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ヨゼフ・フィルスマイアー
Joseph Vilsmaier

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鑑賞本数 合計点 平均点
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書籍
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1995
1994
1993 スターリングラード 監督・製作・脚本・撮影
1992
1991 カティの愛した人 監督・製作・脚本・撮影
1990
1989
1988 秋のミルク 監督・製作・撮影
1987
1986 ノンストップ・トラブル DiDi大混乱 撮影
1985
1984
1983
1982
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1980
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1941
1940
1939 1'24 ミュンヘンで誕生

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スターリングラード 1993

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ヨゼフ・フィルスマイアー
ハンノ・ヒュース
ギュンター・ロールバッハ
ミヒャエル・クローネ
マーク・ダモン(製)
ヨゼフ・フィルスマイアー(脚)
トーマス・クレッチマン
ドミニク・ホルヴィッツ
ヨヘン・ニッケル
セバスティアン・ルドルフ
カレル・エルマネック
ダーナ・ヴァヴロヴァ
シルヴェスター・グロート
★★★★☆
物語 人物 演出 設定 思い入れ
 北アフリカ戦線から帰還し、休暇を楽しんでいたヴィッツランド少尉(クレッチマン)ら工兵隊に東部戦線への出動命令が下る。ドイツ軍が攻めあぐねているスターリングラードへとたどり着いたが、そこは聞きしに勝る激戦地だった。
 第二次大戦東部戦線における最大の激戦地スターリングラード(現ボルゴグラード)攻防戦を描く作品。
 この戦いは結構題材にされやすい。なんせ圧倒的な力を持つドイツ機動部隊に対し、補給路も断たれた一つの都市が8ヶ月の長きにわたり防衛したというものである。結果としてこの戦いこそが独ソ戦線の決着を決めた戦いと言っても良い。戦記好きには涎を垂らさんばかりの素材だろう。
 実際何作か作られている。有名なのはアノー監督の『スターリングラード』(2001)があるが、私が知ってる限りではボンダルチュク監督の『祖国のために』(1975)もやはりスターリングラードを扱ったもので、ボンダルチュクJr.が『スターリングラード 史上最大の市街戦』(2014)を作っている。特にロシアで作られるのが多いのも特徴だろう。
 更に実際の戦記としてではなく、SF作品やアニメなどでは、これを題材にした作品は事欠かない。特に後の日本への影響がとてつもなく大きい戦いだった訳だ。そもそも
「宇宙戦艦ヤマト」なんてほぼ全編このインスパイアで、そこから日本のアニメのフォーマットが作られたのだから当然とも言える。

 そう言う意味で言うなら、スターリングラードを描いた作品はほとんどが既視感を感じるものだ。
 ところが本作に関しては既視感が全くない。
 基本的にスターリングラード攻防戦を描く場合、防衛したソ連側を主人公として描くのが普通である。ところが本作を作ったのはドイツであり、戦いに敗北したドイツ軍を主人公として描いている訳だから。 
ドイツにとっては忌まわしい戦いをドイツ人が作ったことに意義がある作品である
 完全敗戦を克明に描くというそれだけで拍手したくなるような作品だが、そのため全編にわたって陰鬱なイメージが続く。

 それでも前半部分のスターリングラードに突入する戦いはそれなりに盛り上がるのだが、撤退になってからの描写がもうなんというか…

 先ほど「既視感がない」と言ったが、既視感があった。
 それは『八甲田山』(1977)なんだが…
 後半の
あの寒さの描写は、ほとんどホラー映画の領域。敗走というマイナスイメージに加え、極寒と踏み入る真っ白いだけの空間。更に生き残るために仲間を切り捨てねばならない辛さ。それらが全部押し寄せるという恐ろしい作品である。多くの戦争映画は観てきたけど、これほど「寒い」と思えた作品はそうそうない。
 なんでも完全主義のフィルスマイヤー監督は撮影を厳寒のラップランドで撮影したとのことで、役者の震えは本物なんだとか。

 戦争映画として本作を観るならば、二点とてもリアリティのある描写がある。
 一つは工兵隊を主人公にしているため、戦争で重要な道路敷設や戦闘工兵の困難な任務が主な描写となっていると言う点。攻防戦の中でもその描写が見えるが、何より撤退戦での雪の中での退路確保の整備描写が際立っている。何より本作ほど戦争映画でショベルの使い方が素晴らしい作品は無かろう。かの『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997)以上だ。工兵隊の凄さと苦労がよく分かる。
 そしてもう一点が、拳銃の使い方である。
 拳銃を戦争に持っていく理由は、敵を撃つためではない。実は拳銃は味方に言う事を聞かせるための威圧と、自決のために携行するものなのだ。そもそも拳銃は通常の銃と比べ、あまりに命中率が悪すぎる。戦場においてその射程距離はほんの数メートルとも言われる(蛇足だが、日本映画において最も拳銃の描写が上手いのは北野武監督だろう。ほとんど1メートル以内で拳銃を使用してる)。先に敵に対して使えるのは音で威嚇する以外の使い道はほとんど無い。専ら拳銃の銃口が向けられるのは味方か自分自身となる。
 本作の拳銃の使われ方はほぼそれに限られるため、とてもリアリティがあり、そのリアリティが素晴らしい。

 戦いを中心としてないという根本的な問題はあるにせよ、戦争映画として、とても素晴らしい出来なので、機会あったら是非観て欲しい作品でもある。

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