読書日誌
2009’10〜12月

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09'12'30 20世紀少年6 (著)浦沢直樹 <amazon>
 カンナのいる新宿歌舞伎町で起こった事件は意外な話の展開を見せ、カンナは警察の目から逃げざるを得なくなる。そしてその事件を追う蝶野もまた、”ともだち”の標的とされつつあった…
 新宿歌舞伎町を舞台に話が展開中。ケンヂや他の仲間たちがどうなったのかは今のところ不明ながら、紅一点のユキジは生きていた。それと、完全 に容貌が変わって、現在誰だかわからないが、”ショーグン”と呼ばれる囚人がいる。当然話は絡んでいくようだが、はてさてどう絡むやら。
20世紀少年(6)
09'12'27 ゼロ年代の想像力
宇野常寛(検索) <amazon> <楽天>
 2000年代に入り、日本人の思考思想もかなり様変わりしてきた。「新世紀エヴァンゲリオン」に代表されるポップカルチャーから、転換点となった「DEATH NOTE」として現代に至るまで、どのように思想は変化していったのか。そしてゼロ年代が生み出したものとは何か?
 著者は最先端の思想家と言われているが、本作については、東浩紀に対するアンチテーゼに溢れすぎていて、悪意しか感じられない部分もあり。ただ半分以上は同意できないとは言え、新しい視点を与えてくれたことには感謝しよう。この視点は今まで持たなかったから、もう少しこの手のサブカル論を読んでみたい。
ゼロ年代の想像力
09'12'25 餓狼伝24 (著)板垣恵介 <amazon>
 北辰館トーナメント出場者の前に現れ挑戦を続ける丹波。だがその行動は東洋プロレスのグレート巽を刺激してしまい、プロレスラー3人を相手にする羽目に。
 前巻ラストから話がようやく主人公へと戻ったが、まるで第1巻を彷彿とさせるような喧嘩屋となった丹波の姿が描かれていく。ただ、巻数が進んでいるだけあって、既に丹波は一流の格闘家として認められており、同時にかなり恐れられてもいる。そんな丹波が敢えてこの行動に出ているのは…結局グレート巽か松尾象山を引っ張り出すためなんだろうな。まっとうな物語展開でどこまでそれが描かれるやら。でもトーナメントはいい加減飽きていたので、この方が面白くはある。
餓狼伝 24
09'12'22 かがやけるまぼろし A君(17)の戦争4 (著)豪屋大介 <amazon>
 17歳となる小野寺剛士は高校生小説家としてそこそこ成功し、学校でも人望があり、更にほのかという公認の恋人もいる幸せな生活を送っていた。折しも天抜高校は学園祭の直前。運営委員長である剛士は毎日忙しく、そして充実した日々を送っていたのだが…
 いきなり話は別な方向性へと展開。しかもあり得ないような見事なラブコメ作品として。しかし、これは外伝ではない。かなり物語の本質に迫った物語ではないだろうか。伏線として、そして真実の一端を示すものとして。
A君(17)の戦争4
09'12'19 20世紀少年5 (著)浦沢直樹 <amazon>
 予言の書の通り、ケンジは9人の仲間を集め、“ともだち”に対抗しようとしていた。一方、予言の書に書かれている通り、20世紀最後に国会議事堂が壊され、巨大ロボットが出現する。更に世界全土が細菌テロにより、あたかも終末が来たかのよう。そんな中、ケンヂは…
 今まで登場していなかった、子供の頃のいじめっ子ヤン坊とマー坊が登場。いきなりIT会社の社長と副社長になっていた。そして話は急展開。い きなりの肩透かしっぽい物語が展開していく。20世紀最後の時、何が起こったかわからないまま、次の話ではケンヂの姪にして“ともだち”の娘カンナが17才になっ て、やっぱり喧騒を続ける新宿歌舞伎町で働いてる話…なんじゃこりゃ?
