02'08'20 |
歓喜月の孔雀舞
著者による短編集。初期の頃のドロドロした雰囲気に溢れる作品から、最近の円熟した文体まで様々な作品が詰まっており、かなりお買い得。
思えば著者とはえらく長いつき合いだ。中学生の時「幻獣少年キマイラ」を読んで、訳の分からない興奮状態になって以来随分と長い間ファンを続けている。少なくとも文庫若しくは新書になったものは大部分は読んでるんじゃなかったかな?著者の作品は長編若しくはシリーズが良いけど、時にこういう短編も良いもんだ。 |
|
|
04'02'26 |
黒塚
核戦争後の荒廃した土地で生き続ける男クロウ。不死に近い肉体を持つ彼は、自分自身が何ものなのか分かっていない。ただ記憶にあるのは一人の女性の面影のみ。千年に渡る愛と戦いの歴史を描く。
著者独特の伝奇ものの作品。昔のギラギラしたような描写はないものの、見せ場も多く、思った以上にすっきりと終わらせてくれたのには好感を持つ。それにしてもあのオチはなんだ?『ドラキュリア』(2000)そのものじゃないか…でも、こっちの方がはるかに早いんだよな。 |
|
|
09'05'28 |
空手道ビジネスマンクラス練馬支部
新宿で飲んでいた木原正秋は、やくざに因縁を付けられて土下座させられた。持って行きようのないその怒りは、木原がかねてから興味を持っていた空手道場への入門という形を取った。何かを忘れようとするように空手に打ち込む木原の周囲は少しずつ変化していく…
普通のサラリーマンを主人公とし、その上で空手の強さや人間関係を描いた作品で、バランスが非常に良く、読んでるだけで体を動かしたくなるような話で、なんか力づけられた気になる。 |
|
|
10'12'04 |
空気枕ぶく先生太平記
小田原在住の売れっ子作家空気枕ぶく先生の担当となったばかりに貧乏籤ばかり引かされる事になった編集者の木村彦六は、理不尽なぶく先生の悪行を世間に暴露すべく、告発文を書こうと立ち上がる…
著者にとって、この主人公ぶく先生は架空の人物であると同時に、そのモデルは明らかに自分自身。とんでもない自虐ネタが満載だった。特にぶく先生がオネエ言葉でまくしたてるシーンは思いっきり笑ってしまった。時にこういう笑える作品を読まないと駄目だな。 |
|
|
12'03'02 |
格闘的日常生活
著者の四十代後半から約10年に渡って雑誌に連載されたエッセイを時間軸で収録した作品。
本作は大きく三つに分かれ、日常生活を描いたものと発展し続けている格闘技についてと釣りについて。とにかく趣味人だけに、仕事しながらよくここまで時間作れるな。と言う感じ。昔は著者自身エッセイを書くのは好きじゃないと言っていた割には上手く描いている。 |
|
|
12'05'04 |
続・格闘的日常生活
力一杯仕事をし、力一杯遊ぶ著者の日常生活を綴るエッセイ集の続巻。ここでは主に釣りと旅についてが描かれていく。
前巻はかなりのウエイトを格闘が占めていたが、ここでは大部分は紀行文と釣りの楽しみについてだった。アメリカやシルクロードの旅が叙情的に描かれており、これはこれで紀行文としてもきちんと読ませるように出来ていた。 |
|
|
11'02'01 |
シナン 上
オスマン・トルコ領内のキリスト教徒の家に生まれたシナンは、奴隷の一種である改宗者イニェチェリとして取られ、首都イスタンブールに連れてこられた。そこでシナンはローマ時代に作られた巨大建築物で、今はモスクとして用いられている聖ソフィア大聖堂を見ることとなった…
実在のトルコ人で、アラビア最大の建築物と言われるセリミエ・ジャーミーを作り上げたミマール・コジャ・シナンという人物を取り上げた作品。それにしても著者の興味の範囲って随分広いんだな。 |
|
|
11'05'06 |
シナン 下
オスマントルコのスルタン、スレイマンに仕えるシナンは齢50にしてトルコの首席建築家となり、精力的に様々な建物を造り始めた。その中、スレイマンから聖ソフィアを超えるモスクは造れないかと問われたシナンは…
日本では全然知られてない人物の伝記作品。一応フィクションなのだが、盛り上がるようで盛り上がらない話ではある。余計な詮索だが、これ描くのは、著者の方が大変だったんじゃ無かろうか? |
|
|
12'10'31 |
秘帖・源氏物語 翁OKINA
平安の時代。帝の子として生を受けた光の君は、数多くの女性達との間を噂されていた。そんな中、妻の葵の上に何者かが取り憑いてしまった。何人もの祈祷師を呼んでもその容態は一向に良くならなかった。光はついに外法の陰陽師蘆屋道満に調伏を依頼するのだが…
安倍晴明が主人公となる「陰陽師」にも登場する蘆屋道満を登場させた著者流の「源氏物語」であり、もう一つの「陰陽師」と言って良い内容になってる。
まあ「源氏物語」にしては生々しすぎるのが著者らしさってことなんだろうが。 |
|
|
17'12'16 |
腐りゆく天使
土に埋められ、思考することしか出来ない“ぼく”。祭壇の後ろにある香部屋の中に天使の姿を見る“わたくし”。そして人妻となったエレナに恋い焦がれる“僕”萩原朔太郎。三者はそれぞれ懊悩の果て、導かれるように教会に集うことになるのだが…
とてもリリカルで耽美的なお話が展開する。昔の著者の作品に戻ったようでもあり、又新境地でもあるのだろう。
ただ問題として、作品としてさほど面白くはない。土に埋められた人間の思考ってのは、昔短編で書いてたこともあったし。 |
|
|