読書日誌
2019’1〜3月

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19'03'31 墓地に潜む恐怖
ヘイゼル・ヒールド (検索) <amazon> <楽天>
 すっかり寂れてしまった片田舎の村があった。誰もいなくなったのは、この村にまつわる悪い噂からで、その噂の中心であったスプレイグ家にまつわる物語。

 ラヴクラフトの「ハーバート・ウエスト」を目指して作られたような話。しかしあまりに話がお粗末な上に、根底にある強い差別意識がどうにも読み進めにくい。
 特に怪奇ものの作品はむしろこう言う外れの方が多いということを念頭に置かねばならない。
<A> <楽>
19'03'28 吾妻鏡 中
竹宮惠子 (検索) <amazon> <楽天>
 鎌倉で挙兵し、平氏との戦いを開始する源頼朝。だが荒れる東の平定と武士政権の樹立を目指す頼朝は鎌倉から出ることが出来ず、その代わりとして弟の義経を平氏との戦いに送り出した。義経は連戦連勝で、朝廷からも多くの報償をもらうことになるが…

 平氏平定を経ていわゆる鎌倉幕府の樹立までを描く。ただ、この話では頼朝よりも弟の義経の方が話の中心っぽい。悲劇のヒーローはやはりマンガにすると映える。頼朝が割と優柔不断なのは逆にリアルな話かも。
<A> <楽>
19'03'24 セイレムの怪異
ヘンリー・カットナー (検索) <amazon> <楽天>
 セイレムの町でかつて魔女が住んでいたという曰く付きの家を購入した作家のカーソンは家の地下に秘密の部屋があることを発見した。外の音を遮断出来るために執筆向きと思い、部屋にこもるようになるが、徐々に不眠になっていく。そんなある日、オカルティストを名乗るマイケル・リーごいう男がやってくる。

 この世が異世界とつながっているという物語で、特にここでは定番の一つ。バランスの取れたホラー小説ではあるが、著者がやや民族的な侮蔑の言葉を連呼するのが気になる。
<A> <楽>
19'03'22 黒博物館 ゴースト アンド レディ 上
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 ロンドンのドルリー・レーン劇場に保管されていた“かち合い弾”と呼ばれる謎の銃弾を見せてくれと老人が訪ねてきた。その案内をした学芸員は、その老人に憑いていた幽霊を目撃する。実はその幽霊こそ、ドルリー・レーン劇場に憑いていた幽霊であり、学芸員に、何故ここに帰ってきたのかを語り始める。

 「スプリンガルド」に続くイギリスゴシックを舞台にした漫画で、これまでほとんど描かれたことのない素材を上手く漫画にしている。主人公がナイチンゲールだが、その時代から遡って他にも実在の人物をモティーフにしているので、そのつながりが面白い。
<A> <楽>
19'03'19 オーバーロード5 王国の漢たち 上
丸山くがね (検索) <amazon> <楽天>
 アインズ・ウール・ゴウンが水面下で着々と地固めをしている間、王国では“八本腕”と呼ばれる犯罪者集団に手を焼いていた。多岐にわたる数々の犯罪は貴族の裏の支援もあり収まることが無かった。そんな事態に心を痛める王国王女ラーナの命を受け、ラーナに身も心も献げる青年騎士クライムは調査に乗り出す。

 今度は初めての王国内部の模様が描かれていくが、主人公のアインズ・ウール・ゴウンが悪人という立場のためか、またしても中心人物が変わり、見習い騎士というか、少年が中心となる。なんか真っ当なビルドゥングスロマンっぽくなってるのがちょっと意外。
<A> <楽>
19'03'17 はじめの一歩123
森川ジョージ (検索) <amazon> <楽天>
 トレーナー見習いとなった一歩の前にボクサーになりたいという青年テツが現れた。彼がいじめっ子であることを知っている一歩はテツにいくつかの試練を与え、それに耐えられるかを見極めることにした。一方、太平洋チャンピオンの宮田は防衛を続けてはいるものの、生彩に欠いてしまうことを自覚していた。

