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ウルトラマンA

ウルトラマンA事典
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1972'4'7〜1973'3'30

 ウルトラマンシリーズの第4作目で、好評を博した「帰ってきたウルトラマン」終了直後から話は始められる。実際に完全にシリーズ化したのは本作からといえる。
 前作で好評だった客演を推し進め、本作から「ウルトラ兄弟」を強く意識させた内容となってるのが大きな特徴で、後のシリーズはこの路線を継承していくことになる。
 大きな特徴としては、これまでの「怪獣」より更に強いという「超獣」が登場するようになり、その超獣を作り上げた明確な敵ヤプール人を設定したことだった。だが、その路線が活かされたとは言えず、結局前半のメインライター市川森一の降板に従い、中盤は結構迷走。徐々に「帰ってきたウルトラマン」で確立された基本路線へとシフトしていくことになる。前半で男女二人組でないと変身出来ないという枷も後半になると取り払われてしまう。そのため、他の作品と較べると、ややまとまりのない印象を受けてしまう。特に南夕子役の星光子の降板は相当に大きかった。本人の言では「やはり魔物の仕業だったと言う事なのでしょう。視聴率と言う名の魔物」と後に述懐している。
 今になって観ると、たとえ異色作と言われようとも、前半部分のハード路線は見応えがあり、これを最後まで進めて欲しかった所。個人的にも市川森一脚本はとても好み。 

主な登場人物
北斗星司
ウルトラマンA
(役)高峰圭二。主に時代劇で活躍。本作が代表作となる。
 福山市でパン屋店員として働いていたが、最初に現れた超獣ベロクロンにタンクローリーで特攻をかけて絶命。その勇気をウルトラ兄弟達に認められ、Aの命が与えられる。当初南夕子と共に変身していたが、夕子が月に帰ってしまってからは一人で変身することになった。
南夕子
ウルトラマンA
(役)星光子。他に「電人ザボーガー」後半に出てきた王女メザ役など。
 福山市で看護師として働いていたが、ベロクロンにより北斗共々殺されてしまうが、そこをウルトラ兄弟に助けられ、ウルトラマンAの命を分け与えられる。実は月星人の子孫であり、28話で仲間のいる冥王星に旅立ち、以降は月星人の特殊能力を持って地上にやってくることがあった。
竜五郎 (役)瑳川哲朗。主に特撮作品での出演及び声優として活躍。
 TAC隊長。自ら陣頭指揮を執ることも多いが、その言葉は一つ一つ重みがある。ウルトラ警備隊のキリヤマ隊長同様、多くの名言を残している。
山中一郎 (役)沖田駿一。特撮作品は本作のみだが、多くのテレビドラマで活躍。1986年で引退。
 二丁のタックガンを操る射撃の名手。TACの副隊長的な役付けだが、激情的で早とちりも多い。婚約者がいたのだが、メトロン星人Jrに殺されてしまった。
吉村公三 (役)佐野光洋。
 宇宙生物にかけてのTACの生き字引。性格は温厚であまり前に出ることはないが、アローでの攻撃は真っ先に行っている。
今野勉 (役)山本正明。
 ロケット工学のオーソリティ。小太りで、お笑い担当っぽいが、この人が何をやっても、なんか許してしまうような、癒し系の雰囲気を持っている。ちなみに住職の息子で、時折「ナムアミダブツ」などと唱えてる時がある。
美川のり子 (役)西恵子。
 TACのオペレーターだが、竜隊長のアローに乗っていることも多い。22話で宇宙仮面により殺されてしまうのだが、すぐに復活。大変女性っぽい話が多いのも特徴か。
梶洋一 (役)中山克己。
 兵器開発員。新兵器を紹介するときのうれしそうな顔からして、この人も相当のマッドサイエンティストっぽい。憧れるなあ。途中退場が残念。
梅津ダン (役)梅津昭典。
 二年前にトラック運転手だった父をギタギタンガに殺された少年。ウルトラの星が見えるという特殊能力を持ち、ウルトラ六番目の弟を自称する。北斗を兄のように慕っている。
話数 タイトル コメント DVD
第1話 輝け!ウルトラ五兄弟

  監督:筧 正典
     満田かずほ
  脚本:市川森一
  特技監督:佐川和夫
 広島県福山市に突如全身からミサイルを出す巨大な怪物が現れる。迎え撃つ地球防衛軍をあっさりと全滅させたこの怪物は異次元人ヤプールにより改造された怪獣即ち超獣だった。その災害に巻き込まれた看護師の南夕子は、同じく現場にいたパン屋の配達人北斗星司に助けられる。北斗は近くにあったタンクローリーに飛び乗ると、超獣ベロクロンに体当たりするのだが、まるで歯が立たず、あっさりベロクロンにより潰され、南も巻き沿いを食ってしまう。その二人の勇気をたたえ、ウルトラマン五番目の弟ウルトラマンAは自らの力を封じたウルトラリングを与えるのであった。数日後、TACへと入隊した北斗と南の元に、再びベロクロンが現れたとの情報が。初めての二人の活躍が始まる。
 敵はミサイル超獣ベロクロン。初めて現れた超獣で、本シリーズを代表する超獣ともいえ、怪獣とミサイルを合体させたデザインは秀逸に尽きる。全身からミサイルを出し、二度目の登場ではなんと東京タワーを破壊している。ほかに手からビーム兵器が飛び出てきたり、姿を消したりするが、これまでのシリーズでは宇宙人だけに許された攻撃が一介の超獣が出せるということで、その強さを引き立ててる感じだ。それとここでは画像処理をしてあまりよく見えないが、異次元人ヤプール人も出てくる。
 さすがに1話目は特撮の力が入っている。最初の福山市の攻撃シーンといい、東京タワーをへし折るベロクロンの描写といい、特撮好きには感涙ものの描写だ。特にすごいのはTACの戦闘機の浮遊感で、背景は書き割りとは言え、ちゃんと飛んで見える描写はやっぱり上手いなあ。
 それでベロクロンのミサイル攻撃がまるで効かないウルトラマンAの強さが強調されるのだが、それと互角以上に戦えるベロクロンの強さもしっかり描写されていた。
<TACは超獣により全滅した地球防衛軍に変わって組織された正義の軍団…1話で語られる限り、ベロクロンによって地球防衛軍が全滅してわずか数日で結成されたという割に、すさまじい装備を持っているのはどういうことか?地球防衛軍の遺産なんだろうか?だったら“全滅”なんて言葉は使わないだろ?
 ウルトラマンAの声は納屋吾郎。この人は既にヴェテラン声優だが、声がおっさんくさいので、ウルトラ兄弟の弟役には合ってなかったんじゃないか?土台、同時期に「仮面ライダー」やってて、そこでのショッカー首領の声も演じてる。やっぱり違和感がなあ。そもそもAって中性的な風貌が売りなんだが、声だけ野太いのもなんだ。
 ベロクロンの攻撃によって落とされてしまった山中隊員と吉村隊員、次の瞬間には車に乗って笑顔でみんなの元に…こいつら本当に人間か?
 ベロクロンが小学校を攻撃した際、光るウルトラリングに向かって「お前が俺たちに与えるという力は何だ!」と思いっ切り叫んでる北斗…この時点でTACの通信は切ってあったと信じたい。
 ベロクロンと格闘するウルトラマンA。ところでベロクロンって全身にミサイル装備してるんだろ?よく爆発しないな。>
VOL.1
<A> <楽>
第2話 大超獣を越えてゆけ!

  監督:筧 正典
      満田かずほ
  脚本:市川森一
  特技監督:佐川和夫
 工事現場に巨大な銀の卵が現れ、現場の作業員を飲み込んで地中に姿を消してしまった。一方、上空をアローでパトロールしていた北斗は空中に浮かぶ金色の卵を目撃する。その卵は撃墜したものの、TACの北斗と南の歓迎会の最中に北斗が撃墜したはずの卵が旅客機に追突して乗員もろとも旅客機が墜落してしまう。竜隊長は北斗に謹慎を命じ、他の隊員と共にアローで出撃するが、卵をいくら攻撃しても消えてしまう。ついにビルの頂上に降り立ち、鎮座する卵に、消えたはずの銀の卵が転がってきて、合体。やがて卵が孵化し、超獣が生まれ出る。
 敵は古代超獣カメレキング。カメレオンと宇宙翼竜の合成超獣で、そのまんまの姿をしてる…が、これって超獣じゃなくて怪獣じゃないのか?銀の卵と金の卵が合体して誕生する。
 これも特撮部分にはかなり力が入っていて、いくつものビルをなぎ倒しての立ち回りが楽しめる。
 ここでも本野がなかなか良い役をやってる。パトロール中、歓迎会のことで頭がいっぱいの北斗を、「どうしようもないやつですね」と竜隊長に言ったところ、「お前もな」と見事に返されてしまう。
 又、「一週間」の替え歌もここで登場。やはりここでも本野がコサック帽をかぶって踊りまくる。
 ちなみに歌詞は「月曜日は射撃の訓練。火曜日はアローで飛ぶよ〜。水曜日はパンサーで出動。木曜日は超獣退治。金曜日は隊長が怒鳴り、土曜日も徹夜で勤務〜」もちろん合いの手で「テュリャテュラテュリャテュテュラテュリャリャ〜」が入る。
 なんでも知ってるカジは、ここでも大活躍で、超獣カメレキングの存在から生態まで見事に言い当てる…お前いったい何者だ?冷静な顔しながら得意そう。
 ウルトラマンAに助けられ、入院している竜隊長の元にやってくる北斗。その時ウルトラマンAではなく、北斗に助けられた幻想を見たという竜の姿。格好良い隊長の姿とはこういうところにある。
<卵を撃墜すると街に被害が出るというので、卵が降下しきるまで待つ竜隊長。しかし降下した途端、今度は北斗が迫撃砲で攻撃…これだってすごく被害出ると思うんだが。
 地球防衛軍無き今、TACが超獣と戦う役割を担っているわけだが、何故か戦闘機が出ている。これって自衛隊?
 カメレキングが暴れ回っている下で、幼稚園のバスがエンコしたからと言って、全員でバスの救出に向かってる。しかも子供たちは「怪獣だ!」と言って見物に出かけてる…なんともほのぼのした光景だ。
 一人カメレキングにワンポイント攻撃を敢行する竜隊長。特攻に近く格好良いのだが、いざ攻撃しようとしたらアローのミサイルが出ない!更に突然アローが煙を噴いてる。整備ミスか?
 ウルトラマンAのカラータイマーの点滅時間が今回はえらく早い。一分弱戦っただけでもう点滅してる。>
第3話 燃えろ!超獣地獄

  監督:山際永三
  脚本:田口光成
  特技監督:佐川和夫
 アローでパトロール中の南は山奥で黄色い帽子の少年を見かけ、その直後に空から超獣が現れたのを発見する。旅客機を破壊した超獣はそのまま姿を消してしまうが、そのことを主張しても、TACの誰もそれを信じてくれなかった。だが中森史郎と書かれた帽子を見つけた北斗は南の証言を信じ、少年の居場所を探すことに。少年の家で
 敵は一角超獣バキシム。顔が機械っぽい真っ赤で、体は青いという独特のデザインで、これも代表といえる有名な超獣。空を割って出現するシーンは見事な合成だ。更にその口からよだれ(?)まで表現するとは、なかなか力が入ってる。歩く際、地面が陥没するところまでやってくれてる。自在に姿を消して好きな場所に移動することができるため、ほとんどの隊員が出払ったTAC本部を全身に装備されたミサイルを使って襲うが、一旦ウルトラマンAとの格闘になると、割とあっけなく倒されてしまう。最後はウルトラスラッシュで首を落とされてしまうが、こういう表現はこの時代ならでは。
 初期の傑作とも言える見事な作品で、過疎の村に現れた少年が、実はヤプール人が送り込んできたスパイだったという話で、時代背景を示しているようだ。都会に人が流出してしまい、寂しい老夫婦は、子供を庇うしかないだろう。社会問題と人間の心情にまで入り込んできた脚本は上手い。黒目がちの子役も演技が上手いな。
<美川隊員が南の失策に対し、「私もTACに入り立ての頃は入道雲を超獣と間違えたことがある」とか言ってるけど、おかしいな。TACはできたばかりのはずなんだが、いきなりヴェテランになってるよ。
 北斗に向かっていきなり銃を構える少年を放っておく北斗。怪しさ満点だろうが。大体飲酒運転だろ?(それを叱責されて一週間の謹慎を食ってしまうが)
 TAC本部に帰ろうとして北斗はアローを飛ばすが、燃料切れを起こして不時着。
 又しても梶は新発明の爆弾を開発するが、時限装置が故障…TACの装備はいったいどうなってるんだ?
 前話に続き、僅か一分足らずの戦闘でAのカラータイマーは点滅。Aって実はそんなに強くないような…>
第4話 3億年超獣出現!

