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江戸川乱歩

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大正から昭和期にかけて主に推理小説を得意とした小説家・推理作家である。また、戦後は推理小説専門の評論家としても健筆を揮った。実際に探偵として、岩井三郎探偵事務所(ミリオン資料サービス)に勤務していた経歴を持つ。
本名は平井 太郎(ひらい たろう)。日本推理作家協会初代理事長。位階は正五位。勲等は勲三等。
ペンネーム(江戸川乱歩)は小説家の、エドガー・アラン・ポーに由来する。
 …Wikipediaより。 
 江戸川乱歩と言えば少年探偵団で、子どもの頃のとっかかりは間違いなくこのシリーズだった。それで色々読んでいる内にかなりとんでもないものにぶち当たった小学生時代。結構なトラウマを受け付けられたものだ。
 以降も折に触れて読んでいたが、後年一念発起して少年探偵シリーズを読み返した。
ソフト関係 映画・OVA
パレットナイフの殺人(1946) 原作
蝶々失踪事件(1947) 原作
一寸法師(1948) 原作
幽霊塔(1948) 原作
氷柱の美女(1950) 原作
怪人二十面相 第一部 人か魔か?(1954) 原作
怪人二十面相 第二部 巨人対怪人(1954) 原作
怪人二十面相 第三部 怪盗粉砕(1954) 原作
青銅の魔人(1954) 原作
一寸法師(1955) 原作
死の十字路(1956) 原作
少年探偵団 妖怪博士(1956) 原作
少年探偵団 二十面相の悪魔(1956) 原作
少年探偵団 かぶと虫の妖奇(1957) 原作
少年探偵団 鉄塔の怪人(1957) 原作
少年探偵団 二十面相の復讐(1957) 原作
少年探偵団 夜光の魔人(1957) 原作
少年探偵団 透明怪人(1958) 原作
少年探偵団 首なし男(1958) 原作
蜘蛛男(1958) 原作
少年探偵団 敵は原子潜航艇(1959) 原作
修羅桜(1959) 原作
黒蜥蜴(1962) 原作
盲獣(1969) 原作
江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(1969) 原作
江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者(1976) 原作
江戸川乱歩の美女シリーズ 江戸川乱歩「吸血鬼」より
 氷柱の美女(1977)
原作
江戸川乱歩の 陰獣(1977) 原作
江戸川乱歩の黄金仮面 妖精の美女(1978) 原作
江戸川乱歩「暗黒星」より 黒水仙の美女(1978) 原作
江戸川乱歩「緑衣の鬼」より 白い人魚の美女(1978) 原作
江戸川乱歩「悪魔の紋章」より 死刑台の美女(1978) 原作
江戸川乱歩「魔術師」より 浴室の美女(1978) 原作
大時計の美女 江戸川乱歩の「幽霊塔」(1979) 原作
赤いさそりの美女 江戸川乱歩の「妖虫」(1979) 原作
江戸川乱歩「黒蜥蜴」より 悪魔のような美女(1979) 原作
江戸川乱歩「白髪鬼」より 宝石の美女(1979) 原作
魅せられた美女 江戸川乱歩の「十字路」(1980) 原作
エマニエルの美女 江戸川乱歩の「化人幻戯」(1980) 原作
江戸川乱歩の黄金仮面II 桜の国の美女(1980) 原作
白い乳房の美女 江戸川乱歩の「地獄の道化師」(1981) 原作
鏡地獄の美女 江戸川乱歩の「影男」(1981) 原作
五重塔の美女 江戸川乱歩の「幽鬼の塔」(1981) 原作
罠(1981) 原作
湖底の美女 江戸川乱歩の「湖畔亭事件」(1982) 原作
化粧台の美女 江戸川乱歩の「蜘蛛男」(1982) 原作
天国と地獄の美女 江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」(1982) 原作
白い素肌の美女 江戸川乱歩の「盲獣」(1983) 原作