 弟子も出来、トレーナーとして順調に成長していく一歩だが、とにかく読んでいて辛い。物語そのものよりも、一歩にこんな真似させるなということ。いっそ一度閉じて全く違った物語としてトレーナーを主人公にした物語を作った方が良いんじゃないかな?
 あと、宮田が一歩との再戦を希望するような事を言ってるけど、前に戦えないと言ってた本人からそんな勝手な台詞が出るとは。
<A> <楽>
19'03'14 響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部 波乱の第二楽章 前編
武田綾乃 (検索) <amazon> <楽天>
 年度が替わり二年生となった黄前久美子ら吹奏楽部の面々。昨年の全国大会出場もあり、多くの新入生を迎えることが出来たが、特に久美子の属する低音パートは癖の強いキャラが多く入っていた。気がつくと後輩の指導係のようなことをさせられることになるのだが…

 短編集を経ての新学期。派手ではないが癖が強く、一緒にいるにはしんどい後輩達と悪戦苦闘する姿が描かれる。こういったキャラを描くのがとにかく上手く、ちょっとだけ煩わしいことが多い日常風景がなかなかよく読ませてくれる。
<A> <楽>
19'03'11 中春こまわり君
山上たつひこ (検索) <amazon> <楽天>
 小学校卒業から早四半世紀。こまわり達も四十前になっていた。時に羽目を外して奇行を見せることもあっても、しがないサラリーマンとして日々過ごしていた。腐れ縁の西条とは同じ会社の同僚で今も一緒に飲みに行ったりお互い愚痴を言い合ったりする仲で、他の仲間達とも適度につきあいが続いている。そんなこまわりの生活の中、ちょっとした事件を描く。

 あのPTAの目の敵にされた伝説の漫画「がきデカ」の続編。あれから四半世紀後の話で、当然全員中年になっており、こまわりに至っては通風まで出始めているという状態。
 作品自体もギャグ漫画には違いないが、当時のようなナンセンスギャグではなく、サラリーマンの悲哀や妻とこの間の関係、実家の両親と疎遠になってたりと、ペーソスに溢れた重喜劇と言った風情。
 これまで小説家として結構重めの小説を書いていただけあって、どっしりした大人向けのコメディと言ったところか。昔の姿を知っていいるから笑えるところと、逆に寂しくなるところと、複雑な感情を持たせてくれる。
<A> <楽>
19'03'08 Re:ゼロから始める異世界生活8
長月達平 (検索) <amazon> <楽天>
 多くの犠牲を払いつつも白鯨討伐を成し遂げたナツキ・スバル。戦いを通して出来た頼れる仲間と共に、これから魔女教徒に襲われることになるロズワール邸に戻ることになった。死に戻りの経験からそのリーダー“怠惰”ペテルギウス・ロマネコンティを見つけることに成功したが…

 前巻がほぼクライマックスと言って良い展開だったが、本番はこれから。これまでの痛々しさはなく、ひたすら戦いが続く。通常の物語なら、このまま成功で終わることになるが、一筋縄ではないのが本作の面白さだろう。
<A> <楽>
19'03'04 吾妻鏡 上
竹宮惠子 (検索) <amazon> <楽天>
 平安末期。平氏によって朝廷は牛耳られていたが、各地で平氏に対する反発が起こり始めていた。かつて平氏と並び立つ武家の棟梁源氏の正嫡頼朝は周囲に推されるように打倒平氏に立ち上がる。

 平安時代の終わりから鎌倉時代中期までを描いた「吾妻鏡」のコミカライズ。著者はさすがに器用さで、歴史物もしっかり描けているし、キャラクタの個性をちゃんとタッチで描いているのが今読んでも名人芸と言った感じ。
 私自身まだオリジナルの方は読んでいないのだが、結構頼朝なんか優柔不断なところがあるようにも見えて、なかなか興味深い。
<A> <楽>
19'03'01 恥さらし
稲葉圭昭 (検索) <amazon> <楽天>
 北海道警察現職刑事でありながら麻薬や拳銃の密輸に関わり、挙げ句自らも麻薬中毒となって刑務所送りとなってしまった著者が語る自伝。

