読書日誌
2017’7〜9月

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17'09'30 トラウマ恋愛映画入門
町山智浩 (検索) <amazon> <楽天>
 古今映画の主題は「愛」であると言われる。その中でもあまりに激しい恋愛や性愛を描き、観た者の心に残り続ける作品がある。それらの映画を紹介し、何故それが心に残るのか。言い換えればどうしてトラウマが植え付けられるのかについて考察した書。
 ここで紹介された映画の大半は観ているのだが、多くの場合全然理解してなかったという事実に直面させられた。こんな観方が出来ると言う事が素晴らしく、まだまだ映画は奥深いものだと思わせてくれる。
<A> <楽>
17'09'29 鉄人28号 原作完全版 5
横山光輝 (検索) <amazon> <楽天>
 突如現れた恐竜ロボットに踏みつけられて鉄人は大破してしまった。敷島博士の指導の下、修復作業が開始されるが、S国スパイのニコポンスキーは工場にスパイを入り込ませ、鉄人の構造を解析し、あわよくば鉄人奪取を狙っていた。

 S国のスパイニコポンスキーの最期。だが今度はアメリカの大ボスのスリル・サスペンスとフランスの怪盗ジャネル・ファイブが鉄人を狙い、結局又三つ巴の争いになっていく。
 絵がシンプルなだけに、展開がとても早くて軽快。さくさく読めるくせに内容が結構詰まってるのがこの当時の作品の特徴かな。実に面白い。
<A> <楽>
17'09'27 ウルトラマン青春記
桜井浩子 (検索) <amazon> <楽天>
 十代で東宝に入社。それから抜擢を受けてテレビシリーズ「ウルトラQ」のメインヒロインとなった著者。戸惑いつつも、特撮作品との付き合いを始めることになる。「ウルトラQ」江戸川由利子として、「ウルトラマン」フジアキコ隊員として、二つのシリーズを通しての奮闘記。

 シリーズ終了後、特撮からは身を引こうとしてきた著者が、自らの総括のつもりで描いたという思い出話となるのだが、この本がヒットしたお陰で特撮界隈のキャストやスタッフが次々と手記を出してくれるようになったという。特撮好きからすると恩人みたいな作品でもある。又著者もこれを機に再びいくつかのウルトラマンシリーズへの出演しているので、いろいろな意味で特撮界隈に影響を与えた作品となる。
 最後の座談会は既に無くなられた方も含めたもので、この時代に収録されていて良かったとしんみりすることと、著者が未だに実相寺監督に対する恨み節を語っているのが面白すぎる。それだけ女優としてのギリギリの線を強いられたんだな。
<A> <楽>
17'09'24 月刊少女野崎くん7
椿いづみ (検索) <amazon> <楽天>
 高校生漫画家野崎と同級生のアシスタントの千代。二人の関係は、お互いに漫画のネタ出しをしてたりして今も近づいているような近づいていないような…そんな中、千代の親友結月と後輩のバスケ部員若松の仲がちょっと変化しつつあったり、意外なフェティぶりを見せる先輩の堀が鹿島の体について言及したり。

 安定の面白さを誇るシリーズで、時折千代のストーカー気質が出たりもするが、ここまで来るもメインの物語にほとんど進展無し。ただ、乱暴者の代表キャラ結月が、ストレートに好意をぶつけられると引いてしまうと言う弱点も発覚。それで遊んでたりもして、そこはちょっと変化してるか?
 いずれにせよ、7巻まで進んでここまで安定して面白い作品ってなかなかないので、このシリーズは良い。
<A> <楽>
17'09'22 別冊 図書館戦争T
有川浩 (検索) <amazon> <楽天>
 全ての誤解が解け、晴れて恋人同士となった笠原郁と堂上篤。お互い寮生活を送る二人はなかなか一緒の時間が取れず、時に気持ちもすれ違いがち。不器用な二人を見かねた周囲の面々が何かとお節介を焼き始めるが…

 著者も後書きで書いていることだが、本編と較べると内容は本当に甘々で、ほとんど二人だけの世界の話。その点には少々閉口するものの、相変わらず読みやすいくせに内容がしっかりしていて読み応えもあり。ぐいぐい読み進められる。
<A> <楽>
17'09'20 血界戦線5
内藤泰弘 (検索) <amazon> <楽天>
 「Don't forget to don't forget me」ある日レオは街中でハンバーガーを買ってもらおうと人間に大金を渡している向こう側の子どもを見かける。見かねたレオはネジと名乗るそのこのためにハンバーガーを人間の区域から買ってくるようになり、友達になったが、実はネジには隠された力があり…
 「Z(ザップ)の一番長い日」ヘルサレムズ・ロットに強大な魔物が降臨しようとしていた。そのことを知ったライブラは急遽血闘神の師匠を呼び寄せる事にした。だが弟子筋に当たるザップは二度と師匠とは会いたくないと思っており…

