キクとイサム |
1959ブルーリボン作品賞、主演女優賞(北林谷栄)、脚本賞
1959キネマ旬報日本映画第1位
1959毎日映画コンクール日本映画大賞、脚本賞、女優主演賞(北林谷栄)、演技特別賞(高橋恵美子、奥の山ジョージ) |
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角正太郎
伊藤武郎(製)
水木洋子(脚)
高橋エミ子
奥の山ジョージ
北林谷栄
三国連太郎
織田政雄
多々良純
三井弘次 |
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★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
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会津の田舎、しげばあさん(北林谷栄)の家に引き取られた混血児の二人のこども、姉のキク(高橋エミ子)と弟のイサム(奥の山ジョージ)。貧しい家や、村のこども達の意地悪もどこ吹く風で二人は腕白に育っていった。しかしある日アメリカの家庭で二人のうちの一人を養子縁組に引き取るという話が舞い込んでくる。ついにイサムが引き取られることとなり…
戦後、連合軍統治下の日本では混血児の問題が浮上していた。それに対し、数こそ少ないながら色々と働いた人もいたのだが(元華族の沢田美喜が私財を投げ打って孤児院を作ったのは有名だが、日本以外の国からも色々と援助の手はさしのべられた)、戦後、復興期もまだの日本では混血児絡みの事件は数多く起こっていた。誰にも望まれずに生まれてきた子供の悲惨な話は枚挙に事欠かない。
ただ、それを悲惨なだけに考えるのではなく、そこで強く育ったこども達も数多くいるのは確かな話。本作はそんな埋もれてしまう歴史の一コマを切り取ったような作品となっている。監督の今井正は戦前からこういった作品を数多く撮っていることで定評のある監督で、本作は戦後になって本当に自分の作りたいものを作れると言った雰囲気に溢れた作品に仕上がっている(監督は本作でなんと3回目のキネマ旬報賞、ブルーリボン賞、毎日映画コンクールの主要3賞の作品賞を独占している)。
ただ、私にとっては本作を初めて観た時期が悪かった。何せ私の故郷を舞台にした作品であり、しかも人類愛に溢れた作品だって事で、中学の時に学校で上映して強制的に観せられたのである。
こんな暗い、しかも古い作品を観て、「面白い」と言える中学生が一体何人いると思うのだ?
しかも強制的に感想文を書かされ、歯の浮くような感想を書いてしまった自分も嫌だ。それだけに良く覚えてるよ。
多分今観たら随分印象も変わってくるだろう。そう言った施設で働いている人や、今も社会運動のために一生懸命活動している人に多くの知り合いが出来たし。それに自分自身もそう言った施設には行く機会が多いし…
ただ、映画単体として観ると、演技を学んでないこどもを出すことで、どうしてもたどたどしい印象があるし(主役二人は脚本家の水木洋子が自ら探し出した素人)、社会問題をあまりにも前面に出しすぎたため、エンターテイメントとしては見られなくなってしまった。社会問題に対して戦う姿勢を前面に出したと言うことで評価されたんだろうが、物語自体の完成度はさほど高いとは思えない。致し方ないのだが、偽善的な意味で心地悪い気もする。私の皮肉な性格が災いしてる。
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