天使と悪魔の美女 江戸川乱歩の「白昼夢」(1983) 原作
炎の中の美女 江戸川乱歩の「三角館の恐怖」(1984) 原作
禁断の実の美女 江戸川乱歩の「人間椅子」(1984) 原作
黒真珠の美女 江戸川乱歩の「心理試験」(1985) 原作
妖しい傷あとの美女 江戸川乱歩の「陰獣」(1985) 原作
妖しいメロディの美女 江戸川乱歩の「仮面の恐怖王」(1986) 原作
赤い乗馬服の美女 江戸川乱歩の「何者」(1987) 原作
黒い仮面の美女 江戸川乱歩の「凶器」(1987) 原作
日時計館の美女 江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」(1988) 原作
神戸六甲まぼろしの美女
 江戸川乱歩の「押絵と旅する男」(1989)
原作
妖しい稲妻の美女 江戸川乱歩の「魔術師」(1990) 原作
からくり人形の美女 江戸川乱歩の「吸血鬼」(1992) 原作
乱歩 黒蜥蜴(1993) 原作
名探偵明智小五郎 1 地獄の道化師(1994) 原作
屋根裏の散歩者(1994) 原作
江戸川乱歩劇場 押繪と旅する男(1994) 原作
RAMPO 奥山バージョン(1994) 原作
RAMPO 黛バージョン(1994) 原作
人でなしの恋(1995) 原作
乱歩 妖しき女たち(1995) 原作
名探偵明智小五郎 2 化人幻戯(1995) 原作
名探偵明智小五郎 3 暗黒星(1996) 原作
人間椅子(1997) 原作
D坂の殺人事件(1997) 原作
名探偵明智小五郎 4 吸血鬼(1997) 原作
双生児-GEMINI-(1999) 原作
闇の脅迫者 江戸川乱歩「陰獣」より(2001) 原作
盲獣VS一寸法師(2001) 原作
THE SNOW ザ・スノウ(2002) 原作
明智小五郎 対 怪人二十面相(2002) 原作
乱歩地獄(2005) 原作
人間椅子(2006) 原作
陰獣(2008) 原作
失恋殺人(2010) 原作
黒蜥蜴(2015) 原作
1925年の明智小五郎/D坂の殺人事件(2016) 原作
1925年の明智小五郎/心理試験(2016) 原作
1925年の明智小五郎/屋根裏の散歩者(2016) 原作
TRICKSTER -江戸川乱歩「少年探偵団」より-(2016) 原案
江戸川乱歩短編集II 妖しい愛の物語/何者(2016) 原作
江戸川乱歩短編集II 妖しい愛の物語/黒手組(2016) 原作
江戸川乱歩短編集II 妖しい愛の物語/人間椅子(2016) 原作
満島ひかり×江戸川乱歩(2018) 原作
押絵ト旅スル男(2018) 原作
BD〜明智探偵事務所〜(2018) 原作
黒蜥蜴〜BLACK LIZARD〜(2019) 原作
名探偵・明智小五郎/第1夜
 SHADOW〜警察データベース流出!! 犯罪者連続殺人(2019)
原作
名探偵・明智小五郎/第2夜
 VAMPIRE〜巨大病院サイバージャック!!(2019)
原作
超・少年探偵団NEO -Beginning-(2019) 原案
メビウスの悪女 赤い部屋(2020) 原案
新!少年探偵団/怪人二十面相(2021) 原作
新!少年探偵団/少年探偵団(2021) 原作
新!少年探偵団/妖怪博士(2021) 原作
裸の天使 赤い部屋(2021) 原案
聖なる蝶 赤い部屋2021 原案
TV
怪人二十面相
<A> <楽> 1958
少年探偵団
<A> <楽> 1960
怪人四十面相
<A> <楽> 1966
わんぱく探偵団
<A> <楽> 1968
江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎
<A> <楽> 1970
明智探偵事務所 〜江戸川乱歩全集より
<A> <楽> 1972
少年探偵団 BD7
<A> <楽> 1975
怪人二十面相
<A> <楽> 1977
怪人二十面相と少年探偵団(1st,2nd)
<A> <楽> 1983
乱歩R
<A> <楽> 2004
超・少年探偵団NEO
<A> <楽> 2017
シリーズ
少年探偵団
その他

