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2006 | 4'12 死去 | ||||||||||
紙屋悦子の青春 監督・脚本 | |||||||||||
2004 | 父と暮せば 監督・脚本 | ||||||||||
2002 | 美しい夏キリシマ 監督・脚本 | ||||||||||
2000 | スリ 監督 | ||||||||||
Devotion-小川紳介と生きた人々 出演 | |||||||||||
1990 | 浪人街 監督 | ||||||||||
1988 | TOMORROW 明日 監督 | ||||||||||
1983 | 泪橋 監督 | ||||||||||
1981 | 風の歌を聴け 出演 | ||||||||||
1980 | 夕暮まで 監督 | ||||||||||
1979 | |||||||||||
1978 | 原子力戦争 Lost Love 監督 | ||||||||||
必殺からくり人 富嶽百景殺し旅<TV> 監督 | |||||||||||
1976 |
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1975 | 祭りの準備 監督 | ||||||||||
1974 | 竜馬暗殺 監督 | ||||||||||
1970 | 日本の悪霊 監督 | ||||||||||
1969 | キューバの恋人 監督・脚本・編集 | ||||||||||
1966 | とべない沈黙 監督・脚本・編集 | ||||||||||
1961 | 恋の羊が海いっぱい 監督・脚本 | ||||||||||
1930 | 11'10 宮崎県で誕生 |
父と暮せば 2004 | |||||||||||||||||||||||||||
2004ブルーリボン主演女優賞(宮沢りえ) 2004毎日映画コンクール監督賞 2004報知映画助演男優賞(原田芳雄) 2004ヨコハマ映画祭第6位 2004キネマ旬報日本映画第4位 |
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美しい夏キリシマ 2002 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2003日本映画プロフェッショナル大賞9位 2003日本映画批評家大賞助演男優賞(香川照之)、新人賞(柄本佑)、プラチナ大賞(黒木和雄) 2003キネマ旬報1位 2004毎日映画コンクール監督賞 |
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1945年。両親と共に満州に住んでいた中学生の日高康夫(柄本佑)は肺浸潤のため故郷の宮崎に疎開してきた。太平洋戦争が激化しており、康夫の住む村でも、大陸から引き揚げた兵士たちが駐屯し、本土決戦に備えて演習を行っていたが、それを横目で見ながら何も出来ない自分に苛々しっぱなしだった。そんな康夫に想いを寄せる従姉の世津子や、小作人達の逢瀬や結婚。そう言ったものを経験しながら過ごしていく… 銃後の生活を描いた作品で、気持ちは最前線。しかし体は小さな田舎に押し込められ、やるせない気持ちで一杯の少年の青春物語として描かれている。なんでもこれは黒木監督自身の体験を元にしているとのことで、なるほど、だからこんなにリアリティがあるのか。と思わされる。 ちょっと前まで日本で戦争映画を描く場合、「戦争の悲惨さ」ばかりが強調されて、その中にある青春も“軍によって抑圧された”ものとしか描かれなかったものだが、実際には人間はどんな時代でもそう変わるものではない。中学生は格好良いものに憧れるし、初恋にドキドキする。盗み見を暗い趣味にしたりするし、こっそり自慰も行う。こういう当たり前の青春は「なかったもの」として扱われることに常々不満を持っていた訳だが、偶然観た本作が、私の認識を大きく変えさせてくれた。ようやくこういう作品が作られるようになったか!と言う喜びというか、やっと邦画は次のステップへと向かうことが出来るんだ。という安堵感をもたらしてくれた。 確かに本作でも戦争によって悲惨な状態になっている人間や家族の描写はあるし、そう言う描写を回避するのではないが、その中でも普通の生活があったんだよ。と言う当たり前の事実が描かれていると言うところに特徴がある。特にこういう特殊な状況の中にある日常描写というのは、実は私は体がゾクゾクしてくるくらいに好き(何度か書いていると思うけど、日常描写を丁寧に描いているSFが大好きなのはこれが理由)。本当に大好きなものをこれだけ丁寧に描いてくれただけでも嬉しい。戦争とは縁遠いはずの日常生活が、しっかり戦争と結びついている事がはっきりと分かってくる。 