2003'07-09

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03'09'30 板谷バカ三代 (著)ゲッツ板谷 <amazon>
 著者の家にはとにかく怪人がよく集まる。その中でも最大は著者の祖母、父、そして弟の3人。この3人と著者との日常的な馬鹿騒動を描く。
 なんだか馬鹿笑いをしたい時に読むのに丁度いい本なので、著者の本を文庫で見つけたら買うようにしてる。やっぱり本作も馬鹿笑いできた。なんだかとても癒された気分になる。
 漫画家の西原理恵子によると、この著者の怪人ぶりが最高なのだそうだが、その怪人が他の怪人の事を書いてるってのがなかなか気に入った。
板谷バカ三代
03'09'27 格闘探偵団1 (著)小林まこと <amazon>
 最強のプロレスラー、東三四郎が帰ってきた…格闘界を追い出され、今はしがない探偵として。パワフルな探偵三四郎の日常を描く。
 著者の作品はなんだかんだで殆ど持ってるが、その中でも「1、2の三四郎」「1、2の三四郎2」は好きな作品で、この復活は嬉しい。著者の描く格闘シーンは飛び抜けた描写力を持つから。
 でも、これは格闘とは別なんだな。探偵ものか…その内に又格闘に戻ってくれるかな?
 「柔道部物語」の時から感じていたのだが、著者描く方言ってのは巧い。特に今回福島の方言って、本物の会津弁だった。私も実家帰ればあんなしゃべり方になるぞ。
格闘探偵団 (1)
03'09'26 築地市場のさかなかな?
平野文 (検索) <amazon> <楽天>
 著者が嫁いだ先は築地の仲卸業の三代目。それまでなかなか食べることの無かった色々な魚を食べるようになった著者が季節の魚を例に取り、その料理法や味の特性、それにまつわる想い出などを綴るエッセイ集。

 著者の名前は初期の押井守ファンにはお馴染み。本屋さんで偶然その名前を見つけ、「へえ。同姓同名の作家かな?」とか思って手に取り、奥付けを見たら、なんと本人だと言うことが分かる。大分前に結婚したって事は知ってたけど、意外な…
 それで読んでみたが、これが又、意外な才能って言うか、非常に面白い。いや、非常に腹の減ると言うべきか…とにかく書かれている魚料理がみんなおいしそう。最近夕食後は一切何も食べないように心がけているのだが、そうなると寝る前には時折とても腹が減る。そんな時にこんなものを読んでしまったため、ますます腹が減る羽目に陥った。料理方法なんかも書いてあるので、早速役立たせてもらってる。魚料理が好きな割に、焼く以外の調理方法を碌に知らないので丁度良い。
 ところで著者、声優の方は止めたのかと思ってたら、まだ細々と続けてたようだ。本書に書かれていたが、なんでも東京限定で“かに道楽”のテレビCMをずーっとやってるとか。
<A> <楽>
03'09'24 風にころがる映画もあった (著)椎名誠 <amazon>
 著者が20代の頃、突然「自分で映画を作らねばならないのだ」と一念発起し、映画作りの道へと邁進していく。8mmで作り始めた映画も16mmの本式なものとなり、常に新しい映画を求め、馬鹿をやりつつも突き進む著者の青年時代を描いたエッセイ集。
 私も大学の頃映研にいて、8mm撮影なんかしていたもんだが、それでも一本の映画を作るのに相当な出費を強いられた事を思い出す。16mmなんて言ったら数倍の値段かかる。それを一人でやってるのだから相当に凄い。一つのことにこれだけ打ち込み、前だけ見て突き進んでいく生き方というものもあるんだな。笑いながら考えさせられた…ちょっと羨ましくなった。
03'09'19 はじめの一歩66
森川ジョージ (検索) <amazon> <楽天>
 東日本新人王決定戦での板垣と今井の戦いは続く。自分のスタイルであるアウトボクシングスタイルを捨て、密着戦を挑んだ板垣だったが、今井の破壊力により徐々に足が止められていく。じり貧のまま迎えた最終6R。板垣の勝機はあるのか?