 今回は2編の短編を収録。前半はレオに異界の新しい友達ができると言う話だが、この町の人間はどこか異常なため、一筋縄ではいかない。異能を持つが故に苦労するというのは、大変リベラルな話でもある。
 もう一本はヘルサレムズ・ロットの最大の危機と言われるが、これまでの経緯から、世界の危機は日常の範囲内であるため、「こんなに凄い魔物が来ますよ」と言われても、通常運転としか言いようが無く、それが本作の緊張感の無さにつながるのだろう。緊張感ないまましっかり街を救うのもいつもの通り。
<A> <楽>
17'09'17 小説仮面ライダーキバ
古怒田健志(検索) <amazon> <楽天>
 1986年。天才ヴァイオリニスト紅音也は一目惚れした女性が怪物と戦っている光景を目にし、思わずその女性麻生ゆりを助ける。そして2008年。引きこもりの青年紅渡は内なる声に従い、人間界に存在する化け物ファンガイアを狩る日々を送っていた。そんな二つの時代が重なる時…

 「仮面ライダーキバ」のリブート小説。TVシリーズよりもずいぶんすっきりした話になってるが、内容的にはちょっと残念なところ。なんで主人公より目立って然りの名護がこの程度の扱いなんだ?折角の小説なんだから、753を主人公にしてくれたら良かったのにねえ。
<A> <楽>
17'09'15 鉄人28号 原作完全版 4
横山光輝 (検索) <amazon> <楽天>
 死んだふりをして警察内部の裏切り者を監視していた金田正太郎は、ついにその犯人がクロロフォルムである事を突き止める。だが実はクロロフォルムは二人いたという事実に行き着いてしまう。S国スパイの方のクロロフォルムは鉄人のリモコンを強奪して高飛びしようとするが…

 明らかに怪しかったクロロフォルムがやっぱり犯人か。と思わせておいて、実は影武者がいて、そちらの方が本当のスパイだったというかなり捻った犯人捜しの物語となっていた。しかし行動力でもとっさの機転にでも影武者のニコポンスキーの方がクロロフォルムよりも優れているのがなんともはや。
 しかし犯人が見つかった後もしぶといニコポンスキーは鉄人を操って死体の山を築き、更にアメリカからギャングや怪盗まで現れるというサービスぶり。現代の漫画であったら3巻くらいかけてやる内容を一気に書き切ってしまったというのが凄い。
 改めてこれ読んでると、果たして漫画って本当に進歩してるのかという気にさせられる。
<A> <楽>
17'09'13 大放言
百田尚樹 (検索) <amazon> <楽天>
 これまで何でも言いたい放題言ってきた著者が、ほとんど脊髄反射でなんでも語るというエッセイ集。
 とにかくすごいの一言。この人ナチュラルのコメディアンだわ。
 内容はツッコミどころしかないし、自己愛の塊で、感覚全部が20年前だし、全編にわたって「俺は悪くない」としか言ってない。ただ、笑ってる内に薄ら寒くなるのも確か。なんでこんなのが受け入れられるんだ?
<A> <楽>
17'09'12 アオイホノオ16
島本和彦 (検索) <amazon> <楽天>
 ついにモユルのデビュー作がサンデーに掲載された。浮かれ気分は少々落ち着いたものの、あまりに周囲の変化のなさに逆に戸惑ってしまう。そんなモユルに声をかけてきた男がいた…

 ある意味とても落ち着いた内容の話になっている。そもそも本作の始まりとは、著者の持つルサンチマンに彩られ、更にコンプレックスを持つ庵野秀明に対する一方的なライバル視から始まっていた。
 それがこの巻で商業誌デビューと、庵野秀明による「サインくれ」の一言が入る事によって成功物語としては完結した。一巻目から一貫して続いていたテーマが閉じたことにより、これからはデビュー後のプロとしての苦労話へと話は移ることになる。
 いつ終わってもいい段階に入ったため、後は著者のどの作品まで追うかという問題になるのだが、基本的には「炎の転校生」連載開始くらいまでかな?
<A> <楽>
17'09'10 オタクの息子に悩んでます
岡田斗司夫 (検索) <amazon> <楽天>
 著者が朝日新聞で連載していた悩み相談を例に取り、どのような思考をたどって答えの結論に至ったのかを語る思考術。

