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1968 | 8'26 誕生 |
タイトル | |||||||||||||||||||||||||||
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白バラの祈り ゾフィー・ショル最期の日々 2005 | |||||||||||||||||||||||||||
2005米アカデミー外国語映画賞 2005ベルリン国際映画祭銀熊賞(ローテムンド、イェンチ) 2005ヨーロッパ映画女優賞(イェンチ)、作品賞、プロダクション・デザイン賞 |
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1943年のミュンヘンで反ナチス活動を行っていた学生運動“白バラ隊”はソ連領でのレニングラード攻防戦でのドイツの被害状況を知り、それをビラにして大学構内にばらまいた。だがそれをゲシュタポシンパに見られてしまったことから、ゾフィー(イェンチ)と兄のハンス(ヒンリヒス)は捕らえられてしまった。ヴェテラン尋問官モーア(ヘルト)により厳しい取り調べが開始される… ナチス政権を批判し、一週間足らずで処刑された兄妹の実話を元に、人間の尊厳と平和の意味を問い直す作品。 私は戦争を描いた映画が好きだが、これは結局、極限状態に陥った人間のドラマと人間の持つ狂気性の描写が好みにぴったりとはまるからだと思っている。その意味で本作は大変しっくり来るし、興味深くもある。出来そのものも良い。 本作の上手さは戦闘シーンを一切出すことなく戦争の狂気をしっかり描き出すことに成功していること。紛れもなく本作は戦争映画であると言い切れる。そもそも戦争での戦いとは前線で銃持って戦うだけではない。生活のために生き抜いていこうとすることも戦いだし、本作のように戦争を止めようとして活動することもやはり戦いには違いあるまい。これが若さから出た蛮勇的行動だったとくても、彼女たちが行ったことは確かに国と自分の愛する人を守ろうとすることには違いないのだから。狂気に対抗するために彼女達も又、狂わねばならなかった。 そのどちらが正しかった、あるいは狂っていたかは後年になって判断されるしかない訳だが、当事者としては相互に敵対する者を狂気と規定しなければやっていけない。その辺の描写は多少薄かった気はするが、愚行はいくら言い繕っても愚行である。その視点に関しては割としっかりしていたように思える。ゾフィーたちのやっていたことは、間違っていた訳ではないにせよ、やり方は決してスマートではなく、それが正義対正義のぶつかり合いになってしまう。 本作の作りの面白さは描写にも表れている。ほとんど密室のみで展開される物語であるのに、本作に全般的にダレ場がない。これはキャストの演技力もあるだろうが、キャラの視点のユ二ークさにもある。 主人公ゾフィーは囚われの身でありながら、その目はほとんどの場合下を向いていない。真っ直に前を向いているか、あるいは上を向いていることが多いのだ。実際に本作ほどよく上を見ているキャラクタ描写は珍しい。通常私達は殆んど上を見ることがないので、彼女が上を向いていると、「ー体何を見ているのだろう?」と無意識に思うので、そこで考えさせることによって観ているこちら側は飽きさせないのだ…なる程。的確にキャラに上を向かせると、飽きの来させない作品を作ることができるのだな。勉強になった。 彼女は本当によく上を見ている。それは冒頭での大学を見上げるシーンであったり、監房を眺め渡すシーンであったり、その監房から僅かに見える空を見たりするシーンであったりする。それぞれ、彼女が何を考えているのかを象徴的に示していると思われるが、それらは概ね言葉に出して言われることは無かった。ただ、最後の裁判所のホールを通る際、直上の円蓋を凝視するシーンは特に心に残る。この時彼女は何を思っていただろうか?自分を罪人と規定したやらせ裁判に対する怒りだったか、やがてドイツにやってくるだろう裁きの時のことか、あるいは… この視点によって、劇中で言葉が無くても観ている側にとっては、何かが問いかけられている気分にさせられる。それが端々にあるからこそ、本作はダレ場がないと言えるだろう。 ただ残念な所もあり。 ドイツは未だに第二次世界大戦を消化しきってないようで、視点こそかなり良いものの、やっぱりどこか「ナチスは悪。それに対抗するのは善」という単純図式の中で物語が描かれている。戦争を描くのに、この単純な図式はどうにも引っかかるものがあって、そこが残念。後半の裁判の描写はあまりに描写が稚拙すぎ。ナチスは単なる悪人だけでしか描かれた無かった、そこだけで点数が落ちてしまう。 ヒトラー 〜最期の12日間〜(2004)では、かなりその辺クリア出来ていたように思われたもんだが。 |