特撮館Top

怪奇大作戦ミステリー・ファイル

怪奇大作戦ミステリー・ファイル事典
<amazon> <楽天>

 2007'4'2〜4'16

 1968年に放映された「怪奇大作戦」の現代版リメイク。役柄は同じだがキャラクタを一新し、雰囲気は結構良し。科学も現代版にリファインされており、良い意味で派手なものになってる。一話毎の監督もそれぞれ映画で活躍中の監督を起用するなど、色々な意味で豪華な作品。

主な登場人物
牧史郎 (役)上川隆也。数多くのドラマの主演や助演を務めるが、特撮の主人公は初。
 48歳。SRIの化学班でSRIの頭脳とも言える存在。在野の科学者だが世界的にも名の知れた研究者。コーヒーに対するこだわりが強いが、極端な甘党で、コーヒーには多量の砂糖を入れる。
三沢京助 (役)原田泰造。お笑いトリオネプチューンの一人。多くのドラマに出演中。
 43歳。元警視庁の刑事でSPだった。的矢からスカウトを受けてSRIに入隊する。実行部隊として数々の事件に体当たりで捜査に当たる。
野村洋 (役)村井良大。「風魔の小次郎」小次郎役。
 SRIに就職したばかりの新人。期待されている以上のことをこなす器用さもあるが、思ったことはつい口に出してしまってよくたしなめられている。
小川さおり (役)高橋真唯。
 SRI女性隊員。ITを駆使した捜査を担当し、情報収集やコンピュータ解析を主に担当する。実働部隊である三沢や野村には直接指令を与えることも多い。
的矢千景 (役)原田美枝子。ベテラン女優。特撮作品にはほとんど出演作なし。
 元警視庁の鑑識課。警察では追い切れない事件を独自で捜査するため、SRIを立ち上げる。牧をスカウトした上、精神的にも支えている。
島田梨沙 (役)田畑智子。朝ドラ「私の青空」主演女優。特撮関係は初出演。
 警視庁捜査一課の警部補。警視庁とSRIの橋渡し役だが、当初はSRIの存在意義に疑問を持っていたらしい。旧作の町田大蔵にあたる人物。
話数 タイトル コメント DVD
第1話 血の玉

  演出:田口清隆
  脚本:小林弘利
 全身の血が抜かれミイラのようになってしまう死体がいくつも発見され、警視庁からSRIに捜査依頼がくだる。捜査中の三沢京助の目の前で一組の男女が突然ミイラになってしまう。三沢も脱水症状を起こして伏せってしまうが、「赤い玉」と何度もうわごとのように繰り返す。

 「怪奇大作戦セカンドファイル」の続編。ただしキャラは全員替わっている事から、新鮮な感じで観られる。ただこの話45分という長丁場の割に話が単純すぎた。
 今回の犯人は狂った科学者が作り上げた半動物半植物の生物で、人の体液を吸って自分の娘の命を救おうとしているという話。それをドローンとステルス技術で見えない怪物を作り出した。怪物ではなく科学によって生み出されたものというのが本作の特徴と言えるだろう。急速に老化してしまう孫娘の命を救うため、生命力を与える冬虫夏草を合成し、ドローンとステルス技術を用いて人間を襲わせている。
 SRIは警察の依頼を受けて動くが、決してその関係は友好的なものではない。そこでのぶつかり合いも人間ドラマの奥行きになってる。
 犯人となる血の玉は抗生物質が苦手らしい。三沢は服用していた水虫の薬で死なずに済んだが、水虫を強調され、思いきりディスられてる。この話では牧ばかりが目立ってしまってるが、それもこの作品の醍醐味。牧は科学者の中では有名人らしい。「宇宙船ビーグル号」の主人公エリオットみたいな立場に置いてるっぽい。
<車に乗る場合、ちゃんとシートベルトを締めるのが現代の作品って感じだな。
 林間学校の子ども達を救うために自ら血の玉の犠牲になる佐喜沢。子どもにとってはとんでもないトラウマだが、現代的にこの描写ってどうなんだろう?>
BOX
<A> <楽>
第2話 地を這う女王