  監督:山際永三
  脚本:市川森一
  特技監督:佐川和夫
 3億年前の古代魚類が発見された。竜隊長は山中、北斗、南の三人にその輸送の護送に任命する。一方、美川隊員は中学時代の知り合いで現在売れっ子怪奇漫画家の久里虫太郎の屋敷に呼ばれていた。中学時代美川に突き返されたというラブレターを大切に持っていた久里はそのラブレターを美川に返すのだが、そこにはガランという怪獣の絵が描かれていた。更に今描きかけという漫画を美川に見せるのだが、そこにはトラックが空を飛ぶ絵が描かれていた。ちょうどその頃、古代魚類を積み込んだトラックが北斗たちの目前で空中高く舞い上がり姿を消してしまった…
 敵は怪魚超獣ガラン。顔や手など、元の魚のイメージが残るデザインが特徴の超獣。久里虫太郎が中学時代に描いた絵を古代魚類をヤプール人が具現化した超獣。虫太郎が描いたとおりの行動をするため、消しゴムで姿を消すと、本当に消えてしまう。武器は鼻から出す怪光線と、口から噴出する煙。この煙に巻き込まれた物体はガランの口に吸い込まれてしまう。
 妄想男による女性の監禁が描かれる話で、妄想の話のはずだけど、現代では時折本当に起こっているところが怖い。久里虫太郎は見た目の通りかなりやばい人間で、美川隊員を監禁する前に既に一人の女性を監禁していて、屋根裏部屋にミイラ化した女性が倒れてたりする。マジやばい。当時はファンタジーのはずだったんだが…怖い怖い。本作も間違いなく名作の一本だ
 特に妄想男を演じた清水紘治の演技は本気でマッド入っている感じ。
 前回に続き空中の光学合成で現れるガランや、本当に燃えているガランの姿など、これも特撮技術は見所が多い。
<古代魚類の警護のため駆り出されるTACの面々。この組織は何でも屋か?
 ガランによって握りつぶされそうになったTACアローから脱出した北斗に向かって南がジャンプし、フライングタッチを決める。これってどう見てもバレバレだと思うのだが?>
第5話 大蟻超獣対ウルトラ兄弟

  監督:真船 禎
  脚本:上原正三
  特技監督:大平 隆
 都内で次々と起こる女性の失踪事件。被害に遭うのはいずれもO型の女性ばかりだった。それをヤプール人の仕業だと主張する北斗だったが、滝隊長は証拠不十分とそれを退ける。そんな時、休暇中の南がいきなり出現した蟻地獄に引きずり込まれそうになる。これで地下に現れた超獣の仕業だと判明するのだが、Aは地下に潜る術を持っていなかった…
 敵は大蟻超獣アリブンタ地底エージェントギロン人。アリブンタはアリジゴクをモティーフとした超獣で、このデザインもかなり良い。四次元空間から蟻地獄を出現させ、O型の女性ばかりを引きずり込んで喰っていた。蟻酸で地下鉄を溶かし、両手からは炎を出す。ギロン人はアリブンタを操る異次元人で、アリブンタに東京を壊滅させ、地底に大要塞を作るのを目的とする。アリブンタを使い、わざとAを地下に呼び寄せ、串刺しにしようとする。二体で地上で暴れていたが、ゾフィとAの連係攻撃で二体の頭がぶつけられて倒れる。
 都内の地下に現れた蟻地獄という、突飛な話が展開するのだが、本作の特徴として、これを異次元からの侵略とすることで説得力を持たせようとするのが特徴。
 確か子供の頃、この話を見て凄く怖くなった記憶がある。特に人間がアリブンタの吐く霧で溶かされて骨になってしまうシーンは、やっぱりこれも一種のトラウマだろう。女性の悲鳴のシーンも多用され、それも結構来る。
 A絶体絶命の危機にやってきたのがゾフィ!これまでほとんど活躍の場がなかったウルトラマンの長兄も、この辺りから前線で戦うようになっていく。アリブンタ&ギロン人VSゾフィ&Aという組み合わせで戦い、ゾフィの強さを堪能することが出来る。
<久々の休暇ではしゃぐ南。北斗と一緒と言うことは、デートなのかな?尤も北斗は荷物運びでひいひい言ってるけど。
 Aが地下に潜るために南が囮になる。私服姿なのは囮と悟られぬようにだと思うのだが、そのうしろにぴったり隊員服姿の北斗がくっついているので意味がないような気がする。
 TACの面々の多くが地下に潜っているため、地上に現れたアリブンタを攻撃するのは、あまり出てこない防衛軍だったのか?
 この話では特撮が妙な意味で凝っているが、Aとかゾフィのアップに魚眼を使うのは変。>
VOL.2
<A> <楽>
第6話 変身超獣の謎を追え!

  監督:真船 禎
  脚本:田口光成
  特技監督:大平 隆
 異次元空間ではヤプール人によりワニと宇宙怪獣の合成が行われ、怪獣ブロッケンが誕生した。そしてブロッケンは日本初の友人宇宙船が月から地球に帰還中の小山隊員に乗り移ってしまう。それでも無事日本に帰ってくるのだが、小山の手には不気味な目と口が…
 敵は変身超獣ブロッケン。ワニと宇宙怪獣が合成された四本足の超獣で、後ろ足部分には鞭状の目を持つ独特のデザインを持つ。宇宙飛行士の小山に取り憑いて地球にやってくる。最後はウルトラギロチンによってバラバラにされてしまった。本作は他のシリーズと較べても怪獣を切断するシーンが多いが、これは極めつけだろう。
 物語はホラー風味満点。宇宙に行った人間に宇宙生物が取り憑くのは宇宙を扱ったホラー映画では定番で、ここでもその定番に則った形。超獣は様々な形で生まれるようだが、こうやってヤプール人に合成されるパターンが初めて出てきた。
 物語はやや練りが足りないっぽいが、ホラー的な演出と、いくら危機に陥っても北斗一人ではウルトラマンAに変身できないということから緊張感は高く仕上げられている。
 小山隊員を演じるのは小林昭二。なんとここまで四シリーズにフル出演である。
<小山の乗っているのは初めての日本の有人ロケットだそうだが、これまでのシリーズで散々宇宙に行っていた事実はどうなる?宇宙ステーションまで作られてるはずなのに。
 初の有人飛行から帰ってきた小山は、何の検査もなしにその晩家に戻っている。
 小山の息子あつしは夜中にTACに連絡をかけるのだが、名前を言わないのに、「あつし君」とかちゃんと応答してる。
 今までのシリーズで初めて必殺技の名前を叫ぶシーンあり。「ウルトラギロチーン」。
 最後のナレーションに「影のない人は宇宙人」みたいなことを言っていたが、北斗が尾行していた時点で小山にはしっかり影があったような?>
第7話 怪獣対超獣対宇宙人

  監督:筧 正典
  脚本:市川森一
  特技監督:佐川和夫
 7日後に確実に地球にぶつかるという妖星ゴランが現れた。TACはゴランを撃ち落とすために新型ミサイルのマリア1号の打ち上げを決定する。刻一刻と迫る発射時間だったが、その時突然地下からメトロン星人Jrが出現する。更にその司令塔には山中の恋人であるマヤがいる事が分かり…
 敵は幻覚宇宙人メトロン星人Jr蛾超獣ドラゴリー、そして巨大魚怪獣ムルチ。メトロン星人Jrは「ウルトラセブン」に出てきたのとは多少デザインが異なり、口のようなものも付いてる…だからJrか。妖星ゴランの接近に合わせたように突如地下から現れ、迎撃用ミサイルのマリア1号を破壊した後、司令塔にいた山中隊員の婚約者マヤに乗り移ってしまう。ドラゴリーは凶悪そうな超獣で、ヤプール人によって作られたらしいが、メトロン星人Jrをサポートするために出現。決死のエースバリヤーで何とか防ぐ。そして最後の最後、ムルチが出現。
 とにかく無茶苦茶に豪華な話となった。妖星による地球の危機。三体の怪獣の出現(正確にはタイトル通り、宇宙人と怪獣と超獣)。Aの新必殺技。前後編と言っても、ここまでやるか?というくらい、超豪華だ。このまま最終回に突入しても不思議がないくらい。
 山中と恋人の話が本作の中心となるのだが、こう言う時に割を食うのは主人公か。それにしても本当に恋人を殺してしまうし、更に南の機転で正体がばれるが、それで山中に恋人を撃たせるなんて、ほんと良くやるよ。
<豪華だが、一方、ツッコミ所も多い。
 妖星ゴランってあんたな…
 「死亡フラグ」という言葉がある。劇中に恋人と結婚の約束をしたら、ほぼ確実に死ぬという呪いのような話なのだが、ここでは山中隊員ではなく、恋人の方が殺されてしまう。やっぱりここでもジンクスは生きていたようだ。
 マヤがメトロン星人Jrに乗り移られたことを知った北斗はマヤを殺そうとするのだが、当然の如くそれは山中によって阻止される。正しい人間は誤解を受けるのは昔からだ。
 毎度のことだが、TACの面々が揃ってる眼前で北斗と南が人間業と思えないジャンプをして、突然Aが現れる。よくこれでばれないよな。
 ドラゴリーに対し、多大なエネルギーを使用するエースバリヤーを使う必要性があったのかどうか謎。メタリウム光線使った方が良かったんじゃないかな?
 次の戦いではメトロン星人Jrとドラゴリーの二体がエースの前に立ちふさがるのだが、決して連携が良いとは言えず、エースが避けたら正面衝突したり、間違ってお互いを殴ってしまったり…ドラゴリーはメトロン星人Jrとは無関係にヤプール人に作られたのかな?
 次回紹介で「怒りを込めてウルトラマンAの必殺技が空を切る」とナレーションが…空を切っちゃいけないんじゃないか?>
第8話 太陽の命・エースの命

  監督:筧 正典
  脚本:上原正三
  特技監督:佐川和夫
 メトロン星人Jr、ドラゴリー、ムルチの三体の攻撃により、追いつめられたエースはエースバリヤーを張ることでドラゴリーとメトロン星人Jrを封じ込めた。だが、南は体力を使い果たしてしまう。妖星ゴランの接近は迫っており、マリア2号の建造が急ピッチで進められる中、TACの面々の行動は…
 敵は前回に続きメトロン星人Jrドラゴリー。尚ムルチは最初に誤ってドラゴリーにパンチを入れたお陰で怒りを買ってしまってバラバラにされてしまう。何のために出てきたのか?と言う感じだが、その描写は生々しすぎて、これも子供の頃、無茶苦茶怖かった記憶あり。メトロン星人Jrはバーチカルギロチンによってまっぷたつにされ、ドラゴリーは腹ぶち抜かれた上で首を落とされ、最後にメタリウム光線で破壊される。
 前半部分は怪獣との戦いよりもTAC隊員一人一人の行動が中心に描かれる。恋人を殺されて怒りに震える山中や、マリア2号の完成を苛々しながら見守る竜隊長、瀕死の南とそれを庇いつつも、エースに変身しなければならない焦りを持つ北斗。そして後半は二対一の絶対不利な状態で、しかも100%の力を出せないエースの戦いが描かれる。この前後編はシリーズを通しても屈指の良作だ。
<アローでパトロールしている山中と今野に「緊張の面持ちでパトロールする」というナレーションが入る。なんでか今野はにこにこして鼻に指を当てたりしてるんだけど。
 前後編に渡り3体の怪獣が現れるが、それぞれバラバラにされる。ムルチは引き裂かれ、メトロン星人Jrはまっぷたつに。そしてドラゴリーは腹をぶち抜かれた上で首を落とされて…それぞれ血が出てきたり、内容物をぶちまけたりと、なかなか凝った演出が…凄いなあ。>
第9話 超獣10万匹!奇襲計画

  監督:山際永三
  脚本:市川森一
  特技監督:田淵吉男
 気流の流れの乱れから超獣出現を予測したTACは出現予測地域に部員を配置していたが、写真班の今野の前に、どこかからかこの情報を聞き込んだカメラウーマンの鮫島純子が現場に潜り込み、現れた超獣をこっそり撮影してしまった。その途端に超獣は消え去ってしまう…
 敵は忍者超獣ガマス。とにかく妙な風貌の超獣。忍者超獣の異名を持ち、手裏剣や吹き矢など数々の忍者道具を武器とする。新聞社の写真のネガに身を潜め、雑誌に印刷されて無数に分裂しようとした。一定の音波を浴びると写真から出てしまうため、輪転機にかけられる前に街中に出現してしまった。
 人間の不の部分をことさら強調して描くのが本シリーズのメインライターである市川森一の最大特徴。それが遺憾なく発揮された作品と言えよう。とにかく観ていて苛つく描写が多々…凄いなこれは。70年代のテイストでありながら、現代に充分通用する脚本だった。
 ガマスとエースの戦いは、一種時代劇の決闘シーンみたいで大変緊張感があるが、やってることは、本当にチャンバラだったりして…
<ここに登場する鮫島純子というのは、いかにもバリバリのキャリアウーマンと言った感じだが、男の趣味は大変に悪いみたいだ。彼女のお陰で数多くの人間の命が危険にさらされ、何人か本当に死んでるのだが、罪悪感もなし…ん〜、でも最後は一番優しい人にくっついたか。
 その鮫島、撮影したガマスの写真を自宅で現像するのだが、カラー写真だった。凄い設備持ってるな。
 今野に対して主人公の北斗がえらく大人げない。女性に手を挙げるなど、ヒーローにあるまじき行動だ。>
VOL.3
<A> <楽>
第10話 決戦!エース対郷秀樹

  監督:山際永三
  脚本:田口光成
  特技監督:田淵吉男
 ルミ子と次郎が町を歩いていると、超獣が現れ町を破壊し始める。「郷さんがいれば」と叫ぶ次郎の声に合わせるかのように現れたのはなんと郷秀樹。ウルトラの星に帰ったはずの郷の姿に次郎は喜び、TACも先輩として彼を迎え入れる。一人それに疑問を持つ北斗だったが…
 敵は犀超獣ザイゴン。鼻に巨大な角を持つ四本脚の怪獣で、突進力が強く、炎を吐く。その分小回りがきかないため、闘牛士よろしくマントを振ったエースに誘導されてしまい、最後はウルトラナイフで首を落とされる。そして郷秀樹に化けた変身怪人アンチラ星人。エビに似た宇宙人でTACを騙して基地に潜り込み、ザイゴンを操るためにウルトラレーザーを使う。
 郷秀樹が客演。ついでに次郎とルミ子も登場した。懐かしい話だが、いきなりルミ子と次郎が登場した際は違和感が無く、一瞬「帰ってきたウルトラマン」が普通に始まったかと思ってしまった。
<一応兄弟という設定なのだが、弟であるエースがウルトラマン(ジャック)の事を知らなかったのか?それとも北斗&南の状態だとエースの記憶がないのだろうか?
 ザイゴンは最初からまっすぐ突進しか出来ない怪獣として描かれていたが、本当にカルメンの音楽と共にエースが紅い旗を振って、それに突進するザイゴン。なかなかコミカルな演出だが、最初旗は手のひらサイズだったはずが、いつの間にかマントサイズに巨大化していた。
 ここでも必殺技の名前を叫ぶエースの声が聞こえるが、やっぱりちょっと違和感ある。>
第11話 超獣は10人の女?