少年探偵団

12'11'24 怪人二十面相 少年探偵1
 東京で噂が持ちきりの謎の怪盗。その変装の見事さから「怪人二十面相」と名付けられた怪人は、今日も獲物を狙い高価な美術品を持つ人物に予告状を送ってくる。その二十面相に対抗しうるのは、日本では唯一の名探偵明智小五郎と、その助手小林芳雄少年しかいなかった。明智不在の中で羽柴家の宝石強奪。そして初めての明智対二十面相となる博物館襲撃事件の顛末を描く。

 記念すべき二十面相と名探偵明智小五郎の初対決を描いた作品。推理自体は子供騙しのものだが、本書に求めるのはまさしくそのような子供騙しと痛快性。その意味では大満足。
 このシリーズはこどもの頃図書館で読みふけった記憶があるが、多分その内半分位しか読んでなかった。これから全巻通じてちょくちょく読んでいくことにしよう。
<A> <楽>
13'01'18 少年探偵団 少年探偵2
 二十面相の逮捕後、都内各所で全身黒ずくめの人物が現れるとの噂が飛び交っていた。そんな時、少年探偵団員の桂正一の友達、篠崎始の家にある呪いの宝石を狙っているのではないかと心配した桂は、断腸の小林芳雄に相談するのだが…

 前回逮捕された二十面相が替え玉であったと言うところから始まり、特に後半に至って二十面相と明智との対決が非情に楽しめる。お互いに用意しあっての攻防だから、「こんなこともあろうかと」が何回も続いていく。これがあってこそだよな。
<A> <楽>
13'01'30 妖怪博士 少年探偵3
 少年探偵団の一人相川泰二は、ある日奇妙な行動を取っている老人と出会う。その不審な行動に興味を覚えた泰二は、その老人を尾けてみるのだが、実はそれは少年探偵団を陥れるための罠だった。蛭田博士を名乗るその老人に囚われの身となった泰二。そして次々に送られてくる挑戦状…

 前巻で死んだと思われた二十面相の復活と、もう一人の名探偵殿村弘三の登場。となかなか盛りだくさんの内容となった。相変わらず神の如き推理力を持つ明智探偵と二十面相の化かし合いがやはりメインの話ではある。
<A> <楽>
13'03'24 大金塊 少年探偵4
 小学生宮瀬不二夫の家に泥棒が入り込んだ。一見何も盗られてないように思われたのだが、実はこの家には莫大な秘密の隠し財宝を示すヒントがあり、それが盗まれてしまったのだ。それを知った不二夫の父は明智探偵に連絡を取るのだった。

 今巻は二十面相が登場しないかなり純粋な宝探しの話。犯罪と言うより冒険小説と言った風情。これはこれでこども向きの面白い話。
<A> <楽>
13'04'28 青銅の魔人 少年探偵5
 東京の街に突如現れ、高価な時計を次々に奪っていく青銅色の魔人。ヨーロッパの王宮からいただいたという由緒正しい時計を持つ手塚龍ノ助は、その魔人を恐れ、名探偵明智小五郎に時計の護衛を依頼するのだが…

 これまでの4冊が戦前に書かれたものだったが、この巻は戦後になって初めて書かれたもの。明智も小林少年も、勿論二十面相も全く歳を食ってないという設定は、開き直った感があるが、これはこれで本作らしいところと言うべきか。物語は軽快で、意外な真相も楽しめる。
<A> <楽>
13'05'25 地底の魔術王 少年探偵6
 小林芳雄の従弟に当たる天野勇一少年の前に現れた不思議な人物。自分を“魔法博士”を言い、不思議な手品を見せてくれたその人物の誘うまま、洋館に足を踏み入れた勇一は、世にも恐ろしい体験をすることとなる。