20世紀少年(5)
09'12'17 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン (著)リリー・フランキー <amazon>
 福岡で生まれ育ち、こどもの頃の数多くの引っ越し、一人での上京と就職まで、何も言わずひたすら息子のために尽くし続けたオカン。その想い出と共に綴る著者の半生記。
 映画が良かったので読んでみた作品。著者にとって本作は処女長編であり、そして初の自伝だそうだが、文体はよくこなれていて、何より母に対するストレートな愛情に溢れた話に仕上がっていて、素直に感心出来た。なるほど映画向きと言えれば確かに。
東京タワー
09'12'16 新仮面ライダーspirits1
村枝賢一 (検索) <amazon> <楽天>
 ZX誕生より10数年前。ショッカーによりバッタ男として改造された男本郷猛はショッカーの改造人間相手に孤独な戦いを強いられていた。そんな本郷に興味を持ち、取材を開始する一人の男。その名を一文字隼人と言う。本郷を調べる内、一文字は、彼が戦っているショッカーの秘密に足を踏み入れてしまい…

 連載場所が変わっての「仮面ライダーspirits」最新刊。新規巻き返しと言う事で、一旦これまでの物語は中断。改めて仮面ライダー達の、テレビでは描かれなかった過去を描こうとする試みとなっている。本作は「仮面ライダー」13話と14話をつなぐ物語となっているのが特徴。何故本郷がいなくなったのか、そして唐突に登場した仮面ライダー2号はどのようにして1号の意志を受け継いだのかに焦点が当てられている。「仮面ライダーspirits」で既出のオリジナル設定もきちんと踏まえて描かれているので、細かいところに色々配慮された好作と言えよう。しかし、これで全ライダーやってたら、それだけで数年はかかるぞ。腕千切られたアマゾンはそのまんま?
新仮面ライダーSPIRITS 1
09'12'13 謎の聖都 グインサーガ128
栗本薫 (検索) <amazon> <楽天>
 ヤガで半ば軟禁状態に置かれたヨナとスカール。逆にその立場を利用し、変貌したヤガで何が起きているのかを見極めようとする二人。ヨナは偶然からフロリーとイシュティの二人とめぐり逢うことには成功したものの、今度はヨナ故人を取り込もうとする勢力が立ちふさがる…

 もうほとんど後がない作品だが、いきなりヤガで大ピンチ。どうやらパロに続き、ここがキタイの次なる標的になっているらしい。一方、ケイロニアにもグラチウスがちょっかいを出しているように見える。盛り上がりかけている所なんだが。
<A> <楽>
09'12'11 月光条例7
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 月打された「フランダースの犬」のパトラッシュに襲われかけたネロを助ける月光たち。だが、その最中、多量の海水に飲み込まれてしまう。なんとこれまた月打された「浦島太郎」の乙姫が浦島太郎を追ってきたのだ。乙姫によると、玉手箱にこそ月打の力を消し去る秘密があるとのことだが…
 今回は短編二つを置いて、かなり変則的な長編ものになった。「フランダースの犬」と「浦島太郎」がクロスオーバーする話だが、それ以外にも鉢かづきとはぐれてしまった月光が、何故か使えるはずのない執行者の力が使えているとか、設定の根幹に入り込むような物語になってる。そういえば月光とトショイインは二人とも孤児なんだよな。その二人に敢えてコンビを組ませたのも理由がありそう。
 そういえば、「フランダースの犬」の主人公は、私が子供のころ読んだ本では「ネルロ」になってた。調べてみたら、本名はニコラスで、ネロは通称だそうだから、どっちでも良いらしい。
<A> <楽>
09'12'06 ロボット(U.R.U) (著)カレル・チャペック <amazon>
 孤島で全世界用に人造人間=ロボットを作り続けている会社R.U.R(ロッスム・ユニバーサル・ロボット)社に一人の女性がやってきた。ロボットに人権を主張する彼女ヘレナ。だが、彼女が人類とロボットの関係の変化を見守ることとなる…
 SFの古典として「ロボット」という言葉を作り出したことで歴史に残る作品。一応戯曲ものなのだが、出来としては今でも充分通用する内容であり、科学に対する警鐘も含まれる。ロボットの反乱が物語の骨子とはいえ、世界経済にもきちんと言及していて、スパイスが利いた物語だ。事実として現代はまさしくこの通りに進んでいるんだし…
ロボット
09'12'03 20世紀少年4 (著)浦沢直樹 <amazon>
 ケンヂが家を焼け出されてから数年。日本は“友達民主党”なる政党が大きな力を持ち始めていた。そのころ、タイで用心棒のようなことをして暮 らす元ケンヂのクラスメート、オッチョは知り合いの女性が殺されたことで厄介な事件に首を突っ込んでいた。そんな時、国際電話でケンヂから「帰国してく れ」と懇願される…
 ケンヂが完全に巻き込まれてしまい、その後大変な生き方をしていることが示されたが、同時にクラスメイトにもそれに負けず劣らず数奇な生き方をしている人間が一人いたことが分かった。しばらくはこの二人が主軸となって物語を動かしていくっぽいな。
20世紀少年(4)
09'12'02 きらめく映像ビジネス (著)純丘 曜彰 <amazon>
 映画の誕生から100年。様々なプラットフォームで映像は作られ続けている。そしてそこには、必ずビジネスが存在する。様々なジャンルの映像世界で、どのようにビジネスが成り立っているのか。その視点から見た映像論。
 映画と言うよりは、テレビ番組がどのようなビジネス展開をしているのか、と言うのが話の中心だが、これはこれで多くの参考にはなる。多少裏話的な部分もありだが、それも含め、どのように利益が出ているのか、的確に書かれている。
きらめく映像ビジネス!