  監督:平野一夫
  脚本:上原正三
  特技監督:佐川和夫
 TACのレーダー基地が突然現れた超獣ユニタングによって破壊された。山中と吉村のアローの攻撃を受け、ユニタングは姿を消すのだが、レーダーは使い物にならなくなってしまった。北斗と南は修理のためにパンサーでダイオードSPDを輸送するが、途中サイクリング中の女子大生をはねてしまい、ダイオードを壊してしまった。どうもそのサイクリング部が怪しいと睨んだ北斗は彼女たちのキャンプ地に潜入するのだが…
 敵はくノ一超獣ユニタング。デザインはどうやら鬼女をモティーフとしているらしい。なかなかデザインは良いぞ。10人の女性に身を扮し、合体することで生成する。それぞれがパーツとなるため、バラバラになることも出来る。ウルトラギロチンでバラバラにされても復活してしまった。
 超獣が人間の形になるという珍しい話で、しかも複数の人間が合体という、他に類のない話となってる。しかしその根底をなすのは北斗に対する南の信頼というか、愛情だろう。異色作だが女性絡みの話を作るなら、やっぱりこの人上原正三が脚本書いてる。
 ユニタングは10のパーツに分かれており、それが合体して誕生する。その描写は特撮的に高度な技術を使ってるようだ。
<女子大生に囲まれ、鼻の下を伸ばしっぱなしの北斗。ヒーローにあるまじき姿とはいえ、妙にはまってるのは高峰圭二の人徳(?)ってやつか?
 ユニタングは北斗を虜にすることに成功したのだが、その時に殺してしまったらエースだって出なくなるのに。詰めが甘い。
 ユニタングに合体する9人の女性。特撮はちゃちいが、ん?9人でも変身できるの?
 それにしても今回エースのカラータイマーはなかなか赤にならないようだが…>
第12話 サボテン地獄の赤い花

  監督:平野一夫
  脚本:上原正三
  特技監督:佐川和夫
 超獣サボテンダーが現れ、北斗と南はエースに変身。今一歩の所まで追いつめ、とどめのメタリウム光線を浴びせようとした途端、突然サボテンダーは消えてしまった。実は普通サイズのサボテンへと変化し、露天に紛れ込んでしまったのだ。そのサボテンが買った三郎少年だったが…
 敵はさぼてん超獣サボテンダー。サボテンとハリネズミの合成超獣で、姿はそれに準じてる。小さなサボテンに姿を変え、動物を食べまくって栄養を得てエースと再戦する(皮肉なことにエネルギーを満タンにしたのはその正体を知り、爆発させたTACだった。体を丸くして体当たりをかけたり、針を飛ばして攻撃するが、サーキュラーギロチンにより十文字に切断され、内容物をぶちまけながら倒される。
 冒頭から超獣との戦いが始まり、その後TACの調査が始まる。どっちかというとホラー風味を付けた推理ものか?尤も観てる側は分かってるのだが。その過程で珍しくTACと警察の共同捜査が行われたりする。
<北斗が学校を調査中に出会った私服警官、ごちゃごちゃと後ろで説明してるのに北斗は全く聞いてない。
 「南米には牛を食べる植物がいる」と説明されているが、これってひょっとして「ウルトラマン」に出てきたケロニアのことでは?
 自分のサボテンが人間を襲った事を知らされつつ、「友情」と称してサボテンを庇う三郎。自分が襲われることを考えてないのか?
 三郎を襲うサボテンダーを一瞬タックガンで撃とうとして思いとどまった北斗は銃を器用にくるっと回してホルスターに収めてる。こんな中でも余裕があるようだ。
 梶が開発した、生物から水分を奪うという特殊ガスをサボテンダーに使用するのだが、その赤いガスの中、TACの面々はサボテンダーに攻撃をかけてる…このガスって人間には効かないの?馬鹿な。>
第13話 死刑!ウルトラ5兄弟

  監督:吉野安雄
  脚本:田口光成
  特技監督:佐川和夫
 新聞配達中の兄弟の前に怪獣が現れる。早速電話ボックスに走った兄弟の兄は超獣により殺されてしまった。そして事件は事故として警察にかたづけられてしまう。北斗と南は兄弟達の呼び声ウルトラサインによりゴルゴダ星に呼ばれるのだった…
 敵は殺し屋超獣バラバ。凶悪な顔つきと怪獣とは一線を画す鋭角的なデザインを持ち、大変素晴らしい造形を誇る。ヤプール人により降らされた放射能の雨に守られ、ほとんどの攻撃を防いでしまう。更にゴルゴダ星に行ってしまい、不在のエースを尻目に町を破壊しまくる。武器は頭部から発射される剣と右手から発射されるフック状のアンカー。死んだふりも得意。
 前後編の前編。これも実は私の子供の頃のトラウマ作品。子供があっけなく殺されるというのはショッキングな描写から始まり、ウルトラ兄弟の処刑!という凄い話が展開する。はっきり言ってこれは最終回のノリだよ(これはシリーズの通し脚本家である市川森一が下ろされることになったため、彼が考えていた最終回の原稿が用いられたと言うことらしいが)。エースを除くウルトラ兄弟達が十字架に磔にされるなど、描写も凄い。
 ウルトラ兄弟の磔刑シーンは幼少時のトラウマだが、自分たちのエネルギーをエースに分け与えるシーンは、シリーズ全話を通しても名場面だと思う。
 尚、今回ウルトラセブンのテーマ曲が流れている。
<殺された子供を笑って済ませる警察官と、妙に嬉しそうな弟の描写はなかなかキてるぞ。
 ウルトラ兄弟同士の会話シーンが描写されるが、やっぱりこれは相当の違和感を感じる。特に自分の名前を刻んだ十字架を発見してのけぞるあたりは止めて欲しい。
 それに改めて思うのは、エースを納屋悟朗にやらせるのはなあ…>
VOL.4
<A> <楽>
第14話 銀河に散った5つの星

  脚本:田口光成
  脚本:市川森一
  特技監督:佐川和夫
 攻撃を止められてしまったエースはバラバの前に敗北を喫し、北斗と南は瀕死の重傷を負ってしまう。TACの人工太陽光線により一命を取り留めた二人。そんな時、TACの高倉長官は超高速ミサイルNO.7によりゴルゴダ星の破壊を命令するのだった。
 敵は前回に続き殺し屋超獣バラバ。エース不在の地球で暴れ回るが、帰ってきたエースに左手の爪を奪われてまっぷたつにされる。そして対エース用に作り出された異次元超人エースキラー。甲冑を思わせるデザインが特徴で、これも良いデザインだ。4兄弟のエネルギーを奪い取り、それぞれの必殺技を使ってエースを倒そうとする。エースのメタリウム光線の直撃を食らっても平気だったが、四兄弟の力を受けてスペースQを放ったエースに粉砕される。それとエースキラーのテスト用に超人ロボットエースロボットがヤプール人によって作られ、エースキラーによってあっけなく破壊されてしまった。
 ウルトラ兄弟の処刑を前に、勝ち誇るヤプールと、地球上では上層部とTACの確執が描かれることになる。無謀な特攻を命じる高倉長官と、このままでは死んでしまうと、帰ってこいと指令する竜隊長。このあたりの緊張感は良い出来だ。
 切実な話が描かれるのに、北斗と南の心の交流や、ウルトラ兄弟の兄弟愛など、見所は多い。ただ、内容が詰まりすぎていたか、最強超獣のはずのエースキラーがあんまりにもあっけなく倒されてしまったのは残念なところ。バラバとの戦いは前回で終わらせておくべきだったんじゃないかな?
<帰ってきたウルトラマンの事はここでは「二世」と呼ばれているようだ。「ジャック」と呼ばれるようになるのはまだ先のこと。
 ウルトラマンはスペシウムを、ゾフィはM78光線を、セブンはエメリウムをエースキラーに与えることになるが、“二世”はウルトラブレスレットを取られただけ。それで力尽きたようにがくっと首を落とす描写はどういう訳だろう?
 ロケットに乗った北斗とTAC司令部にいる南。物理的に離れた二人がどうやってエースに変身するのかと思ったら、モニター越しにタッチしてる。こんなので良いのか?それより、南はばれなかった?
 ゴルゴダ星から地球に帰ってきたエースは元気いっぱい。宇宙でエネルギー補給したんだろうか?
 エースは背後からバラバにキックを見舞うが、するとバラバの両目が飛び出てしまう。なんだこの演出は?>
第15話 黒い蟹の呪い

  監督:山際永三
  脚本:市川森一
  特技監督:田淵吉男
 空をパトロール中の北斗は岡山上空で海上に出現した二つの赤い光点に気づく。丁度その時、浜辺では少年夢二がカブトガニの密猟者からカブトガニを奪って逃げていた。そのカブトガニは実はいなくなった夢二の父親の魂が移ったものと分かる。そのカニが語る言葉によると、何者かがカニを改造して町を破壊しようとしている事を聞かされる…
 敵は大蟹超獣キングクラブ。ネーミング通りカニの超獣。カニの怨念がヤプールによって巨大化したものだそうだ。どっちかというと超獣じゃなくて怪獣じゃないだろうか?炎を吐きとがった尻尾で攻撃する。エースと相撲対決の末、浴びせ倒しで倒され、頼みの尻尾をドリル光線で切り刻まれた上で破壊されてしまう。
 今野隊員が中心となった話で、たまたま帰省中に事件と出逢うという話。むしろ今野と知り合った少年の方が主体だが。
 どっちかというか怪談というか、伝奇ものの話として仕上げられているのが特徴。これまでにも4話のガランのように怨念が超獣を生み出したことはあったが、なんともこの話はスケールダウンしてしまった感じ。エースである必要がない。BGMも「帰ってきたウルトラマン」で使われているものばかりだし…前回切り札のエースキラーを倒されてしまったので、早くもヤプールの手が無くなってしまったのだろうか?
<他の隊員の話は全くないのに、今野はこれが二つめの中心の話。このキャラ、話を作りやすいんだろうか?
 何の脈絡もなくエースは四股を踏み、キングクラブと相撲を取る。なんだこりゃ?
 ところで夢二のお父さんの魂が乗り移ったというカブトガニの説明が全くなかったんだが…それに自然破壊の警鐘だったとすれば、カニに対するフォローもない。
 舞台は岡山で、鷲羽山が舞台となる。とっても関係ない話だが、「天地無用!」のキャラの一人鷲羽はここからネーミングされているとか。>
第16話 怪談・牛神男

  監督:山際永三
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:田淵吉男
 TACの吉村隊員が休暇で岡山の実家に帰る途中、電車で高井というヒッピー風の男と出逢う。高井から強制的に観光案内をさせられた吉村は殺された牛の鼻輪を祀る鼻ぐり塚に行くのだが、そこに現れた謎の僧に呪いをかけられた高井は徐々に牛化していき、ついには超獣カウラとして変身してしまう。吉村から連絡を受けたTACは出動するが、元人間であるカウラにはなかなか手出しができない…
 敵は牛神超獣カウラ。牛神の呪いを受けた青年が変化した超獣。牛肉を食べてる人間に復讐しようとする。牛らしく鼻息が大変強い。牛を食べる人間を次々と襲っていく。右手に付けた鼻輪を外されることで元の人間に戻る。
 怪奇シリーズ第二弾。前回がカニだったのに対し、今回は牛。やっぱり超獣と言うよりは怪獣だろう。異次元獣との戦いがメインの本作で怪談話ってのは、あんまり似合わないような…食べられる牛の呪いだとするなら、それをどうするのか。と言う所まで描いて欲しかった。
 今まで一度も中心となったことがなかった吉村隊員が中心となる。これまで今ひとつ個性が感じられなかったが、ここで好青年ぶりが遺憾なく発揮されてる。今野だけでなく吉村も岡山出身か。北斗と南が広島出身だから、西日本出身者がやたら多いな。
 ウルトラマンシリーズには結構多く登場しているが、ここで蟹江敬三がヒッピー青年を好演(怪演?)ぶりを見せている。牛の真似やるわ、牧草をむさぼり食うわでやりたい放題。この人の登場は「ウルトラマンレオ」のブニョと言い、変な役が多い。
<カウラが現れると吉村隊員はTACの制服に着替えてる。用意周到だが、どこから出したんだ?
 ヤプール人が初めて実体化して登場。ただし今回は僧に化けて。笠を取ると隈取りした顔が現れるのだが、かなり違和感あり。
 カウラに対して麻酔団を使用するTAC。だが、しっかり爆発が起こってるんだけど。
 右手に付けた鼻輪が外されて大人しくなったカウラをなでるエース。次の瞬間投げ飛ばしてる。なんて奴だ。>
第17話 怪談・ほたるヶ原の鬼女

  監督:真船 禎
  脚本:上原正三
  特技監督:高野宏一
 ほたるヶ原バイパスで事故が多発。しかも被害者はみんな白骨化していた。そこは対超獣用新兵器V7の輸送経路に当たることから調査を開始するTAC。調査に当たった南は車椅子の少女民子と出会い、仲良くなるのだが…
 敵は大螢超獣ホタルンガ。これもネーミング通りホタルが超獣化したもの。それでもやはり機械っぽさを持たせたのは超獣デザインと言えるか。尻尾にエースを痺れさせる毒を持ち、頭から溶解液を出す。エースを弱らせたものの、TACのV7によって破壊される。
 シリーズものとして怪談話が展開。ホタルはどんなに綺麗でも実は肉食だと言うことに気づかされる。怨念が怪獣を生むという話はこれまでのシリーズでもいくつかあり、本作でも3話がそれに近いか。今回は白骨死体が出てきたり、南自身が車椅子の少女を無表情に突き放すとかホラーっぽい表情を見せているのも特徴だろう。
 今回は南が中心。考えてみたら、主人公であるのに、全ての見せ場を北斗に取られてしまってこれまでほとんど中心になることが無かった。ま、対象が男の子向けだから仕方ないんだけど。
<怪談らしく少女民子は南との会話で低い声でぽつぽつと喋ってるのに、南が「じゃ泊まってあげる」の声に、急にはしゃいだ声になる。ギャップありすぎ…つーか南も、妖しいことに気づくべきだろう?
 美川隊員は南に特殊ガスを手渡し、これによってホタルンガから脱出できたのだが、そのガスは南自身にはダメージを与えないのだろうか?
 北斗と南が変身する際、南には民子がぶら下がっていたけど、気づかれてない?
 これに限ったものではないが、ヤプールに操られていたとはいえ、車に対する怨念から犠牲者を出していた民子が最後は南と笑いあってるのが違和感あり。>
VOL.5
<A> <楽>
第18話 鳩を返せ!