 今回は謎解きのトリックを存分に楽しませようという思いからか、読者に挑戦するような気術がいつに増して多い。対象が子どもなので、これこそがこのシリーズの醍醐味と言えようか。
<A> <楽>
13'06'27 透明怪人 少年探偵7
 目に見えない怪人が出没するというニュースに日本中が怯えていた。そんな中、透明怪人は次々と高価な宝石を強奪していく。本当に透明怪人はいるのか?そして彼の目的は?調査を開始した小林芳雄少年以下少年探偵団だが、その団員の一人が尾行中に怪人に捕らわれてしまう…

 今回も蓋を開けてみると、いつも通りの二十面相と明智探偵の知恵比べが展開する。二十面相の挑戦に明智が応じて鮮やかに事件を解決していくことになる。二十面相自身が明智に変装することも多く、徐々に誰が誰だか分からなくなっていく。
<A> <楽>
13'08'03 怪奇四十面相 少年探偵8
 ついに囚われの身となってしまった怪人二十面相。だが牢に入れられていながらも二十面相は、今度は四十面相を名乗り大胆な犯罪予告を新聞社に送り、しかもまんまと脱獄に成功させてしまう。小林少年の活躍によって、次に四十面相が狙っているのは莫大な隠し財宝であることを突き止めるのだが…

 二十面相が四十面相に名前を変えた話だが、この作品はすっぱり前半と後半に別れた二部作となっている。前半は四十面相の見事な脱獄を、そして後半は「大金塊」を思わせる冒険劇になっている。ただ、この辺りからややマンネリズムに陥った感はあるな。
<A> <楽>
13'08'29 宇宙怪人 少年探偵9
 東京上空に突如現れた宇宙船。そして不時着した宇宙船からはトカゲのような姿をした宇宙人が現れたというニュースが入る。日本中が騒然とする中、宇宙船は世界各国にも現れた。そして宇宙人にさらわれたという青年北村が明智探偵の元を訪れるのだが…

 世界各国を舞台とした(実際の事件は日本だけだが)スケールの大きな話となった。話としては嘘の証言ばかりが出てくる他愛のないものだが、重要な部分として、世界的な犯罪組織が存在することと、四十面相は人間同士で争うことに対して嫌悪感を抱き、世界平和を作り出すために自分なりの方法で活動しているという事実が明らかになる。このような性格こそが四十面相の魅力の一つなんだろう。
<A> <楽>
13'10'20 鉄塔王国の恐怖 少年探偵10
 明智のお使い帰りの小林芳雄が出会った老人は、この日本に巨大カブトムシがいる鉄塔王国があることを告げて姿を消す。それからしばらくして資産家の高橋家に鉄塔王国の王を名乗る人物からメッセージが届く。それは一千万円を王国のために出すか、さもなくば息子を差し出せというものだった。不気味になった高橋は明智に連絡を取るのだが…

 記憶によれば、私が一番最初に読んだ著者の作品。
 今読んでみると、シリーズ中屈指の荒唐無稽ぶり。一番の問題は、二十面相が一体何を考えているのか、文章から全く伝わってこないと言うことだろうか?
<A> <楽>
13'11'19 灰色の巨人 少年探偵11
 都内で高価な宝石ばかりが盗まれる事件が発生する。そこには必ず「灰色の巨人」と書かれている紙片が残されていた。そんな折、少年探偵団の一人園井少年の家の家宝である宝冠がお披露目となり、園井は団長である小林団長にそのことを打ち明けるのだが…

 著者は結構サーカスをモティーフとした作品を描いているが、少年探偵で出たのは初めてかな?これが出てきたってことは、いよいよネタが無くなってきたのか、あるいはいよいよ趣味の領域に話を進めていくのか。
<A> <楽>
14'01'05 海底の魔術師 少年探偵12
 少年探偵団の一員宮田賢吉少年は、偶然取っ組み合う二人の男を目撃する。その一人から鉄の小箱を手渡され、訳も分からぬままその小箱を家に持ち帰る。だがそれには大きな秘密が隠されていた…

