バトル・ロワイアルII 〜鎮魂歌〜 2003 |
2003日本アカデミー主演男優賞(藤原竜也)
2003毎日映画コンクール美術賞 |
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かつてのBR(バトル・ロワイヤル)を生き延びた七原秋也(藤原竜也)は、逃亡先の海外から再び日本に舞い戻り、反BR法のテロ集団“ワイルド・セブン”を組織し、すべての大人たちに宣戦布告する。ワイルド・セブンの暗躍により首都東京を爆破された大人たちは秋也を殺すべく新しいゲーム、新世紀テロ対策特別法、通称“BRII”をもって秋也たちに対抗しようとする。札付きの不良ばかりが集まる中学生のクラスがその候補に選ばれ、孤島に立てこもる秋也たちに差し向けられるが…
前作は、原作を読んでなかっただけに映画の内容は衝撃的だった(映画の後で読んだ)。正直こんなモラル・ハザードな作品が日本で作られたと言うことは日本映画界におけるトピックと言えよう。映画そのものは至ってシンプルな構造を持っているが、こどもに、単なるゲームで殺し合いをさせるという、その発想が凄い。それを映画化した深作監督も凄いと思ったものだ。それでIIができると言うことだったが、はっきり言って期待は全然してなかった。だってこの映画の良さはその発想にこそあるのであって、一旦それを出してしまった以上、それを派手にするか、その後の抗争を描くことになるはず。いずれにせよどこかの映画の焼き直しでしかない。
それでも病身の深作監督がやる気を起こしているのには感心していたが、クランクイン直後に亡くなってしまった。それで息子の深作健太監督が作るという、何かと話題になっていたので、深作監督追悼の気持ちもあって、何とか仕事の合間を使って(睡眠時間まで少々削って)観に行った。
…大変済まないのだが、観てる最中に飽きた。特に後半はあくびが出っぱなし。
本作は二部構成となっていて、前半はBRIIに強制的に参加させられた中学生(えらく老けたのばっかりだが)が次々にテロリストによって殺されるシークエンス、後半は戦いを続ける秋也が中心となって戦いのシークエンスが展開される。殺戮シーンは凄くCGを駆使して派手なんだが、ディジタル技術は日本ではまだまだだな。CGで作られてるシーンになった途端画面がやたら荒くなるし、爆発シーンはアメリカのテレビ番組『バンド・オブ・ブラザーズ』にも負けてる。それに一人一人の個性を把握する前にあっと言う間に殺されてしまうので、いくら絶叫しても感情移入が出来ない。
前半で死にすぎるな?とか思ってたら、後半になって秋也の戦いが中心になっていく。ここで面白くなってくれることを期待していたのだが、秋也が中心となり過ぎて他のキャラクターが立たないまま。折角なら前半で見せた秋也の謎の部分をもっと強調させて周りの考えを中心にしていたら、少しは個性も見えたのだろう。それに折角前半でRIKIが「人間は勝ち組と負け組に分かれる」という二者択一をテーゼとして出していたのだから、それをもっと考えさせるべき。彼らの選択肢は「勝ち組と負け組」という分け方から「七原秋也に従うか、従わないか」という二者択一に変わっただけ。勿体ない。本作で唯一個性を発揮していた竹内力も訳分からないまま自爆?(そういや『きけ、わだつみのこえ』(1995)で似たようなシーンがあったなあ)。変な話だけど、本作で一番個性を放っていたのは殆どちょっとしか出てなかった北野たけしだったというのも問題。たけしに引きずられすぎ。
まあ、その辺は枝葉末節だが、本作で一番ばかげていたと思われるのがある。前作はゲームで殺し合いをさせる作品だったが、本作はゲームで戦争ごっこをさせていた。何というか、ほんとうに“ごっこ”なんだよな。
押井守監督の『パトレイバー2』1993)でクーデター騒ぎの中、後藤隊長が「これだけの行動を起こしておきながら、中枢の占拠も政治的要求もなし。そんなクーデターがあるか?」と言ってたが、まさにこれがそう。秋也が行った声明と呼べるものは、「全てのオトナに宣戦布告する」だけだった。こんなガキの理屈でテロを起こしたんかい?わざわざ“20年も戦争の続いてる国”にまで行っておきながら、そこで一体何を学んできたんだ?更にそんなゴッコで数万単位の人が死んでるんだから、救われないぞ。更に秋也だって設定では18歳。否応なしに大人になるんだぞ(キングの小説「トウモロコシ畑の子供たち」では18歳になったら強制的に殺されることになってるけど、こどもであり続けるためにはそうでもしないとおかしいな)。とてもじゃないけど、こんなガキの理論についていけない。精々アメリカの非道さを言うのが唯一の政治的声明と言えないこともないが、だから何なの?
他にも、テロリストが孤島にこもるって設定自体が変。テロは起こす側の拠点が分からないから意味がある。ろくな武装もない状態で(対空装備が全くなかったのは劇中でも明か。ヘリコプターで催涙ガスでも撒いてしまえばあっという間に無力化できるはず)、政府にまで発見されておきながら、それで砦にこもり続けるのは意味があるのか?
多分本作の意味合いとしては、911以降のテロに対するアメリカの報復攻撃の虚しさを描こうとしたのだと思うのだが、それがたんなる“ごっこ”で終わってしまってはなんの意味も持たない。
要するに何から何まで馬鹿げていたので全然面白いとは思えないって事。これが深作監督の遺作となるんだったら、悲しいな。
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