  監督:真船 禎
  脚本:田口光成
  特技監督:高野宏一
 パトロール中の北斗と南は、母から禁止された鳩を飼おうと苦労している少年三郎と出会う。三郎の飼っている小次郎という鳩を無人機の実験に使用するTACだったが、その鳩をヤプールが捕獲。超獣に変えてしまう。
 敵は大鳩超獣ブラックピジョン。ネーミング通り鳩のような顔をした超獣で、鳴き声も鳩っぽい。その帰巣本能を利用して改造したヤプール人はTAC本部を襲わせようとしていた。炎を吐くだけでなく、得体の知れぬ白い液体を出してエースを固めてしまった。お腹から突き出ている一本角もミサイルとして使用できる。メタリウム光線を跳ね返すという力まで持つ。
 又しても動物が超獣化した話で、今回は鳩。なんか東映もののシリーズっぽくなってきたな。ヤプールのやってる事自体も行き当たりばったりという感じ…物語自体は悪くないけど、「エース」である必然性はどうだろう?こんなのを続けてると幅を狭くするだけだと思う。
 妙にヤプール人のテンションが高かったのも特徴的。ブラックピジョンが思うように動かないので、叫んだり慌てたりしてる。
<今回のヤプールの作戦は鳩の帰巣本能を利用してTAC本部を襲撃させようというものだが、これまで何度もTAC本部への襲撃が行われていたから、その必要はなさそうな。
 三郎少年によれば小次郎という鳩は「血統書付き」なのだそうだが、実は晴海埠頭で拾ったものだった。
 三郎少年の鳩笛に呼応して出てくるブラックピジョン。三郎は超獣なんかと戦ってるから小次郎が見つからない。とかなじるが、それはちょっと不当だ。>
第19話 河童屋敷の謎

  監督:筧 正典
  脚本:斎藤正夫
  特技監督:佐川和夫
 嘘つき少年安夫はある日超獣が町の中でプールになるのを発見する。早速TACに連絡するが、町中に嘘つきが知れ渡っており、その家の住民春山夫妻にもTACにも一笑に付されてしまう。安夫の友達は春山夫妻に誘われてプールに入れてもらうのだが、へそを抜かれてしまうのだった…
 敵は河童超獣キングカッパー。ネーミングセンスを疑うような超獣で、名前の通りカッパの化け物。これもデザイン的には超獣と言うよりは怪獣っぽい。頭の皿には水が入っており、これがプールになっている。その水が無くなると弱体化してしまう。
 これも怪談っぽく仕上げられた話で、春山夫妻が迫ってくる所など、ホラー風味満点。他に北斗の昔話や南の北斗に対する思いなど、結構色々と入っている。ヤプールの目的がなんなのか今ひとつ分からないという根本的な問題はあるものの…
<今回のヤプールの作戦は、どうやら北斗をプールに飛び込ませることだったらしい。それにしてはわざわざ町中にプールを作ってみたり、秘密で子供を誘ってみたりと、えらく複雑な作戦内容となっている。キングカッパーの頭のさらに北斗を入れたのは良いけど、そのまま何もしてないし。結局それでエースを出現させる結果になる。>
第20話 青春の星・ふたりの星

  監督:筧 正典
  脚本:田口光成
  特技監督:佐川和夫
 アローで駿河湾上空をパトロールしていた北斗は北極星付近から船が飛んで、海に着水するのを発見する。TACのレーダーには何も映っておらず、北斗の健康を心配した竜隊長から休暇を命じられるのだった。それを利用して単独でその船を調査に行った北斗は、確かにステラ・プラリスとう船が存在している事を知る。そこに現れた篠田一郎という男からこの船は3年前からここにあったと言うことを知らせるのだが…
 敵は大蝉超獣ゼミストラー。蝉のような顔と象のような鼻(口吻かな?)を持つ超獣で、かなりの不細工さを誇る。鼻から火を出す。どうやら念動力で船を浮かべていたらしいが、その目的は不明。陸で暴れていた所をエースのメタリウム光線で焼き尽くされる。
 北斗の青春が語られる話ではあるのだが、話自体はよく分からない。ヤプールの目的自体もよく分からない。ただ、なんとなく当時の青春と言うのが分かる話ではある。篠田青年が語る青春は、「自由や解放を叫ぶ学生たちに真実は無い」と断言しており、丁度この時代に起こっていた学生運動を正面から批判している。
 今回の見所としては、なんと言っても篠田一郎役として登場した篠田三郎(なんだこのネーミング)。一年後の「ウルトラマンタロウ」での東光太郎である。船に固執してるあたり、物語の連続性を感じさせてくれる。
 北斗がTACに入って既に三年が経過したという台詞があった。その間何を考えていたか分からないが「俺もこの船と同じように鎖に繋がれているのだろうか」なんて事を言ってる。TACにいながらも青春をもてあましているんだろうか?
<船をわざわざ空中に浮かべ、レーダーにも映らせないのに、北斗のアローにそれを見せるヤプールの考えはよく分からない。
 爽やかな青年として登場する篠田は結構キレやすく、ちょっと気に入らない発言を北斗がするとすぐに殴りかかってくる。こいつこれまでまともな生活を送っていたんだろうか?>
第21話 天女の幻を見た!

  監督:山際永三
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:川北紘一
 天女の夢を見て目覚めた竜隊長の部屋を訪ねてきた少女。彼女はなんと夢に出てきた天女そっくりだった。お手伝いさんにして欲しいと言う彼女に、必要はないと断る竜。結局彼女は高級住宅街の若者シンイチに雇われることになる。
 敵は天女超獣アプラサール。天女を模した姿が特徴の超獣で、乙女座の少女アプラサがヤプールの力を受けて超獣化する。巫女のような服装をしており、袖を伸ばして飛行機をキャッチしたりする。実体がないため攻撃が通用しないらしいが、途中まではエースの攻撃はしっかり当たっている。ヤプールから与えられるエネルギーを遮断することで元の少女に戻る。
 初めての竜隊長が中心となった話。押しかけお手伝いさんとしてやってきた少女を拒絶したばかりに酷い目に遭わされる…仮に受け入れてたら余計酷い目に遭っただろうけど。物語は強引すぎるし、意味もあんまり感じられない作品で、この辺りの脚本の迷走ぶりを感じさせる。
 ラスト、エースは乙女座の少女をはくちょう座に連れて行くことにした。「乙女の姿は白鳥に乗ってこそ最も美しいから」だそうだが、なんなのそれは?
<竜隊長の家を突然訪ねる少女アプラサ。家の場所はヤプールに教えてもらったか?だったら直接竜の家を攻撃すれば良いんじゃないのか?
 アプラスは乙女座の精だそうだが、星座というのはたまたま地球から見られる形という事実はどうなるんだろう?それ以前に乙女座の爆発って何?
 今回ゲストキャラとして登場したシンイチは濃すぎる。人の前でわめき散らすは妄想全開で叫ぶは、怖くなるとこれまで怒鳴っていたTACに泣きつくは。なかなか素晴らしいキャラに仕上がってる。>
VOL.6
<A> <楽>
第22話 復讐鬼ヤプール

  監督:山際永三
  脚本:上原正三
  特技監督:川北紘一
 アローでパトロール中の北斗と南は山中に隕石が落下するのを発見する。何事もないとその時は帰還した二人だったが、翌日隕石の落下付近から負傷者が発見される。隕石から出てきた宇宙人にやられたという発言に非常警戒態勢に入るTAC。案の定宇宙人はTAC基地へと侵入。待ちかまえていた美川と山中が追跡するが、宇宙人は美川を殺害してしまう…
 敵は銀星人宇宙仮面。全身銀色の宇宙人。隕石に乗って飛来したヤプール人の一人で、地上では坂井一郎という彫刻家に化けている。美川隊員を殺害した後、蘇生させて自らの助手とする。自らの姿を現した後、ブラックサタンを操るが、美川隊員の銃弾に倒れる。そして暗黒超獣ブラックサタン。一つ目の悪魔のような姿をした超獣。坂井青年が幼稚園の園庭で作った超獣の像に命が吹き込まれて巨大化したもの。宇宙仮面のコントロールで、倒されてもすぐに復活するが、宇宙仮面が美川隊員に倒され、コントロールを失った所をタンクの石油を浴びせられた後雷に打たれて炎上した後、メタリウム光線で破壊される。
 これまで割とおちゃらけ路線が続いていたが、一気にハードな物語が展開する。これまで決して表には出なかったヤプール人がついに自ら地球に乗り込んできた。TACの美川隊員が殺されたり、南が北斗に「デートに誘って欲しい」という発言をしたり。物語のキー・ポイントとなる話が展開していく。ただしここでの中心は久々の美川隊員。彼女の献身的な思いと、それを裏切られた時の悲しみが描かれている。
 強いて言うならエースよりは「帰ってきたウルトラマン」っぽい話の気がするが、これも脚本の上原正三のためだろう(これが上原氏最後の脚本となる)
 残念なことにヤプール人の作戦自体は結構お粗末で、隕石に身を潜めて地上に落下してTAC基地を襲ったは良いが、すぐに撃退されてしまい、その後ブラックサタンを巨大化しただけで終わる。
<これまでに三年以上が物語内では経過しているらしいが、その間北斗は南を一度もデートに誘ったことはないという。何度か二人で歩いてるシーンがあったが、それは全部南の方が誘ったのかな?
 ヤプール人が直接地球に来たと言うことなのだが、なんか作戦自体が手当たりばったりでよく分からないという難点もあり。>
第23話 逆転!ゾフィー只今参上

  監督:真船 禎
  脚本:真船 禎
  特技監督:高野宏一
 踊りながら末世はすぐそこまで来ていると全国各地で辻説法する老人が人気を呼んでいた。そしてその老人に子供達が続々とついていく。やがてそれは世界各地へと波及していく。老人と子供を発見した北斗だったが、猿の面をかぶった老人に崖から突き落とされてしまう。消えた子供達は異次元にいると判断した竜隊長は、梶に命じて異次元へ行く方法を探らせるのだった。それに立候補した北斗だが…
 敵は異次元超人巨大ヤプール。ヤプール人全体の集合体。生物と鉱物を合わせたようなデザインは秀逸で、ラスボスにふさわしい姿だ。異次元空間から老人を送り込み、地球の子供達を異次元空間に取り込んできたが、ゾフィの助けを借りたエースが異次元空間へとやってきて、派手な光線の応酬の末倒される。
 ヤプール人はこれまで散々攻撃を仕掛けてきたが、今度はエースが異次元に向かって行くという滅多にない攻撃の話が展開する。
 本シリーズでは超感覚を持っている北斗の言葉をTACの面々が信じない。というパターンが多いが、本作はそれが最も顕著に表れた話で、ヤプールの攻撃を感知した北斗に誰も反応せず、ハーメルンの笛吹男そのまんま。
 演出そのものも『第七の封印』(1956)か賽の河原を思わせる、ホラー風味で作られている。
 ついでながら、久々に梶のマッドぶりが見られたのも嬉しい。
<冒頭で老人が踊っている歌ってクレージーキャッツのじゃないか?
 話に宗教を持ってくるとか(市川森一)、真夏に雪が降るとか(実相寺昭雄)、シリーズの脚本家に対する皮肉がこもっているような気がするんだけど、気の回しすぎだろうか?
 老人と戦う北斗。砂浜で戦っていたはずなのに、次の瞬間には崖の上にいて突き落とされてる。
 怪しい老人のやってたことを信じてもらおうとTAC隊員に訴えかける北斗。必死になればなるほどその姿は痛々しくなる。つーか、突然「お前は俺を信じなさい」とか歌い出したら誰だって引くって。
 落ち込む北斗を慰めようとドライブに誘う夕子の姿が見られ、これは結構嬉しい演出なのだが、女性に「おしっこ」言わせるのは如何だろう?
 TAC本部にいる南はゾフィの呼びかけに応じて異次元空間にいる北斗の元に行く訳だが、基地でいきなり「たーっ」とかけ声をかけて消えてしまったら、さぞかし驚かれたことだろう。
 ラストで「ウルトラマンエースありがとう。ウルトラマンエースさようなら」とかナレーションが入ってるけど、これじゃまるで最終回だよ。>
第24話 見よ!真夜中の大変身