 著者にしか出せない(と本人が言うところの)答えに至るための思考術を語った本で、思考の方向をどのように導いていくかという考察がなかなか興味深い。
 ただ、これまで読んだ著者の書籍の中でも最大級の「俺って凄いやろ」感に溢れた作品でもあり、良くも悪くも著者はぶれないと感心出来る。
<A> <楽>
17'09'08 夏目友人帳10
緑川ゆき (検索) <amazon> <楽天>
 「偽りの友人」夏目は突然現れた昔のクラスメイト柴田に強引に連れ出され、一人の女子高生を紹介されてしまう。程なくして彼女が妖怪である事が分かるのだが…

 「月分祭」突然妖怪達に捕まってしまった夏目は、祭りで祀られる神の一柱になってくれと強引に頼まれてしまう。成り行き上、そのふりをすることになるのだが、そこに名取と出会ってしまい…
 性格の優しさ故に巻き込まれることが多い夏目だが、今回の二本は人間側と妖怪側二つの方向からの巻き込まれになってしまった。相変わらず丁寧に交流が描かれているが、このパターンは少々飽きてきたかな?夏目も生長してるようなしてないような?と言った感じ。
 名取の遣い魔である柊が妙に夏目に構い過ぎるところがちょっとひっかかったかな?元々夏目の尽力あって遣い魔になった妖怪なので、夏目に思う事もあるんだろうが。
<A> <楽>
17'09'05 ムーミン谷の夏まつり ムーミン童話全集4
トーベ・ヤンソン(検索) <amazon> <楽天>
 ムーミンだにを襲った大洪水によってムーミンの家が水没してしまった。このままでは家には入れないことから、たまたま水に乗って流れてきた建物を仮の宿にすることにした。しかしこの家は調べれば調べるほど変な家だった。そんな事も知らず、いつものようにムーミン谷に向かうスナフキンだが…

 北欧の短い夏祭りをモティーフとした物語。物語はムーミン、ムーミンパパとママ、スナフキンとミイが別々に全く違う体験をしていくため、まったくまとまりがない。普通の物語としては落第点なんだけど、逆にそれが魅力になってるのがこの本の面白さかな。出てくるキャラの性格がそれなりに悪いので、変な意味で棘が良いアクセントになる。
 ところでスニフの姿が消えたが、どうしたんだろう?
<A> <楽>
17'09'04 亜人ちゃんは語りたい2
ペトス (検索) <amazon> <楽天>
 雪女である雪の悩み。それは自分が知らずに人を傷付ける事があるかも知れないと言う事だった。これまで鬱屈してきた悩みを聞いた教師の高橋は、共に考えて解決策を探っていく。そんな中、相変わらずべたべたと接触するヴァンパイアのひかりに振り回されつつ、それでも存分に語り合いつつ過ごす日常。

 基本的には日常描写がメインだが、その中で亜人ならではの悩みや考えなどを語り合いつつ解決策を探るという基本スタンスは変わらず。不思議とアニメよりは娯楽に寄っておらず、硬めに感じるのだが、それだけソリッドに悩み描写の方に比重がかかっていると言う事でもある。なかなか読み応えあり。
<A> <楽>
17'09'01 ズッコケ中年三人組 age46
那須正幹 (検索) <amazon> <楽天>
 三人組の小学校時代の恩師タクワンこと宅和源太郎先生が亡くなった。葬儀の後のクラスの慰労会を取り仕切ることとなったハチベエだが、そんなハチベエの自宅を見知らぬ女性が訪ねてきた。実は宅和先生の愛人だったと告白するその女性を巡り、対処に困ったハチベエはハカセを頼るのだが…

 あの宅和先生が実は…という内容だが、真相は藪の中。これを掘り下げると洒落にならなくなるので、それで良いのだろう。
 ただ、それよりも永遠の小学生だったはずの三人組にも老後という現実が忍び寄っているという事実がしんみりさせるところである。老と死。年相応の物語だった。
<A> <楽>
17'08'30 ワンパンマン12
ONE (検索) <amazon> <楽天>
村田雄介 (検索) <amazon> <楽天>
 ガロウに挑戦するA級ヒーロー達。だがその強さに一人一人苦戦の末敗北を喫する。更にそんな彼らを見つめる目があった。一方、格闘大会も大詰め。サイタマは最強と謳われるバクザンと対決するが…

