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ダルトン・トランボ
Dalton Trumbo

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鑑賞本数 合計点 平均点
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書籍
著作
ジョニーは戦場へ行った(書籍)

_(書籍)
1979 9'10 死去
1978
1977
1976
1975
1974
1973 ダラスの熱い日 脚本
1972
1971 ジョニーは戦場へ行った 監督・原作・脚本
ホースメン 脚本
1970
1969
1968 フィクサー 脚本
1967
1966
1965 ハワイ 脚本
いそしぎ 脚本
1964
1963
1962 脱獄 脚本
1961 ガン・ファイター 脚本
1960 栄光への脱出 脚本
スパルタカス 脚本
1959
1958 テキサスの死闘 脚本
1957
1956 黒い牡牛 原作
1955
1954
1953 ローマの休日 脚本
1952
1951
1950
1949
1948
1947
1946
1945 東京上空三十秒 脚本
緑のそよ風 脚本
1944
1943 夫は還らず 原案・脚本
1942
1941 新妻はお医者さま 脚本
1940 恋愛手帖 脚本
1939
1938
1937 潜水艦SOS 脚本
1936
1935
1934
1933
1932
1931
1930
1929
1928
1927
1926
1925
1924
1923
1922
1921
1920
1919
1918
1917
1916
1915
1914
1913
1912
1911
1910
1909
1908
1907
1906
1905 12'9 コロラド州モントローズで誕生

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ジョニーは戦場へ行った 1971
1971カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ(トランボ)、国際映画批評家連盟賞(トランボ)、国際エヴァンジェリ映画委員会賞(トランボ)、パルム・ドール
<A> <楽>
ダルトン・トランボ(脚)
ティモシー・ボトムズ
キャシー・フィールズ
ジェイソン・ロバーズ
マーシャ・ハント
ドナルド・サザーランド
ダイアン・ヴァーシ
デヴィッド・ソウル
モーリス・ダリモア
ドナルド・バリー
エリック・クリスマス
エドュアルド・フランツ
ケリー・マクレーン
チャールズ・マックグロー
バイロン・モロー
サンディ・ブラウン・ワイエス
★★★★★
物語 人物 演出 設定 思い入れ
ジョニーは戦場へ行った <A> <楽>
ダルトン・トランボ (検索) <A> <楽>
 第一次世界大戦で体のほとんどの機能を失い、野戦病院で寝ていることしかできないジョー(ボトムズ)。暗闇の中、自分が今、どんな状況に置かれているのかも分からないまま、過去の自分自身のことを思い続けるジョーだが…
 いわゆるハリウッドの赤狩りで放り出されたトランボがやっとハリウッド復帰を果たした作品。本作の原作は自分自身が描いたものだが、描かれたのは1938年。なんと
38年もの時間を経て映画化となった。ちなみにタイトルの"Johnny Got His Gun"は第二次世界大戦時のアメリカの名キャッチフレーズ"Johnny Get Your Gun"(ジョニーよ銃を取れ)から。
 原作そのものは
私自身のベストブックの一冊で、20年前から常に私自身の本棚の中に入っている作品。原作を読んだ後での本作の視聴は、ある種の快感をもたらす。様々な遍歴を重ねてきた監督が、ある意味もっとも先鋭的な作品を作ってくれた。
 先に私は『[リミット]』(2010)のレビューで「最も移動距離がない映画」と書いたのだが、実はそうではなかった。それ以前。実に40年も前に既にこれ以上無い短い移動の人間を描いた作品があったのだ。
 正確には“移動距離の短さ”という意味では、結構長い距離を移動もしている。第一次大戦中で、主人公は戦地から帰ってきているし、病院の中では実際に移動もしている。
 しかし、主人公の存在は、自分では全く動くことができず、更にその肉体も欠損している。本作を通して主人公が移動したのは、実は自分の精神の中だけである。全く自分では動けない主人公。これほど移動しない主人公はそれまで存在しなかった
(そう考えると『ミッション:8ミニッツ』(2011)もそのカテゴリーに入るか)。この設定だけでも充分面白いのだが、内容も極めて挑戦的。
 本作はこれ以上無いほどストレートな反戦映画であり、それをてらいなく作ってしまったというところに本作の価値がある。
 それまでアメリカにあって反戦映画、若しくは共産主義を肯定的に描いた作品はほとんど作られることがない。それはかつてマッカーシズム旋風が吹き荒れる中、そのような作品を作る可能性のある監督や製作者が徹底的に弾圧されたお陰である。それ悪名高い“赤狩り”だった。結果としてハリウッドの中に深い傷跡を残しつつ、10人の、いわば生け贄を捧げることでハリウッドは平静を取り戻したという経緯があったから。
 そのハリウッド・テンの中にいたのが本作の監督ダルトン・トランボだった。脚本家として非常に高く評価されていながら、これによって冷や飯食いを余儀なくされて島田のだ。結果としてこれまで細々と偽名で脚本家として仕事していたのだが(その代表作が『ローマの休日』で、あの脚本家がトランボであったのがわかったのが90年代になってからだった)、ようやくその自主規制も薄まっていき、やっと本当に作りたいものが作れるようになったことで、この作品が世に出たことで、ようやくハリウッドがバランスを取り戻したことがわかる。70年に製作された『レッズ』あってこそ、本作ができたことがわかるだろう。

 戦争の悲惨さを伝える作品は数あれど、主人公の存在そのものをこれほど反戦の素材とできたのは、『我等の生涯の最良の年』(1946)以来だが、それを遙かに超えたものが出来ている。物語そのものもとても良いのだが、これが作られたということそのものに感動を覚える。

 本作は映像的な“詩”として観る事も出来る。肉体感覚のほとんど全てを失った主人公が、それでも正気を保ち続ける事が出来るのは、過去の記憶と、ほんの僅かに与えられる肉体的接触。その肌の感覚の悦びをいかに描くかが本作の肝となるのだが、映像のほとんどが限定的な描写に留められているから、その描写が映えている。『僕の村は戦場だった』(1962)と同質の映像詩的快感を与えてくれた。

 観る人を選ぶ作品ではあるものの、とにかく素晴らしい物語。

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