 一歩の戦いと違って勝つのか負けるのか分からないから非常に緊張感がある。しかも良いところで終わってしまうと言う問題も…うーん。次が出るのは3ヶ月後かよ。全くうまいことやってくれるよ。
<A> <楽>
03'09'18 からくりサーカス29
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 「しろがねを守る」。悲壮な覚悟を決め、仲町サーカスから離れ、人形繰りの特訓を始めたマサル。マサルから拒絶されたと思いこみ、失意の底にあったしろがね=エレオノールの前に、あの男が現れた。だが、彼女を宿敵と思いこんでいた鳴海は彼女に襲いかかっていく…
 ここのところ話自体は確かに盛り上がっていた。だけどどこか乗り切れないものを感じていたのだが、本巻を読んではっきり何が足りないのか分かった。鳴海の存在感こそが、私が読みたかったものなんだな。主人公らしい存在感だよ。悲しい誤解がここには出てくるが、それでもぐっと話が締まってきたように感じる。
 いよいよ「からくり編」と「サーカス編」とが結びついた。これからの話の展開に期待したい。
<A> <楽>
03'09'13  (著)遠藤周作 <amazon>
 日本の支配権が豊臣から徳川へと移行しようとしていた時代。日本ではキリシタン弾圧が始まった。そんな時代に唯一キリシタンを受け入れたのは奥州伊達家のみで、そこで宣教師ベラスコは、日本の教化は可能であることを示そうとする。伊達家の許しを得て何人かの侍とその従者をノベスパニア(メキシコ)、イスパニア、最終的にローマへと連れて行く。彼に同行することになった四人の侍の一人、支倉とベラスコの視点で描く大旅行記。
 昔、著者の
「沈黙」を読んで凄く暗い気持ちになったことがあったが、本作はその対になるような話で、情け容赦なく日本とキリスト教の関係について描いている。やっぱり読んでいてきつい話だ。日本人の特性というもの、政策変更により情け容赦なく切り捨てられる彼らの生き方は身につまされるもんだ。しかし、これほど読んでいてきついのに面白いと思える自分自身の感性も面白いな。
03'09'11 鉄腕バーディ2 (著)ゆうきまさみ <amazon>
 アルタ人の宇宙刑事バーディと身体を共用するようになった千川つとむだったが、自分の生活を大切にしようと言う思いが強いつとむは、なかなかそれに慣れることができなかった。だが、そんな彼の思惑にもかかわらず、彼を狙うように現れる宇宙人や、彼の挙動不審をとがめる刑事、ジャーナリストなどの思いをはらんで…
 この辺はオリジナルコミックの話をふくらませたものだが、より現代的に、そして複雑なものとなってる(バチルスの退治の仕方はオリジナルとは随分違う)。著者自身の考え方の成長もなんか見えるようで楽しいものだ。
 …出来としてはまだまだプロローグに過ぎない感じだが。
03'09'09 「複雑系」とは何か
吉永良正 (検索) <amazon> <楽天>
 先日読んだ「エンディミオンの覚醒」で人工生命体についての記述があり、どこかでこれは読んだ記憶があるぞ?と言うことで引っ張り出した昔の本。確かに人工生命(人工知能と言うべきか?)ティエラ(閉鎖型のコンピュータの中で作られた自己増殖プログラム)について書かれていた。やっぱり「エンディミオンの覚醒」では間違ったことを言ってたことが確認できた(こんな理由かい!)。でもこれを探してる内になんか面白くなって結局全部読んでしまった。
 最初にこれ読んだ時は殆ど理解不能の文字の羅列だったけど、今だとある程度分かるようになってきた。私自身もくだらないことで成長してるんだなあ(笑)
<A> <楽>
03'09'06 エンディミオンの覚醒 (著)ダン・シモンズ (訳)酒井昭伸 <amazon> <amazon>
 オールド・アースで4年間を過ごしたロール、アイネイアー、A・ベティックの3人。小さな共同体の、穏やかな生活に満足していた3人だったが、やはり旅立ちの時が来た。しかもこれまでいつも三人一緒だったのに、アイネイアーはロールに、今回は別々に旅立たねばならない事を告げる。数年後の再会を約し一人旅立つロールだったか、数年後、まさしく女性となって再開したアイネイアーは、神秘の度合いを深めていた。ロールにとっても、そして宇宙全体にとっても…
 
