?
<A> <楽>

 

宿神

17'02'04 宿神1
 平清盛と同じ年の生まれで、いつも一緒に行動していた北面の者佐藤義清。ある日二人は都で悪漢に絡まれる芸を売る兄妹を見かけ、二人を助けるのだが、その時義清はこの世ならぬものを呼び出す兄妹の力を見る。それから一年。義清は鳥羽上皇の中宮待賢門院璋子と出会い、激しい恋に落ちるのだが…
 著者が新しく主人公に立てたのは西行。これまで描いてきた空海の時代から約300年後。安倍晴明と同時代に生きた西行についてだった。清明とは性格も違うし、その魅力も異なる。
 この巻で描かれるのは空海になる前の義清の激しい恋物語となるが、もう一人遠藤盛遠という、同じ北面の者の恋物語が描かれている。この話、どこかで観た記憶が…と思って調べたら、この人、『地獄門』(1953)で長谷川一夫が演じていた主人公のことだったんだな。イメージが全く違うのでちょっと驚いた。
<A> <楽>
17'02'17 宿神2
 璋子と一夜の契りを結んだ義清だが、それ以来璋子は院に籠もり姿を消してしまった。彼女を求め懊悩を深める義清だが、そんな彼に帝の命で御所の屏風に歌を書くことになる。
 二巻にして早くも西行誕生となった。ただ、僧になったからと言ってもすぐに悟りを開くようなことも亡く、悩みは続いている。一方順調に出世を果たしていく清盛の姿の方が中心っぽい。
 平清盛こそが時代を作った人物で、保元の乱へと向かう時代に、清盛がなにをしていたかということ。その中で自分の事だけで悩む義清という対比が見所となる。
<A> <楽>
17'03'26 宿神3
 僧になったものの、まだまだ悩みは尽きない西行。一方、平氏の家のごたごたも糧に着実に勢力を伸ばしていく北面の清盛。そんな中、鳥羽上皇の死によって、これまで押さえられていた崇徳院と後白河天皇の確執が表面化していく。その流れさえも自らの出世の足がかりとしようとする清盛と、それを観ていることしか出来ない西行。
 保元の乱が主軸となる為、どちらかというとこの巻のメインは清盛となるはずだが、それを眺める西行という立ち位置をブレさせてない為、一歩引いた形で歴史を見ていることになるが、それが上手い具合に機能している感じ。
<A> <楽>
17'05'08 宿神4
 西行が得度してかなりの年月が経過した。都では保元の乱と平治の乱を経て力を増した清盛が、今度は源氏の頭領たる頼朝に追われるようになっていく。その激動の時代と、友の栄枯盛衰をただ見つめるだけの西行。
 基本的に本作では西行は何もせず、ただ観察者であり、折々歌を作るだけの人物。周囲の人々と時代が変化しているのをただ観ている。なんだか現代人が平安時代にタイムスリップしたかのような物語と言うべきだろうか。かなりウェットな物語だけど、それがちゃんと味になってる。
<A> <楽>

 