 ヒーロー狩り、怪人協会、武闘大会の三つの物語が並行して進んでいるのだが、全部進み方が遅い。大ゴマを多量に使っているためか、ちょっとテンポ悪い。それでも次の巻には一気に収束しそうではあるが。
<A> <楽>
17'08'26 機龍警察 自爆条項 下
月村了衛 (検索) <amazon> <楽天>
 来日するイギリス大使サザートンを狙い、テロを画策するのはIRFの“詩人”キリアン・クィンだった。かつてクィンの元で暗殺術を仕込まれたライザは、元上司の凶行を止めねばならない羽目に陥るが、通常の警察の捜査ではクィンの居所は全く突き止められなかった。様々なコネと部下の特捜隊の能力を駆使しつつ、クィンの居所を探る中津だが…

 半分はライザの過去と現在についてではあるが、本作の売りである群像劇によって話を進める形式は保っている。タイトルにあった自爆条項とは一体何であるのかというのが、機龍隊の存在理由となっている。
<A> <楽>
17'08'24 機龍警察 自爆条項 上
月村了衛 (検索) <amazon> <楽天>
 横浜港でテロリストにより多数の被害者が出た。停泊中の船のコンテナには組み立て済みの機甲兵装が積み込まれていたことから、警察庁は日本中の港から既に数体の機甲兵装が日本に入り込んでいると判断した。命令アルマで待機任務を命じられた特捜課。そのトップである沖津はこれが大きな事件になるとにらみ…

 シリーズ第2作となった本作は機龍の一体バンシーに搭乗するライザを中心とした話になった。1巻時点でライザはIRFの元テロリストである事は明かされていたが、何故彼女が今日本の警察にいるのかを丁寧に描いている。丁寧すぎて随分長くなってしまったけど。
<A> <楽>
17'08'22 鉄人28号 原作完全版 3
横山光輝 (検索) <amazon> <楽天>
 鉄人を奪ったS国前線基地に侵入したものの、捕らえられてしまった金田正太郎は機転を利かせて通信室から警察に連絡を取ることに成功する。一方、正太郎の行方を追う警察と世界的な名探偵クロロホルム。だが内部の人間の手引きとしか思えない不可解な事件が続発していた…

 名探偵クロロホルムが出ずっぱりの話となった。現時点で正体は明かされないが、彼のいるところで必ず不可思議な事件が起こることから、察せよというメッセージだろう。
 相変わらずコントローラーさえ手中にあれば自在に動かせる鉄人は敵でも味方でもない。ただ正太郎が動かす頻度が多くなってきたことくらいか?この話から鉄人に新装備のジェットパックが取り付けられることとなり、空を飛べるようになった。
<A> <楽>
17'08'19 リトル・ピープルの時代
宇野常寛(検索) <amazon> <楽天>
 「ゼロ年代の想像力」から3年。東日本大震災を経たこの時代に、再び世に問うゼロ年代の思い。村上春樹、仮面ライダーシリーズを通して見えてくる「リトル・ピープルの時代」とは…

 前に読んだゼロ年代の想像力はあんまりピンとこなかったことを正直に告白するが、本作は実に良く分かった。対象を「村上春樹」と「平成仮面ライダー」に絞ったことで、どちらも身近に感じていたものだったためだろう。特に「平成仮面ライダー」に関しては、一本一本の分析が非常に細やかで説得力があり、再評価したくなった作品もある。私の分析とは異なる部分もあるとは言え、そもそもこう言うのを語る人がいないからなあ…
<A> <楽>
17'08'18 シドニアの騎士7
弐瓶勉 (検索) <amazon> <楽天>
 融合個体つむぎが投入されることによって、シドニアの危機はなんとか免れた。だが生まれたばかりのつむぎは未だ精神が幼く、長道を始めとする人間の関わりを必要としていた。更に奇居子シュガフ船は次々と新しい奇居子を投入してくる。率先して出撃する長道だが…