 今回もオチは二十面相が後ろで糸を引いていたというものだったが、冒頭部分で人が一人死んでいるのがいつもとは違っているところ。最後は著者の好きな宝探しが展開していくが、そのパターンはいつも同じなのがちょっと残念なところ。
<A> <楽>
14'01'17 黄金豹 少年探偵13
 都内各所に物言う豹が現れた。しかも大胆にもその豹は貴重な豹を持つ園田家に予告状を送ってくるのだった。少年探偵の小林はそれを阻止せんと園田家に張り込みを開始するのだが…

 いつも通りの安定した物語。ただ、豹の正体は…というところで、「あ、なるほど」と思わせてくれるギミックがあるので、謎解きとしても楽しめる。
<A> <楽>
14'02'09 魔法博士 少年探偵14
 少年探偵団の団員井上とノロは不思議な老人を見かけ、それを尾行するのだが、逆に囚われの身となってしまう。そんな二人が突然探偵団へと戻り、小林団長に助力を願うのだが…

 少年版「パノラマ島奇譚」と言った風情の作品。内容は相当マイルドになってるが、著者の夢のギミック満載で、いかにも乱歩らしい仕上がりとなっている。
<A> <楽>
14'03'27 サーカスの怪人 少年探偵15
 東京へとやって来たグランド・サーカスの観客席に突然現れた骸骨男。サーカスはパニック状態になるが、座長の笠原には更に不気味な予告状が舞い込むのだった。たまたま現場に居合わせた少年探偵団の一員から連絡を受けた小林がやってくるが、その眼前で大胆不敵な犯罪が次々と起こる…

 これもサーカスを舞台にした少年探偵団もの。ただ、これまでの作品とは雰囲気が随分異なる。ここでの二十面相の狙いは金品ではなく復讐であったこと、そして二十面相の過去が少しだけ明らかになったことなど、作品全体のターニング・ポイントと言っても良かろう。二十面相の本名が遠藤平吉ということも明らかになった。
<A> <楽>
14'05'03 魔人ゴング 少年探偵16
 明智小五郎探偵の元に新しい少女助手マユミがやってきた。少年探偵団の面々も大喜び。だがそのマユミをターゲットにした脅迫電話が明智の元へとかかってくるのだった。その時に東京上空に浮かぶ巨大な顔があった。誰とも無く、それは魔人ゴングと呼ばれるようになるのだが…

 ここに来て初めて少女探偵助手が登場。なんでもこの話は少女文芸誌に掲載された作品とのことなので、それは納得。いつもは罠にはめてばかりの二十面相が今回は罠にはめられるという、ちょっとだけいつもとは違った展開も、特徴的でよし。
<A> <楽>
14'05'11 魔法人形 少年探偵17
 人形好きの少女ルミは精巧な人形を持った腹話術師の誘いに乗ってしまい、囚われの身となってしまう。身代金を要求された両親が明智探偵事務所に連絡を取り、留守番役だった小林少年がその任務に就くこととなった。人形師の赤堀鉄州という人物に当たりを付けた小林だったが…

 これまでの少年探偵ものの中ではかなり怪奇趣味に偏った話で、著者らしい人工の楽園を主題にした不思議な作品に仕上がっている。緊迫感の演出も中々良いのだが、設定上のアラがちょっと目立っており、物語上無理が生じてしまってる。まあ、それも魅力の一つか。
<A> <楽>
14'06'30 奇面城の秘密 少年探偵18
 レンブラントの名画を高額で買った実業家の神山の元に怪人四十面相から予告状が舞い込む。心配になった神山は明智小五郎探偵に相談を持ちかける。そこで分かったのは、三ヶ月前に明智によって捕まっていたはずの四十面相は、とっくの昔に脱獄に成功していたという事だった…

 「宇宙怪人」(9巻)の直後から始まる作品で、これも掲載雑誌が違うものらしい。そのため今回はポケット小僧が大活躍する話になっている。掲載誌によって物語性も変えてくるのは面白いところだ。
<A> <楽>
14'07'20 夜光人間 少年探偵19
 夜の東京に突如光り輝く姿で現れた怪人。彼は高価な古い仏像を次々に盗み出していった。明智小五郎探偵が不在の中、少年探偵団とチンピラ別働隊を率いる小林芳雄少年が夜光人間に正面から戦いを挑む。