東天の獅子

11'08'22 東天の獅子・天の巻 第一巻
 明治時代。全く新しい観点から日本で生まれた格闘技・柔術。これには加納治五郎という人物による理詰めの理論によってなされた。そしてその治五郎が時に自らスカウト、時に彼に惹かれてやってきた弟子の面々が柔術を形作っていった。彼らがいかなる人物なのか、想像を交えて描く群像劇。
 ここに描かれるのは加納治五郎を中心として、志田四郎、横山作太郎、そして武田惣角(この人は柔術じゃなくて合気道の創始者だが)と言った人物について描かれている。実在の人物達を、単なる伝記と言うよりは司馬遼太郎的な物語として描かれてた。姿三四郎のモデルとなった西郷(志田)四郎が会津の出身だとは知っていたが、合気道も会津出身の人物だったとは。意外な関わりも楽しめた。
<A> <楽>
11'08'29 東天の獅子・天の巻 第二巻
 明治時代になり、全く新しい形の武術として誕生した講道館柔術。その古くからの武道を近代的な科学的見地から再検証し、誰でも教われる形にしたことから、その実用性は広まっていき、やがて警視庁の武術試合に招かれるようになった。だがそんな講道館に対し、古流の使い手達が各地で立ち上がり始める。
 一巻が講道館の人物紹介と言ったところだったが、二巻の主役達はそれを取り巻く古流の人々の強さを描いている。当時武術の盛んであった久留米、熊本、千葉のそれぞれの話で、実に楽しい。
<A> <楽>
11'09'17 東天の獅子・天の巻 第三巻
 警視庁の武術試合に出場し、4人中3人が一本勝ちを収めるという快挙を成し遂げた講道館には次々と入門希望者がやってきていた。しかしそれは古流の反発を招くこととなる。そんな時、講道館の門弟を狙い野試合を挑み、しかもことごとく勝利を収める謎の人物が現れた…
 相変わらず面白く、一気に読ませてくれる作品だが、今巻の主人公は姿三四郎のモデルとなった保科四郎。そして志郎の使う大東流御内式が中心となる。しかし会津にこんなものがあったとは、出身地でありながら全く知らんかった。
<A> <楽>
11'12'04 東天の獅子・天の巻 第四巻
 講道館のみをを狙う通り魔の正体は、かつて武田惣角が沖縄での修行中に出会った唐手家島袋安徳であることが分かった。惣角と同じく大東流を学んだ保科四郎は、安徳に狙われているのが自分自身であると見抜くのだが…
 一応講道館編は本巻が最終刊。ここまで来るとほとんど治五郎は登場せず、保科四郎を中心に物語が展開している。空手家(ここでは唐手だが)と柔道家の戦いは、そのまま姿三四郎の構図になってるが、これは創作だろうな。
 ところで本作は元々前田光世を主人公にするつもりだったとあとがきに書いてあった。しかし、当の前田光世が登場するのは最後のほんの数ページというのが笑える。これが第一部であり、第二部以降で主人公にするって事か。
<A> <楽>

 

闇狩り師

09'10'17 黄石公の犬
 熊本にある町に犬を連れたホームレス風の男が現れた。その男と一緒にいる犬の前で望みを語ると、それは叶ってしまうと言う噂が立つようになる。そんな時、この町のダム建設に反対する男が事故死した。その男の妻は、その後「お犬さまに会いに行く」と言って家を出たが…
 「闇狩り師」シリーズの最新作。と言っても前巻が出たのがもう20年も前の話。主人公の九十九乱蔵自信はあくまで祟りを落とすという役割から外れてないので、どっちかと言えば短編向きの作品なのだが、著者が書くと相変わらず長くなってしまう。
 そう言えば次々に原作が漫画化されているが、乱蔵の話も現在「COMICリュウ」にて展開中。丁度これに合わせたかな?
<A> <楽>

 