 新しいキャラとして白羽衣つむぎが加わった。人間ではなく奇居子の外郭に人間の精神を宿したキャラという設定で、彼女を巡る話が展開中。
 パターンとして青年漫画の王道。絶対敵わないと思われる強大な敵の攻撃に、新しいキャラや新しい力を用いて乗り越えていくというパターンが取られている。これが一番燃える展開にはなってる。アクション面をオーソドックスに固めておいて、シドニアでの日常生活をコミカルな方向へと向けているのが本作のバランスの良さなんだろう。
<A> <楽>
17'08'16 ズッコケ中年三人組 age45
那須正幹 (検索) <amazon> <楽天>
 ある日ハチベエのもとに堀口義晴という年配の男性が訪ねてきた。それがこどもの頃に一緒に山賊に捕らわれ、三人組を逃がしてくれた堀口雅晴のお兄さんであることを聞かされる。今も兄の行方を捜しているという義晴に、一肌脱ぐ決意をするハチベエ。ハカセとモーチャンも巻き込み、再び山奥へと押し入る三人だが…

 メインの話は三人組の過去の清算で、「ズッコケ山賊修行中」の後日譚となる。確かにシリーズも長くなると、取りこぼしというかアフターケアが必要な話もあるよな。という感じ。しかしあのシリーズ、多分6年生が10年分以上ないと話がまとまらないことを再認識もさせられる。
 そして今巻でついにハカセと陽子が結婚を決めるという重要な話もあったのだが、それを決めるきっかけとなったモーチャンの話がなんとも生々しいというか。本当に大人向きの話になってる。
<A> <楽>
17'08'14 鉄人28号 原作完全版 2
横山光輝 (検索) <amazon> <楽天>
 謎の怪ロボットを隠したまま姿を消したPX団を追う警察と少年探偵金田正太郎。だが謎の巨大組織がPX団と鉄人を追っていた。その争いの中、鉄人を手に入れるのは…

 前巻で警察とPX団と村雨盗賊団の三つ巴の争いの中だったが、村雨は長男までもが死んでしまって後退。代わりにS国が登場。新たな三つ巴の争いとなっていく。まだ鉄人は正太郎のものにはなっておらず、PX団や警察によってもコントロールされており、どっちかというと車のような乗り物に近い扱いになってる。
 今巻、敷島博士によってこれまでよりも強力なコントロール装置が作られ、そのため二つのコントロール装置によって混乱する鉄人の姿がある。それはつまり敷島博士は鉄人を操る周波数を知っていたと言う事なのだが、だったら妨害電波装置を作った方が早かったんじゃないだろうか?
<A> <楽>
17'08'12 ダロウェイ夫人
ヴァージニア・ウルフ(検索) <amazon> <楽天>
 51歳になるクラリッサ・ダロウェイはこれまで優しい夫との生活を送ってきたが、ある日、かつてクラリッサの恋人で、海外で働いていたピーター・ウォルシュが帰国した。純粋に帰国を喜ぶ気持ちで会う約束をした二人だが…

 これと言った物語が進展するわけでは無い出会いの中。登場人物一人一人の意識を追い、その揺れ動く心を描いた著者の代表作。
 これを買ったのは確か映画で『めぐりあう時間たち』(2002)を観たためだったと思うのだが、長らく積ん読になっていたのを引っ張り出してきた。読んでる内にハーバートのSF「DUNE」を読んでるような気になってきた。登場するキャラの意識に注目し、会話の中で少しずつ変化していく感情の波を文章にするとこんな感じになるのか。一見退屈だが、奥行きが本当に広い小説でもある。
<A> <楽>
17'08'08 「月光仮面」を創った男たち
樋口尚文(検索) <amazon> <楽天>
 黎明期のテレビの中で突然企画に上がって急ピッチで撮影が行われ、歴史的大ヒットとなった「月光仮面」。劣悪な製作状況の中、ほとんど手弁当で番組を支えたスタッフの面々。そして主人公に抜擢され、初のテレビスターとなった大瀬康一。番組に関わり、今生きている人たちのインタビューをもとに、どのようにして「月光仮面」が創られていったのか。そしてそれによってテレビがどう変わっていったのかを検証する。

 一見華やかに見えるテレビ業界は実は…という話はたくさん読んできたけど、テレビ初期ともなると、もう全く手探り状態で、金はないわ、キャストは確保できないわで散々苦労していることが窺える。番組に関わった人たちも大分いなくなっているため、かなり貴重なインタビューだと言えるだろう。
<A> <楽>
17'08'07 血界戦線4
内藤泰弘 (検索) <amazon> <楽天>
 ライブラに入ってきた電話。それは地下格闘技のボスによってザップが捕らえられ、ザップを助けたければ所長のクラウスが地下格闘技に参加するように要請するのだった。ライブラの他のメンバーはこれがザップ自身による狂言だと分かっていたが、きまじめなクラウスは単独で地下格闘場へと向かって行く。