「ハイペリオン」4部作の最終章。これまで設定上説明してこなかったもの、あるいは設定上の矛盾の多くをこれでちゃんと説明してくれた。多分著者自身こんな展開になるとは「ハイペリオン」の時点では思ってもみなかったんじゃないかな?例えば「虚空界」と「コア」の関係とか、シュライクの正体とか、最初から考えてたようには思えない。しかもラストがアレだしなあ…
 ところで本作の物語形式を考えると、哲学や宗教とSFを結びつける形式と言い、本作専用の専門用語の乱用と言い…ストーリー自体はなんだか70年代、しかも前半のSFにそっくりなんだよな。語り部としての能力は高いか、ら現代のものとして楽しめるんだけど、色々付属したものを取り払ってしまうと形式そのものは結構古めかしいものだったりする。
 別段それが悪い訳じゃない。だって私はこの時代のSFを一番よく読んでるんだし、かなり好きな方向性だ。


 それと、ここは完全にネタばれになってしまうが、オチ部分を読んだ時、
「ジョウント」と呟いたのは決して私だけでないと思いたい…(笑)
エンディミオンの覚醒〈上〉
エンディミオンの覚醒〈下〉
03'09'02 アースシーの風 ゲド戦記V
アーシュラ・K・ル=グウィン (検索) <amazon> <楽天>
 アースシーの伝説によれば竜人から分かれたと伝えられる竜と人とは、これまでお互いに境界を守って住み分けていた。だが、かつて死者の垣根を解放しようとした魔道師の影響のため、この秩序は崩れようとしていた。王レバンネンは竜との間に新しい秩序を作るべき時が来たことを知り、竜人アルハの助力を得、竜と人との会議を開催しようとする。丁度そんな時、ハンノキと言う男がゴントに隠棲するゲドの元を訪れる。彼は毎晩死者の垣根に引き寄せられる悪夢を見続けていたのだ。かつて死者の垣根を閉じたゲドの助力を乞うハンノキだったが…

 一応邦題はシリーズに沿って「ゲド戦記」となっているが、実際には彼は冒頭にしか出てこない。むしろここでは主人公は2話の少女アルハであり、3話の少年レバンネンであり、4話のキーパーソン、テハヌーである。それにハンノキという新しい主人公を加えて描かれた、このシリーズの総決算という観のある話だ。
 ただ、作品自体の事を言わせてもらうと、残念ながらさほどの完成度ではないような印象。主人公が多い分、話が分散してるし、焦点もぼけてる。ラストも何かしっくり来なかった気がするんだが…ただ本シリーズは一通り読んだだけでは分からないし、読むたびに印象が変わってくるから。時間をおいて読み返したら、多分評も変わってくるんじゃ無かろうか?
<A> <楽>
03'08'30 金田一耕助の冒険2 (著)横溝正史 <amazon>
 東京で次々と起こる奇怪な殺人事件。それに巻き込まれた、あるいは自ら首をつっこむ形で事件を推理する名探偵金田一耕助の活躍を描く。
 数々の名作推理小説を世に出し、日本映画界にも多大な貢献をしてきた著者作品。初めて読んだのは中学の時かと思うが、未だに思い出したように読んでない作品を見つけては読んでいる。多分もう全著作の半分以上は読んでいると思うけど、まだまだ読んでないのも多いし、初期に読んだのは忘れてる。まだまだ楽しんで行けそうな著者だ。本作は短編集なのであんまり猟奇的な描写はないし、軽快に読めるのが良い感じ。
03'08'26 魔宮の攻防 グインサーガ91
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 ついにクリスタル宮へ入り込んだケイロニア軍。だが、この都市は既に“魔王子”アモンの支配する魔界へと変じていた。攻め込んだはずが逆に取り込まれてしまったグイン達。グインの前に現れたアモンはグインの部下全員を人質として、グインに古代機械を操作することを強要するのだが…