 今回は小林少年が中心となって怪人を追いつめていくという話で、軽快に物語が展開していく。都合3回も見せ場があって、その度毎に軍配がどちらに上がるかがなかなか楽しい。
<A> <楽>
14'08'20 塔上の奇術師 少年探偵20
 明智探偵の少女助手花崎マユミは、仲良くなった二人の中学生と散歩中、時計台に不思議な人物を見る。これが二人の少女が味わうことになる恐ろしい事件の始まりだった…

 本作は少女雑誌に連載したものと言う事で、少女が事件に巻き込まれるというパターンの話になっている。内容としては小林幼年と四十面相の知恵比べに終始。明智探偵は最後の最後に解決のためだけに登場という感じ。四十面相もいつもの泥棒というのとは違い、守りに入っているのも違いと言えば違いか。『ガス燈』みたいな話だった。
<A> <楽>
14'09'07 鉄人Q 少年探偵21
 発明家を名乗る老人が講演で遊ぶ子ども達を自宅に連れ帰り、そこで人間そっくりのロボットを見せつける。ところが子ども達の見ている前でそのロボットは屋敷から脱走してしまうのだった。そして翌日から都内に起こる不思議な事件…

 この辺になると推理小説ではもうなくなってしまい、だましのテクニックがあまりに稚拙になってしまった。対象年齢をかなり下げた感じがある。
<A> <楽>
14'10'11 仮面の恐怖王 少年探偵22
 都内で次々と怪事件が起こる。ある時は蝋人形館の鉄仮面が動き出し、ある時は黄金の仮面を着けた人物が夜な夜な都民を驚かせる。そんな怪人の噂を聞き、調査に乗り出した少年探偵団だが…

 今回は少年探偵団を中心に、二十面相を相手に次々に起こる怪事件に立ち向かうという掌編の寄せ集めのような話になっている。いろんなものを詰め込んだのは良いけど、話が短すぎて今ひとつ乗り切れない感じを受ける。ただ、最後の物語の結末だけはかなり意外だが。
<A> <楽>
14'11'06 電人M 少年探偵23
 都内に突然現れたロボット。少々世間を騒がせた後姿を消すのだが、それは都内に作られたテーマパーク“月世界旅行”のサンドイッチマンだったことが分かった。突拍子も無い宣伝のために大賑わいのテーマパークだが、その背後では大きな陰謀が始まっていた…

 “世間を騒がす”という意味ではこれまでの作品もそうだが、二十面相がまずテーマパークを作るということで世間を騒がすというのが面白いところ。そして本作では、“究極の兵器とは何か?”という考察もなされているのが特徴。人を仮死状態にする爆弾って、確かに究極兵器と言えるかもしれない。
<A> <楽>
14'11'21 二十面相の呪い 少年探偵24
 「二十面相の呪い」エジプトの秘宝を次々に狙う二十面相は、恩田氏の持つ真珠の象を盗み出すと予告した。連絡を受けた明智探偵は小林少年を恩田家に派遣するのだが…
 「黄金の虎」魔法博士を名乗る人物から挑戦を受ける少年探偵団。金で出来た虎の置物をめぐり、丁々発止のやりとりをくりひろげる。

 今回は2つの物語で展開。「黄金の虎」は二十面相では無く魔法博士なる人物とのやりとりになるが、やってることはほとんど同じで、メリハリには欠ける。
<A> <楽>
15'02'22 黄金の怪獣 少年探偵26
 宝石商に届いた大胆不敵な挑戦状。更にその家の周囲には次々と異変が起こり、その度に家人が次々に何者かによって入れ替わられてしまう。そして調査に来た小林少年までが…

 これが少年探偵の最終巻。ほとんど同じ人間を整形手術によって作り出すという、どっちかというと推理と言うよりSFっぽい設定で、これまでのいろんな積み重ねを崩してしまったような感じもある。
 このシリーズ読み返し始めてから、もう2年になるのか。面白かった。
<A> <楽>
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その他