 今巻ではクラウスの地下格闘技参加という話と、クラウスに仕える執事たちの活躍、K・Kの日常という三つの物語が収録されている。まだキャラ紹介の途中と言った風情ではあるが、少しずつキャラ描写を深めていくこの作りは設定マニア好みで決して悪くない。
<A> <楽>
17'08'05 アホの壁
筒井康隆 (検索) <amazon> <楽天>
 人は何故いつも阿呆なことをしてしまうのか。そこには何らかの心理的なものが働いているのでは無いかという観点から、阿呆な行為のメカニズムを追う。

 これは養老孟司の「バカの壁」が大当たりを取ったための便乗の題だが、少なくとも著者にはそれを認めて良いと思うし、そう思う人が多いからこの企画も通ったんだろう。
 著者は哲学および心理学に造詣が深いが、それを踏まえて悪意たっぷりに書いているため、内容はかなりの荒唐無稽で、分析の体裁で日頃不満に思ってることをここでぶちまけてる感じ。実に著者のエッセイらしくてよろしい。
<A> <楽>
17'08'03 甘城ブリリアントパーク2
賀東招二 (検索) <amazon> <楽天>
 なんとか2週間の入場者数を確保し、甘城ブリリアントパークの存続は決まったものの、一年後までに更なる入場者増を図らねばならなくなった。そしてそこに残るのは人手不足と資金不足。これをなんとかせねばならない可児江西也。一つ一つの問題を順番に解決しようとするのだが…
 細かいところでは大変面白いのだが、全般的に見る限り、ほとんど話は進んでない。2巻目でもう小ネタに走ったような感じではある。

 ただ、著者の小ネタは実はかなり好みなのでこれはこれでOKではある。特に今回は新しくアルバイトに元AV女優とか、血塗れ女子高生とか、どう見ても小学生な可児江と同じ歳の女の子とか、強烈なキャラが登場したため、彼女たちがこれから物語を引っ張っていくことになるのだろう。
<A> <楽>
17'07'31 鉄人28号 原作完全版 1
横山光輝 (検索) <amazon> <楽天>
 戦後10年。日本の復旧は急速に進んでいた。そんな中、謎の怪人による強盗事件が頻発していた。科学者敷島家が強盗団に狙われている事を知った少年探偵の金田正太郎は敷島家に寝泊まりしていたのだが、そこに現れた怪盗団と乱闘になる。しかもそこに新たに謎のロボットまで介入し…

 鉄人28号と正太郎の出会いが描かれる話となるが、主に登場するのは28号のプロトタイプである27号で、しかも謎の組織によって運用される28号は完全に正太郎の敵という面白い展開となっている。なるほど感心で、子ども漫画でここまで物語がしっかりしているからこそロボット漫画の草分けと言われるわけだ。
 絵が少々粗いのは仕方ないところと、鉄人の大きさがまちまちという問題もある(2メートル〜3メートル程度で大きくなったり小さくなったり)。しかしオリジナルの鉄人ってこんなに小さかったことにも驚かされる。
<A> <楽>
17'07'26 りぽぐら!
西尾維新(検索) <amazon> <楽天>
 最初に設定した三つの短編小説を、全く同じ内容で特定の言葉を使わないように制限を加えて五編描くと言う挑戦敵作品集。

 基本的にいくつかの平仮名に制限を加え、それを使わずに作品が描けるか?という挑戦的なものだが、同じ内容が延々と続くため、読むのが辛い。ただ感心はできるという作品。
<A> <楽>
17'07'24 眠狂四郎京洛勝負帖
柴田錬三郎(検索) <amazon> <楽天>
 孤高の侍眠狂四郎の活躍を描く連作短編集。「眠狂四郎京洛勝負帖」「消えた兇器」「花嫁首」「悪女仇討」「狐と僧と浪人」「のぞきからくり」「贋者助太刀」「義理人情記」と眠狂四郎の創作について語るエッセイを収録。