  監督:真船 禎
  脚本:平野一夫
      真船 禎
  特技監督:高野宏一
 ヤプール人は滅びた。だが地上では赤い雨が降るという不思議な事件が起こっていた。そんな時、航海士の父を持つ健太は航海中の父からガラスのようなおみやげを贈られていた。その夜から健太は母の様子がおかしいことに気づくのだが…
 敵は異次元人マザロン人。23話で登場した老人が実はヤプール人ではなくマザロン人だったことが分かる。宇宙人としてのデザインはなかなか秀逸。ヤプール人のカケラを手にした健太の母を操り超獣の子供マザリュースを産ませる。ヤプール同様「異次元人」なので、あるいはヤプール人の意識体の一種かも知れない。そして異次元超獣マザリュース。健太の母から生み出された超獣だが、実は実体が無い幻の超獣。健太の母が正気に戻ることで消え去った。
 ホラー風味満点の作品。肉親が別なものに変わってしまったら?というのは命題だろうが、夢の中で長く続く一本道を歩いてる母親を追いかけていったら、実はそれは鬼女だった。というかなり恐ろしい演出があり。更に母が生んだ弟が超獣だったとか…子供にとってはまさにトラウマ満載だよ。
 夢の話もそうだが、超獣が赤ん坊の泣き声で襲ってくるとか、和服で鬼の面をかぶって踊ってるとか、シュールな描写が多い。当時の世相だろうか?どことなくドグラ・マグラ(1988)を思い起こさせる。これは私大好きだな。
 今回は親子の情が中心だったため、北斗も南もほとんど活躍の機会がなかった。一方エースとマザロン人の戦いは一対一のチャンバラを見てるようで迫力充分。
<前回から登場していた老人だが、ヤプール人が滅ぶと共に消え去ったのに、又出てきたのはなんか意味があったのか?マザロン人は富士山にいるのに、老人は海にいたし。
 ラスト。北斗と南が健太を海に連れて行くのだが、その時に北斗と南が言ってる台詞は鬼女が踊っていた時の台詞と同じ。それでくるっと振り向いて止め絵になるのだが…これは一体何を意味するんだ?>
第25話 ピラミットは超獣の巣だ!

  監督:筧 正典
  脚本:斎藤正夫
  特技監督:川北紘一
 突如町中にピラミットが出現。そこから出る赤い煙は人々の白血球を増大させる。救出に当たった北斗と南は、ガスの中平気で動き回る少女ミチルを見つける。丁度TACでは新兵器V9の完成が近づいていたのだが…
 敵は古代星人オリオン星人。13,000年前に地球を支配していた宇宙人で、再び地球を植民地化しようとやってくる。そして古代超獣スフィンクス。オリオン星人の操るピラミッドから現れた超獣で、そのまんまスフィンクスっぽい。頭部の蛇から炎を出す。エースブレードによって頭部が切り落とされるが、胴体だけになっても突進してくる。
 ヤプール亡き後、宇宙人と超獣のタッグ攻撃が描かれる。そして北斗に対する南の嫉妬心のようなものも描かれる。脚本自体今ひとつ練れてない分、間に合わせっぽいが、珍しい南が中心の話となっている。
<タイトルをよく見るとピラミッドではなくピラミットとなってる。
 ミチルが赤い煙を吸ってる時に近づいてきたヒッピー風の男達はそのビニール袋をくれと言ってくる。シンナーと間違えたんだろうけど、あんな毒々しいものを間違えるか?というか、そんなのをTVで放映するか?
 北斗に優しくされ、更に上司のオリオン星人から裏切られたミチルはオリオン星人を裏切る事になる。女性には優しくするのが大切だと言うことなのか?それにしても北斗はミチルの肩を持ちすぎで、理由も語られない。それに言っては何だが、ミチルの容姿がちょっと…なので、美しいからという理由は考えにくいし。>
VOL.7
<A> <楽>
第26話 全滅!ウルトラ5兄弟

  監督:筧 正典
  脚本:田口光成
  特技監督:川北紘一
 光化学スモッグに覆われた街の上空に突如現れた巨大な宇宙人の姿。彼はウルトラマンエースを引き渡さなければこの世の地獄を見せてやると断言。工場地帯に攻撃をかける。一方出撃したTACの攻撃はことごとくすり抜けてしまい、
 敵は地獄星人ヒッポリト星人。赤を基調とした原色の宇宙人。象のような鼻から風や火を出して攻撃。エースの数倍という巨大な姿をしていたが実は工場地帯に現れたのは幻影で、実際はエースと同じくらいの大きさ。これまでの話の中では確かに最強で、エースのみならず助けに来たウルトラ兄弟までもブロンズ像にしてしまう。
 前後編で展開する話だが、ウルトラ兄弟が全滅という恐るべき描写がなされ、子供の時はかなり衝撃を受けた。特に第一期のファンには大変受けが悪い作品だろう。ここまで兄弟が情けないと寂しいのは確かだ。
 エースがいるから星人がやってくるという子供の言葉は大変説得力がある。どれだけ地球を救おうとも、目の前の危機には人間は弱い。
 怪獣のサイズを変えるというのは結構難しいことだが、ここでは一瞬だけ対比させることでなんとかすり抜けてる。ブロンズ像にされたウルトラ兄弟を照らす夕日の赤さなどもあり、特撮関係はなかなか力が入ってる。
<ヒッポリト星人は200メートルもあると言われてるけど、町との対比サイズ的には他の超獣と変わりがない。
 ヒッポリト星人が現れた際、「地獄を見せてやる」と言ってたけど、宇宙人が地獄ってのも変だな。翻訳の違いかな?
 ヒッポリト星人を前に変身しようとする北斗と南を誰かの声が止める。エース自身かとも思うのだが、それがはっきりしていない。
 ヒッポリト星人が去る際、エースの人形を手に持ち首をぽっきりと折る。こいつは子供か?
 事故を起こした男を助ける北斗はそいつの肩を掴んでがくがくと揺さぶってる。とどめ刺してるぞ。
 星人は自らの身体を投射してるのでは?と語る北斗に「我々TACは科学的なんだ。念力とか分身術とか非科学的な事を言っては困る」と語る梶…ちょっと待て。これまでの戦いの多くは非科学的なのか?
 ヒッポリト星人は幻影であることが分かったのだが、問題はそれでどうして攻撃出来たんだろう?梶なんかも疑問に思っていたが、結局答えは出てなかった。
 ヒッポリト星人によりカプセルに閉じこめられてしまうエース以下ウルトラ兄弟達。あんなにゆっくり迫ってくるんだから逃げられそうなものだけど。というか、あんまり簡単に捕まりすぎだよ。特にゾフィとマンなんかは本当にあっけなく捕まり、それを助けようとした新マンも捕まり、唯一戦ったのがセブンだけとは情けない。>
第27話 奇跡!ウルトラの父

  監督:筧 正典
  脚本:田口光成
  特技監督:川北紘一
 ヒッポリト星人によりウルトラ5兄弟はブロンズ像にされてしまった。ヒッポリト星人は改めて地球の明け渡しを要求する。ウルトラ5兄弟亡き後、TACはなんとかヒッポリト星人を倒すべく考え始める。
 敵は前回に続き地獄星人ヒッポリト星人。竜隊長の特攻によって身体を守るバリアを破られた後、ウルトラの父と戦い、復活したエースのメタリウム光線によって破壊される。そしてエースを救うべく現れたウルトラの父はエースを復活させることには成功したが、ヒッポリト星人により倒されてしまう。
 ウルトラ5兄弟の死!というショッキングな冒頭から、TACの活躍。そしてウルトラの父の登場と、見所満載の作品。これだけTACが活躍したのは初めてだろう。今回のウルトラ兄弟全滅は本当に絶望的だった。田口光成脚本は今ひとつのものが多い印象があったが、本作はおそらく田口脚本の最高作と言えるだろう。
 今回は梶までもがいてもたってもいられなかったらしく、白衣のまま出撃してる。
 エースの復活に合わせOPテーマが流れるが、これは見事にはまった。ウルトラの父までも倒したヒッポリト星人を圧倒するエース。そしてそれを援護するTACの面々と、盛り上がった。しかしTACがヒッポリト星人を攻撃した際に流された「天国と地獄」は今ひとつだったようだ。
<全世界に向けてメッセージを放つヒッポリト星人は、竜隊長の言葉をきちんとひろって返事までしてる。凄い耳だ。
 街の人達は「ウルトラ5兄弟」と連呼してるのだが、これまでのシリーズでゾフィが人前に現れたのはほとんど無いはずなのに、なんで5兄弟って分かるんだろう?
 ウルトラの父からパワーを与えられて復活したエースは既にカラータイマーが点滅しているのに、普段より長く戦っていた。>
第28話 さようなら夕子よ、月の妹よ

  監督:山際永三
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:佐川和夫
 満月が輝く夜。北斗と共にパンサーでパトロール中の南は突然月に向かって話しかけ、何事かを決意する。丁度その時、神山に超獣が出現する…
 敵は満月超獣ルナチクス。太古の昔、月のマグマを吸い尽くして死の星に変えてしまったという。現在は地球におり、マグマを吸い続けている。マグマの中でも活動でき、火を吐いて両目をミサイルのように飛ばして攻撃する。地中と地上でエースと戦い、最後はマグマに放り込まれて燃えてしまう。
 これまで北斗のパートナーとして副主人公だった南夕子の正体が明かされ、そしてお別れとなった話。実は南夕子は月星人であり、ルナチクスを倒すために地球に送られてきたのだった。
 最後のウルトラタッチ。そして南の別れという感動的な話には違いないのだが、これは最初から考慮されていた話ではなく、男女の合体というものが受け入れられなかった事によるテコ入れというのが正しいらしい。
 今回は特に戦いのシーンが長く、夜のシーンとも相まって大変に見応えがあった。
<これまでつきあってきて南の正体が全く分からなかった北斗というのも、相当鈍いようだ。
 地球を月のように死の星にしてしまうと言うルナチクス。しかし、あの程度のマグマ吸収能力だったら地球の核を冷やすまでには一体どれだけ時間がかかる事やら。
 更にルナチクスは“超獣”なのだが、月を滅ぼした時には既に怪獣ではなく超獣だった訳?超獣の定義そのものを変えてしまうぞ。
 今回のエースの変身はとても長い。地中のマグマからエースもエネルギーをもらっていたか?
 ルナチクスはマグマの中で元気で活動していたのに、火山に投げ込まれただけで燃えてしまってる。
 南は北斗にあっさりとウルトラリングを渡した。ん?これって本作の設定そのものを覆してしまうぞ。
 最後、白い服にいつのまにか着替えた夕子は「月で努力します」と言って旅立つ。しかし月星人がいるのは冥王星と言ってなかったか?
 最後、一人でエースに変身する北斗。「ブルァアア」とか妙なかけ声出してるようだけど。>
第29話 ウルトラ6番目の弟

  監督:山際永三
  脚本:長坂秀佳
  特技監督:佐川和夫
 京浜工業地帯に超獣が出現し、TACが出動するが、現場に強烈なアルコールの臭いだけ残し、超獣は消え去っていた。その時北斗と美川のパンサーの前に子供が飛び出してくる。その少年ダンは一年前に父親を事故で失っていたが、それは飲酒運転と片づけられており、以来負けず嫌いで通っていたのだ。昔の自分を思い出し、ダンに共感を覚える北斗。なんとダンはウルトラの星が見えたり、超獣の出現の予言が出来たりという不思議な能力を持っていたのだ。
 敵は地底超人アングラモン。緑色をしたサボテンのような地底人。地下水を勝手にくみ上げる人間に怒り、ギタギタンガを使って地上侵略を開始する。口から金縛り光線を吐き、破壊光線を撃ち出す。胸が弱点。そして地底超獣ギタギタンガ。顔に多くのツノを持つオーソドックスな怪獣タイプの超獣。アングラモンに操られ、地下水を汲み上げる工場地帯を攻撃する。顔のツノから蒸気を出して攻撃する。
 少年を主人公にしてるのに、話が無茶苦茶重い。理想を語る北斗に、現実をもって答える少年や、町の大多数の人間を助けるのか、それとも目の前で死にかけている少年を助けるのか、という二律背反まで描かれている。話自体もどっちかというと「帰ってきたウルトラマン」の物語に近い気がする。これが長坂脚本の特徴か?
 折角一人で変身するようになったのだが、今回は北斗はあんまり活躍できない。南を失ってこれからどうするか。という悩む話を出して欲しかった気はする。
<ダンはウルトラの星が見えたりギタギタンガの出現を予言したりと特殊能力を持つのだが、その説明はされなかった。
 負けるもんかと思えば絶対大丈夫とダン少年を励ます北斗だが、「じゃあ何でお父さんは死んだんだ」と返される。これは確かにその通り。現実ってのは厳しい。>
VOL.8
<A> <楽>
第30話 きみにも見えるウルトラの星