 いよいよ91巻か。100巻まで残り僅かに9巻。本当に来年には到達してしまうだろう。しかもこの展開の遅さから言って、とてもそれで終わるわけがないことも分かってしまっている。一体どこまで続くのやら、楽しみにさせてもらおう。
 ところで本巻は著者お得意のどんでん返しが最後に待っているが、やっぱりこうきたか。ここまで引くならそれしかないと思ってたよ。推理小説出身の(いや、今でも書いてるけど)著者の描き方ってのは独特のリズムみたいなもんがあるから、それに慣れたのかな?
<A> <楽>
03'08'19 エンディミオン (著)ダン=シモンズ (訳)酒井昭伸 <amazon> <amazon>
 ウェブが封鎖され3世紀が経過した。かつてウェブに存在した人間の世界は、聖十字架を用いて新しいカトリック“パクス”の与える不老不死の技術のお陰で再建していた。そんな状況の中で惑星ハイペリオンに生を受けたロール=エンディミオン。彼は処刑寸前の所を500年以上も生き続ける詩人サイリーナスによって命を助けられ、一つの願いを託される。それはやがて“時の墓標”から現れるはずのブローン=レイミアの娘アイアーネーを助け、共に失われたオールド・アースを探して欲しいというものだった。アンドロイドのA・ベティックという仲間も加え、旅を始める3人。だが、アイアーネーの身柄を欲するパクスはデ・ソヤ神父大佐という人物に特命を与え、彼らを追跡し始めた。
 
「ハイペリオン」4部作の第3部目。新展開が用意され、読み応えは充分。内容も面白い。ただ、やはり本作は第4部「エンディミオンの覚醒」を前提にした物語であり、どこか中途半端な部分を併せ持っていたが。
 
「ハイペリオン」及び「ハイペリオンの没落」ではいくつかの設定上説明不足なものがあったが、その中で大きなものは聖十字架の存在意義だった。それが本作の設定にはしっかり食い込んでおり、設定マニアとしてはほっと一安心。物語の都合上まだまだ解けてない謎はいくつもあるが、それを「覚醒」でどのように解いてくれるのか、かなり楽しみではある。
03'08'15 無言館ノオト
窪島誠一郎 (検索) <amazon> <楽天>
 長野県上田市に設立された戦没画学生の絵を集め展示する「無言館」。個人で美術館を設立し、その艦長でもある著者が綴る無言館の設立に至った理由と、現在の無言館のあり方について述べられた作品。