 この短編集は基本的に江戸時代を舞台にしたミステリー小説で、眠狂四郎があたかも探偵のように冴え渡った推理を行っていくという流れに持って行っているのが特徴。剣豪小説っぽさが無いが、これはこれで味わいがある作品である。
 巻末エッセイでは、著者本人が眠狂四郎のような人間は長生きできないとか書いていたが、その存在感はあたかもゴルゴ13だな。
<A> <楽>
17'07'22 サルまん 2.0~サルでも描けるまんが教室 2.0~
相原コージ (検索) <amazon> <楽天>
竹熊健太郎(検索) <amazon> <楽天>
 かつて一世を風靡したコンビ漫画家の相原コージと竹熊健太郎。だが既に落ちぶれ、漫画を掲載してくれる雑誌社も無くなってしまう。そしてついにアパートまで追い出され、漫画喫茶で再起を賭ける二人だが…

 連載終了から20年。再び二人がコンビを組んで展開する2000年版サルまん…となるはずだったが、月刊誌での連載で、世の動きについて行けなかったか、僅か8話で連載中止となってしまったある意味伝説の漫画。
 1980年代の漫画の作り方と2000年代の作り方の違いと、現代での漫画展開にはメディアミックスが絶対必要という展開へと持って行くのだが、結果が出る前に終わってしまった。ある意味予言したとおりの世の中にはなっているのだが…
 読むことはできないだろうと思ってた作品が読めたのはラッキーではあったが、内容に比して随分強気な値段設定。
<A> <楽>
17'07'20 おたくの起源
吉本たいまつ (検索) <amazon> <楽天>
 いわゆる「おたく」と言うのはどこから発生して現代に至るのか。呼称としての「おたく」だけでなく、それらにカテゴライズされる人々がどのような変遷を経て今に至り、「オタク」と呼ばれるようになっていったのか。歴史的事実から考察する。

 とてもすっきりとまとめられており、「おたく」の歴史を考えるためには最適な本かもしれない。改めて思うのは、まずおたく的な起源とはSF小説から始まると言う事。そしてガイナックスの存在がとてつもなく大きかったと言う事。改めて、そう言うものと親しく歩んできた自分自身の事も振り返らせてくれる。
<A> <楽>
17'07'17 暗黒星雲の引力 アクセル・ワールド19
川原礫 (検索) <amazon> <楽天>
 ネガ・ネビュラスメンバーの補強を兼ね、かつて帝城から助け出すと誓ったトリリード・テトラオキサイドを救出すべく帝城へと再び突入したシルバー・クロウ=ハルユキとスカイ・レイカー=楓子。だがそこに現れたのはトリリードだけではなかった。旧ネガ・ネビュラスの四天王の一人、グラファイト・エッジが二人を出迎えたのだ。妙に物知りなグラファイトから、この帝城の存在する意味と、このブレイン・バーストそのものの秘密について聞かされる事となる三人だが…

 物語そのものの動きはただかつての約束通りトリリードを帝城から逃がしたというだけだが、ブレイン・バーストが何故できたのかという物語の根幹に関わる設定が明かされている。
 このゲームの最終的な目的は七つの神器を集めることだが、最後の神器はゲームの設定上絶対に取る事が出来ないという矛盾こそがブレイン・バーストをこれまで存続させてきたのだとか。根本的なバグこそが世界を存続させているという設定は実に面白い。
<A> <楽>
17'07'13 ワンパンマン11
ONE (検索) <amazon> <楽天>
村田雄介 (検索) <amazon> <楽天>
 ヒーロー狩りを続けるガロウの前に立ちふさがるA級ヒーローの金属バット。既に災害レベルのモンスターと戦った後の金属バットだったが、二人の戦いは熾烈を極めるものとなっていった。一方空手大会に出場してしまったサイタマは、退屈さを覚えていた。

 主人公のサイタマ放っておいて、金属バットとガロウの戦いが延々と続くような話になっていた。サイタマがガロウに関わるとあっという間に話が終わってしまうだろうから、それはそれでいいんだけど、話が間延びしすぎじゃないかな?ちょっと読んでいていらつきを覚えるぞ。これまでテンポが良かった分、この停滞はどうにも気分悪くなる。
<A> <楽>
17'0712 マルドゥック・アノニマス1
冲方丁 (検索) <amazon> <楽天>
 バロットと共に戦った日々から二年が経過した。今やウフコックはイースターズ・オフィスのエースとして相棒のロックと共に街の事件解決の為に元気で駆け回っていた。そんな時、貧民専門の弁護士ケネスから保護依頼が舞い込む。馴染みのケネスに危機が迫っていると、大急ぎで彼の家へと向かうウフコックとロックだが、それは周到に張り巡らされていた罠だった…