  監督:岡村 精
  脚本:田口光成
  特技監督:川北紘一
 友達と遊ぶダン少年達は住宅街に黒雲が立ちこめるのを発見。ダンはそれを超獣ではないかと言うのだが、友達はそれを信用しない。同じくTACも黒雲を発見。調査が済むまではその地区を封鎖するのだが、警戒中の北斗は、その地区の病人が危篤と聞き、救急車を通してしまう。そして救急車の前に現れる超獣…
 敵は黒雲超獣レッドジャック。機械と生物の融合という大変超獣らしい姿をしている。ツノのような部分は高熱を発し、炎を吐く。黒雲に姿を変えて時折正体を現すのだが、目的や理由は全くの謎。一体何のために出てきたんだろう?ヤプールに作られた超獣がヤプール亡き後、迷って出てきたのか?
 主人公の判断違いで死人が出てしまうと言うきつい話が展開する。更に後半になると北斗は子供の自転車を取りに行って持ち場を離れ、その間に暴走族が立ち入り禁止区域に入ってしまって殺されてしまう。謹慎は当然だろうけど、それでおとがめ無しってのはちょっとないんじゃないか。重くするんだったら、脚本をもう少し煮詰めて欲しかった。
 北斗の失敗を必至になってかばうのは美川隊員の役割になったようだ。南がいなくなった事の影響が見られる。それとダンの役割はそのまんま「帰ってきたウルトラマン」の次郎と同じ。シリーズ回帰を目指したんだろうか?
<ダンは友達から「怪獣バカ」呼ばわりされているが、それにひるまず「俺はウルトラ六番目の弟だ」と繰り返す。苛められることがはっきりしてる子だな。
 北斗の通勤はスーツ姿のようだ。しかし、自宅から出撃した時はちゃんと戦闘服を着てる。
 ダンの姉香代子は偶然北斗と同じアパートに住んでいる。このご都合主義はともかく、「田舎から送ってきた」と言って果物を北斗に持ってくるんだけど、確かこの姉弟、天涯孤独だったのでは?あるいは北斗に近づくための方便?「制服姿が似合う」とか言ってたけど、やっぱり北斗に気があるんだろうか?>
第31話 セブンからエースの手に

  監督:岡村 精
  脚本:山田正弘
  特技監督:川北紘一
 北斗とダンはジョギング中に黒いほうき星が落下するのを目撃する。その後、TAC基地に突然少女が現れ、北斗に「獏と獏おじさんを助けて欲しい」と語りかけるのだった。竜隊長に休暇を命じられた北斗は少女と共に動物園に向かう。少女の言うとおり獏と、獏に語りかけるおじさんがそこにはいたのだが、急に獏は消えてしまい、町には超獣バクタリが現れる…
 敵は獏超獣バクタリ。動物園の獏が黒い彗星の異次元エネルギーで超獣化したもの。好きな時に元の姿である獏に戻ることが出来る。セブンによって元の獏に戻される。
 何の脈絡もなく獏が超獣化するという話で、更に獏の言葉が分かるというおじさんが登場し、それが主人公となると言う、相当シュールな物語となっている。つーか、訳分からない。ヤプールはいなくなっても異次元からの影響があるとか、設定に苦労してるように思える。
 それと、今回はセブンが登場してる。ただ、バクタリを殺すな。というメッセージを残すだけ。何のための登場だ?
 この話は「これでもか」というほどカメラアングルに凝りまくっており、まるで実相寺作品のようだ。少女や竜隊長の煽りによるアップ。赤い色の使い方、明暗の使い方など、そう言う意味では見所は多いんだけど。
<少女が何故TAC基地に入ってこられたのか、最後まで明かされなかった。あるいはこの少女こそがセブンだったんだろうか?
 最後にセブンはバクタリを獏に戻すが、宇宙にぽっかりと浮かんでる。地球に戻そうにも死んでるとしか思えないんだけど。>
第32話 ウルトラの星に祈りを込めて

  監督:筧 正典
  脚本:田口光成
  特技監督:佐川和夫
 宇宙ステーションナンバー・5が謎の宇宙船の攻撃を受けて破壊された。TACは地球に侵入した宇宙船を迎撃するのだが、宇宙船から放たれた赤い光を浴びた北斗のアローはきりもみ状態に陥ってしまう。山中隊員のアローにより宇宙船は撃墜されるが、北斗は操縦ミスを責められる。そんな時、散歩中のダンは車に轢かれそうになった病弱の星野アキラという少年と知り合いになる。アキラに近づいた北斗は同じように力が抜けることを感じるのだが…
 敵は超獣人間コオクス。星野アキラという少年に変身し、北斗を混乱させる。人間の五感を狂わせる光を出し、迎撃に当たったTACのアローを撃墜する。光を出す指先が弱点で、両手を切り落とされた上にメタリウム光線を食らって破壊される。
 少年の目から見た超獣の姿と、少年自身が超獣だったというお話で、魔少年っぷりが良く出ている。これも現代ではなかなか出せない話ではある。
 北斗の新米っぷりが出た話なのだが、北斗は既に三年以上もTACにいるのに新米扱いらしい。しかしこれをやるんだったらシリーズ前半でやるべきだろう?基本的にエースには変身せず、どんなに混乱させられてもあくまで人間の姿で出来ることをやろうとしている北斗の姿は、結構格好良いぞ。
 同時に山中のルーズぶりと思い上がりもよく出ている。こういう人間が上司にいるのが一番苦労するもんだ。
 後半部は画面が真っ赤で、更に光が点滅する。
<北斗はダンに手紙を出すが、そこにエースのウルトラサインが入っている。ダンはそれを見てこれがエースからの手紙だと知るのだが、北斗の字だって事は分かりそうなもんなのに。それに別段北斗の名前で充分だったと思う。>
第33話 あの気球船を撃て!

  監督:筧 正典
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:佐川和夫
 ダンと友達の大助は空から気球が空き地に降りてくるのを発見。その気球に乗っていた二人組の男が子供達を気球に乗せていた。早速気球に乗り込む大助。その頃TACでは異様なエネルギーが生じているのが感知されていた。そして気球に乗った子供達には異変が…
 敵は気球船超獣バッドバアロン。気球に化け、乗り込んだ子供達の精気を抜き取ってしまう。子供達を自らの腹に入れ、攻撃できないエースを毒霧と鞭で苦しめる。首を落とされた上でバーチカルギロチンで左右両断されてしまう。
 子供が中心の話で、ダンが大活躍する。ダンを登場させることでこういう話が出来るようになった訳だ。なんだかTACもダンを頼りにしてるみたいだし。
 気球に乗ってるヒッピー風の男と言い、プラカードを持って叫ぶ母親達の姿と言い、時代を感じさせる話となっている。社会風刺も入ってるんだろう。
 前回正しいことを言って責められた北斗が今度はダンの言うことを聞かずに子供達を危機に陥れてしまうのも特徴だろう。
<冒頭にお寺で相撲を取る子供達。なんか懐かしい光景だが、必ずいじめっ子が出てくるのはステロタイプ的な演出かな?大助少年みたいに自分がヒーローだと思いこむ子も結構いるもんだ。
 子供がいるから攻撃が出来ないと躊躇するTACなのだが、実際はよく攻撃してる。いくら下にネットが置いてあると言っても、火器を使用するとは無茶する。>
VOL.9
<A> <楽>
第34話 海と虹に超獣が踊る

  監督:志村 広
  脚本:長坂秀佳
  特技監督:高野宏一
 タンカーが消失する事件が多発。それを調査していたアローの北斗は小舟で漂流するゆうじ少年を発見する。ゆうじは海岸で綺麗な貝殻を集め、それを千枚集めたら父親が帰ってくると信じて貝殻を集めていたのだ。実は彼の父は最初に消えたタンカーの船長で、ゆうじの姉が貝殻を集めるように言っていたのだ。それが貝殻ではなく超獣の身体の一部であることを察した北斗だが…
 敵は虹超獣カイテイガガン。タコと貝が合成したかのような超獣で、シリーズ中でも最高に不細工な顔の超獣だろう。人間が海底を汚す事に怒って誕生する。虹のような光を出したり、口から火を吐いたりして攻撃。
 ここでも子供が中心となった作品で、弟を思う姉の心が実は一番残酷だったという、極めて苦い感触を与える話。そして直接公害に言及した話となった。この辺は長坂脚本らしさと言うべきか。ツメの甘さも含めて。
<北斗はゆうじ少年が拾った貝殻が超獣のものであることを知りながらそれを分析しようとせずにほったらかしにしてる。子供のことを一番に考えるとか言っておきながら、やってることは全然違ってるじゃないか。
 タンカーで死んだはずのゆうじの父親の制服が何故か家に置いてあった。予備か?
 ゆうじの命の危機に北斗はエースに変身したはずなのに、ゆうじの命よりも超獣退治の方を優先してる。お陰でゆうじは死にそうになってるよ。>
第35話 ゾフィーからの贈り物

  監督:古川卓己
  脚本:久保田圭司
  特技監督:高野宏一
 超獣に追いかけられる夢を見た朝倉雪夫は朝、超獣の姿をした寝小便をしてしまう。友達にバカにされた雪夫は友達の言うまま超獣が出たとTACに連絡を入れさせられてしまう。出動した北斗はユキオを叱りはするが、その立場に同情し、エースの姿が描かれたワッペンを雪夫に渡すのだった。ユキオは夢に見た場所が現実にあると分かり、そこに向かうのだが、そこには本当に超獣が現れた。
 敵は夢幻超獣ドリームギラス。極彩色とごてごてした姿でデザイン的には今ひとつ。雪夫の夢の中に現れ、雪夫の寝小便の中に潜んでいる。なんか汚い超獣だ。口から可燃性の赤い液体やエースを苦しめた白い液体を吐き出す。エースを湖の中に引き込んで有利に戦いを進めるが、ゾフィによって湖の水が枯らされてしまい、弱った所をメタリウム光線で破壊される。
 子供を傷つけてしまう北斗の姿が描かれる。ヒーローが子供を傷つけるというのは異色の物語なのだが、結局ゾフィの忠告で北斗も和解することになるのだが、ショックで口が利けなくなるほどの精神的ダメージを与えるというのは珍しい。
 北斗の性格は随分変わってる。TACの中では新人のような扱いで、子供に対しては高圧的に接する。格好悪い大人になってたような気がするよ
 このところ少年と北斗の話が多くなってきた。これが後半の特徴になるのだが、それがはまったかと言うと、どうも今ひとつ。超獣のデザインもどんどん悪くなっていく。
<雪夫が二度目に超獣が現れたことを報告した時、自衛隊機二機が墜落したというのに、TACはほんわかムード。現場検証もせずに空中衝突と片づけてしまった。
 子供を傷つけたということで北斗の前に現れるゾフィ。よほど弟のことが心配だったんだろうけど、それで「はい。兄さん」と答える北斗。北斗とエースの関係ってどんなのなんだ?
 ドリームギラスは湖の底にいたのか、雪夫の寝小便の中に潜んでいたのか、今ひとつはっきりしない。 
 ドリームギラスから白い液体がはきかけられたエースが鼻をつまんでるけど、そんなに臭かった?>
第36話 この超獣10,000ホーン?

  監督:筧 正典
  脚本:長坂秀佳
  特技監督:川北紘一
 全国のあちこちから超獣の目撃情報が次々と送られる。だが、超獣は一瞬にして現れたかと思うと、一瞬にして消えてしまう。ようやく超獣反応がTACにももたらされ、現場に急行した北斗と美川は超獣ではなく暴走族を発見。しかも彼らはダンと香代子に絡んでいるのだ。ついかっとした北斗は暴走族に殴りかかってしまうのだが…
 敵は騒音超獣サウンドギラー。妙に可愛い感じの姿をしている。騒音がエネルギー源で、暴走族の音に惹かれて出現する。物体停止エネルギーやミサイルで攻撃する。
 徐々に社会問題化してきた暴走族をテーマにした作品だが、30分ではやはり描写が足りない感じ。特に最後、あんな簡単に暴走族を更正させるあたりは、作為的すぎ…特撮は教育番組か?更にそちらの方に時間とられて超獣とエースとの戦いは等閑にされてる印象も受ける。
 南がいなくなったため、美川隊員がその代わりのような行動を取ってるが、南の存在がどれだけ大きかったかを感じさせる。
 ここのところ北斗の新人ぶりと、更に山中の無理解ぶりが描かれることが多い。むしろ「帰ってきたウルトラマン」の初期作品っぽい感じになってる。
<超獣の名前をサウンドギラーと名付けたのに音と関係あることが分からないTAC。いっそ最後まで超獣の名前を言わなきゃ良いんだ。
 サウンドギラーのミサイルの余波を喰った北斗の制服は燃え上がってしまう。これには防火機能はないのか?>
第37話 友情の星よ永遠に

  監督:筧 正典
  脚本:石森史郎
  特技監督:川北紘一
 スピードに捕らわれる自動車設計士で北斗の友人の加島はマッハの壁を越える車のスピード実験を繰り返していた。その頃超獣マッハレスが現れ、地上を破壊して地下に潜る。
 敵は鈍足超獣マッハレス。デザインは「帰ってきたウルトラマン」に登場したゴーストロンのような姿で、地中から現れることから超獣と言うよりは怪獣に近い。高速で走る物体と騒音を嫌い、自動車の開発研究所を襲う。背びれをはぎ取られた後スター光線とメタリウム光線の連携で破壊される。
 北斗の友人加島の話で人間ドラマを中心に持ってきた話。これも話としてはむしろ「帰ってきたウルトラマン」に近い。30分という時間ではちょっと練り込みが足りないか?騒音公害も一応は視野に入っているらしいが、ものがテスト車だけに一般化はしてない感じ。
<マッハレスは騒音を嫌って地上に出てきたらしいが、だったら何故突然今になって?その辺の説明がなかった。
 加島の恋人真弓に向かって「あいつは結婚してる」と衝撃発言をする北斗。実際はスピードに捕らわれてると言うことを言いたかったのだが、この言い方は人が悪いぞ。
 車のスピード実験をしてる横の建物で打ち合わせをしてる加島。高層建築だけど一体どこの建物だ?
 音を嫌うマッハレスの気を散らすため、エースと戦っているマッハレスの周囲を飛び回るアロー。エースにとっては邪魔そのもののように思える。
 最後のナレーションで「エースのヒューマンな行為」と説明されていたけど、それは北斗自身であって、エースはいつも通り戦っていただけのような…>
VOL.10
<A> <楽>
第38話 復活!ウルトラの父