ここで描かれる“戦争の悲惨さ”とは、突然断ち切られてしまう日常なのだが、情報が制限された片田舎だけに、あるものは自暴自棄になり、あるものは自分の殻に閉じこもる。そんな混乱の中、純粋さ故に思い詰め、自分を見失っていく主人公の少年。ここでの描き方の面白さとは、日常の方がむしろ閉塞状態にあり、どこかでその閉塞感を解放してくれる戦争を願っている部分がある。と言うところだろう。 戦争描写を一本調子ではなくすることによって、余計はっきりと反戦へと向かわせる描写。これこそが本当に私が観たかった戦争映画だよ。 それに霧島の風景がとても綺麗。国破れて山河ありではないけど、人間がどんな行いをしていても、自然はただそこに佇んでいる。それをどう思うかは人間側の勝手な理屈なのだろうが、ここに切り取られる自然の美しさは残酷な美しさだ。 本作を観たのはテレビでだったが、この瑞々しい演出に、観ている間はてっきり中堅所の監督か?と思ってたのだが、いざ調べてみたらヴェテランの黒木監督と知ってびっくり。これまでこんな素晴らしい演出が出来る人とは全く思ってなかった。改めて死が悼まれる。 |
浪人街 1990 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1990日本アカデミー助演男優賞(石橋蓮司、主演男優賞(原田芳雄) 1990ブルーリボン主演男優賞(原田芳雄) 1990毎日映画コンクール男優助演賞(石橋蓮司)、美術賞 1990報知映画助演男優賞(石橋蓮司)、助演女優賞(樋口可南子) |
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原子力戦争 Lost Love 1978 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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東京で暴力の世界に生きる坂田正首(原田芳雄)は、故郷に帰ったきり戻ってこない望と言う女を連れ戻しに東北の町へとやってきた。望の実家では追い返されてしまうが、望は帰ってきていると当たりを付け、この町に留まることにした。そんな坂田に近づいてきたのは新聞記者の野上(佐藤慶)で、彼はこの町で起こった心中事件を調査しているという。野上の話によると、この町にある原発で何かが起こり、その隠蔽のためにこの神獣事件が起こったこと、そしてそれに望が関わっていることなどを語る。事件の真相をさぐるべく、坂田は非合法な手段を駆使して町の人々に聞き込みを始めるのだが… 『祭りの準備』によって常識が異なる田舎の風景を描いて日本映画に一石を投じた黒木監督が、再び田舎を舞台に、今度は原発問題を直接的に描いた問題作。長らくソフト化が見送られていたが、ようやくDVD化されたということで拝見させていただいた。 問題作と言うからどんなのかと思っていたのだが、内容を言うに、実にまっとうなフィルムノワール作品である。と言うか、邦画でこれだけしっかりしたフィルムノワールにはお目にかかったことがないほど。正直、日本における唯一の完璧なフィルムノワールと言っても良い。物語展開に分かりづらいところがあるのも確かだが、ノワールの面白さの一端はそこにあるので、これも又上手く作られたとも言える。 主人公の造形も、決して正義感ではなく、アウトローとしての欲望に忠実で、自分に気持ちが良いか悪いかだけで全てを判断するというのが良い。坂田の姿は『キッスで殺せ!』(1955)のマイク・ハマーような感じだし、海外と較べ性的な規制が緩い日本映画だからこそ主人公のアウトローぶりが映える。その意味では原田芳雄に本当にぴったりな役回りだろう。ノワールには欠かせない山崎明日香(山口小夜子)というファム・ファタールもいるし、本当に見事なフィルム・ノワールと言って良い。 強いて文句を言うとしたら、画面がざらつきすぎてることと、必要以上に肉感的に生々しすぎるのがうざったいことか。ストーリーで充分に分かるのだから、無理にそんな濡れ場持ってくる必要ない。サービス過剰。 こんな良作が邦画にもあったということは声を大にして言いたいし、日本映画史においてもっと評価されて然るべき作品だと思う。 ただ、本作が邦画界における鬼子のような存在になってしまったという理由も確かに分かる。 理由はたった一つ。原子力発電の問題にあまりに入り込みすぎたから。 本作の物語そのものが原発の利権と、事故の隠蔽についてえらく踏み込んでいて、ATGだからこそ出来たと言うか、ATG以外では作ることが出来なかった。もの凄い覚悟でなければ作れなかったと思う。 ただ、そこまではギリなんとか封印にまでは至らずに済むのだが、この作品、一箇所絶対にまずいシーンがある。 一箇所だけ本物ドキュメンタリー映像が使われてるのだが、その内容は撮影隊が無許可で福島原発に入り込もうとして、発電所の守衛に止められるという場面。