SHE SAID シー・セッド その名を暴け
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デデ・ガードナー
ジェレミー・クライナー
ブラッド・ピット
リラ・ヤコブ
ミーガン・エリソン
スー・ネイグル(製)
レベッカ・レンキェヴィチ(脚)
キャリー・マリガン
ゾーイ・カザン
パトリシア・クラークソン
アンドレ・ブラウアー
ジェニファー・イーリー
サマンサ・モートン
アシュレイ・ジャッド |
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★★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
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2017年。ニューヨーク・タイムズの記者ジョディ・カンター(カザン)は、ハリウッドの大物プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインが女優や女性従業員に対して性的暴行を繰り返していたとの情報を得る。同僚のミーガン・トゥーイー(マリガン)の助けを借り、取材を進めようとするのだが、報復やキャリアへの悪影響を恐れる被害女性たちの口は重く、なかなか決定的な証言を得られず難航する。それでも諦めずに女性達へのアプローチを続ける二人だが…
つい先日ハーヴェイ・ワインスタインが禁固刑を受けたというニュースが流れた。おそらくは死ぬまで刑務所の中だろうとのこと。セクハラとパワハラの結果がこれだと重すぎるのでは?という思いもつい頭をよぎるが、それだけ厳しくやらないと、これからその手のハラスメントがなくならないという判断なのだろう。
ただ正直、ワインスタインという名前は映画好きであってもあまり知られることがなく、2017年の事件が起こって初めて知った名前でもあった。改めてフィルモグラフィを眺めてみると、かなりたくさんの映画に関わっているし、メジャーな作品も多数。自分自身も結構な数を観ていることが分かった。間違いなく実力者である。
そんな人物の逮捕でハリウッドは揺れた。これはワインスタインという個人の逮捕に留まらず、それまでハリウッドが保有していたハラスメントの実態が明らかになったからである。
ハリウッドは基本的に自由を大切にする土壌であり、ハラスメントは起こりにくいという建前があっただけに、このようなことがいざ起こってしまうと本当に激動だったことは容易に想像が付く。
その構造的なハラスメントをそのままドラマ化したのが本作となる。
実話ベースで新聞記者が国を揺り動かすようなスクープをものにする映画はこれまでも結構たくさん作られてきた。代表作としては『大統領の陰謀』(1976)があるが、近年にも『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(2017)があったし、政治ではないが、世界を揺り動かした記事を描いた『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)がある。本作もそれに則ったものになっている。
ただ、これまでの作品とは大きく違っている部分もある。それが主人公が女性であると言う点。男性でも女性でも関係ないというものではない。女性がスクープを取るには難しい部分がいくつもあるのだ。それは本作で充分に見せている。本作の主人公である二人の記者はどちらも子育て真っ盛りだし、出産までしている。この時点で全てを捨ててスクープに没頭することが出来ないという事になる。実生活をしっかり描きつつ、新聞での困難さを描いたことで、とてもリアリティのある話になったと言うことである。そしてもう一つが女性は暴力によって狙われやすいと言う事実となる。この作品、終始主人公が一人になるシーンを細かく撮影している。しかも不安にさせるようなカメラアングルを敢えて使って、ひょっとしたら襲われるのではないか?と思わせる演出を常に行っている。お陰で色々緊張感があって、その意味では飽きさせない。この演出は初めて観た気がするが、これは意図的というか、女性監督だからこそ出来たものなのではなかろうか。
その意味ではとても面白い作品だった。
ただ、リアルさを追求したことで、多少「良いのかな?」というのもあった。
実際ワインスタインの被害を受けた人たちが証言する内容は、強姦にまで至ってないのだ。性的奉仕を求められていても、それはあくまで手で行うとか、マッサージ止まりだったり。これはセクハラには違いないけど、強姦罪とまではいかず、どっちかというとパワハラの方で止まってる。
これはワインスタインという人物についてとても良く示していて、彼は性的な満足を得るのに性行為を必要としない。むしろ自分が女性を屈服させるという事実にこそ性的興奮を覚える人物ということになる。
この辺リアルになると、「そこまで重い罪なのかな?」となんとなく思ってしまう。それ自体私の感覚が麻痺してる証拠とも言えるけど、2023年に下された判決は禁固16年という。あるいは死ぬまで刑務所にいる可能性もある。そこまでのものとすれば、もうちょっと「これだけのことをしました」という追加要素が欲しい。 |
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