  演出:緒方 明
  脚本:中野貴雄
 ネットカフェで白骨死体が発見された。死因が全く分からないまま、被害者が検索したネットを探るうち、ヒューゲル製薬にいきつく。そこではフェロモンの研究をしているというのだが、何故か研究員を含めた全所員は全員女性だった。

 生物兵器についての話で、これこそ怪奇大作戦っぽさ。蟻の社会を理想社会として憧れる教授役が出てくるのが嶋田久作ってのが又よく分かってらっしゃる。
 蟻を完全に操り、男性を絶滅する計画というのが出てくる。事前に牧は蟻のフェロモンを感知する機械を作り上げていたが、これによって実際の蟻を登場させずに蟻の恐怖を巧く演出してる。
 蟻の生態に関わる形でジェンダーについて結構突っ込んだ話がされてるのが現代っぽさ。男だから女だからという考えが古いという事を強調しているが、逆に強調しすぎてる感もある。
 珍しく牧が直接事件に関わって捜査してる。これまた珍しく女性とスイーツを食べてたりする。
 蟻のことを「ゼム」と言ったり、秘密会議で「フェーズ4」とかのキーワードが出てきたり。SF映画好きにはビンビンくるキーワードがちりばめられている。(「Them!」は放射能X(1954)の原題で、「フェーズ4」はフェイズ IV 戦慄!昆虫パニック(1973)から)。排水溝から蟻がウジャウジャ出てくるのはクリープショー(1982)にあった演出。ラストの演出はサイコ(1960)のラストか。いろんな映画の演出が出てくる。
<最後に突然嶋田久作の女装姿。観たくない。>
第3話 闇に蠢く美少女

  演出:タナダユキ
  脚本:黒沢久子
 とおりゃんせを歌う不思議な子の目撃情報が相次いでいた。そんな中、梨沙は20年前に心臓をえぐり取られるという凄惨な事件で殺されたはずの子役山口菜々を目撃する。丁度その事件に過去関わっていた的矢の肝いりでその事件を洗い直すことになった。

 死んだはずの人間が、その当時の姿のまま生き返るという怪奇事件を、とおりゃんせの歌と絡めて描く。SRI署長の的矢の過去がここで少し明かされている。過去の迷宮イリ事件にこだわりがあるらしく、今回の事件では前線で捜査に当たっている。
 これもちゃんと科学の話で、クローン人間の技術にまつわる話。遺伝子が操作され、体内に毒を持ったクローンが襲ってくると言う光景はかなりのホラー。
 7歳の子が人生に疲れて自殺していたというオチも強烈な話でもある。
第4話 深淵を覗く者

  演出:鶴田法男
  脚本:小林弘利
 都市部でバラバラ死体が見つかった。手口からそれはカマイタチによるものだと見られ、SRIに調査依頼が来る。何者かによる人工的に作られた風ではないかと分析する牧だが、そうしている内、今度は人間の身体を高温化させて爆発させるという新たな事件が起こる。叩き上げの刑事飯田橋は牧に疑いの目を向ける。

 自然現象に見せた殺人事件という、まさに本作を表すような展開。それが複数出てきて、しかもそれを全て分析していく牧が疑われていく。犯罪を分析するのがあまりに楽しそうで、しかも「美しい殺し方」の異常なこだわりを口にする。牧の危ない側面がクローズアップされている。
 当然SRIでは牧を守ろうとするのだが、牧の部屋にあるものが物騒なものだらけ。これまでのシリーズの中では最もやばいキャラに仕上がってる。
 ついには牧は容疑者として警察に身柄確保されてしまったが、警察の中でデータだけで犯人を割り出していた。まるでハンニバル・レクターだ。
 今回は的矢が名言連発。牧が犯罪者にならないで済むのは彼女が正気を保たせているかららしい。
 今回の犯人はついに顔を全く見せず、最後は自らの開発した殺人機械を用いた焼身自殺で跡形もなく消え去った。最初から自殺を念頭に、最も美しく死ぬためにどうするかを考え抜いた結果だった。まさにその思考は牧のものと一緒。しかも本当に信だかどうかさえ分からなくなっていく。
 飯田橋役は永瀬正敏だった。特撮は映画を除けば生物彗星WoO以来か。