09'11'30 関の弥太っぺ (著)小林まこと <amazon>
 喧嘩っ早くて義理堅いやくざ者弥太郎、通称“関の弥太っぺ”が、舎弟の森助を救うために工面した金五十両。だが、それを盗人に盗られ、行きがかり上盗人の娘の面倒を看る羽目に。しかし二人の運命は巡り巡り…
 大衆文学の巨匠と呼ばれる長谷川伸原作の「関の弥太っぺ」を著者のオールスターキャスト出演で劇画化。特にこの話は「国定忠治」や「まぶたの母」と並ぶ大衆演劇の定番(ちなみに東三四郎として「まぶたの母」の馬場の忠太郎も特別出演してる)。
 著者の作品の大半は保有している(あるいはしていた)事もあり、懐かしい顔がどんどん登場しているのがとても楽しい作品。主人公が三五十五って事もあり、中心は「柔道部物語」。著者のガチの格闘作品を又読んでみたくなるな。
関の弥太ッペ
09'11'26 オリジナル・サイコ (著)ハロルド・シェクター <amazon>
 アメリカ史上最悪と言われ、派生した映画は数知れぬシリアル・キラー、エド・ゲイン。彼がいかにして犯罪者となり、どのように死んでいったのか、そして彼が及ぼしたアメリカ社会への影響を考察した作品。
 前に「冷血」を読んだこともあって、ドキュメンタリーよりもセンセーションの側に偏った作風はやはり今ひとつって感じはあるが、それでも未解決の部分も含めエド・ゲインという人物の生涯についてはかなりよく分かった。それだけでも成果か。
オリジナル・サイコ
09'11'20 20世紀少年3 (著)浦沢直樹 <amazon>
 突然“救世主”にされてしまったケンヂは、どうすればいいかわけの分からないまま、「ともだち」の主催するコンサートへと向かった。そこで「とも だち」と会うことはできたものの、すべてはぐらかされ、更には次なるテロの標的を喋らされてしまう。なんとか「ともだち」の正体を知ろうとするケンヂだ が…
 どんどん不穏になっていくケンヂの周囲。「ともだち」はケンヂの姪カンナの父親だと名乗り、更に何者かの襲撃を受けてケンヂのコンビニは燃やされてしまう。いったい何がどうなってるのか、いまだによく分からないままだけど、キャラも増え、話はどんどん大きくなって来つつはあり。
20世紀少年(3)
09'11'18 追憶の夜 (著)山上たつひこ <amazon>
 金沢の私立探偵成瀬は23年前の誘拐殺人に関わる依頼を突然二つ受けた。被害者倉根の息子からは、両親が加害者支援団体に接触し始めたことに対して、その真相を。一方は加害者菊池の娘から、事件の後になって家庭を支援してくれた人物の居場所を探すようにと。しかし、事件を調べ始めた成瀬は意外な真実を知ることに…
 「がきデカ」の頃の漫画家の著者しか知らなかったので、一隊どんな小説を描くのか?と思って読んでみたが、意外なしっかりした構成に驚かされた。しっかり社会派的視点もあり、よくこんなものを描いたものだと感心出来る出来に仕上がっている。
追憶の夜
09'11'17 20世紀少年2 (著)浦沢直樹 <amazon>
 ケンヂの子供のころの友人ドンキーが死んだ。それが自分たちが子供のころに作ったマークとかかわりを持つことを知ったケンヂたちは、不気味に 思いつつ、かつての仲間たちと接触を持つ。だが何の手がかりもないまま日々をぐだぐだと過ごすばかり。一方、世界には更なる混乱が起ころうとしていること も何も知らずに…