 帰郷時に郷里の美術館でこの特集をやっており、著者による講演も開かれたこともあり、つい購入。美術展自体はなんとも中途半端なものであり、決して絵そのものは上手いとは言えないものも多い(私自身に絵心が無いのだから偉そうな事を言っているが)。ただ、だからこそ、その無念さと言うものも感じられる。発展途上だからこそ、これから。と言う思いがあるのだろう。しかし、あるいは今の日本の一流の絵画家となっていたかも知れない人物達はこのようにして消えていったと言うことだ。
<A> <楽>
03'08'07 広島に原爆を落とす日 (著)つかこうへい <amazon> <amazon>
 朝鮮の李王朝につながる名家でありながら、日本による創始改名により日本人にされ今は広島に住む犬子恨一郎。日本人として育てられた彼は民族的コンプレックスをバネとし、海軍の中でも一目置かれる存在となっていった。今は故郷の広島で戦艦大和の開発指揮を執っている彼には見初めた女性がいた。離れ島に住む被差別部落の娘、髪百合子。だが、彼女には出生の秘密によって彼とは結婚できないことを宣言し、更に彼女は密命を受けドイツに旅立つのだった…
 丁度広島の原爆記念日と言うことで読み出した作品だったが、
これが又!とんでもなく面白い。思わず久々に明け方まで本を読んでしまった。今年読んだ小説ベスト1は間違いなくこいつ。
 勿論本作はフィクションであり、ファンタジーと言っても良いし、設定的なアラも多いが、その内包するパワーはとんでもないもので、戦争や民族差別を辛辣に笑いしてしまう描写に圧倒されてしまった。
 ところで、在日に対する民族差別を主題とした作品は日本人が書いてはいけない。と言うのが日本の文壇では不文律となっている。本作の主人公も在日朝鮮人で
(創始改名の際、自分の姓を変えるのは犬子にも劣る。と言う意味で「犬子」という姓が、そして日本人への恨みを忘れないようにと言う意味で「恨一郎」という名前になったとある)、彼がどれほど日本に忠義を尽くし、どれほど日本のために役立ったとしても、決して報われないと言う描写が克明に綴られており、「おお、日本人でもこんなのを書いた人がいたんだなあ」と思っていたら、実は著者は在日だったと知り、二度びっくり。今まで全然知らなかった(ペンネームは在日に対する「いつか公平」という願いを込めてつけたものだと知る)。著者がますます好きになったぞ。
 色々書きたいことは詰まってるけど、果てしなく続きそうだ。追々どこかで使わせてもらおう。
03'08'05 噴火列島 創竜伝13 (著)田中芳樹 <amazon>
 富士山の噴火により混乱する日本。政府内部ではクーデターにより首相は監禁され、新しい政府が誕生した。東京の様子を偵察に向かった竜堂家の三男の終と四男の余だったが、富士山付近で怪異と遭遇し、成り行きで脱走してきた前首相と鉢合わせしてしまう。一方、京都で二人の帰還を待っていた長男の始と次男の続だったが、そこに飛び込んできたあの小早川奈津子が勝手に開いてしまった幕府を手伝う羽目に…
 田中芳樹という人には本当に感謝。著者の
「銀河英雄伝説」を初めて読んだのは高校時代。新刊が出るたびにすぐに本屋に買いに走ったものだ。懐かしい想い出だ。著者の目的は非常に明確で分かりやすく、ボリュームを持った作品に夢中になったものだ。
 ただ、感謝するというのは、素晴らしい作品を読ませてもらった。と言う意味では
断じてない。高校時代でさえ、どこかこの論理は間違ってる。と言う思いにつきまとわれた。問題は私自身に知識があまりにも足りないと言うこと。論破してやりたいのに自分には基盤がないと言う根本的な事を思わされる事になったから。以降本は乱読を重ねた。もう何でもかんでも読んだ。その行動原理はこの人の論理を鼻で笑えるくらいの知識量が欲しかったから…そのうちに本を読むという行為そのものが大好きになってしまった。私がこれだけの読書好きになったきっかけを作ってくれたのが著者だった。
 本作も確か一巻が出たのは高校時代だったんじゃなかったかな?それから20年近い月日が経過し、今で13巻…時折思い出したように出てくるので、忘れたわけではないらしい。
 ただ、前巻出てから一体どれほど時が経ったのだろう。展開そのものをもう忘れてるぞ(
そもそも前巻読んだかどうかもちょっと微妙)
 しかし、20年の月日が著者にはどう働いたんだか。1巻の時と殆ど物語が変わってないというのはなかなか興味深いものがあるぞ
(文化の変遷により、作中では一年経過してないはずなのに色々便利な道具が出てくるのはご愛敬だろう)。色々な意味で馬鹿をやってるので、著者の意図とは違っているだろうけど、大笑いさせてもらった。
創竜伝〈13〉噴火列島
03'07'31 少年
ビートたけし (検索) <amazon> <楽天>
 著者による少年を主人公とした短編集。東京での小学校での運動会を描く「ドテラのチャンピオン」、大阪での望遠鏡を巡る小学生と中学生の兄弟の話「星の巣」、家出同然に京都に一人旅に出掛けた中学生が、そこで少女と出会う話「おかめさん」の3編を収録する。

