東京タワー オカンとボクと、時々、オトン 2007 |
2007日本アカデミー作品賞、主演女優賞(樹木希林)、助演男優賞(小林薫)、監督賞、脚本賞、新人俳優賞(内田也哉子)、主演男優賞(オダギリジョー)、助演女優賞(松たか子)、音楽賞、撮影賞、美術賞、編集賞
2008アジア映画主演男優賞(オダギリジョー)、主演女優賞(樹木希林)、助演男優賞(小林薫) |
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松尾スズキ(脚) |
オダギリジョー |
樹木希林 |
内田也哉子 |
松たか子 |
小林薫 |
冨浦智嗣 |
田中祥平 |
谷端奏人 |
渡辺美佐子 |
佐々木すみ江 |
原知佐子 |
結城美栄子 |
猫背椿 |
伊藤歩 |
勝地涼 |
平山広行 |
荒川良々 |
辻修 |
寺島進 |
小島聖 |
吉本菜穂子 |
光石研 |
千石規子 |
仲村トオル |
土屋久美子 |
小泉今日子 |
板尾創路 |
六角精児 |
宮崎あおい |
田口トモロヲ |
松田美由紀 |
柄本明 |
田中哲司 |
塩見三省 |
岩松了 |
江本純子 |
安藤玉恵 |
栗原瞳 |
麻里也 |
竹下玲奈 |
小林麻子 |
ぼくもとさきこ |
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3歳の時“ボク”は、芸術家気取りの遊び人オトンを捨てたオカンに連れられ筑豊の貧しい家で育てられた。女手ひとつでボクを育ててくれたオカンだが、ボクは15歳になって芸術科のある高校に、それから東京の芸大へと進学する。その間勉強もせずに借金を重ねるボクだったが、そんな中、オカンが癌に侵されていることが分かってしまう…
TVドラマ化もされたリリー・フランキーのベストセラー小説を映画化。映画の作りとしてはかなり起伏が少なく、ちょっとだけ普通とは違うけど、どこにでもある話で物語にしてもドラマ性そのものはとても低い。
しかし、その起伏の少ない物語がとても心地よく心に入ってくる。これは一言で言ってしまえば、ノスタルジーを刺激されるからなのだろう。悪ガキ時代や一人暮らしを始めて親に心配させっぱなしだったり、同じような駄目人間とつるみ、「自分だけじゃない」と妙な安心してみたり、それに今もなお碌々連絡もしていない今…確かにこの主人公“ボク”はリリー・フランキーなんだろうけど、どこかに自分を思わせる描写があることで、”ボク”がいつの間にか自分になってしまってる時があることに気づかされてしまう。そうなると、物語が身に迫ってくるようになる。少なくとも私にはこれは非常に有効な方法だった。思わずその夜に実家に電話かけるくらいに(笑)
映画とはこう言う作り方もある。一種映画とは他人の生活を盗み観る快感もあるのだが、同時に自分の生き方を立ちどまって振り返ることもできるのだ。例えば『ロッキー』(1976)や『燃えよドラゴン』(1973)を観て「俺もこうなりたい!」と思って突然トレーニングを始めてみたり、『スタンド・バイ・ミー』(1986)観て子供の頃の友達のことを思い出してみたり、ATGの諸作品で「ここに俺がいる」と思ってみたりもする。狙ってなかなか出来る事じゃないはずなのだが、ノスタルジーを刺激することを巧みに作ってみたのが本作だったと言えよう。原作そのものが上手く作られているのが分かるけど、一見起伏が少なく、平板になりがちな物語を脚本の松尾スズキが上手く仕上げてくれた。
キャラに関しては、声変わりもしてない冨浦智嗣が一年後にいきなりオダギリジョーに成長してしまうつなぎの悪さだけは気にかかるけど、それ以外は文句ない。この人はもう安定した名優だと言えよう(ただ今回は何でだか口元のほくろが気になって仕方ないのだが、これは演出か?)。何より内田也哉子が本当に若い頃の樹木希林みたいで、仕草一つ一つに笑えてしまった。
30代を過ぎた、特に男性には自信を持ってお勧め出来る作品だ。
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