単発

02'08'20 歓喜月の孔雀舞
 著者による短編集。初期の頃のドロドロした雰囲気に溢れる作品から、最近の円熟した文体まで様々な作品が詰まっており、かなりお買い得。
 思えば著者とはえらく長いつき合いだ。中学生の時「幻獣少年キマイラ」を読んで、訳の分からない興奮状態になって以来随分と長い間ファンを続けている。少なくとも文庫若しくは新書になったものは大部分は読んでるんじゃなかったかな?著者の作品は長編若しくはシリーズが良いけど、時にこういう短編も良いもんだ。
<A> <楽>
04'02'26 黒塚
 核戦争後の荒廃した土地で生き続ける男クロウ。不死に近い肉体を持つ彼は、自分自身が何ものなのか分かっていない。ただ記憶にあるのは一人の女性の面影のみ。千年に渡る愛と戦いの歴史を描く。
 著者独特の伝奇ものの作品。昔のギラギラしたような描写はないものの、見せ場も多く、思った以上にすっきりと終わらせてくれたのには好感を持つ。それにしてもあのオチはなんだ?『ドラキュリア』(2000)そのものじゃないか…でも、こっちの方がはるかに早いんだよな。
<A> <楽>
09'05'28 空手道ビジネスマンクラス練馬支部
 新宿で飲んでいた木原正秋は、やくざに因縁を付けられて土下座させられた。持って行きようのないその怒りは、木原がかねてから興味を持っていた空手道場への入門という形を取った。何かを忘れようとするように空手に打ち込む木原の周囲は少しずつ変化していく…
 普通のサラリーマンを主人公とし、その上で空手の強さや人間関係を描いた作品で、バランスが非常に良く、読んでるだけで体を動かしたくなるような話で、なんか力づけられた気になる。
<A> <楽>
10'12'04 空気枕ぶく先生太平記
 小田原在住の売れっ子作家空気枕ぶく先生の担当となったばかりに貧乏籤ばかり引かされる事になった編集者の木村彦六は、理不尽なぶく先生の悪行を世間に暴露すべく、告発文を書こうと立ち上がる…
 著者にとって、この主人公ぶく先生は架空の人物であると同時に、そのモデルは明らかに自分自身。とんでもない自虐ネタが満載だった。特にぶく先生がオネエ言葉でまくしたてるシーンは思いっきり笑ってしまった。時にこういう笑える作品を読まないと駄目だな。
<A> <楽>
12'03'02 格闘的日常生活
 著者の四十代後半から約10年に渡って雑誌に連載されたエッセイを時間軸で収録した作品。
 本作は大きく三つに分かれ、日常生活を描いたものと発展し続けている格闘技についてと釣りについて。とにかく趣味人だけに、仕事しながらよくここまで時間作れるな。と言う感じ。昔は著者自身エッセイを書くのは好きじゃないと言っていた割には上手く描いている。
<A> <楽>
12'05'04 続・格闘的日常生活
 力一杯仕事をし、力一杯遊ぶ著者の日常生活を綴るエッセイ集の続巻。ここでは主に釣りと旅についてが描かれていく。
 前巻はかなりのウエイトを格闘が占めていたが、ここでは大部分は紀行文と釣りの楽しみについてだった。アメリカやシルクロードの旅が叙情的に描かれており、これはこれで紀行文としてもきちんと読ませるように出来ていた。
<A> <楽>
11'02'01 シナン 上
 オスマン・トルコ領内のキリスト教徒の家に生まれたシナンは、奴隷の一種である改宗者イニェチェリとして取られ、首都イスタンブールに連れてこられた。そこでシナンはローマ時代に作られた巨大建築物で、今はモスクとして用いられている聖ソフィア大聖堂を見ることとなった…
 実在のトルコ人で、アラビア最大の建築物と言われるセリミエ・ジャーミーを作り上げたミマール・コジャ・シナンという人物を取り上げた作品。それにしても著者の興味の範囲って随分広いんだな。
<A> <楽>
11'05'06 シナン 下
 オスマントルコのスルタン、スレイマンに仕えるシナンは齢50にしてトルコの首席建築家となり、精力的に様々な建物を造り始めた。その中、スレイマンから聖ソフィアを超えるモスクは造れないかと問われたシナンは…
 日本では全然知られてない人物の伝記作品。一応フィクションなのだが、盛り上がるようで盛り上がらない話ではある。余計な詮索だが、これ描くのは、著者の方が大変だったんじゃ無かろうか?
<A> <楽>
12'10'31 秘帖・源氏物語 翁OKINA
 平安の時代。帝の子として生を受けた光の君は、数多くの女性達との間を噂されていた。そんな中、妻の葵の上に何者かが取り憑いてしまった。何人もの祈祷師を呼んでもその容態は一向に良くならなかった。光はついに外法の陰陽師蘆屋道満に調伏を依頼するのだが…
 安倍晴明が主人公となる「陰陽師」にも登場する蘆屋道満を登場させた著者流の「源氏物語」であり、もう一つの「陰陽師」と言って良い内容になってる。
 まあ「源氏物語」にしては生々しすぎるのが著者らしさってことなんだろうが。
<A> <楽>
17'12'16 腐りゆく天使
 土に埋められ、思考することしか出来ない“ぼく”。祭壇の後ろにある香部屋の中に天使の姿を見る“わたくし”。そして人妻となったエレナに恋い焦がれる“僕”萩原朔太郎。三者はそれぞれ懊悩の果て、導かれるように教会に集うことになるのだが…

 とてもリリカルで耽美的なお話が展開する。昔の著者の作品に戻ったようでもあり、又新境地でもあるのだろう。
 ただ問題として、作品としてさほど面白くはない。土に埋められた人間の思考ってのは、昔短編で書いてたこともあったし。
<A> <楽>