 考えてみると、著者の作品はエッセイ以外ではこれが初めてなのだが、あのスケジュールの中でよくこんな時間を作ることが出来たと感心できる。文章そのものはやや乱暴な部分もあるが、感情を揺すぶられるようなパワーを内包する作品だ。
03'07'28 ラブやん2 (著)田丸浩史 <amazon>
 ロリ・オタ・プーという三拍子揃った駄目人間大森カズフサと、不幸にも彼の元に呼び寄せられてしまったキューピットのラブやん。だんだんカズフサの彼女探しをあきらめつつある二人の明日は…
 “痛い”作品と言うことで紹介を受けて読み始めた本作(いや、実際はこの著者は結構好きなんだけど)。1作目は確かに“痛い”作品だった。然るに2巻はややその痛さが薄れた感じ。普通のギャグっぽい。著者の感性がとても変なので、それが読んでいて心地よい。変だな?
ラブやん 2 (2)
03'07'25 新・魔獣狩り8 憂艮編 サイコダイバー20
夢枕獏 (検索) <amazon> <楽天>
 日本を未曾有の地震が襲った。その日、多くの出来事が動き始める。毒島獣太、九門鳳介、美空、有堂岳、金犬四郎、そして猿翁と魔人空海…腐鬼一族の宝とは、そして日本の行方は…
 著者及びこの作品も大分つきあいは長い。「キマイラ」で著者にはまり、当然の如く早い内に「魔獣狩り」は読み始めた訳だから…20年近くなるか。長い休止期間はあるものの、その間にパワーを落とさずに連載を続けている著者が凄いと思う。ただ、著者の悪いところは、物語を大きく拡大するのは上手くても、それを収めるのがあまり上手くないと言うところ。お陰でこの作品、どんどん話がふくらんでしまった。登場人物の誰がどこにいるのか、誰と連んでいるのか、その辺の把握がどうしても必要になってくるのだが、前巻からブランクが空くと、把握がとても困難(私にとっても今でぎりぎりか?)。完結時には通して読んでみたいものだ。
<A> <楽>
03'07'23 攻殻機動隊1.5 (著)士郎正宗 <amazon>
 人形使いに誘われ、草薙素子が9課から消えた後も、新メンバーを加えた9課の面々は忙しく働いていた…9課の日常業務を描く作品。
 映画『GHOST IN THE SHELL』の前から本作ははまった口であり、これを買うのは楽しみでもあり、又半ば義務のような気分で購入(それにしてもCD-ROM同梱で2,400円は高いぞ…ちょっと前に出た「GUN DANCING」の2,200円よりはまだいいか)。連載時で読んだのは内一本程度だったが、先日出版された2巻と較べてしまうと、タッチは少々粗め。著者がPCで絵を描く以前の作品なんだね。勿論重要なのは絵よりも中身だけど、今巻は随分分かりやすいし、良い感じ。攻殻SACの雰囲気はむしろこっちを参考としてるんだろう。
 じっくりと繰り返し繰り返し読んでいきたい作品だ。
攻殻機動隊1.5
03'07'19 帰還 ゲド戦記IV
アーシュラ・K・ル=グウィン (検索) <amazon> <楽天>
 ゴントで羊飼いの妻となったかつてアルハと呼ばれた女、ゴハ。夫に先立たれ、二人の子供も巣立った後に彼女はテルーという一人の少女の面倒を看ていた。賢者オジオンの死に目に立ち会った彼女だったが、そんな彼女の前に竜カレシンに乗ったゲドが現れるのだった…

 前作が出てから16年も経った後、著された作品。ゲド戦記は3部作だと思われていた作品の続編と言うことで、当時は驚きを持って迎えられていた(私もその機会に全部読み返した。今回は5巻目が出たから1〜3巻までは3度目の読み返し、本巻は二度目の読み返しとなる)。
 1〜3巻までは一応児童書の形を保っていたが、4巻目である本巻は完全に大人向き。何せベッドシーンはあるわ、幼児虐待のシーンがあるわで、内容も極めてハード。
 アースシーというこの舞台を考えるのならば、一旦失われた魔法が再び戻った後の、混乱期を描く作品と言うことになるだろう。又、ゲドを中心とするなら、1巻が自分を受け入れるまで、2巻は人を癒すため、3巻は人を導くため。となるが、ここでは何だろう?老いの受け入れか?それとも社会的な責任を全て果たした後、その後での過ごし方を描いたのだろうか?いずれにせよ興味深い話ではある。
 いよいよ後1巻か。
<A> <楽>
03'07'15 パーカー・パイン登場 (著)アガサ・クリスティ (訳)乾信一郎 <amazon>
 他人の人生の空虚さを埋めることを趣味を兼ねた仕事としている人物パーカー=パイン。彼の元を訪れる、今の人生に決して満足していない者達や、あるいは彼を逆に利用してやろうと罠をかけてくる者達…そんな人たちにまつわる事件を描く。
 かつて英語の授業でこの短編のいくつかは原文で読まされた経験がある(他にもシェイクスピアの
「マクベス」もテキストで使われてた)。その時は訳文を読むのはちょっと卑怯かな?と思って手を出さず、大分後になって購入。それからずいぶんな年月が経過して初めて全部読むことが出来た。記憶は所々薄れているが、確かに読んだと記憶している作品もある(英語で読んだはずなんだけど、その記憶は曖昧で、日本語で覚えているのがなんだが)。ポアロやミス・マープルに代表される著者の探偵ものの作品に近いとは言え、ちょっと違っていて、それが楽しい(著者作品では探偵もの以外も質は高いし)。なんにせよ、やっと読むことが出来た、と言う充実感があるな。
パーカー・パイン登場
03'07'14 恐怖の霧 グインサーガ90
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 クリスタルへと進撃を続けるケイロニア軍。だが、武力を誇る彼らに対し、魔の子アモンは精神攻撃をもって彼らを足止めしようとする。常に平常心を失うことのないグインでさえ、夢の回廊で目前に妻シルヴィアが出された時、激しく動揺を見せてしまう…

