空想科学任侠伝 極道忍者 ドス竜 1990 |
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真木太郎
松山仁
高貴準三(製)
芹沢大助(脚) |
大槻ケンヂ |
松井哲也 |
キューティー鈴木 |
新小田悦子 |
尾崎魔弓 |
古谷一行 |
安岡力也 |
村松克巳 |
林家こぶ平 |
梅垣義明 |
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★★ |
物語 |
人物 |
演出 |
設定 |
思い入れ |
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ドス竜(書籍)永井豪 |
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江戸時代から続く暴力団組織忍道家は、組の危機に必ず現れるという忍者集団天部衆の助けにより、今や関東一円の暴力団を束ねる大きな組となっていた。そして現代、5代目組長(古谷一行)は、娘のしのぶ(新小田悦子)に6代目として跡を継いでもらおうとしていたのだが、そんな折りもおり、日本制覇を企む乱獣寺組が次々と忍道組の組員を血祭りにあげ、ついには忍道組組長を刺殺。更にしのぶをさらってしまう。その危機に敢然と立ち向かうは天部衆からやってきた三人の忍者、鈴鹿八耐(松井哲也)、くノ一の猿渡ジュン(キューティ鈴木)、そして忍道組の下っ端組員を表の顔とするドス竜(大槻ケンヂ)だった。
漫画家永井豪による初監督作品。更に歌手の大槻ケンヂが主演という事で、前々から興味があった作品だったが(大槻ケンヂの著作「新興宗教オモイデ教」(書籍)の後書きは永井豪が漫画書いてる)、たまたま近所のレンタルビデオで発見。当然借りてきた。
ちなみに大槻ケンヂはエッセイ集「わたくしだから」(書籍)でこの作品を称してるが、これが又、爆笑もののレビューで、なにせ自分自身で「総てにおいて破綻をきたした怪作なので、説明しようにも十分にストーリーを把握できていない」とかぬかしてるし。
…はっきり言ってしまうと、そのレビューそのものの方が面白かったと言う妙な作品で、作品自体はほとんど“金遣った高校生の自主製作ビデオ”の感覚。登場する面々が結構真面目に演じてるだけに、なんかとても痛々しいというか、力が抜けるというか…
先ずこれは忍者の描写が凄い。スパナをつなぎ合わせた手製のヌンチャクを使う鈴鹿八耐こと、松井哲也はそこそこアクションもこなして良いとしても、ピッチピチの服を着て足にはリングシューズ、背中に巨大なブーメランを背負う猿渡ジュンこと、キューティ鈴木の格好は、どこが忍者だ?と言うレベルだし、一応黒ずくめで最も忍者っぽい格好してるドス竜こと、大槻ケンヂの場合、胸にでかでかと真っ赤な「忍者」の文字が刺繍されてるし…本気でこれをスタッフは忍者と主張するのか?
前半の物語はしのぶと、しのぶに振り回される情けない下っ端組員のドス竜(の表の顔)の妙なラブコメ風の物語が展開し、その裏で生皮を剥がされたり首を斬られたり、ボウガンで射殺される組員達のスプラッター風味の凄惨な事件が並行して出てくる…何というか、この路線、根本的に間違ってないか?
それで中盤以降、古谷一行を殺した乱獣組長の安岡力也が顔面ドアップのド迫力で迫ってくるようになり(?)、妙に暑苦しい画面描写に変わっていく。まあ、この辺は多少演出は変なものの、一応任侠ものっぽくなってくる(ドス竜が自分の使命を自分自身に言い聞かせるあたりの演出は高倉健っぽくもあり)。
それで後半。三人の忍者が乱獣組に殴り込みをかける、いわばクライマックスだが…これが凄まじい。忍者を名乗ってるくせに正面突破だし、しかも待ちかまえていたとしか思えない乱獣組の組員が正門からわらわらと湧いてくる。こいつらを次々にぶち殺しながら、まっすぐに突っ込んでいく三人。鈴鹿八耐だけがまともにアクションをしていて、ドス竜は突然組長の部屋に現れるし、猿渡ジュンに至っては、乱獣組の用心棒(?)尾崎魔弓と出会った次の瞬間、体育館のような倉庫の特設リングにプロレスを始めてしまう…このプロレスシーンが又延々と続き、最後は尾崎魔弓のバックブリーカードロップで猿渡ジュンは死亡…マットの上でしょ?痛そうに見えないんですけど。
で、突如異世界の怪獣と化した乱獣組長と戦いを始めるドス竜。この辺の特撮が大変チープながら、永井豪らしくグロテスク。ドス竜は肉体を変形させつつ(筋肉隆々のスタントマンを使ったため、場面場面で体格がまるで違ってる)、なんとかその怪物の首を斬る。更にその切り離された首がうねうねと蠢きながらしのぶを襲い、それを相手に格闘するドス竜…本人の言では、「大槻がタコのぬいぐるみを抱いて一人芝居をしてるだけの特撮レス」。なんか『怪物の花嫁』(1955)のベラ=ルゴシを彷彿とさせる。
それで最後、何の脈絡もなく乱獣組の建物(どこぞの学校のようにしか見えない)からUFOが飛び立ち、「お、お嬢さん。われわれは宇宙人の地球侵略を阻止したのかも知れません!」と驚くドス竜のカットで終了。
…ある意味、ここまで凄まじいと、すがすがしさまで感じさせてくれるほどで、ニヤニヤしながら観ることが出来た(覚悟していたのは強みだったな)。
もしレンタル店で発見したら、是非ご覧になって欲しい。勿論最初から「こんなもんだ」と言う事を念頭に置いて。それと、出来れば大槻ケンヂのエッセイの方を先に読んでいただけると、ますます楽しめるはず。
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