22'04'16 押絵と旅する男
 旅好きな“私”が北陸から東京へ帰りの列車の中で知り合った、変わった絵を持つ男。その男が語る絵にまつわる不思議な話。

 「魍魎の函」の元ネタの一つとなった作品で、ファンタジックなホラー小説と言った感じ。短編だからこそぴったりとはまった物語になってる。
<A> <楽>
18'03'02 双生児
 死刑を待つばかりの一人の死刑囚が語った恐るべき犯罪の告白。実は自分の本当の名前は別で、最初の殺人は、双子の兄を殺した事という。

 双子を使ったミステリーは古典的な素材。本作は映画『双生児-GEMINI-』(1999)の原作となった話だが、映画版とは全く異なりもっと単純な展開となっており、むしろ「パノラマ島奇譚」のプロトタイプのような話になってるのが特徴。
 短い分、必要最小限の展開となるため、その分ソリッドな話ではある。
<A> <楽>
21'08'15 人でなしの恋
 一人の未亡人の告白。それはさる貴族の元に嫁ぎ、幸せな家庭生活を送っていたはずの自分がいかに不幸で浅はかだったか。そして夫が本当に愛していたのは誰で、その恋愛を終わらせるためになにをしたかだった。

 手紙の文体で描かれる、文字通り“人でなし”の恋を描いた話で著者の代表作の一つ。しかし今の日本ではこれは全く問題にならぬ程度のタブーでもある。それはそれで良いことなのだろう。
<A> <楽>
23'02'28 屋根裏の散歩者
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 何をしても情熱が長続きしない郷田三郎は、何度も繰り返した引っ越しの末にたどり着いた下宿で屋根裏に入れることが分かり、そこで人の生活を覗き見る快感を得る。そんなある時、不意に完全犯罪が可能ではないかと思い立ってしまう。

 道楽で人殺しをするサイコパスが完全犯罪を試みるという、猟奇的なお話しだが、そこは良心的な部分があって、最後に名探偵が登場して全ての謎を解き明かしてる。ここで登場する明智小五郎は未だ学生で、素人探偵という位置づけ。
<A> <楽>
03'01'18 幽鬼の塔・恐怖王
 「幽鬼の塔」:素人探偵河津三郎が興味を持った不思議な人物。彼を尾行し、彼の大切にしている荷物をスリ取る事に成功した河津だったが、男はその後、彼の見ている前で五重塔に上り首つり自殺をしてしまう。そしてその男の素性を調べ始めた河津を付け狙う者の影が…
 「恐怖王」:死体を弄び、世間を恐怖に陥れる怪人“恐怖王”。その手は売れっ子小説家の蘭堂の身の回りへと伸びてきた。恐怖王の狙いとは…

 2作とも著者らしい猟奇趣味に溢れた作品で、ぐいぐい引き込む力を持っている。探偵小説として見る限りは出来はさほど良いとは言えないけど、味付けが絶妙だ。著者作品には本当に惹かれる
<A> <楽>
02'10'23 猟奇の果
 猟奇趣味を持つ若き資産家青木愛之助はある日街で友人で科学雑誌の編集長品川四郎にそっくりな男をみかける。しかもその男は何らかの犯罪に加担しているらしい。趣味の虫が騒ぎ出した愛之助はその男を調べることにしたのだが、それは彼にとって、巧妙に張り巡らされた転落の道の始まりだったのだ。

 小学生の時、子供向けの怪人二十面相シリーズを貪るように読んだ著者。手に入るほとんどを読み終え、中学生になって著者には大人用の作品があることを知り、それを手に取ったのだが…かなり私の精神を歪めることに貢献した作家だぞ。この人は。今までに結構読んだつもりだが、全部にはまだまだ至らない。時々読みたくなる作家だ。
 本書は題名が刺激的な割りに内容的にはさほど変ではない。荒唐無稽な推理ものって感じ。それを笑って許せるのも著者の著者たる所以か。
 ラストの二行が好き。
 「夢物語でよいのだ。
  夢物語でよいのだ。」
<A> <楽>
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<A> <楽>