 ギネス記録を更新中のシリーズもいよいよ90巻となった。本当に良くつきあってるな。
 今巻はまるで外伝のような魔法が前面に出た話となっている。その分見栄えはするが、よく考えてみたら、前巻と今巻って全く違ってなかったような…もしこれを読んでなかったとしても、あれがとりあえずの仲間になったという一点を除けば全く問題なく次の話を読めるぞ(笑)
 しかし、話数から見ると、著者の宣言の通り、絶対100巻では終わらない。一体どれだけの巻数が出るのか、これからも興味深く見守らせていただこう。
<A> <楽>
03'07'10 彼氏彼女の事情16
津田雅美 (検索) <amazon> <楽天>
 ついに雪野は、これまで固く閉ざし続けていた有馬の心の壁を壊した。感情があふれかえる有馬と、その仲間たちの交流を描く。

 前巻で行き着くところまで行っちゃったな。と思っていたのだが、見事に立て直した。心の問題を直視するのは大変面白いのだが、繰り返し読んでみたいと思えない。だけど一旦それが崩れてしまったら、妙にほんわかしてしまい、今度はなんかちょっとした気晴らしに読もうか。とぱらぱらめくれる。こっちはこっちで結構良いかな?
<A> <楽>
03'07'07 チップス先生さようなら
ジェームズ・ヒルトン (検索) <amazon> <楽天>
 中産階級出身が多いが伝統あるイギリスの中学ブルックフィールド校に60年の間勤務し、古典を教え続けたチップス。生徒に大人気の彼の人柄により、やがてブルックフィールド校の顔となっていく。学校と生徒に情熱を傾け続けたある老教師の一生を描く。

 物語性はさほどある訳じゃなく、盛り上がる部分もある訳じゃない。むしろ淡々と一人の人間の生を描くだけの作品なのだが、これが又とても面白い。著者のヒルトンは本作を僅か2週間で書いたらしいが、人間の観察力があるって事なんだろう。非常に洗練された文体と、時代の移り変わりを見る目は確かだ。繰り返し読んでみたくなる作品だね。
<A> <楽>
03'07'04 敵は海賊 不適な休暇
神林長平 (検索) <amazon> <楽天>
 海賊課のラテルと猫型エイリアンのアプロの上司で海賊課のチーフ、バスターは突然休暇を取ると宣言し、ラテル、アプロ、宇宙船のラジェンドラの3人(?)に代理を押しつけてさっさと超高級リゾート惑星バンデンバースに行ってしまった。代理を押しつけられ、チーフとしての重圧に押しつぶされそうになるラテルと、いつもと変わらないアプロ…だが、これは実は海賊課のたった一人のエージェントによってなされた事件だった。そのころ、火星の海賊の町サベイジでも一つの事件が起きようとしていた…
 これも読むには遅すぎる作品だけど、それでも今読んでも充分すぎるほど面白い。本巻は特にアプロとは一体何者であるのか、そしてそれがどれほどの強さを持っているのかを再認識させてくれる。あれは本物の化け物なんだな。著者の作品を読んでいるといつも思うけど、それにしてもこんな物語よく思いつくよな。
<A> <楽>
03'07'01 火車 (著)宮部みゆき <amazon>
 休職中の刑事本間俊介は、久々に彼の前に姿を現した遠縁の青年栗坂から、失踪してしまった自分の婚約者の関根彰子という女性を捜し出してくれ。と頼まれる。リハビリを兼ねて調査を開始した俊介だったが、なんと栗坂の言う彰子は、全くの別人であったことを知る…彼女は一体誰なのか、どのようにして彰子とすり替わったのか。俊介は本式に調査を始めるのだが…
 カードローンの恐ろしさを題材とした推理作品で、上手くできた作品だと思う。意外性のある発端からきちんと筋道を立てたプロットがあり、落ちの部分まできっちりと読ませる。実に丁寧な作品。ただ、ちょっと巧みすぎた感があり、
著者の溢れるパトスのような部分が見あたらない印象も受けるのだが…終始落ち着いた、その分推理が楽しめる作品。
火車