 映画『日本で一番悪い奴ら』(2016)の原作となった著者の自伝。話としてはリアルで大変面白いが、リアルで生々しすぎて(地味で)映画には向いてないとしか思えなかったり。
<A> <楽>
19'02'26 ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話 モフ田くんの場合
清水めりぃ (検索) <amazon> <楽天>
 ブラック企業勤務で激務の生活をしていたモフ太は、ある日突然人間サイズの猫に変わってしまった。それでもその姿のまま出勤し、仕事を続けるのだが、そのモフ太を中心にして、会社そのものが変化していく。

 Twitterから始まった四コマ漫画。巨大猫を中心にした日常話。大きな盛り上がるストーリーでもないのだが、読んでいてとても癒やされる。
 Twitterで見かけてそのままフォローし、単行本まで買ってしまったが、いつも傍らに置いてぱらぱらとめくるのにぴったり。
<A> <楽>
19'02'23 オーバーロード4 蜥蜴人の勇者たち
丸山くがね (検索) <amazon> <楽天>
 リ・エスティーゼ王国とバハルス帝国の国境近くにある大湿地地帯にはいくつかの部族に分かれた蜥蜴人たちが住んでいた。ある日、それぞれの部族の頭上に暗雲が広がり、アインズ・ウール・ゴウンを名乗る魔物から宣戦布告を受ける。部族全部をまとめて対抗しようと、一人の蜥蜴人ザリュースが立ち上がる。困難を経て5つの部族の連合を作り上げることには成功したが、攻め入ってきたアンデッドの群れは極めて強力で…

 主人公のアインズを完璧に悪人にして、圧倒的な力を前に蹂躙され屈服する側を主人公に持ってきたという異色作。これまでの小説には無い立場で作られていることもあるが、やはり文体が馴染むので、とても読みやすい。
<A> <楽>
19'02'21 日常5
あらゐけいいち (検索) <amazon> <楽天>
 ついに漫画を応募することを決めたみおは祐子と麻衣に仕上げの手伝いを頼むのだが…他にクラスメイトの安中榛名や中之条剛ら、いつもの面々が不条理な出来事に遭遇したり、桜井先生に恋する高崎先生が桜井の弟に翻弄されたり。

 主人公三人組か博士となののエピソードは少々減り、その代わりにクラスメイトとか囲碁サッカー部の活動やら、訳の分からない物語が拡大中。
<A> <楽>
19'02'19 キノの旅14
時雨沢恵一 (検索) <amazon> <楽天>
 3組の旅人が訪れる13の物語。「朝日の中で」(キノ)、「情操教育の国」(師匠)「呟きの国」(キノ)「規制の国」(キノ)「開運の国」(師匠)「遺作の国」(キノ)「亡国の国」(シズ)「結婚の国」(キノ)「寄生虫の国」(キノ)「差別をする国」(キノ)「卑怯者の国」(キノ)

 いつにまして短い作品ばかりで、掌編と言うべきものも多い。一編一編にちゃんと個性が出ているのが本作らしい。
<A> <楽>
19'02'16 巨娘4
木村紺 (検索) <amazon> <楽天>
 巨大焼き鳥チェーンの白清グループの娘ウコからいきなり料理勝負を挑まれたジョー。そのせこいやり方を逆に気に入ったと豪語してネット配信の料理勝負に向かう。他にジョーの勤める鳥吉グループの様々なトラブルを、度胸と腕力で次々解決するジョーの姿を描く。