 まだまったく話の糸口はつかめてないまま。ただ、ケンヂの同級生の一人が「ともだち」である可能性だけは示唆されている状態。そして子供のこ ろ、彼らが考えていたヒーローものの物語に沿って「ともだち」が動いていることも。そして突然ケンヂの目の前で死んだ人間が、ケンヂのことを「偉大な予言 者」と呼んでいるが、これもどう話がつながるのかは分かってない。
20世紀少年(2)
09'11'15 ウェットウェア (著)ルーディ・ラッカー <amazon>
 コッブによるバッパー(サイボーグ)の反乱より10年。月は再び人間の手に戻った。だが地下に逃れた機械達は再び覇権を握るべく計画を着々と遂行していた。そんな月にいる今はしがない探偵スタアン・ムーニィ(ステイ=ハイ)の元に、人間をドロドロに溶かしてしまう麻薬“マージ”の開発者ユカワ博士から人捜しの依頼を受ける…
 「ソフトウェア」の正統な続編。「ソフトウェア」自体読んだのが20年前で、あまりにイカレた設定だったが、この話も又とにかく変な作品になってる。主人公が入れ替わり立ち替わり、陰謀が渦を巻いて、その内いつの間にか話が終わっていた。80年代のSFとは、こういうものなんだろうな。
09'11'14 ジパング42 (著)かわぐちかいじ <amazon>
 角松の命を助けた代わりに大和の爆発に巻き込まれ、海底に沈んだ草加。そして“みらい”も又、米艦隊の攻撃を受け、ついに撃沈されてしまう…ただ一人生き残った角松だが…
 あれ?大和の原爆がクライマックスだとばかり思っていたのだが、実はその先があった。これだけでも充分意外なのだが、あれだけ草加を嫌っていた角松が、草加の言葉に従いそうな話の展開がますます不可解。みらいも無くなってしまったし、いったいこの話はどこに向かっていくのやら?
ジパング 42
09'11'10 どおまん・せいまん奇談 (著)荒俣宏 <amazon>
 鳥羽の町おこしに風水を名所に加えたいという連絡を受けた風水師の黒田は観光がてら賭場へと向かった。しかし、そこでは折しも九鬼家の宝と言われる真珠の盗難騒ぎが起きており、更に九鬼の秘密を明かすと昭司、胡散臭い目崎という学者が活動していた。一体ここで何が起きているのか。そして九鬼が残した秘密とは…
 ミステリーをベースに紀行、妖怪、乱歩までもが乱れ飛ぶ。実にサービス精神豊かな作品で、著者の知識の幅は相変わらずとても面白いのだが、一方物語の方はまるで駄目。この著者元々が小説家じゃないんだよな。蘊蓄を読むつもりだと良いんだけどね。
どおまん・せいまん奇談
09'11'05 餓狼伝23 (著)板垣恵介 <amazon>
 プロレスラー長田を下し、優勝を手に入れたはずの姫川だったが、その前に姫川を仇と狙う藤巻が現れる。余裕の外見をかなぐり捨て、戦い合う二人の決着は。そして松尾象山が戦うのは…
 とにかく長々と続いた北辰館トーナメントもようやく決着。ただ、真の意味での決勝戦が行われないまま終わってしまうというのは、かなりあっけない幕切れだった。ここまで引っ張ってきたのは何のため?
