折れた矢
Broken Arrow |
1950米アカデミー助演男優賞(チャンドラー)、脚色賞、撮影賞
1950ゴールデン・グローブ国際賞 |
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ジュリアン・ブロースタイン(製)
マイケル・ブランクフォート(脚)
ジェームズ・スチュワート
ジェフ・チャンドラー
デブラ・パジェット
ウィル・ギア
ベイジル・ルイスデール
ジョイス・マッケンジー
アーサー・ハニカット
レイモンド・ブラムリー
ジェイ・シルヴァーヒールズ |
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★★★☆ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
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5 |
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1870年。アリゾナ地方は白人とアパッチ族との間に流血の惨事が絶えなかった。この地方に金を探しに来たトム・ジェファド(スチュアート)は傷ついたアパッチ少年を助けたことからアパッチ族との交流を持つに至る。なんとか二者の誤解を解こうと考えたトムはアパッチ大酋長のコチーズ(チャンドラー)とハワード将軍の間を取り持とうとする。その中でアパッチ族の少女ソンシアレイと出会い、二人は結婚するに至り、和平も順調にいくように見えた。だがアパッチ族のジェロニモはコチーズの軟弱さをなじり、更に白人側からも「インディアンは抹殺すべし」という声が上がっていく…
1950年全米興行成績9位。ネイティヴ・アメリカンが平和を愛する民族として描かれ、白人が無慈悲な侵略者として描かれたことで話題となった作品。
現在では極端に少なくなったが、西部劇はハリウッド映画史を語る上で欠かすことができない重要な要素となっている。特に映画初期にあっては、あらゆる映画ジャンルは西部劇の中に集約されていた。
それだけに西部劇は一ジャンルとして捉えることはできず、様々な要素を取り入れているのだが、それだけにその作品が作られた時代と密接に関わりを持っているものである。
もっとも顕著に現れているのがネイティブの扱いだろう。かつてインディアン(インド人)と呼ばれ、アメリカン・スピリットを阻害する者として駆逐されるべき存在としてだけ扱われていた彼らは、時代に連れて描かれ方が変わってきた。オスカーを得た『ダンス・ウィズ・ウルブス』はその最たるもので、これによってネイティブの見方は完全に変えられた。
だが、古い時代、ネイティブに対する意識が低い時代でも何作かはネイティブ視点で描かれた作品はあった。
本作はその代表作で、時代に真っ向からぶつかっていった作品の一本である。
もちろん時代が時代だけに、今の目から見れば差別的な表現も多々あるし、ネイティブの扱いもテンプレートではあるが、この時代にネイティブの視点から、外来のアメリカ人を侵略者として描いて見せた。実に画期的な作品だろう。
良い映画であることの条件とは、たっぷり物語や演出で楽しませながら、観ている側をどこか居心地悪くさせる部分を持たせることである。その意味では本作が名作と言われることは分かるし、それをちゃんと受け止められた時代のアメリカのよき時代を示した作品でもある。
本作は、主人公の苦悩を通してアメリカという国が持っている苦悩をそのまま描いた作品であり、それを突きつけた上で「共に考えていこう」と言っているかのようだ。興味深い。
ただ、点数が少し低くなったのは、スチュアートの偽善者っぷりが、ちょっと鼻についてしまったところだが… |
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