 相変わらずの度胸と豪快な腕力の巨娘の活躍を描く第4巻。この巻はほとんどが店に関しての問題解決で、爽快な話に仕上がってる。
 お兄ちゃんとのラブラブ話が無かったり、結構細かいアニメーション業界の裏側とかがなかったのがちょっと残念なところ。
<A> <楽>
19'02'12 蜘蛛の巣を払う女下 ミレニアム4
ダヴィド・ラーゲルクランツ (検索) <amazon> <楽天>
 ミカエルと話をしたその夜、フランス・バルデムは何者かによって殺害されてしまった。その死を間近で見た彼の息子のアウグストの身を保護した警察だが、既に警察には謎の組織の手が伸びていた。間一髪、アウグストを救ったのは、ミカエルの連絡を受けていたリスベットだった。自身も怪我を負いながらアウグストを守ろうとするリスベットと、この事件の真相解明を進めるミカエル。

 情報戦とアクション、ジャーナリズムの良心まで巻き込んで展開する物語。テンポも良いし、何より謎の組織の黒幕の正体にひねりが入ってて、しっかり読ませてくれる。
 本作では、背後に巨大な組織があることと、糸を引く人物が特定出来たところで終わっているので、まだまだシリーズは続いていくことになるだろう。
<A> <楽>
19'02'10 蜘蛛の巣を払う女上 ミレニアム4
ダヴィド・ラーゲルクランツ (検索) <amazon> <楽天>
 リスベットの裁判から3年。ミカエル・ブルクヴィストは今もミレニアム誌の記者として働いていたが、ある雑誌にミカエルを貶める記事が載り、それによってバッシングを受けていた。一方ミレニアム誌自体も大手スポンサーによる乗っ取りを受けていた。起死回生の記事が求められる中、ミカエルの元に人工知能研究の第一人者フランス・ドルテルから連絡が入る。

 著者の死によって終わったかと思われた作品だが、著者を変えて続くことになった。ほとんど違和感無しに読めるあたりはさすがと言うべき。オリジナルの著者よりもサイバネティクス関係には詳しいらしく、なかなか面白くなってる。
<A> <楽>
19'02'07 銀河鉄道999 2
松本零士 (検索) <amazon> <楽天>
 999号は太陽系を離れ、不思議な形や変わった風習を持つ惑星に立ち寄っていく。その中でトラブルに巻き込まれたり、999に乗り込もうとする住民達とぶつかったり。

 基本的に短編の繰り返しで、一話一話にドラマが詰め込まれている。どれも本作ならではで味わい深い。
 化石化ガスに覆われて住民が全部石になってしまったという「化石の星」は確かテレビスペシャルでアニメ化されているのだが、原作はこんなにあっさり終わってることに驚いた。
<A> <楽>
19'02'04 探綺書房
ヘンリー・ハッセ (検索) <amazon> <楽天>
 古書巡りをして稀覯本を探していた“私”はある日初めて見つけた古本屋に入ってみたところ、店主がなにやら曰くありげな本を差し出し、まず読んでみろと言われる。タイトルも何も無い羊皮紙の本を持ち帰って読み始めたところ、その恐るべき内容に目が離せなくなってしまう。その内に身の回りの世界に変化が…

 本という扉を通して宇宙の果てとつながるという話で、まさしく神話大系の中枢となる作品といえる。ただ、宇宙を垣間見ただけで帰ってくるという話なので、内容は薄いけど。
<A> <楽>
19'02'01 聲の形1
大今良時 (検索) <amazon> <楽天>
 小学校で“退屈さ”を嫌う三人の仲間、石田将也、島田一旗、広瀬啓祐の小学校に一人の女の子が転校してきた。耳が不自由な西宮硝子というその子をいじめの対象にして退屈さをしのいでいたのだが、徐々に石田のいじめがエスカレートすることで、周囲の人間も引いていき、やがて今度は石田の方にいじめが移っていった。その後石田と西宮が別の学校に進学し、高校生になっていったが…

