殯の森 2007 |
2007カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ(河瀬直美)、パルム・ドール(河瀬直美)
2007文春きいちご賞第10位 |
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河瀬直美
ヘンガメ・パナヒ(製)
河瀬直美(脚) |
うだしげき |
尾野真千子 |
渡辺真起子 |
ますだかなこ |
斉藤陽一郎 |
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★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
2 |
3 |
4 |
2 |
3 |
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奈良県の山間地に軽度の認知症を患った老人たちが介護スタッフと共同生活を送るグループホームがあった。新しくそのグループホームに勤め始めた真千子(尾野真千子)だが、入所者の一人しげきは、事ある毎に彼女に反発する。しかしやがてうち解けてきた二人は、ある日しげきの妻の墓参りへ出掛けることになる。
『萌の朱雀』(1997)でカンヌ国際映画祭のカメラ・ドールを受けた河瀬直美監督が、再び奈良の田舎を舞台に老人との共生を描いた作品で、本作もカンヌで絶賛。パルム・ドールにもノミネートされた(受賞は審査員特別グランプリ)。
国際賞を受けたと言うことでニュースにもなり、絶賛を受けているので是非劇場で。と思っていたが、たまたまちょっと遠くのシネコンでかかることが分かり、出張ついでに拝見してきた。
うん。雰囲気はとても良い。特に色づく稲穂の表現や茶畑、山の描写など、非常に緑の映えた画面作りと、押さえたタッチは素晴らしいものがある。前半はまるでドキュメンタリーで、グループホームの内部を描写しつつ、少しずつ個人の物語に話をシフトしていき、最後はファンタジックにまとめる手法も良い。
それは良いんだけど、何か拭えない違和感を感じ続ける。特に中盤になってからそれは顕著に。なんだろうこれは?はっきり言って作品観てる間にはそれは分からなかった。
ただ改めてこの作品を考えてみると、本作は実は日本人向けに作られてない。と言うことに尽きるんじゃないか?と思えてきた。台詞は日本語だし、日本の風景を描いている。だけど、根本的に設定にリアリティがないのだ。グループホーム内部の描写はともかく、血縁者でもない職員が丸一日かけて入所者を山に連れ出すなんて、ホームではあってはいけないことだし、誰もそれを止めようとしてない。明らかな暴走なんだから、それは止められて然りだろ?山の中の描写も中途半端なリアリティで、「山ってのはこんなんじゃないぞ」と言いたくもなってくる。認知症の老人があれだけの山の中で正確に目的地にたどり着けることも凄いが、それを信じてついていく介護者もいくら何でもそれはあり得ない。映画なんだからそう言うリアリティは無くて構わない。と言われればそれまでの話だが、そこら辺がどうにも引っかかり続け。終始二人が何を考えているのか不明のままであるのも辛い。説明を極力廃する場合、何が本音なのか、分かるように作らねばならないのでは?
思うに本作は日本人じゃなくて、海外の人に日本という国を紹介するために作ったのではないだろうか?もっとあからさまに言えば、『萌の朱雀』でカンヌで賞が取れたのだから、それを更に突っ込んでみた、明らかに賞狙いの作品だったのではないか。と勘ぐりたくなってくる。日本人にとってリアリティが欠如していても、海外の人が観れば「これが日本か」と思えるレベルに仕上がっているし。
もうちょっと日本に目を向けた映画作りであったら。
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