  監督:山際永三
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:高野宏一
 北斗はダンと香代子と共に孤児院にクリスマスパーティの慰問に出かけた。その時突然まばゆい光が差し込むと、孤児院の先生であるゆかりの目が見えなくなってしまう。孤児院にやってきたサンタクロースが怪しいと睨む北斗だったが…
 敵は伝説怪人ナマハゲ。そのまんまナマハゲ。八百万の日本の神をないがしろにしてクリスマスを祝う人々に憎しみを抱いており、人間の目を見えなくしてしまうが、踊り狂っている所をウルトラの父によって倒される。そして雪超獣スノーギラン。ナマハゲに操られる超獣で、強烈な光を発して人々の目を見えなくさせ、冷凍光線を用いてエースを危機に陥れる。
 クリスマスらしいファンタジックなお話で本物のサンタクロースが出てくる話だが、それだけでなく死んだはずのウルトラの父の復活と南の再登場というファンには嬉しい組み合わせのクリスマスプレゼントとなっているのが特徴。その分ストーリー部分にはいい加減さが目立つ。
 大体ナマハゲは日本古来の神々をないがしろにしたと言ってるけど、せいぜい秋田の一地域の、しかも鬼がなんで神を名乗る?いや、その辺はクリスマス用作品として温かく見守ってあげるべきか?
 で、ラストは「日本の神様も大切にしよう」ではなく、「クリスマスが守られてありがとう」になったけど、何となく物語に疑問を感じる。
<ナマハゲはなんで北斗が慰問してる孤児院を標的にしたんだろう?偶然とすべきなんだろうけど、東映特撮っぽい感じだ。一々孤児院から離れて又
 先生の目が見えなくなってるのに、サンタクロースがやってくるとそっちを優先しようとする子供達。薄情な…
 TAC総出で孤児院から子供達を避難させようとしてるけど、TACの仕事はそれだけか?それに目の見えなくなったゆかり先生と一緒にいたいと駄々をこねる子供達にTACは押し切られてしまう。目が見えないなら誰か抱えて連れて行けばいいと思う。
 怪我をした竜隊長はエースと一緒に戦っているのがウルトラの父と看破する。だが、その治療に当たってる救護班の人は「何を言ってるんです。あれはサンタクロースですよ」…端から見てると凄く間抜けなんだけど。>
第39話 セブンの命!エースの命!

  監督:山際永三
  脚本:田口光成
  特技監督:高野宏一
 死んだと思われていたダンと香代子の叔父三郎が帰ってきた。人間離れした運動能力を北斗は目の当たりにする。その頃TACでは新兵器シルバーシャークの完成が間近となり、厳重な警戒態勢が敷かれていたが、警戒中の山中と美川が何者かに襲われるのだった。三郎の付けていたペンダントが現場に落ちていたことから、北斗は三郎が怪しいと睨むが…
 敵は火炎人ファイヤー星人。閻魔のような帽子が特徴で、ダンと香代子の叔父三郎に変装してTACの新兵器シルバーシャークを狙う。炎の剣を武器として使うが、その炎の剣をエースに奪われてメタリウム光線で倒される。そして火炎超獣ファイヤーモンス。久々に超獣らしい鋭角的且つ色合いのデザインで、口から火炎を吐き、ロケット弾を撃ち出す。ファイヤー星人から受け取った炎の剣はエースのメタリウム光線のエネルギーも吸収してしまう。TACの新兵器シルバーシャークにより粉々にされる。
 ダンの叔父が実は…というストーリーで割と定番っぽい話だが、三回もの戦いが描かれてドラマに加え特撮部分も充実している。内容が詰め込んでいるので出来れば前後編で観たかった話ではある。ただ何故よりによって北斗の友達の叔父にならねばならなかったのか、ファイヤー星人の計画には首を傾げてしまう。
 タイトル通りセブンが登場する。ただエースを励ますだけだが、やっぱりインパクトは強い。
 火炎超獣というだけあって、炎の演出が派手な作品に仕上がっている。エースに火を吹き上げる剣が突き刺さってる演出まであり。
<ダンは北斗に「お姉ちゃんと二人のクリスマスはつまらなかった」と言っていたが、前回クリスマスパーティをやってたけど?
 死にかけたエースを励ますためにセブンが登場するのだが、しゃべり方がなんだか時代劇のようだ。別段エネルギーを与えてる訳でもなさそうだが、エースが復活したのは根性だろうか?
 最初になかなか逆立ちが出来ないダンの姿が描写されたが、それを励ますかのようにエースが最後に逆立ちしてる。この意味は?>
第40話 パンダを返して!

  監督:鈴木俊継
  脚本:田口光成
  特技監督:川北紘一
 ダンと北斗の住むアパートの近くにある薬局パンダ堂の店長は自他共に認めるパンダ好きで、店もパンダグッズに溢れていた。しかし黒マントの男が現れ、その男が去ると店のパンダグッズが全部消えてしまった。偶然それを見かけたパトロール中の北斗はパンサーで追いかけるが、全くその距離は縮まらず、ついには逃がしてしまうのだった。
 敵は宇宙超人スチール星人。人差し指が異様に長いのが特徴の宇宙人。パンダを自分の星に持ち帰るのが目的で、黒マント男に変装し、パンダグッズを次々に消し去り、最後に本物に手を伸ばす。
 正月番組として放映された作品だが、本シリーズの中でも相当にぶっ飛んだ作品に仕上がっている。なんと言っても黒マント男をやってる大村千吉の個性が光る回だ。「ふひょひょひょひょひょ」とか奇声を発して逃げていくあたり、気の弱い子供が観たらトラウマになりそうだ。それとパンダマニアの薬局店長の青空あきおのいかがわしい大阪弁も楽しい。この辺りの演出がやがて「ウルトラマンタロウ」に引き継がれていくんだろう。
 特に人物描写に限っては凝ったカメラアングルを使ってる。
<いつの間にか他の子供達にとけ込んでいるダン。随分丸くなった気がするけど、仲間より女の子を取るなど、当時の小学生にしてはなかなかませてる子供だ。
 耳が聞こえない老人の正体を暴くため、町中でいきなり発砲する北斗。TACの権限って随分高そうだな。
 今回TACの面々は全員でタックファルコンに乗って出撃してる。いつもならアローと分かれてるもんだけど、今回はアローが故障でもしてたんだろうか?
 しかし仮にも特撮作品であのパンダはなかろうに…他の全てをふっとばすほどのインパクトを与えてくれた。>
第41話 怪談!獅子太鼓

  監督:鈴木俊継
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:川北紘一
 かつての獅子舞師だったが怪我をして舞が出来なくなったシンタの父は自分から獅子舞を奪った世間を恨み、どこからか拾ってきた獅子の姿をした像を拝んでいた。そんな時、ダンと遊んでいたシンタは物置にあった獅子舞の獅子をかぶり、超獣ごっこをしていたが、なんと獅子が頭から外れなくなってしまう。その時獅子の像の目が光る…
 敵は獅子超獣シシゴラン。シンタ少年が父親の獅子舞の獅子を頭にかぶったところ、超獣に変化してしまう。父親の叩く太鼓の音に操られている。そして邪神超獣カイマンダ。シンタの父が拾ってきたカイマの像が超獣化したもの。後光までついて確かに神サマっぽいけど割とあっけなく倒されてしまう。
 正月の放映作で、内容も正月っぽく獅子舞の話になってる。38話のナマハゲと同様、日本古来の伝統を守ろうとする超獣が登場してる(どっちも脚本は石堂淑朗)。メインがもし市川森一だったらこんなのは絶対許せなかっただろう。
<獅子舞の獅子を見つけた子供達は超獣ごっこをして、それぞれウルトラ兄弟のふりをしてるが、普通子供が自分からウルトラの父をやろうとは思わないだろ?
 シシゴランを太鼓で操っていたシンタの父親を見た吉村は「一発で仕留めてやる」発言。仮にもTACがそんなことを言って良いのか?>
VOL.11
<A> <楽>
第42話 神秘!怪獣ウーの復活

  監督:上野英隆
  脚本:田口光成
  特技監督:高野宏一
 良平と小雪の父娘は祖父の住む村に行く途中雪山で超獣アイスロンと遭遇し、良平は谷底に転落してしまう。たまたま付近のスキー場に梅津姉弟とスキーをしに来ていた北斗はその事を聞きつけ、超獣捜索に出るが、そこには小雪が一人で倒れているだけだった…
 敵は氷超獣アイスロン。天候を自在にコントロールし、飯田峠の谷間で人を襲う。どちらかというと怪獣のようだ。そして伝説怪獣ウー。アイスロンから娘の小雪を守るために父の良平が姿を変えて甦った姿。アイスロンには敵わないが、生き残る。
 冬の怪談特集の一つで、むしろ心温まる話が展開している。「ウルトラマン」に登場したウーがここでは子供を守る存在として登場するというのは第一期のファンとしては嬉しい。だけど何でウーになってしまったんだろう?娘を助けるために山の精が助けてくれたとか、その辺のナレーションは必要だったんじゃないだろうか?
 子供を使った脚本を得意とするのが田口脚本の特徴で、本作では最後の脚本だったが、それもよく現れている。以降「ウルトラマンタロウ」のメインライターとして数々の名作を作っていくことになる。
<相変わらず山中隊員が無責任な発言を繰り返す。目の前に父を失った子供がいるのに嘘つき呼ばわりした上に死んだのは自業自得みたいのような発言してる。少なくとも正義の味方にそう言う発言はさせてもらいたくない。
 ウーの名前を知っている北斗。ウルトラシリーズはちゃんと引き継がれていることを思わされるが、他の隊員は知らないみたいなのは、やっぱりウルトラマンから得た知識なのだろうか?
 山の中で銃なんか撃つから雪崩が起きたと言ったそばから銃を撃ちまくり、更にアローからの攻撃まで行うTACの面々。下にいる人間は死んでも構わないのか?>
第43話 怪談!雪男の叫び

  監督:上野英隆
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:高野宏一
 休暇でスキーを楽しむ北斗達。そんな彼らを突然の雪嵐が襲う。村人から仙人と呼ばれ、疎まれていた男が巻き込まれて行方不明となってしまう。そしてスキー場一帯を狙うかのように事件が続発する…
 敵は吹雪超獣フブギララ。世をすねた仙人と呼ばれる老人に獅子座第3星の宇宙生物が取り憑いた超獣。やっぱり超獣というよりは怪獣か宇宙人なんじゃないか?エースのビーム攻撃を受けても通用せず、逆に冷凍光線でエースを凍り付かせかける。ただし、死んだふりをしたエースに近づいた所をバーチカルギロチンで真っ二つにされてしまう。
 冬の怪談シリーズは続いており、今度は雪男のようだ。物語はかなりいい加減だけど、老人役をやってる大泉滉が相変わらずキレた演技を見せてるのが良い。
 TACが来たから超獣がやってきたのだとなじる村人の仕打ちに耐えるTACの面々の苦悩も描かれているが、この辺はもう少し丁寧に出来そうだ。
 尚、この話でダンは退場してしまう。この辺も迷走っぽい。
<現在、流石に大っぴらに言えない言葉が続発するため(多分「古事記」)、音声が所々途切れている。
 見えもしない雪男の情報を得ただけの吉村隊員は、それが獅子座第3星の宇宙生物だと見抜く。なんでどこの宇宙人まで特定できるんだ?
 TACが来たから超獣が来たとなじる村人に、竜隊長は「我々は外に出て囮になります」と格好良いことを言ってる。だけど裏口から出て行ってるんだけど、それだったらホテルは超獣の通り道になるんだけどね。案の定本当に襲われてるけど。>
第44話 節分怪談!光る豆

  監督:筧 正典
  脚本:石森史郎
  特技監督:佐川和夫
 孤児院を訪れた北斗は空手家の一郎と共に豆まきを楽しむが、節分の豆の中に赤い豆が入っており、それを食べた一郎は力が抜けてしまった。一方新兵器ゴールデンホークが完成したTACでも豆まきが行われ、そこでも赤い豆が混入されていた。
 敵は鬼超獣オニデビル。名前通り真っ赤な鬼の姿をした超獣で、人間の筋肉を弱体化させる赤い豆を北斗に食べさせ、エースを弱らせた。
 今回もウルトラセブンが登場。何かと出てくるのはゾフィとセブンのようだ。
<豆まきを楽しむTAC。精密機器の集積場みたいなところでそんなことをするのもちょっと。
 北斗が弱くなるとエースまで弱くなる。人間とウルトラマンがシンクロしているのはウルトラ後期シリーズの特徴だ。
 最初に北斗がエースに変身した時はアローから脱出した時。隣に山中隊員の姿が見えるけど…
 エースが力を取り戻すにはウルトラカプセルが必要とセブンに言われてM78星に戻るエース。これまでだったらセブンの方が地球にやってきたんだけどね。そのお陰で光の国を観ることができた。>
第45話 大ピンチ!エースを救え!