 それでも本巻の後半からは主人公丹波がようやく主体になってきた。以降がラストストーリーとなるのならば、松尾象山との戦いがクライマックスとなっていくのか。しかし、いつまで続くのかが全く分からないからなあ。
餓狼伝 23
09'11'04 ライジング・サン (著)トム・クランシー <amazon>
 ロスにある日本企業ナカトミの巨大ビルが完成し、その落成記念の日にパーティ会場のすぐ上の階で一人の女性が殺されたLAPDの渉外担当官ピーター・ジェイムズ・スミスはナカトミからの直接の名指しでその担当に当たることとなった。しかし、日本人相手の交渉は思ってもみない障害ばかりで、ピーターは前任の担当官ジョン・コナーに助けを求めるが…
 一応ミステリーの体裁は取っているが、内容はモロに日米摩擦について。80年代後半日本がバブルに浮かれていた時代のアメリカの様子が描かれている。日本人としては苦笑いするしかない内容とは言え、今不況のどん底にある日本経済と較べると隔世の感がある。
 巨匠フィリップ・カウフマンによって映画化
09'11'01 20世紀少年1 (著)浦沢直樹 <amazon>
 昔秘密基地を作って遊んでいたケンヂ、マルオ、キンちゃん。21世紀を迎えようとしている今、それぞれが家業を継ぎ、現実と戦っていた。そん な中、地球はさまざまな意味での危機を迎えつつあり、その救世主として崇められている存在があった。“ともだち”と呼ばれるその存在が自らのトレードマー クとしている模様。それはケンヂたちが子供の頃、秘密基地で作ったものと同じだった…
 PLUTOに続き、又同じ著者の作品を選んでしまった。
 小さな町でのありきたりな日常と、世界規模の災厄とが混在している世界。1巻の現在、それはまったく接点を持たず、独自の展開を見せている。 今のところこの二つの世界をつなぐのは不思議なマークと、アームストロングが月面着陸したときの台詞のみだが、これが果たしてどこまでつながっていくこと やら。ただ、これ読んでると、昔私自身がすごしてきた少年時代をなんとなく思い出させてもくれる。
20世紀少年(1)
09'10'30 新・野生の証明 (著)森村誠一 <amazon>
 著名な小説家武宮が主催する小説教室の夏合宿に参加した小説家の卵達。ところが合宿の開催地である孤島に一人の女性が流れ着いたことから、武宮を含むメンバーの人生は大きく変わっていく。記憶喪失で名前しか思い出せないというその女性八橋しぐれが持つ秘密の過去とは?そして彼女の持つ特殊な技能の秘密とは?
 偶然みかけて、あの「野生の証明」の続刊か?と思って読んでみたのだが、内容はすごいもんで、いつの間にか話が超常能力者同士のバトル小説になっていた。これほどオリジナルからかけ離れた新作ってのも、ある意味凄いと思う。しかしこの年齢でこんな中二病ばりばりの作品を描くとは、まだまだ著者って心が若いんだな。
新・野性の証明
09'10'29 PLUTO プルートウ8 (著)浦沢直樹 <amazon>
 エプシロンの死と共に目覚めたアトム。だが、目覚めたアトムはすぐさま地球をも一瞬で破壊するという反陽子爆弾の設計図を書き上げてしまう。一方、アブラーによって誘拐された天馬博士は恐るべき事実を口にしていた…
 プルートゥ以外にゴジという名前が何度か出てきたのだが、実はその名前は大変重要な意味を持っていた。そして何故7対のロボットを憎んだの か。結局プルートゥという存在は一種のトリックスターであり、彼が7体のロボットを倒す事自体は、あまり意味を持っていなかったということが分かる。しか し、そのトリックスターこそがが結果として世界を救うきっかけを作る。なかなか物語が進まないと思っていたけど、いろいろな意味で相当な情報量が入っている話 だった。ラストシーンの皮肉っぷりも60年代のマンガを思わせて良し。良い作品。
PLUTO 8
09'10'27 火星の虹 (著)ロバート・L・フォワード <amazon>
 惑星開発が進んだ未来。オーガスタとアレクサンダーという双子の進む道は全く異なったものだった。ガスは火星開発の科学者として。アルは軍人としてそれぞれのエキスパートになっていったのだが、地球で成功したアルはやがて合一教という宗教の教祖となり、世界を支配するように。遠い火星から、苦々しくその活躍を見守るしかないガスだったが…
 傑作「竜の卵」を書いた著者が80年代に書いた物語。物語そのもののの出来はさほどじゃない。と言うか、はっきり言って駄目な部類だけど、一見無関係に見える事項がラストに向けすぱっとはまっていく過程を充分に楽しむことが出来る。SFの醍醐味の最も深いところを味わえる作品とは言えるだろう。
