ラ・ジュテ
La jetée |
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アナトール・ドーマン(製)
クリス・マルケル(脚)
エレーヌ・シャトラン
ジャック・ルドー
ダフォ・アニシ |
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★★★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
5 |
5 |
5 |
4 |
5 |
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地上の人類が絶滅し、地下で細々と生きながらえている未来。その原因となった出来事を探るため過去にタイムトラベルした男は一人の女性と知り合う。何故か見覚えのあるその女性と行動を共にするうち、彼は幼いころ飛行場で彼女を見たことを思い出す。二人はやがて全ての出来事の根源となる飛行場へとたどり着くのだが、そこで男が見た光景は…
クリス・マイケルはヌーヴェル・ヴァーグの牽引役の一人だが、基本的に記録畑の人物。その彼が全編スチール・カットで撮ったと言う、ある意味伝説的な映画が本作である。元々押井守がこの映画のことを語っていたことを小耳に挟んでいたことと、大好きな『12モンキーズ』(1995)のオリジナルだと言う事で、レンタルビデオで本作品を発見したとき、迷わず借りた。
全編スチールポジの白黒静止画で構成され、動きが全くない、いわば写真を使った紙芝居だが(一部動いてるという話もある)、それを名作たらしめているのは、卓越したアイディアもさることながら、視聴者への信頼がそうさせるのかもしれない(笑)
荒廃した未来。奇妙な装置を装着した男の姿(押井守の『Avalon』(2001)で用いられたヘルメットにどことなく似ているのは、多分偶然では無かろう)。現代の飛行場の風景。女性の顔。撃たれる男の姿。静止画であるが故にそれら全てが強烈な印象となって残るし、その間をつなぐためにイマジネーションを駆使することによって、自分の頭でストーリーそのものを構築していくことが出来る。(実際に、大昔にこの映画を観たという友人と話をしていたら、その人は今まであの映画、ちゃんとキャラクターが動いていたとばかり思っていたそうだ)
最近のCGを駆使した映画を観ていて何か物足りない感じがし、古い作品を観るとほっとした気分になるのは、このイマジネーションの問題なのかも知れない。本もそうだけど、映画はとかく想像力をかき立ててくれる。見た目がいくらちゃちな造形でも、自分のイメージを重ね合わせることで、一気にそれがスペクタクルへ変貌させることだって可能なのだ。極端な例かも知れないが、いかにも「人間が入ってます」的な着ぐるみのゴジラとCGを駆使してリアルになった『GODZILLA ゴジラ』(1998)。果たしてどっちが本当に“自分の中で”本物に思えるか?子供が同じ絵本を何度でも何度でも読むように、人は自分だけのイメージを対象から引き出し、それを自分だけのものにすることが出来る。
イマジネーションの入る余地があると言うことは、映画の重要な魅力の一つだ。そう言う意味ではこの映画は本来映画の持つ可能性をはっきりと示してもいたんじゃないかな?
実際、この作品のリメイクとも言える『12モンキーズ』(1995)と較べ、この作品の持つ壮大な広がりは決して劣るものではない。むしろ謎の方向性で言えば、こちらの方が遙かにソリッドではっきりしていた。
様々な画像が駆使出来るが故に、逆に画面を固定してしまう現代の映画と、イマジネーションを駆使し、自分だけの映像を頭に持つことが出来る本作品。果たしてどちらの方が“質が高い”と言えるのか?
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