 映画を観てこれは是非原作を読まねばと思って手に取ったが、やっぱり相当に重い話だった。第1巻はほとんど過去のみの話。いじめの話は創作でも読んでるだけで辛い。
<A> <楽>
19'01'29 嘲笑う屍食鬼
ロバート・ブロック (検索) <amazon> <楽天>
 精神科医の“私”はアレクサンダー・ショパン教授を名乗る男の訪問を受け、その話を聞いていくと、魔術書の研究を続ける内に悪夢を見るようになったと語る。しかもその悪夢に出てくる地下納骨堂を現実でも見たと言い、一緒にそこに来て欲しいと頼まれる。

 設定自体からかなり無理を押し通す感じの話で、無理に無理を重ねている内に「わっ」と驚かせて終わる。びっくり箱みたいな話だった。小説としては駄目駄目だけど、ホラー作品としてこう言うのは嫌いじゃない。
<A> <楽>
19'01'23 夏目友人帳14
緑川ゆき (検索) <amazon> <楽天>
 「音無しの谷」お使いの途中で小妖怪に襲われ、声を出せなくなってしまった夏目。そんな夏目を助けた妖怪は、今度は夏目をレイコと間違えて、自分のすみかに連れて行かれてしまう。
 「悪戯な雨」急な雨にあった夏目の前に古いタオルが飛んできた。そのタオルを持ち帰ったところ、タオルの持ち主だという少女の姿をした妖怪が洗われる。
 「変わらぬ姿」夏目をレイコと決めつける妖怪が現れ、盗んだ人形を返せと言ってくる。当然身に覚えのない夏目だが…

 あとがきにもあったが、クラスメイトとの関わりがメインだった15巻に対し、今度は妖怪との関わりに特化させた3編の中編。ネガティブな話は少なく、著者らしいちょっと引っかかるところがあるほのぼの系の話となってる。時折読むととても心地良い。
<A> <楽>
19'01'20 顔のない神
ロバート・ブロック (検索) <amazon> <楽天>
 エジプト奥地の砂漠で黒い彫像を見つけたという報告を受けた商人のシュトゥガッツェは大もうけをもくろみ、調査隊を組んでその地へと向かう。報告通り砂に埋まった彫像を見つけるのは見つけるのだが、そのあまりに醜悪な姿に、そのために連れてきた者たちは誰も手を付けようとせず、シュトゥガッツェを残して逃げてしまう。仕方なく一度戻ることにするのだが…

 著者自身が長編で書いたこともある、いわゆる黒い神ニャルラトテップをモティーフにした作品。獲物をいたぶって、精神的に追い詰め、拷問のようにじりじり死を与えるという描写がねちっこくてよし。
<A> <楽>
19'01'17 日常4
あらゐけいいち (検索) <amazon> <楽天>
 みおとゆっこの学校生活の日常はのんびりすぎていく。周囲に巻き起こる混乱と、ゆっこのあこがれの君にまつわる話。

 主に非日常の日常を描くことが多いが、今回みおが喫茶店に入って混乱する話はあるあるネタ。ロボットのなのを調べようとする先生が何度もチャレンジを繰り返しながら、そのたびごといろんなトラブルで思いが果たせないとか、ナンセンスギャグも結構たくさんあり。キャラが増えてきたので、だんだん主人公二人から離れた話が増えてきた感じ。
<A> <楽>
19'01'14 妖蛆の秘密
ロバート・ブロック (検索) <amazon> <楽天>
 怪奇小説家の“私”は古書店でラテン語で書かれた稀覯本を見つける。「妖蛆の秘密」と書かれたその本をラテン語の読める友人の家に持ち込み、目の前で朗読をお願いするのだが…

 ラヴクラフトの弟子を自認する著者が師匠を小説の中で殺してしまうと言う皮肉めいた作品。「ネクロノミコン」などと並ぶ神話大系で重要な書物「妖蛆の秘密」はここが初出となる。
<A> <楽>
19'01'11 血界戦線 Back 2 Back1
内藤泰弘 (検索) <amazon> <楽天>
 アルバイトもライブラでの仕事も無い久々の休日を迎えたレオ。ゲーム三昧の自堕落な日を送ろうとしていたのだが、その一日が始まった瞬間に部屋が破壊され、更に何者からトランクを託されたところ、殺し屋に命を狙われる羽目に。一体何が起こったのか分からないまま、トランクを抱えて逃げ回ることになるレオ。