09'10'22 西原理恵子の太腕繁盛記 FXでガチンコ勝負!編 (著)西原理恵子 <amazon>
 FXで一山当てよう。その言葉に流され、自らも資金を投入。FX会社の宣伝として描いた、著者のFX顛末記。
 実はこのWebマンガは私の巡回コースの中に入っていて、一応全部読んでいたのだが、サブサプライム問題の直前にFXを始めたと言う、かなりとんでもないチャレンジだけに、結果は当然のごとく。それより、負けっぱなしのことを書き続け、よくそれで宣伝と言えたものだと逆に感心してしまう(ちなみにこの会社FXキングはあっという間に潰れた)。
 さらに凄いのは後半の方で、下品さを更にアップさせ、到底絵に描けないようなセリフをばんばん言わせ、折角「毎日かあさん」で転身した国民的漫画家生活を見事に打ち砕いて見せた。ここまでやればいっそ立派だが、堂々と「エロは金になるんだよ」と言わせた辺り、古いファンとしては、「よくやってくれた」と褒めたいところでもある。
太腕繁盛記
09'10'20 卒業 (著)チャールズ・ウェッブ <amazon>
 大学を好成績で卒業し、実家に戻ってきたベンジャミン。周囲の人々は彼に大きな期待をかけていたが、本人は何をする木にもなれずにいた。そんなベンジャミンに声をかけたのは父の親友ロビンソンの妻だった。つい彼女の誘いに乗ってしまったベンジャミンだが…
 映画原作。これで驚かされるのが、あの映画が本当に原作に忠実に映画化されていたということだろうか。改めて映画の出来は素晴らしいと思える。しかし、モラトリアムでストーカーが主人公の話という設定は、やっぱり呼んでいて結構きついものがあり。どうもこの手の主人公には反発するタイプなので、映画の方も当初は全然楽しめなかったんだな。
卒業
09'10'19 PLUTO プルートウ7 (著)浦沢直樹 <amazon>
 世界最高の高性能ロボットが次々に殺され、残ったのはエプシロンだけとなった。戦うことを拒否し、孤児院で子供たちを世話するエプシロンだが、当然ながら彼の近辺にも不穏な空気が流れてきていた。
 これまで体のほんの一部分しか登場してなかったプルートゥの全身が始めて登場。そしてそのプルートゥをさえあっという間に組み伏せる性能を持ったエプシロンとの戦いとなるのだが、結果はあっけなさ過ぎる。
 今ようやく気がついたが、そういえばアトムの妹ウランは御茶ノ水博士が作ったんだっけ。そうすると、どうやって兄妹と認識してるんだろう?
PLUTO 7
09'10'18 所有せざる人々
アーシュラ・K・ル=グウィン (検索) <amazon> <楽天>
 二重惑星アナレスとウラス。長い歴史を持つアナレスから170年前、完全共産社会を目指したオドー主義者たちがウラスに植民し、過酷な自然環境の下、何とかかんとか生きていけるだけの社会を作り上げていた。この二つの星は以降ほとんど接触を持たずにいたのだが、ウラスに生まれた一人の物理学者シェヴェックが招かれ、アナレスに足を踏み入れる…

 「闇の左手」に続き、ヒューゴ賞とネビュラ賞を同時受賞した作品。しかし、これは本当にすごい作品だった。アイディアの元はおそらく、仮にヒッピーが安定した社会を作り出したらどうなるか?という観点でなかったかと思ったのだが、内包するメッセージ性、SF的設定、共に素晴らしく、その分読み切るには時間がかかった。
 先を読みたいのに、内包されるエネルギーが高すぎて読み進められないという作品を本当に久々に読んだ気がする。今年のナンバー・ワン作品となるのは間違いなかろう。
<A> <楽>
09'10'17 黄石公の犬 闇狩り師
夢枕獏 (検索) <amazon> <楽天>
 熊本にある町に犬を連れたホームレス風の男が現れた。その男と一緒にいる犬の前で望みを語ると、それは叶ってしまうと言う噂が立つようになる。そんな時、この町のダム建設に反対する男が事故死した。その男の妻は、その後「お犬さまに会いに行く」と言って家を出たが…
 「闇狩り師」シリーズの最新作。と言っても前巻が出たのがもう20年も前の話。主人公の九十九乱蔵自信はあくまで祟りを落とすという役割から外れてないので、どっちかと言えば短編向きの作品なのだが、著者が書くと相変わらず長くなってしまう。
 そう言えば次々に原作が漫画化されているが、乱蔵の話も現在「COMICリュウ」にて展開中。丁度これに合わせたかな?