  監督:筧 正典
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:佐川和夫
 人工衛星ジュピター2号が突然消滅した。その連絡を受けたTACは警戒を強化し、町の子供達はジュピター2号を見つけようと競って望遠鏡で夜空を見上げていた。そんな中、ユタカ少年は手製の望遠鏡で赤い光が落下するのを発見。しかもそれは落下後ガスタンクに姿を変えたのだ。回り中のガスタンクのガスを吸い込んで姿を現した超獣に、TACは周囲を気にして攻撃できないが…
 敵はガス超獣ガスゲゴン。頬がぷっくり膨らんだ妙なデザインの超獣。人工衛星に潜んで地上に落下し、ガスタンクのガスを吸い込んで成長する。体中にガスが充満しているためにエースが宇宙に連れて行って、そこで破壊される。
 高度成長時代の日本の危機体制を垣間見せる話で、自分の都合の悪い部分は見ようとしないのはどこでもそうだけど、公共機関に対する不信感を子供に植え付けかねない話となってる。そう言う意味ではちょっと異色かな?
<卵状態のガスゲゴンをミサイル攻撃するように指示した竜隊長は、成長したガスゲゴンの体内はガスで一杯だからと攻撃中止を命じる。どっちやねん。
 ガスゲゴンに対しガス中和剤の使用を命じる竜。どういう薬なのか今ひとつ分からない上に効いてるのか効いてないのかも今ひとつ分からない。
 最後、ユタカ少年はレンズを通して北斗を見ながら「あ、ウルトラマンエース」と発言。結構勘の鋭い子供だ。>
VOL.12
<A> <楽>
第46話 タイムマシーンを乗り越えろ!

  監督:古川卓己
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:田淵吉男
 突如現れた超獣にTACは攻撃を加えるが、唐突に超獣は消え去り、同時に吉村と美川のタックスペースがそれに巻き込まれて消えてしまう。吉村からの通信が入り、どうやら彼らは過去の奈良時代にいるらしいことが分かるのだが…
 敵はタイム超獣ダイダラホーシ。人間に似たシルエットを持つ超獣で、時間旅行が可能で過去と現代を行き来している。過去でエースとチャンバラをしたり死んだふりをしたりとなかなか芸達者な超獣だ。
 タイムパラドクスを題材にした物語で、物語としては割と変化球的な要素を持つが、割と本作はそう言う話も多い。
 タイムマシンは完成しかかっているが、ここでは基本的に過去に戻ることの危険性を説くだけで終わってる。
<過去にいる吉村と竜が通信出来たのは何故だろう?次元の隙間が生じたのかな?エースが無事現代に戻れたのもそう考えれば納得いく。
 時代劇を意識しているため、過去の人間しゃべり方もちょっと違うけど、単なる東北弁にしか聞こえなかったり。
 奈良時代の男達が襲ってくるのに対し、銃を構える北斗。そして「一人でも殺したら歴史が変わる」とたしなめる竜…ひょっとして北斗、殺そうとしていたのか?
 大仏開眼式が行われようとしている。しかし、奈良の大仏って随分姿が変わったんだな。如来像かと思ったよ。
 ダイダラホーシとエースは二人とも木を引っこ抜いて刀の代わりに使用してるが、それで斬って倒れたと勘違いするエース。>
第47話 山椒魚の呪い

  監督:古川卓己
  脚本:石堂淑朗
      山元清多
  特技監督:田淵吉男
 山間にある檜原村に超獣が出現。現場に急行したTACに村人はオオサンショウウオの化け物が出たと言う。村の近くの大きな鍾乳洞を調査する北斗と美川だが、その鍾乳洞に“ショウベイ”というオオサンショウウオを飼っている老人とサユリという少女が住んでいた…
 敵は液汁超獣ハンザギラン。珍しい四本足の超獣(この作品では一人用の着ぐるみだと他はザイゴンだけ)で、オオサンショウウオの化身。デザインは怪獣っぽい。その巨体を利用して地崩れを起こし、口からは溶解液を吐く。ただし超獣化するには太陽光線が必要で、光線を遮断していればオオサンショウウオのまま。
 公害問題に直接言及した作品となったが、動物を愛する人の良い人間が悪役になるというのは、考えてみるとかなりとんでもない話ではある。
<珍しい白色のオオサンショウウオが出てくる。完璧な作り物で口以外動かず。手足を動かさずに地を這う姿はほとんどツチノコ。
 老人は村人と折り合いが悪いと言うことだが、その理由はオオサンショウウオを守るためだったらしく、しかもそのために家屋敷まで売り払ったという。立派なマニアっぷりだ。
 TACの面々にサユリの事を考えていたのか?とからかわれる北斗。当時は子供が可愛いで済んだだろうけど、現代ではかなりアブナイ発言になる。
 北斗はサユリを抱えたままエースに変身してた。ばれないのだろうか?>
第48話 ベロクロンの復讐

  監督:菊池昭康
  脚本:市川森一
  特技監督:田淵吉男
 タックスペースで宇宙をパトロール中の北斗の前に現れる巨大シャボン玉と、その中からかつてエースが倒したベロクロンが現れる。その後、虫歯が痛んだ北斗はQ歯科という歯医者で治療を受けるが、その後度々ベロクロンの亡霊を見るように…
 敵はミサイル超獣ベロクロン二世。ヤプール人の生き残りにより復活させられた超獣。オリジナルとはデザインが結構違ってるけど、よくこれを同一個体と認識できるものだ。そして異次元人女ヤプール。ヤプール人の生き残りで、女医に扮して北斗に幻覚を見せる薬を投与する。
 久々の市川脚本。怪奇描写満載の作品で、北斗が悪夢のような幻覚を見続ける。それを接写で北斗の顔アップを連発するため、ほとんどホラーのような描写となっている。ヤプールの方もなんども北斗を殺せる機会を放っておくくらいだから、よほど恨みが深かったのだろうと思われる。
 生き残ったヤプール人が復讐のためにベロクロンを復活させるという話で、初期に戻ったかのような力の入った特撮描写と精神描写が楽しめる。復活した市川森一の脚本のお陰かな?シリーズを通しての名作の一本だ。ベロクロンの不細工ささえなければ…
 最後の女ヤプールと北斗の対峙シーンは凄い。女ヤプールも小町の能面をかぶってみたり、それを淡々と攻撃する北斗の無表情と言い、まるで前衛劇を見ているかのよう。
<北斗は虫歯に詰め物をされることで幻覚を見るけど、最初に夢でベロクロン二世を見ている。ひょっとして詰め物の方じゃなくて虫歯の方が幻覚を見せてるのかな?
 歯の治療に行けと竜隊長から言われた途端、Q歯科という看板が見える。都合良すぎる気がするけど、これも幻覚かな?
 実際に登場したベロクロンとの戦いは相撲とかキャッチボールとか、かなり妙なものだった。>
第49話 空飛ぶクラゲ

  監督:菊池昭康
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:田淵吉男
 宇宙から飛来した謎の宇宙船が突然消え去った。だがTACのレーダーからその姿は忽然と姿を消す。調査に向かう北斗達だったが、彼らがそこで見たのは、空に浮かび、飛行機のエネルギーを吸い取るクラゲ型の超獣と、村人を先導する一人の娘だった…
 敵は水がめ超獣アクエリウス。水瓶座第3星から地球侵略にやってきた少女が変身した超獣で、着物に似た服を纏っているのが特徴。宇宙電気くらげユニバーラゲス。くらげ型の宇宙生物で、空に浮かび航空機のエネルギーを吸い取ってしまう。強くはなくファルコンと地上からの攻撃であっけなく消し去られる。
 話は何も知らない人が山奥に入り込んで村人に襲われるという、伝奇ものっぽいもの。ただ、大部分が夜を舞台とするため、画面が暗くて分かりづらいのが難点。
 物語は陳腐なものかもしれないけど、水瓶座第3星の少女の存在感が映える。純朴な村人に「神の使い」と信じ込ませる訳だが、自分の宇宙船が落とされた時に流した涙が良い。北斗と心の交流が無いけど、色々奥がありそうな印象を与えてくれる。最後の倒れたアクエリウスに対し合掌のポーズを取るエースの姿にそれが現れてる感じ。
<村人に自分が神の使いであると信じ込ませるアクエリウス。えらく簡単すぎ。村人が純朴すぎるのか、それとも洗脳なのかな?そう言えばアクエリウスに従ってる村人はみんな男だったが、アクエリウスの洗脳って(煩悩を持った)男にしか効かないのかもしれない。>
VOL.13
<A> <楽>
第50話 東京大混乱!狂った信号

  監督:深沢清澄
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:神沢信一
 パンサーで町をパトロール中の北斗と山中は交差点で八百屋のトラックとぶつかってしまう。やってきた警官はトラックの側の信号無視と決めつけるが、釈然としない北斗と山中は彼女を尾行する丁度その時都内の信号に異常が起こり、町は大混乱となってしまう。
 敵は宇宙怪人レボール星人。東京の地下に前線基地を作り、都内の人間を追い出そうとシグナリオンを使って信号機を狂わせる。そして信号超獣シグナリオン。デザインの悪さは随一で、色と言い姿と言い、気持ち悪いだけ。人間をおかしくする赤(高熱)、青(血液蒸発)、黄色(発狂)の三色の光線を発する。
 車社会を皮肉ったような話で、都内の信号がおかしくなってしまうと、これだけの事故が起こるという話なのだが、出来としては今ひとつという感じ。ただ、事故を起こして血を流しながら呆然とするような人間達の描写など、かなり生々しい話でもある。
 てっきり山中の恋話に展開するかと思ったのだが、そこまではいかず。いかにも中途半端な話という印象。
 唯一レボール星人が妙に個性豊かで、「ウルトラセブン」33話「侵略する死者たち」のシャドーマンっぽい演出がなされていた。
<事故を起こした女性の事情を知ろうとパンサーで追いかける北斗と山中。ほとんどストーカーだし、パトロール中にやるべき事じゃないだろう。こういう事後処理班というのがこの手の組織には必要なんだろうな。
 レボール星人はわざわざ労働者風の変装をしてるのだが、北斗が近くに来ただけですぐに正体を現してしまう。それ以前に何故東京から人間を追い出そうとしたのか目的が不明。>
第51話 命を吸う音

  監督:筧 正典
  脚本:石堂淑朗
  特技監督:高野宏一
 母親から無理矢理バイオリン教室に通わせられている春夫はバイオリンが嫌いで、ついに教室から逃げ出してしまう。春夫はバイオリンを壊そうとするのだが、何故か上手くいかず、ついにはバイオリン自身が空を飛んで春夫の元へと帰ってくる…
 敵はバイオリン超獣ギーゴン。バイオリンに取り憑いた超獣で、それを奏でる人間の魂を奪う。巨大化すると超音波攻撃を行う。あんまり強そうに見えないけど、かなりエースを苦しめていた。
 本作には時折こういう教育ママとそれに反抗する子供が描かれる事がある。話そのものの形式と言い、人間の魂を吸って大きくなることも33話のバッドバアロンと似ている。脚本も同じ石堂淑朗だし。
 それにしてもこの母親の怖さは凄い。現代ではもう見られないタイプだけど、この人が結局は超獣を作り出してしまったとも考えられる。
 ただ、これがラス前とは到底思えないような話であることは確か。
<人の魂を抜き取ったバイオリンは巨大化し、公園に来た頃にはコントラバスになってる…その設定無理があるぞ。
 魂を抜き取られ、筋肉も弛緩しているはずの春夫が突然元気いっぱいの姿で北斗達の前に現れる。なんだこのいい加減な演出は?>
第52話 明日のエースは君だ!

  監督:筧 正典
  脚本:市川森一
  特技監督:高野宏一
 正体不明の二機の宇宙船が上空で交戦し、一機が撃墜されてしまう。TACは落下した宇宙船からサイモン星人の子供を保護するが、時同じくして上空に現れたヤプール人の亡霊がこれまでエースに倒された超獣の怨念を集結させ、ジャンボキングとして復活させる。サイモン星人は子供達に保護されるが、あらゆる攻撃を防ぐジャンボキングにTACは手が出せなかった。ヤプール人はサイモン星人を差し出せと通信してくるのだが…
 敵は最強超獣ジャンボキング。ヤプール人の生き残りにより、ユニタング、マザリュース、マザロン人、カウラ、スチール星人の亡霊を合体させて誕生する。だけど形状からするとブロッケンも入ってそうだ。スペースQ(ギロチンショット)で倒される。最強の超獣で、バリヤーによってTACのあらゆる攻撃を防いでしまう。そして遊牧星人サイモン星人(の子供)。ヤプール人に追われて地球に落下したが、実は彼こそがヤプール人そのもの。地上の人間に北斗の正体を教えるために変装してきたらしい。
 最終回。約束の大切さと人間の子供の優しさを守ることの大切さを強調した作品となった。子供達の優しさを守るため、それが自分の地上での最後であることを知りつつ北斗は子供達の前でエースに変身する。市川氏らしい脚本といえよう。
 そう言えばウルトラマンのお面を付けた子供達がサイモン星人を苛めるシーンもあるけど、これも市川氏の提示したシリーズに対するアンチテーゼと見られないこともない。
 弱い存在に身をやつし、ウルトラマン本人よりも周囲の人間の同情を引くと言う物語はかつて「帰ってきたウルトラマン」の31話でも同様の物語があり、これも市川氏の脚本だった。こういうタイプに思い入れがあったんだろうね。
 サービスショットとして北斗に人前で変身したらもう地球にはいられないことを告げに来る夕子の姿が久々に見られる。
<北斗は一目星人を見た時にこれがサイモン星人の子供だと見破る。更に竜隊長はサイモン星人がヤプールに滅ぼされたことまで知ってる。
 夕子は北斗に、エースに変身したら二度と北斗の姿に戻ることは出来ないと告げる。「ウルトラマンタロウ」でしっかり戻ってたけどね。
 子供達に真実を打ち明け、エースに変身する北斗。もうちょっとずるくやってれば最小限の被害で済んだのではないかな?
 ヤプール人は北斗がエースであることを知っていた訳だから、サイモン星人のふりをしてそれを子供達に告げてやれば良かったような…>