 マルドゥク・シリーズの第三弾となる本作はとりあえずバロットはお休みとなり、ウフコックを中心とした物語展開となる。ただ、話はエンハンサー同士の能力のぶつかり合いに話が終始してしまい、これと言った盛り上がりもないし、話も薄い感じ。この程度で終わってしまうと残念なことになってしまうが、続刊に期待といったところか。
<A> <楽>
17'07'10 ズッコケ中年三人組 age44
那須正幹 (検索) <amazon> <楽天>
 飲み仲間に誘われてからすっかり渓流釣りにはまってしまったハチベエは、ハカセとモーちゃんを誘って渓流へと出かける。記念撮影をしたハカセが帰ってからデータを見たところ、そこには見たことも無い生物らしきものが写っていた。ひょっとしてこれはツチノコでは無いかと思い、調べ始めるのだが…

 毎回全く違った切り口の物語で楽しませてくれるが、今回は冒険譚。ツチノコとはなんとも懐かしい話で、オチも結構意外なものとなっている。
 そういえばオリジナルのシリーズもSFやら怪奇ものやら盛りだくさんで、あっけにとられるラストの話が結構あったけど、それを思い起こさせてくれる。
<A> <楽>
17'07'05 亜人ちゃんは語りたい1
ペトス (検索) <amazon> <楽天>
 デミとも言われる亜人種に普通の人権が与えられ、人間の社会で亜人たちが暮らせるようになった社会。高校教師高橋鉄男は、是非とも亜人と知り合いになりたいと願っていたのだが、今年の新入生にはヴァンパイア、デュラハン、雪女という三人もの亜人の少女が入学し、更にサキュバスの女教師まで。不思議と人望のある高橋のもとには、それぞれ悩みを抱えた彼女たちが相談に来て、その悩み相談に乗る高橋だが…

 アニメの方を先に観て、内容が大変感心出来るものだったので原作に興味を持って読んでみた。
 本作は亜人という存在をテーマにしたものだが、亜人というのも、ほんのちょっと人間より個性を持った存在という立ち位置として描いているのが面白い。それが個性である為、ちょっとした違いに悩むこともあるし、他者に支えられて生きていく事の大切さというものも知っている。だから本書のテーマとしては、“共生”というものが第一になる。このテーマを使い、この内容を作るとは感心出来る。
 強いて言えば、アニメの方が絵であれ物語の練られ方であれ上を行ってるんだが、当然ながらそれは原作あってのこと。これは継続して読んでいきたい作品である。
<A> <楽>
17'07'04 ハリー・ポッターと呪いの子
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 ハリー・ポッターが宿敵ヴォルデモートを倒してから19年の歳月が経過した。魔法省で要職に就き、忙しい日々を送るハリーはジーンとの間にも3人の子どもが出来、充実した日々を送っていた。だが最近になり、ヴォルデモートの悪夢を見る日が増えてきていた。一方ハリーの息子アルバス・セブルス・ポッターはホグワーツに入学して以来、父と較べられるばかりですっかりクサっていた。唯一の友達は同じスリザリン生でドラコの息子スコーピオスだけで、同じく父に関する噂に悩まされた二人はなんとか現状を打破したいと計画を練るが…

 新しく描かれたハリー・ポッターの世界。19年後の世界となり、ハリーたちがどんな成長をしているのかを楽しめる。
 物語はそんなに深くならないし、終わりもハッピーエンドが分かっている以上、「こんなものだ」と割り切って読む必要はある。
<A> <楽>
17'07'01 カムパネルラ
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 国家組織メディア管理庁に刃向かったために死んでしまった母の遺骨を、遺言に従って宮澤賢治の故郷花巻に散骨するために新幹線に乗った“ぼく”。だが、着いた場所は何故か昭和8年の花巻だった。まさに賢治の死ぬ日のはずが、既に賢治は6年前に亡くなっているという。更に“ぼく”はカムパネルラの殺人容疑をかけられて警察に捕まってしまう。

 不条理な世界で身に覚えの無い殺人犯とされてしまう主人公と言う事で、ディックの「アンドロイドは伝記羊の夢を見るか?」と「ユービック」とつげ義春の「ねじ式」をぐっちゃぐちゃに混ぜたようなものになっている。こういう訳の分からない話って、結構好きだぞ。
<A> <楽>