<A> <楽>
09'10'16 月光条例6
藤田和日郎 (検索) <amazon> <楽天>
 次に月打されたのはあかずきんちゃん。だが、その行動には一貫性が見られ、特定の人間を殺すために動いているようだった。その事にいち早く気づくトショイイン工藤だが、相棒のイデアはそんなことお構いなしに月光条例執行を執り行おうとする。だが、そんな彼らを突然現れた月光が邪魔をする…
 主人公が変換し、一巻まるまるトショイインの視点で描かれた話になった。でもこの方が月光の考えとかが分かってくるので、かえって物語としてのバランスはこちらの方が取れているようだ。鉢かづきとかエンゲキブは割食って全然存在感無くなっちゃったけど。
 著者の言葉でこの物語はそんなに長くないとか書いていたが、一体どの程度の長さになるのやら。
<A> <楽>
09'10'14 ナニワ金融道 ゼニの実学 (著)青木雄二 <amazon>
 いくつもの職を転々とし、デザイン会社の経営中に描いたマンガ「ナニワ金融道」で大当たりを出した著者が、自らの職歴や多くの人々との交流を通して得た金の哲学を多くの事例を紹介しつつ考察する。
 ここに書かれているのは、一攫千金でもなければ簡単に金持ちになる方法でもない。基本的に「金持ちの才能がない人間は地道にやるしかない」という身も蓋もない論理。しかし、考えてみると、これが一番分かりやすい真理だろう。本気で金儲けをしようと思うのなら、金儲け自体を目的とし、全てを犠牲にする覚悟をしなければならない。ということ。かえってこれは参考になるな。
ナニワ金融道ゼニの実学
09'10'13 PLUTO プルートウ6 (著)浦沢直樹 <amazon>
 謎の破壊者の居所を求めてゲジヒトは世界中を飛び回り、ペルシアのアブラーという科学者がプルートゥを作り出したことを直感する。そしてプ ルートゥこそが、アブラーが平和利用のために作り出したロボット、サハドのなれの果てであることを。しかし、それを知ったゲジヒトは、もう捜査から下りる と言い始め…
 この物語の主人公だったゲジヒトが死んだ。死ぬとしても最後の最後かと思っていただけに意外な展開だが、話がまとまっているのか、それともさらに拡大しているのか判断がつかない。この事件そのものに天馬が何らかのかかわりを持っているようではあるのだが…
PLUTO 6
09'10'12 後白河院 (著)井上靖 <amazon>
 平安時代も末。保元・平治の乱を経て天皇位、上皇位に就いた後白河天皇の数奇な運命を、それぞれの時代彼に仕えた四人の側近の筆で描いた伝記小説。
 それぞれ主人公は後白河天皇/上皇なのだが、近くにいても声の聞けるほどの近さではない人物ばかりを著者に見立てているので、本当に彼が何を考えていたのか分からないように描かれているのが特徴。このもどかしさが小説ならではの面白さだろう。
 それにしても、改めてこうやって読んでみると、この人は本当に激動の時代を生きて、歴史に関わった人だと言うことが分かる。
後白河院
09'10'10 ジパング41 (著)かわぐちかいじ <amazon>
 原爆爆破のカウントダウンが続く中、角松は“みらい”にトマホークミサイルを撃つように仕向ける。一方、そんな角松の命を救った草加。トマホークミサイルと米艦隊が迫る中、二人の運命は…
 冒頭部分で角松が原爆阻止は自分のエゴであると漏らす衝撃のシーンから開始。そしてそれを嘘と知りながら、角松の思いを受けて当初の予定通り トマホークを撃つ艦長代理の麻生。相当に話は厳しいものとなっているが、すでに原爆は無用にされたも同然。ここからの展開がかなり面白いものになってき た。引っ張った分、話に重みが出ているのは確かか。
ジパング 41
09'10'09 インストール (著)綿矢りさ <amazon>
 インストール:突然何もかも投げ出したくなった朝子は高校にも行かなくなり、部屋の荷物全部を捨ててしまった。そんな彼女がゴミ捨て場で出会ったかずよしという小学生。かずよしに誘われ、古いコンピュータを使ってあるアルバイトを始めるのだが…
 You can keep it:自己防衛でつい友人に何でもあげてしまう城島。そんな彼が大学の同級生彩香が気になり始める。
 インストールの方は先に映画を観ていたが、やっぱりこれは小説という題材だから良い作品なんじゃないかな。映像にしたら陳腐になってしまう作品ってのも確かにあるものだ。するっと読める割には、不思議な余韻が残る作品だった。
インストール
09'10'08 ターザン (著)エドガー・ライス・バロウズ <amazon>