 二部の開幕となるが、やってることは基本一部となんら変わりない。勝手に誰かに命を狙われ、逃げ回ってる内にライブラの面々が集まって、なし崩しに事態は収束していく。これが日常だったら命がいくつあっても足りないが、それが本作の通常運転というものだ。
 いろんな映画のインスパイアと著者特有の省略描写で、一体何が起こってるのか、よく読まないと分からないのが難点だが、それこそが著者の魅力とも言えるか。
<A> <楽>
19'01'10 彼方よりの挑戦
キャサリン・ルシール・ムーア (検索) <amazon> <楽天>
エイブラハム・メリット (検索) <amazon> <楽天>
H・P・ラヴクラフト (検索) <amazon> <楽天>
ロバート・E・ハワード (検索) <amazon> <楽天>
フランク・ベルナップ・ロング (検索) <amazon> <楽天>
 砂漠で不思議な石英を見つけた地質学者ジョージ・キャンベルは不思議な光を放つその石英を見つめている内に精神だけ別世界に飛ばされ、その次元の住人の芋虫のような肉体に転生させられてしまう。混乱したキャンベルだが、やがてこの世界の理を理解し、どう生きるべきかを見いだしていく。

 名だたる作家達の連作短編。設定は恐怖小説なのに、超ポジティブな主人公のお陰で異世界を舞台にした異色冒険譚になってた。むちゃくちゃだし、完成度も高くないけど、楽しい作品だった。
<A> <楽>
19'01'08 YASHA6
吉田秋生 (検索) <amazon> <楽天>
 人質の命を優先し、雨宮家に下った静。殺したいほど静を憎む凜は、義父の協一郎の説得を受け、共に静の故郷奥神島の有末家に向かう。そこで静の過去の思い出と直面するが、それは昔から感覚を共有していた凜にとって、拷問にも等しいものだった…

 最終巻。静と凜の双子の兄弟対決の決着が描かれる。
 世界中をウイルスが席巻しているはずだが、話そのものはそんなに大きくなく、静と凜の兄弟喧嘩および雨宮家のお家騒動から出ていない。でもそれでさえ情報量がとてつもなく多く、話が急展開していく感覚がある。これを全部描くには倍くらいの紙面が必要だっただろうから、これで良かったんだろう。
 しかし結果として、主人公は静ではなく、そのライバルキャラとなる凜の方だったというのが面白いところだ。これは「BANANAFISH」と同じで、特異能力のキャラクターを横から見せることで、際立たせるという方法だろう。
<A> <楽>
19'01'04 暗恨
リチャード・フランクリン・シーライト (検索) <amazon> <楽天>
 親友のふりをしながらその心を弄んでいた考古学者マルタッキが亡くなり、彼の妻と財産を独り占めにしたウェッソン・クラークは、マルタッキの遺品の中に自分宛の小箱を目にする。大変貴重なその箱を手にとって眺めている内、そこに封印が施されていることに気づく。

 死んだ人間による復讐という純粋なホラーを扱った作品で、キングあたりが好みそうな素材だった。短い作品だが、ポイントを押さえた作りになってる。
<A> <楽>
19'01'02 屍衣の花嫁
ドナルド・ワンドレイ (検索) <amazon> <楽天>
 愛する婚約者ミリアムの死を看取った“私”は、ミリアムとの再会を熱望していたが、やがて夜な夜なミリアムが“私”を訪ねてくるようになった。しかも彼女と出会う場所は、夢の中で次々変わり、やがてこの世ならざる恐怖の空間へと変化していった。

 神話大系の設定を味付けにした純粋なホラー小説。短いけど雰囲気がなかなか良く、ちょっとした映画に仕上げられそうな雰囲気はある。
<A> <楽>