地獄 |
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大蔵貢(製)
中川信夫
宮川一郎(脚) |
天知茂 |
沼田曜一 |
中村虎彦 |
宮田文子 |
三ツ矢歌子 |
林寛 |
徳大寺君枝 |
山下明子 |
大友純 |
大谷友彦 |
宮浩一 |
新宮寺寛 |
泉田洋志 |
津路清子 |
小野彰子 |
石川冷 |
山川朔太郎 |
嵐寛寿郎 |
高村洋三 |
晴海勇三 |
信夫英一 |
西一樹 |
鈴木信二 |
北村勝造 |
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★★★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
5 |
3 |
4 |
4 |
4 |
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恩師の娘幸子(三ツ矢歌子)と婚約が決まり、幸せの絶頂にあった清水四郎(天知茂)。だが、まさにその夜を境として彼の前には絶望が待ち受けていた。彼の級友田沼(沼田曜一)の運転する車がヤクザをひき殺し、良心の呵責に耐えかね、警察に行こうとする四郎と幸子の乗るタクシーが事故を起こし、幸子が死んでしまう。しかも彼の両親が経営する養老院である天上院では母がいましも死のうとしていた。しかもどこにでも現れる田沼のお陰で四郎の精神は壊れかかる。そして最後の時が来る…天上院の全ての人間が毒によって死に絶える時、地獄の門が開く…
この作品はジャパニーズ・カルト映画として前々から噂に聞いていた。それにDVDが出ていることも知ってはいたが、なかなか購入には踏み切れなかったが、たまたま少し前に監督のもう一つの代表作『東海道四谷怪談』を観ることが出来た。その出来が実に素晴らしかったので、ついに購入に踏み切る。
東宝から分かれて出来た新東宝は会社が潰れる寸前にキワモノ映画を続発したそうだが、これもその一つ。確かに金はあんまり使われていないし、後半の地獄の描写はかなりチャチ。それでもそれをふき飛ばすが如き、イメージが凄い。
前半の現世での出来事は本当にこの世の地獄と言った描写で、これでもか、と言う程の不幸と毒々しさに溢れている。まるでメフィストフェレスのような田村の登場シーンは実にポイントを抑えているし、劣悪な環境の中、蠢く人々の群の描写は見事だった。結局誰も助かることなく死んでしまうという前半部のクライマックスは、まさに地獄絵図。これ程救いようのないストーリーを作ってしまうとは、ただ者じゃないな。
それでこの本題である後半の地獄のシーンだが、やはりちょっとチャチさが目立つし、ストーリーに整合性が感じられないのがちょっと残念。明らかに作り物と分かると言う点はおいておくとしても、もう少し地獄の描写に連続性を持たせてみたら良かっただろうに。それでも青一色に塗られた地獄のイメージは凄いし(この映画では“悪”を描写する際は必ず青いライトを当てるのは面白い演出方法)、嵐勘十郎演じる閻魔大王は大迫力。むしろその安っぽさが見せ物小屋っぽい毒々しさにもなってるのだから、それも善し悪しか?
キャラを見ると、主人公役の天知茂は学生服が見事に似合わない(ついでに言うなら沼田曜一も)。二人とも時代劇向きの顔をしているので、ちょっと違和感を感じる。多分『東海道四谷怪談』での伊右衛門役の見事なはまり具合のイメージが強すぎるんだろう。一方、二役をこなした三ツ矢歌子は清楚な役を上手くこなしていた。
それとこの作品を語る上では小道具の使い方の巧さも特筆すべきだろう。幸子が常に持っていた傘が最後まで目を惹くように出来ているし、天上院を舞台とした時に幾度となく登場し、その違和感をいやが上でも増す機関車の音と線路描写。まるで現世における三途の川のようだ。
結局本作は見所のはずの後半よりも前半の方が面白いという不思議な作品になっていた。
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