 アフリカ通商正常化のためイギリスから派遣されてきたグレイストーク夫妻。だがその船は乗組員に乗っ取られ、夫妻は名も知れぬ海岸に取り残されてしまう。やがて二人の間には男の子が生まれ、ターザンと名付けられた。類猿人に育てられ、ついには部族の長にまで成長するターザン…
 ターザンというと、どうしても映画やメディアの方を思い出し、アフリカでの単純な物語と思えてしまうが、原作は随分趣が違う。なんとターザンの方が文明化してフランス経由でアメリカまで行ってしまう。意外と言えば意外な展開だった。
09'10'06
ジパング40 (著)かわぐちかいじ <amazon>
 ついに大和内の原爆の起爆装置が作動。そんなときに原爆格納庫に降りてきた草加に対し、角松は最後の交渉を試みる。原爆をこのまま起爆させるわけには行かないと、あくまで強気のカードを切る角松に対し、草加の採った方法とは…
 話はやはり膠着状態。方法としては、無人となった、あるいは角松と草加を乗せたまま、“みらい”がミサイルによって大和を撃沈してしまうか、 それとも“みらい”の攻撃を受けぬようにして、米軍のただ中で大和積載の原爆を爆発させるか。角松と草加の二人のどちらが本当のイニシアティブを持ってい るのかわからない状態で、話は展開中。物理的精神的に結構複雑な様相を呈するようになってきた感じだ。
ジパング 40
09'10'04 たたかいのさだめ A君(17)の戦争3 (著)豪屋大介 <amazon>
 ランバルドとの戦いで徹底的に痛めつけられた魔王領。その後始末に追われる剛士だが、国力が疲弊しきったその状態で、剛士はなんと激減した魔王軍の総力を挙げランバルドへ攻め込むよう命じるのだった。一方、ランバルドに捕らえられた元魔王田中さんは日夜メイドさんたちをこき使い、同人誌制作に余念がなかった…
 話はどんどんシリアスかつ複雑な方へと向かっているのだが、一方の登場人物の方は、色々な意味で青春真っ盛りと言った感じ。裏の設定で色々動いているようだが、表の部分だけでもかなり読ませてくれるので、かなり楽しいものに仕上がっている。
新装版A君(17)の戦争3
09'10'03 PLUTO プルートウ5 (著)浦沢直樹 <amazon>
 突然機能を停止してしまったアトムの元に向かった生みの親天馬博士はアトムを「死んだ」と言い放つ。一方ゲジヒトは自らを殺そうとしていたアドルフを守る任務を 遂行するため、自らの過去と再び向かい合っていた。そして戦うために生まれたロボット、ヘラクレスは謎のロボットと戦う用意を着々と進める。
 話 が三方向に分かれた分、やや動きが少ない回で、アトムは死んだ状態のままプルートゥは着々と目的を果たし続けていると言った感じ。そしてリストにあったヘラクレスも又、プルートゥに破壊される。この作品の主人公はゲジ ヒトになるのだと思うのだが、このロボットがはたして過去本当に人間を殺したことがあるのかどうか。という一つの謎に決着はついた。そしてロボットが“憎 しみ”の感情を覚えた時、どれだけ恐ろしいことが起こるのかも。プルートゥにまつわる話も、これがどうやら伏線になっていそうだ。
PLUTO 5
09'10'02 ラッフルズ・ホテル
村上龍 (検索) <amazon> <楽天>
 ヴェトナム帰りのカメラマン狩谷俊彦は帰国後実業界で成功していたが、心に満たされないものを感じ続けていた。そんな彼に「自分の写真を撮ってくれ」とモデルの本間萌子という女性が尋ねてきた。生きること全てが演技だという彼女に振り回される狩谷だが…
 同名映画のノヴェライズ化だそうだが、これを映画にすると作品自体が陳腐化してしまうのでは?という危惧さえ持たせる実験的な作品に仕上がっている。薄いくせに複数視点の導入でとにかく読みにくい。これを読み応えと見るか、単なる物語上の難点と見るかは読み手側に委ねられるだろう。
<A> <楽>
09'10'01 はじめの一歩89
森川ジョージ (検索) <amazon> <楽天>
 死闘を演じた宮田対ランディ戦の試合後、鴨川ジムではしばしの休息の時に入った。そんな時に始まった間柴はライト級の東洋太平洋チャンピオンベルトをかけて復帰戦を行うことに。同時に板垣もA級トーナメントに向けて着々と実力をつけていた…

  とりあえず大きな試合が終わったらしばしの日常。というのがパターンとして決まっているが、主人公の一歩自身が何もしないまま休息に入ってしまうのは、も はや巻数稼ぎとしか思えないのが何とも。少なくともあと一戦か二戦しないと一歩も世界を相手にできないわけだから、もう少しスピーディーにしないと、あっ という間に数年経ってしまいそう。特に他のキャラがどんどん実力付けている最中だけに、話がもどかしくなってる感じ。
<A> <楽>