正門から入ろうとして、守衛に止められたところで引き返しているのだから、法的にはセーフだが、積極的に法を犯そうとしてるというシーンになってしまってる。これは絶対まずいだろ(邦画のドキュメンタリー映像観てて「やべえだろこれ」と呟いたのは『ゆきゆきて、神軍』(1987)以来だ)。 この部分突っ込まれたら何も言えない。やりすぎた。 だが、そのやり過ぎた部分も含め、2011年のあの福島原発事故を経た今の日本は、この作品をちゃんと直視するべき時期になってるのも確かだ。この時期にDVD化されたのは、確かにそれが理由なんだろう。 いろんなものひっくるめて、是非沢山の人に観てほしい、掛け値無しの邦画の傑作だ。 |
祭りの準備 1975 | |||||||||||||||||||||||||||
1975ブルーリボン助演男優賞(原田芳雄) 1975キネマ旬報日本映画第2位 1975毎日映画コンクール脚本賞、録音賞 |
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終戦から10余年が経過。高知県中村市で信用金庫の外勤をしている沖楯男(江藤潤)は、毎日毎日変わらない日常と、がんじがらめにされる田舎の人間関係にほとほと嫌気がさしており、東京へ出てシナリオ作家として身を立てることを夢みている。だが、祖父は完全に痴呆状態。父の清馬(ハナ肇)は女狂いで次々と女のところを渡り歩き、母のときよと(馬渕晴子)は完全別居状態。その分ときよは楯男に依存しきっていた。楯男には憧れの人涼子(竹下景子)がいるが、彼女は政治運動に熱を上げており、恋には目もくれもしない。楯男の隣家中島家は泥棒一家で、兄の貞一が刑務所にいるときは弟の利広が兄嫁の美代子と夫婦となると言う奇妙な三角関係で成り立っていた。そんな時、中島家の末娘タマミが発狂して家に帰ってくる… かつて大槻ケンヂの著作「私は変な映画を観た」という作品の中で本作が紹介されており、そこで「不幸のつるべ打ち」とまで書かれ、どうしようもないほど不幸な青春の話として書かれていたので、いつか機会があったら観てみたいと思っていたものだが、ちゃんとテレビで放映してくれた…しかし、やっぱり無茶苦茶言われるだけのことはある。確かにこれは酷い作品だ。 1970年半ばATG作品は、徐々に変質を遂げていった。丁度1970年にピークを迎えた学生運動から映画の方へと転向した人が多いためだとも言われるが、とにかく鬱屈した青春群像やエロとグロをこれでもか!と言うほど叩きつけるような作品が増えてしまった。 そんな中でも本作は群を抜く暗さを持つ作品だろう。直接的な性交場面はないにせよ、げしげしその台詞は出てくるし、それでその結果も多様に登場。セックスをしてるんだか傷つけてるんだか分からないような描写がどんどん出てくる。 常識では考えにくい家庭内ルールが横行し、頭だけ別の世界に行ってしまってる人が何人も登場…物語のフローや設定見てるだけでも頭抱えたくなるような物語と言うことが分かる。 しかし、本作で一番恐ろしいのは、これが脚本家中島丈博の“自伝”だという点だろう。ここまでやっておいて、これ事実だったのかよ! 西原理恵子のマンガで「ぼくんち」という作品がある。同じ高知を舞台にした、やはり自伝要素の高い作品だが、これ読んだときに「高知って凄いなあ」と思いつつ、半分は誇張かと思ってたものだが、同じ高知を舞台とした本作と見事な地続きになってたことを知った。この映画のほぼ10年後くらいの高知の姿があのマンガだったんだな。 それにしてもここまでひどい物語をよくもまあ映画化しようと思ったもんだ。 ところが本作は映画としてかなりしっかりした作りになってるのが面白い。無茶苦茶に暗く、重い設定でありながら、極力エログロ描写を排し、あくまで人間同士の問題にしたのが成功だろう。きちんと希望を持たせる物語に仕上げられてる。 神秘的なものや、祟りみたいなものにしなかったお陰でリアルな悲惨さと、そこから生まれ出る希望が描けるようになっているのだ。逃げ出すことを正義として、そこに希望を見つけさせる過程の描き方が本当に上手い。まさしくタイトル通り、これから青春の祭りが始まるのだ。というラストで救われる気がする。よくここまでバランス良く仕上げたものだ。晩年になって本当に美しい作品を作るようになった黒木監督の実力は、本作でもまざまざと見せつけられる。 ちなみに本作が竹下景子の出世作となったのだが、以降清楚さで売ることになる人の出世作がこんな悲惨な目に遭う話ってのも面白い話だ。 |
日本の悪霊 1970 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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